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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
151/164

気がついたら黒い空間でした

GW終わってますね。すみません。間に合いませんでした。それでも投稿させてください。

 俺は俺の頭を撫でる神を見上げる。姿形はやはり初めて見たので何とも言えない。だが感じられるこの圧力はこの世界に来た俺が初めて感じたものと全く同じだった。

 俺はわかっている上で再度確認する。


「本当にシヴァなのか?」


「そう言っているだろう。分からない…と言うよりも信じたくない…と言うところか。まあそれは貴様だけでなく、後ろの悪魔たちも同じであろうな。なあルシファーよ。」


 シヴァは笑みを浮かべルシファーに声を掛ける。だがその笑みは決して再会の喜びやルシファーへ送るためのものではない。嘲笑。俺たちの様子を見たシヴァの抑えきれない感情が溢れてきたのだ。

 そんなシヴァにルシファーは問いかける。


「なぜですか!なぜ貴方様が創造神と並んで立っているのですか!」


「ん?ルシファーよ。貴様は阿呆なのか?我は最頭の回るやつだと思っていたのだが気のせいだったようだ。まさか先の我の言葉を聞いて尚、ことの真相を信じないとはな。」


 シヴァはため息を吐くと手を差し出して、ルシファーたちへと向ける。


「どれ、手に入れた力を使ってみるとするか。」


(まずい!)


 俺は咄嗟にルシファーたちへ逃げろと叫ぼうとする。しかし俺が声を発するよりもシヴァがスキルを発動する方が圧倒的に早かった。

 放たれたのは【神槍エデン】だった。ルシファーたちへ放たれたそれは光を放ち、雷を纏い、地を焼く。聞いたこともない轟音が響き、俺の声は掻き消され、ルシファーたちの姿を呑み込む。

 ルシファーたちは防御を試みるが俺には分かる。あの程度の防御では防げないと。

 光は更に強まり、衝撃波が離れていた俺とアスモデウスを吹き飛ばす。


「ルシファー!!!ベルゼブ!!!」


 アスモデウスは悲痛の表情を浮かべルシファーたちの名を叫ぶ。恐らく俺も同じ表情をしているのだろう。

 何とか体勢を立て直し、ルシファーたちがいたはずの場所に目を向ける。上がった煙は風に吹かれ、徐々にその惨状が見えてきた。

 立っている者の姿はない。全員が倒れこみ、傷を負っている。だがルシファーやベルゼブの防御は少なからず威力を押さえ込んだ。その結果、誰も死ぬ事なく【神槍エデン】の一撃を耐え抜いた。しかし、ほとんどの者が気を失い、意識があっても傷を負い動くことも出来ない。


「い、いや……。」


 アスモデウスが呟く。もう誰も失いたくない。しかしこのままではまた誰かが死んでしまうかもしれない。そんな考えがアスモデウスを追い詰める。俺の手を握る彼女の手は震えている。怖いのだ。また仲間を失うことが。

 どうすればいいのか?誰を助ければいいのか?俺もアスモデウスも何も分からず、この現状を見ているしか出来ない。そんな俺たちをシヴァたちは楽しそうに見つめる。


「やはり人間とは面白い。追い詰められた時、その反応は様々。だがどれも滑稽で、愚かで、浅ましい。いや浅ましいという言葉は不適切か。追い詰められた時こそ、其の者の本性が分かるのだからな。そうは思わないか?ブラフマーよ。」


「思う思う。そこの2人も本当は怖がりなんだなあ〜って思ってたところだよ。この程度で恐怖してねー。仲間が死ぬのが怖いってなかなか見ないケースだけど、僕が見てきた中でも中々に滑稽だと思うよ、ハハ。イヅナくんもそう思うよね?って君に聞いても今は答えられないか。相当、混乱してそうだものね。」


 この戦場が静かになったせいだろう。二柱の神たちの会話がよく聞こえた。俺たちの反応を楽しんでいるようだ。だが創造神の言う通り混乱しているのだろう。周りの声が聞こえていても何も言い返せない、何も出来ない。

 創造神は俺の状態を理解し、なお話を続ける。


「そうだな〜。君にはもっと詳しく説明してあげようか。いい?シヴァ。」


「構わん。最も貢献したものには真実を知る権利を与えてもよかろう。詳しく説明してやれ。」


「任せて。という事で、イヅナくん、いや雅風くん。君には説明してあげるよ。」


 創造神は俺の下まで近くと説明を始めた。俺は創造神を見上げ、ただ聞く。


「最初僕たちは気がついたらこと世界にいて自身の能力がわかっていた。これが何故なのかは僕らにもわからない。ただ白いだけの空間が広がっていたんだ。

 僕たち3人は……ああ、実はもう一柱の神がいたんだ。繁栄神“ヴィシュヌ”って言ってね。まあそれは置いといて、そんな僕たちは何をしようか、悩んだ。色々話し合った結果、世界を作ろうってなったんだよ。眺めてれば楽しそうだし、僕もその時はそう思ってた。それで出来たのがこの世界。

 僕たちは楽しんだよ。僕が創造して、ヴィシュヌが繁栄させて、シヴァが破壊し、終わりを告げる。そんな一連の流れを何千年と繰り返してきた。

 でもね、僕とシヴァは飽きたんだ。ヴィシュヌはまだ人間とかを見て楽しんで、命は大切だとか言ってたけど、意味わかんないよ。だってこいつらはただの玩具なんだから。僕たちは最初は戦争を促したりして遊んでだけどそれも飽きた。

 それで考えた。人間たちは感情豊かで面白い玩具だ。そんな彼らが絶望に満ちたときどんな顔をするのか?それが世界規模のものだったらどうなるのだろうと僕たちは考えた。だから僕たちは世界を滅ぼす計画を立てたんだけど、ヴィシュヌは勿論反対したから、殺したよ。だから今は僕とシヴァしかいないってわけ。

 それで僕たちは人間たちを騙し、今回みたいな形で正体バラして世界を滅ぼしたんだけど。その時の表情が凄くて、凄くて、笑えたんだ。僕たちはすっかりハマったよ。何回も世界を滅ぼして、作って、また滅ぼして中々楽しかったな。でもやっぱり飽きてきた。だから僕たちは別の世界の知識を得ようとしたんだ。

 色々なスキルを使っているときに異世界があることは知ったからね。それでどこの世界のものを利用しようかなって考えていたとき、見つけたんだよ。地球という星がある君たちの世界を。

 凄いよね〜。ゲーム?だっけ?あれは面白そうだった。だから出来る限りそれに近いものを用意して世界に適応させた。それが今のスキルとかのシステム。勿論、僕たちにも適応させたよ。そしたら世界が変わったよね〜。面白いくらい変化したよ。それに合わせて種族増やしたりしたらもっと人間関係ぐちゃぐちゃになって、面白かったな〜。

 そしてそれから異世界の人間を呼んでみたらどうだってシヴァが提案してさ。君たちの先代が呼ばれたわけ。彼らも面白かったよ。真実を知った時の顔と言ったら特に天使の誰だっけ?まあいいやあいつに惚れた男なんて涙と鼻水で汚い顔だったよ。ハハ。」


「あれは傑作であったな。」


「でしょ?それで良かったから次に君たちを呼ぶことにした。それに合わせてストーリも考えたんだけど、雅風くんがイレギュラー起こすから大変だったよ。まさかシヴァのところに現れるなんてさ。まあ、結果シヴァの力が上がったり、色々と上手く言ったから良いんだけど。ほら見てよ。」


 創造神は空を指差す。そこには俺が使用していた様に魔法で映像が映し出されていた。

 各大陸の者たちが呆然とした顔で空を見上げ、膝をつく者の姿もある。また俺のよく知る者たちもそこには映っていた。


「セリカ。リア。」


 彼女たちは大きく口を開いている。きっと必死に応援しているのだろう。涙を流しながらも手を合わせ、負けないでとそう伝えようとしている。

 だがシヴァに力を奪われた今、その応援に答えられるだけの力はない。


「健気だね。けどやっぱり滑稽だ。笑えるよ。これで君が殺されたら彼女たちはどんな顔をするのかなあ。想像するだけで楽しくなってきたよ。」


 何度見てきたかも分からない創造神の笑顔。人を見下した様なその瞳に三日月の様なその口は俺を不快にさせてきた。しかし今感じてしまうのは絶望であった。


「それとも君の前で彼女たちを殺そうか?」


「…やめろ。」


「そう言われたら尚更やりたくなるけど…。」


 創造神はシヴァに何か確認を取る。


「やっぱりダメだって。ハハ、残念、残念。」


 創造神たちは俺たちの必死さを見て、楽しんでいる。どうにもならない現状を作り上げ、更に俺たちを堕とそうとする。

 なぜこうなってしまったのだろうか。俺は何か選択を間違えたのだろうか。一体どうすれば良かったのだろうか。


「分からない……。もう何も分からない。」


「イヅナ様…。」


 きっと今俺が抱いているものを絶望と言うのだろう。何かを成せるとも、何かをしようとも、何とかなるとも思えない。頭に浮かぶのは俺が死に、仲間が死に、世界が消える未来だけ。そうか、俺は今絶望しているんだ。

 そう自覚したとき、俺の体から力が抜けた。目から光が消えた。そこには生ける屍となった俺の姿があった。


「思ったよりも早かったなあ。でも仕方ないか。これ以上は楽しめなさそうだし、そろそろやるの?シヴァ。」


「無論だ。」


 シヴァはゆっくりと此方へ向かってくる。しかし、もう少しで俺に触れられる距離になるというところでシヴァの進行は遮られた。


「邪魔だ。どけ。」


「どきません!」


 アスモデウスは俺とシヴァの間に入ると両手を広げ、俺を守る様にそこに立った。よく見るとその手足は震えている。当たり前だ。彼女の実力ではどうしようもない存在が殺気を向けてきているのだから。だがやはり彼女はそこを動かない。だがその行動は無意味なだけだ。


「アスモデウス、もう良い。」


 俺はそう声をかける。だが彼女は首を横に振る。


「よくありません!」


「良いんだ。お前が俺の前に立ったところで結果は変わらない。ならそんなことをするだけ無駄だ。」


 バチィン。


 俺の頰をアスモデウスがビンタをする。とても強く、痛い、頰が赤く染まっていく。だが絶望した俺は特に反応もせず、その勢いに身を任せ、倒れ込んだ。

 アスモデウスは俺の胸ぐらを掴み、持ち上げると顔を近づける。


「本気で言ってるんですか?」


 アスモデウスの声が震えている。そうか、彼女は泣いているんだ。俺は顔を上げ、アスモデウスを見る。大きな瞳から涙が溢れている。怒り、悲しみ、そんな感情を感じとらされる。


「嫌だ!って言ってるじゃないですか!勝手に死のうとしないでくださいよ!生きて欲しいんですよ!好きなんですよ!まだまだ一緒に生きて!話して!楽しんで!そうやってイヅナ様と過ごしたいんですよ!どうして……どうしてそれを諦めないといけないんですか!どうしてこれ以上、私の大切な人を奪われるのを見ていないといけないんですか……。私たちは神の玩具じゃない。私たちは私自身のものなんです。だから選択肢はきっとあるはずなんです。見えていないだけ。だから諦めるなんてことをしてる場合じゃないんですよ。イヅナ様。絶望なんてしないでください。貴方を信じてる人はまだ諦めてません。貴方がいるから。私もそうです。だから……。」


「うるさい。」


「きゃっ!?」


 シヴァが腕を振り払い、アスモデウスを吹き飛ばす。


「アスモデウス!」


 俺は咄嗟に彼女のもとへ近づこうとするが、首根っこを掴まれてしまう。


「ぐっ!」


「イヅナよ。我は考えた。この世界を真に絶望させるにはどうするべきかと。我々が圧倒的力でこの世界を抑え込む。それでも絶望するだろう。だがそれだけでは足りない。ではどうするべきかと。」


 シヴァは俺の向きを変え、目を合わせる。


「希望を奪えば良いのだと気づいた。」


「希望。」


「そうだ。我は貴様に力を与え、旅をさせた。人、国、貴様はさまざまなものを救ってきた。貴様はこの世界にとって1つの、いや最大の希望となり得た。ではだ。その希望が我々に敗北したときどうなるか、分かるか?」


 俺は理解した。彼がなぜここまで回りくどいことをしてきたのか。


「絶望するのだ。」


 今日この日に最高の愉悦に浸るためだったのだ。

 シヴァは俺を上空に投げ捨てる。俺は遥か上空に上がった。


「最初は貴様を殺そうと考えていたが、それでは功績を挙げたというのに些か酷であろう。その為、貴様は封印してやることにした。」


 俺の前に黒い空間が突如として広がる。光さえ感じられないその黒い空間。俺には見覚えがあった。


「まさか。」


「そうだ。我々封じていた封印だ。貴様なら耐えられるのではないのか?」


 俺は落下し、空間へと近づいていく。仲間たちが必死に俺を助け出そうと此方へ近づこうとするがシヴァと創造神に阻まれ、それ以上進むことが出来ない。

 俺は黒い空間へと吸い込まれていく。


「サービスとして、この世界や仲間たちの終わりはその空間からも見えるようにしてやろう。だから安心して封印されるが良い。」


「イヅナ様!」


 アスモデウスの声が聞こえたが、もうその姿は見えない。俺は黒い空間を落下していく。終わりなどない、その空間をただ永遠と落ちていく。光は消え、何も見ることも出来ず、何も感じることも出来ない。俺は創造神とシヴァに負けたのだ。






次回の投稿は未定ですが、どんなに遅くともお盆には一話投稿します。

こんな遅い投稿で申し訳ありませんが、この作品が終わるまでお付き合いいただけると幸いです。

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