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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
152/164

気がついたら絶望の中でした

久しぶりの投稿です。

 俺は黒く永遠と先の見えない空間に浮いていた。いや正確には落下しているのかも、上昇しているのかもわからない。ただこの空間にいるのだと自覚できるだけ。

 絶望的な状況だ。だが俺は不思議と落ち着いていた。諦めがついた為か、混乱が一周回って冷静さを取り戻したのか、それは定かではない。だがこの世界に来てからのことを思い出すのには十分な程、俺の頭はクリアになっていた。


「……あの時を思い出すな。」


 この世界にやってきた俺は最初、この空間に転移された。何もない空間で1人、死を恐れ、死にたくないとつぶやいていたあのとき。シヴァが声を掛けてきたとき、悪寒と圧力プレッシャーと同時に安心していた。矛盾しているかもしれないが、シヴァの存在感には圧倒されていても他に誰かがいると言う安心感を感じていたのは事実だ。思えばあのときから奴らの遊戯に俺は巻き込まれていたんだ。


「……力を貰って、シヴァを疑うことなく、信じて旅をしてきた。かけがえのない仲間を、思い、記憶を手にした。だが、それももう……。」


 そのとき、突然俺の目の前に光が走った。俺は思わず腕で顔を覆うように光を遮る。それと同時に俺はシヴァの一言を思い出す。


『サービスとして、この世界や仲間たちの終わりはその空間からも見えるようにしてやろう。』


 俺は恐る恐る、顔を覆う腕を下ろした。

 そこには先程まで俺がいたあの荒野を映し出していた。俺がこの空間に封印され、すぐの光景なのだろうか?アスモデウスは膝をつき、涙を流しながら絶望の表情を浮かべ、悪魔たちもその場に立ち尽くしている。

 歩、颯太、横山、琴羽は俺を助け出そうとしているのをほかの勇者たちに抑えられている。だが遂に歩がその拘束を振り切り、シヴァに立ち向かう。


「止めろ!」


 俺は必死に叫ぶがその声が歩に届くことはない。剣を振るう歩、がその速度ではシヴァに追いつくことはできない。

 シヴァ楽々とその攻撃を回避すると、空間に突如現れた禍々しい剣を握る。その剣の名は【邪神剣ダーインスレイブ】。

 シヴァの目が映像越しに俺を捉える。そしてニヤリといやらしい笑みを浮かべる。そして、【邪神剣ダーインスレイブ】は振り下ろされた。

 両断だった。歩むは頭から剣を振り下ろされ、真っ二分かれた。血が噴き出し、倒れた身体からは臓物が零れ落ちる。

 勇者たちはその光景に思わず、目を背ける。涙を流すもの、嘔吐してしまうもの、絶望し膝をつくもの。それぞれの反応を見てシヴァたちは笑う。

 シヴァは両断した歩の方を掴むと勇者たちの足元へ投げ捨てる。

 仲間の死体が飛んできたと怯え、後ずさろうとするが、颯太は気づいた。歩は生きているのだ。【聖剣デュランダル】の『不滅』の力を得た歩はこの程度のことで死ねない。だが痛みはある。歩は発狂してしまった。涙を流し、言葉ですらない奇声を上げ、半身でバタバタともがき苦しんでいる。親友の惨たらしい姿に俺は叫んだ。


「頼む!やめてくれ!」


 この声はシヴァたちに届いていたのかもしれない。だからだろう。シヴァは側に落ちている歩の半身を掴み、飛び上がる。そして重力に身をまかせるように落下する。そして…。


 グシャリ。


 聞こえないはずの音が耳に届いた気がした。

 歩の体は震え、そしてその動きを止めた。いやまだ体は動いている。だが脳のない体ではまともに指示を出し、動くことは出来ない。


「歩……そんな……。」


 颯太がその場に崩れる。がその体を何者かが支える。


「大丈夫?」


 颯太はゆっくりと顔を横に向ける。


「創造神…。」


「せいかーい、よっ!と。」


「…え?」


 創造神の腕が颯太の体に深く刺さった。そしてその腕をぐるぐると回し、なにかを探るようにしている。


「やめ……がはっ!……。」


「ハハハ。」


 弱っているとは言え、颯太の力では創造神を振りほどくことは出来ない。

 創造神は腕を動かしながら振り向くと、勇者たちを見る。


「助けないの?」


 助けたい。勇者たちはそう思っている。だがその思いよりも恐怖が今の彼らを支配していた。

 前に出たいはずの足が鉛のように思い。丸で根をはる大樹のように足が微動だにしない。

 創造神はその様子を見て楽しそうに笑う。


「助けないのか〜。そっか、そっか。じゃあ、殺すね❤︎」


「………やめっ。」


 横山は何を言われたのか、理解し、止めようと手を伸ばした。だが間に合わない。


「えい!」


 創造神の掛け声とともに腕が颯太の体から引き抜かれた。腸が、胃が、肝臓が、心臓が、肺が次々と体外へと引き抜かれていった。

 颯太も勇者たちも何も出来なかった。


「お終い!」


 颯太が口から血を吐き出しながら、こちらは振り向く。


「皆……にげ……。」


 颯太の体はゆっくりと倒れた。動かなくなった彼を勇者たちは見つめたまま動かなくなる。颯太は命を落とした、その事実が勇者たちをさらに追い詰める。


「もう嫌だ。嫌だよ。何でこんな酷いこと…。」


「結衣…。」


 俺の視界に横山と琴羽が映る。いや映るように仕向けられた。シヴァたちの顔が映り込み、こちらを楽しそうに見ている。

 俺はこの一瞬で理解した。彼らが何をしようとしているのか。


「やめろよ。おい!やめろお!」


 俺は叫ぶ。今になってアスモデウスの気持ちがよく分かった。もう失いたくない。もう目の前で誰かが殺されるところなど見たくない。俺は必死に願い、叫んだ。喉が切れ、血を吐きながらも俺は必死に叫び続けた。だがそれは彼らを喜ばせるだけ。

 シヴァが座り込む横山の前に立つ。


「やめてよ…。何で…こんなことするの?」


「暇つぶしと言ったであろう。イヅナと違い理解力の無い娘だ。」


「…雅風くん。………いや、いやいやいやいや!」


 横山は頭を抱え、大きく横に振る。現実を受け入れたく無い。そんな想いが言葉に、行動に現れてしまう。

 琴羽は横山を抱きしめる。彼女も辛いはずだった。守ってくれる筈だった俺が目の前から消えた。共に過ごしてきた仲間が死んだ。親友は壊れてしまいそうだ。自分の命も危ない。

 けれど彼女は諦めなかった。諦めたくなかった。俺が必ず戻ってくると信じていたのだ。


「大丈夫よ。雅風くんがきっとどうにかしてくれるわ。」


 この地獄のような惨状をどうにか出来るとは琴羽も思ってはいなかった。けれど彼女たちが最も信頼出来る人物はもう俺しかいなかった。


「そう……だね。うん!飯綱くんな……。」


 横山が最後までその言葉を言うことはなかった。

 体がゆっくりと傾き始めた。


 コツン。


 琴羽の足に何かが当たる。恐る恐る足元に目を向ける。そこには笑顔を浮かべ、転がる横山の顔があった。


「……いやあああああああ!!!!!」


 目の前に親友の死がある。琴羽の心を壊すには十分な出来事であった。


「黙るがよい。」


「ぎぃえ!?」


 シヴァは琴羽をまるで虫をつぶすかのように叩きつけた。骨は折れ、体は潰れ、血が溢れる。そこにはかつての琴羽の姿は無かった。


「『ぎぃえ!』って中々聞けない遺言だなあ。『ぎぃえ!』。ハハハ。」


「見たか?あの娘の死に方は恐らく至高であったのだろうな。あの笑顔を見ればわかる。」


 腹を抱えて笑う2人の姿に怒りを覚える者はいなかった。彼らの心を支配するのは恐怖だけだ。

 勇者たちはしばらく笑う2人を見て呆然と立ち尽くしていたが、そのうち1人の勇者が足を一歩引いた。そして…。


「うわあああぁぁぁ!!!」


 逃げた。それにつられて1人また1人と背を向け逃げ出す。だがシヴァたちが見逃すことなどない。彼らはこの瞬間を待っていたのだ。彼らが絶望し、背を向け、何とか自分だけでも助かろうとする、醜く、滑稽な姿を見るために。


「どこへ行くのだ?」


「ひっ!?」


 それが彼の最期の言葉となった。シヴァはその腕を大きく払った。顔に腕の一撃を受けてしまった彼は頭を破裂させ、その場に倒れる。即死だった。

 それから起きたことは蹂躙であった。逃げ回る勇者をシヴァたちが楽しそうに追いかけ嬲り殺す。血飛沫が上がり、肉が裂け、臓物が飛び交い、命が散る。俺はその様子を涙を流し、ただ呆然と眺めていた。もしかしたらこの時、既に俺の心は壊れていたのかもしれない。


「ふう。これで終わりか?」


「シヴァ、何で人間たちの王も殺しちゃうの?あの吸血鬼なんか雅風くんに効果的そうだったのに。」


「ん?ああ、あれか。すまん。加減を間違えた。」


 俺はその言葉を聞きたくなかった。それを聞いてしまえばあの肉塊がラフィーエだとエルティナだと嫌でも理解してしまうから。まるで子供が蟻を殺すようにシヴァは王たちを踏み潰していた。

 俺は目を逸らした。勇者たちが殺される様子だけを見ていた。せめて誰か1人でも無事だと信じたかったから。

 俺は勇者はもう助からないと理解したんだ。だからラフィーエたちだけでもと。だが現実は優しくはなかった。彼女たちも死んだのだ。俺を信じてくれたこの世界の彼女たちは。

 シヴァは辺りを見渡す。血肉の海とかしたその場所で佇むその姿はどこか満足そうに見える。

 勇者たちが殺される間、悪魔たち、それとミカエルは何もしなかった。いやできなかった。動けば自分がやられるとそう理解していたのだ。


「ミ〜カちゃん。」


「……創造神……様。」


 創造神はミカエルの肩に手をかけると顔を近づける。


「イヅナくんやられちゃったね。」


「……イヅナは。」


 ミカエルは反論しようと口を開く。だが創造神はその口を押さえ、話を続ける。


「ううん。彼はもう駄目だよ。たしかに僕らは彼を封印するようにした。けどあのシヴァを抑えられるほどの空間で生きながらえられる人間が存在するわけないだでしょ?きっと彼はあの血の海よりももっと酷い目にあってる。」


「……そんな。」


 ミカエルは血の海を見つめる。あの惨状よりも酷いことがイヅナの身に起きている。そう思うだけで胸がミカエルの心は締め付けられた。

 そしてそれを理解した創造神は更に追い討ちをかける。


「でも分かってる?こうなったのは全部君のせいなんだよ?ミカエル。」


「……私のせい?」


「そうだよ。僕が君にイヅナくんを殺せと指示した時、君がさっさと殺していれば彼は苦しく、辛く、痛く、惨めで、死にたくなる、そんな思いすることなく楽に死ねたんだ。それなのに君と来たら、イヅナを殺したくない。もっと一緒にいたい。心があるなんて言って、彼を楽にしてやれなかった。だから僕は諦めたよ。ミカエルがそこまで彼を苦しめたいならそうしてくれってね(まあ、本当は違うけど。今の彼女なら信じてくれるかなあ〜。)。」


 創造神はミカエルのことをよく理解していた。友を、心を大切にしようとしていることを。ならばその2つを両方利用して仕舞えばよい。

 ミカエルは創造神が隣で笑みを浮かべていることに気づかずその言葉について考えてしまう。本来の冷静な彼女であればそれが彼女を貶めるための言葉だと気づけていただろう。しかし、目の前で大切な親友を失った衝撃は彼女の判断を鈍らせるほどに大きかった。


「……違う……私は…。」


「違う。君は……。」


 創造神は耳元で囁いた。


「彼を殺したんだ。最もむごい方法でね。」


「……違う……違う……違う。」


 ミカエルは弱々しく首を横に振る。


「違わないよ。君は殺した。そして君も苦しんでる。心なんてあるからだよ。君が望んだものは最悪の結果しか生まなかった。君は間違った選択しかしなかった。心なんてやっぱりない方が良いんだよ。」


「……やめて……もう……私は。」


 ミカエルはその場に崩れ落ち、こうべを垂れた。目を見開き、呆然と血を眺めて動かない。


「……壊れちゃったのか。ハハ、可愛そう。」


 創造神はミカエルを蹴り飛ばし、シヴァの元へ向かう。シヴァと創造神。2柱は仲良くならび残る悪魔たちの前に立った。


「さて最後は貴様らだな。」


「どうしようか。」


 2柱の神たちの先には悪魔たちがいた。恐怖、驚き、、悲しみ、嘆き。その様子は様々であり、誰もが絶望していた。ただ表面に出ている色が少し違うだけ。だがそれは神たちにとっては見飽きた光景であり何の面白みもないものだった。


「もう少し面白い反応は出来んのか?」


「な、何故です。」


「ん?何だ、ルシファー。何か言いたいことがあるのか?では発言を許そうではないか。」


「なぜこのようなことを。」


「……お前がそこまで出来の悪いやつだとは知らなかった。何度同じことを聞くのだ。」


 シヴァに見下されるルシファーだがその様子に変化はなかった。なぜ自分たちが殺されようとしているのか、なぜシヴァはこのような目で見るのか、何も理解できなかった。

 尽くしてきた、信じてきた、尊敬してきた。その報いがこの結果。

 ルシファーはただ現実から目を背けることしかできなかった。だが目の前の神たちはそれを許さない。


「わざわざ手間暇をかけ面倒を見てやったというのに。ルシファーよ、貴様には失望したぞ。よって死ぬがよい。」


 シヴァの手から放たれた魔力は渦を巻き、ルシファーを襲う。だが寸での所でベルゼブが間に入り、その魔力を喰らい尽くす。


「む?ベルゼブ、なぜ我の邪魔をする。」


「…むーむー(全部、うそだったの?)。」


 ベルゼブは問いかける。

 シヴァを助けられなかったあの日を後悔しなかった日はなかった。自分がもっとしっかりしていれば、力があればと悩み続けてきた。

 だがどれだけ悩もうと結果は変わらない。だからベルゼブは決めた。次があるのなら必ずシヴァの役に立って見せると。

 それからというもの、ベルゼブはひたすらにスキルを使うようにした。『禁断之箱』を使用することはできなかったが、代わりに『暴食之神』を使い続けその技量を上げてきた。レベルも上げ、ステータスが上がり、力を蓄えてきた。

 そして俺という心強い仲間を手に入れて今度こそ成功させる。その想いを胸にこの戦いに挑んだ。しかし結果はどうだろうか。シヴァのために戦っていた筈が、いつのまにかシヴァが目の前にたち自身を追い詰めている。俺が目の前から消され、勇者たちは殺され、ミカエルが心を壊され、残されたのはベルゼブたち悪魔のみ。

 ベルゼブはマスクを外し、その口を開く。『禁断之箱』により侵食されたその口は形を保ってはいない。痛々しい傷のようなものだ。

 ベルゼブはその証とも言える傷を晒しながら問いかけた。


「私の今までは一体、何だったの?」


「我の暇つぶしの些細な出来事だな。」


「…そう。」


 ベルゼブは力無くうなだれた。真実を知り、無気力になる。意味なんて無かった。無駄な時間だった。想いも、力もなにもかも。無駄、無駄、無駄、無駄。

 ベルゼブの目から涙が溢れ、その表情が怒りに染まる。


「うわあああ!!!!!」


「喚くでない。」


「かはっ……」


 首を切られ、血が溢れる。本来ならばこの程度の傷、治すことなど造作もない事だった。だがシヴァが使用したのは【邪神剣ダーインスレイブ】であり、つけられた傷は治らない。

 ベルゼブは傷口を抑えるが血は止まらない。地面が赤黒く染まり、ベルゼブの体が震え始める。


「ベルゼブはお前のために……何で……。」


 目から溢れる涙で視界はぼやけている。だがこれは俺にとって幸運だったのかもしれない。お陰で彼女が口を動かしていることに気づかなかった。


「イヅナ様……助け……て。」


 ドサ。


 ベルゼブはその命を落とした。自らが救おうとしていた者の手によって。


「ベルゼブ?」


 ルシファーは自身の前に倒れたベルゼブを抱える。まだ温かい。だが動き出すことはない。辺りに転がっている死体と同じなのだ。

 大切な仲間が1人1人と減っていく。あの時と同じだった。シヴァの為に命を投げ出し戦ったあの時と。だがそのシヴァはきっとその時からルシファーたちを見て楽しんでいたのだ。己の手のひらで踊るその滑稽な姿を見て。


「……シヴァ様。やはり貴方は。」


「ん?やっと気付いたか?」


「許すわけには行かない!」


 ルシファーは地を蹴り、その拳をシヴァに向ける。勝てるとは思えない。ならばせめて一矢報いてみせる。全魔力を乗せた拳は徐々にシヴァに近づいていく。ルシファーにはシヴァしか見えていなかった。だからその声を聞いた時、その動きは止まってしまった。


「い…やだ。」


 それはレヴィの声だった。

 ルシファーは恐る恐る振り向く。上半身と下半身が引きちぎられる瞬間だった。臓物が体と体を繋ぎ合わせてはいたが、最後にはブチと言う音を立て千切られた。


「はい!あげる。」


 創造神がそう言ってルシファーの前に何かを投げた。


「大変だったよ。無駄に体力が多いから違って死ぬまで体力を削って、そこらへんに転がってる緑髪の奴もそうだけど疲れるよね〜。まあ、みんな結局殺せたからいっか。」


「……。」


 ルシファーはただ足元にあるレヴィであったものを眺めることしかできなかった。

 ルシファーは強かった。だが絶望は彼を弱くした。長い時を共に過ごした者の死は彼を弱く弱くさせ、そして遂にはその心を折った。


「貴様も天使と同じ終わりかたか。つまらん。」


 ルシファーは殺された。まるでサンドバッグのように殴られ、蹴られ、いたぶられて。だが彼が最後まで抵抗することはなかった。もう彼は壊れてしまっていたのだ。


「やめろ……もう見たくない。」


 俺は耳を抑え、目を瞑り、必死に現実から目を背けた。もう嫌だった。こんな思いをなぜしなくてはならないのか?自分と関わった者たちが死んでいくのはもう見たくなかった。仲間を殺すくらいならいっそ自分を殺して欲しい。


「これ以上誰かを……。」


 そこで俺は思い出した。未だシヴァたちが手を下していない者がいることに。


「さて、メインディッシュと行くとするか。」


「あ、じゃあちょっとまって。あと2人くらい追加するから。」


 創造神が手を掲げると空に魔法陣が生成された。空間転移の術式である。空間が歪み、2つの人影がゆっくりと落ちてきた。そうしてその2人は1人残されていた者の側に降り立った。


「今頃彼はどんな顔をしてるかな?」


「さあな。だが、きっと良い顔をしているだろう。そしてこれからもっと良い表情を浮かべるはずだ。」


「そうだね。だって愛してる人と、愛してくれる人を殺されちゃうんだもんね。」


 楽しげに会話をする創造神とシヴァ。その足元には俺のよく知る者たちがいた。


「…アスモデウス、リア、セリカ。」


 これから何が起こるのか。嫌でも分かってしまう。

 俺は手で顔を覆う。


「…もう……もう…やめてくれ…。」


 俺は絶望の中、そう呟くことしかできなかった。








絶望に染まる世界。

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