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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
143/164

気がついたら壊れてました

短めです。

 

「やっと……終わった。」


 ベルフェルはため息をしながら呟く。戦いを見れば圧倒的なものではあったが普段あまり動かないベルフェルからすれば重労働以外のなにものでもない。疲れが溜まり思わず息が漏れてしまうのも頷けると言うものだ。

 床をじっと見つめるベルフェル。


(冷たそう。)


 正直ベットにダイブしたい気分だ。だが仕方あるまい。ベルフェルは床に大の字で倒れる。そのまま動く事、考える事をやめた。これでようやくだらけられる。そう思ったときだった。


「おい!大丈夫か!」


 歩が倒れたベルフェルを心配し、駆け寄ってきた。それにつられて他の勇者たちもこちらにやってくる。足音がうるさい。


「…うるさい。」


「体力が少ないのか?それとも他に…。」


「うるさい。」


「いや、取り敢えず回復を。横山さん!」


「………。」


 ベルフェルは理解した。何を言っても無駄だと。彼はそう言う人物なのだ。

 だがそれはベルフェルからすれば自身の怠惰を邪魔する有害な存在でしかない。


「君も邪魔するの?天使倒しとけって言ったのに。」


「そんな事より先ずは治療だろ。」


「……もういい。」


 ベルフェルはゆっくりと起き上がり、目の前に立つ歩を睨む。

 歩はベルフェルから敵意を感じとる。だがその理由も分からない歩は謝ろうとする。


「わ、わるい。なんかしちまったか?」


「……最後の忠告。寝る邪魔をしないで。」


 圧倒的強者からの圧力。歩は声を出すことが出来ず、ただ頷くことしか出来ない。だがベルフェルはそれで満足だった。


(今度こそ終わりだ。)


 ベルフェルゆっくりと倒れ、怠惰を全うするのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「本当に寝やがった。」


 歩は目の前で眠るベルフェルを見て呆れる。とは言えそのベルフェルをいつまで眺めていられる状況ではない。今も空を天使の軍勢が埋め尽くしている。幸い、ラジエルたちがやられた事で警戒したのかまだ攻撃してくる様子はない。しかし、その状態がいつまで続くか分からない。


「勝てる…とは言ってたな。」


 歩は先ほどのベルフェルの言葉を思い出す。しかし今の彼を見ては本心で言ったのか、めんどくさがってそう言ったのか分からない。他の勇者たちも同じ心境だ。不安そうにしている仲間を見て、歩は覚悟を決める。


(まあ、こう言う時はまずは俺からだよな。)


「こんなところで空見上げてても仕方ねえ。行くとするか。天使たちのところまで。」


「……でも。」


 歩とは違いなかなか決心の出来ないものが多い。当たり前だ。だが今は歩のような行動力が求められる。


「そうか。じゃあ俺は行くぜ。」


 歩はそう言うと他の者たちに背を向け、一人歩き出す。予想外の行動に驚く勇者たち。颯太が咄嗟に歩の肩を掴む。


「待つんだ!正気か?あの軍勢相手に1人で立ち向かえるわけ無いだろ。」


「いや、【聖剣デュランダル】の『不滅』があればどうにかなるかも知れないぞ。」


 歩は【デュランダル】を掲げる。


「そうかも知れないが…。」


 颯太は歩を止めようと必死だ。だが歩も止まるわけには行かない。

 歩は颯太の目を見て話す。


「……雅風が戦ってるんだ。親友が最前線で。それなのに俺はこんなところでただ眺めてるだけ。俺は嫌だ。力不足かも知れない。けど少しでも力になってやりたいんだ。だから俺は行くぜ。止めれると思うなよ。」


 歩の覚悟は相当なものだ。ここにいる誰が何を言おうと止まることはないだろう。だがそんなことはここにいる全員が知っていた。


「分かってる。だから待てと言ったんだ。」


 勇者たちが武器を構え、前に出る。


「俺たちも同じだ。だから1人で行くな。」


 決心は遅くとも何をするのかは決めていた。大切な仲間を1人で戦わせるようなことはしない。そして歩も勿論それを理解していた。


「そう言ってくれると信じてたぜ!」


 颯太の肩に手を掛け、嬉しそうに歩は言う。

 天使の数は勇者よりも遥かに多い。状況は変わっていない。だが全員の意思を確認した今、彼らは思う。負ける気がしないと。


「頑張って!」


 戦いに参加しない、いや出来ない生徒たちも声援を送ったり、魔法でのステータス補助などできる事をする。準備は整った。


「可能な限りまとまって行動しよう。1人であの数は捌き切れない。それにサポートも出来る。」


 颯太の提案に皆が頷く。異論はない。


「よし!それじゃあ行くぞ!」


「「「おう!!!」」」


 その時だった。突如、爆発がおこり、業火が天使たちを包み込んだ。予想外の事態に戸惑う勇者たち。そんな彼らのもとに2人の人物が降り立つ。


「もう起きてるじゃないですか。」


「寝ててもあの爆音を聞いたら起きるんじゃないかな?まあ、無事なようで何よりだよ。」


 アスモデウスとルネだ。メタトロンたちを撃破した彼女たちは一度勇者たちの様子を確認にきた。どうやら問題は無さそうだと安心する。


「やっぱりイヅナ様の結界のお陰ですね…って結界破られてますね。誰かに壊されましたか?」


 アスモデウスは勇者たちに問う。


「実は…。」


 颯太が代表し、目覚めてから起きたことを説明した。自身たちが創造神に操られたことに気づいたこと。ラジエルたちに襲われたこと。ベルフェルに助けて貰ったこと。


「えっ!?ベルフェルに助けて貰ったんですか?」


 アスモデウスは目を丸くして驚く。比喩ではなく、驚きすぎて開いた目が本当に丸くなっている。その迫力に颯太は頷くことしか出来なかった。


「まさかベルフェルが動くなんて。世の中何があるかわかりませんね。」


「そこまで驚くことなのかい?」


 ルネは作戦会議中などのベルフェルを思い出す。確かにだらけてはいたがそれなりに動いていた気がする。


「いや、ルネが見てたのはベルフェルが作り出した分身ですよ。まあ、分身とは言っても情報を本体に伝える為の人形みたいな物ですけどね。」


「そうなのか。じゃあ彼処で寝てる彼も分身かい?」


「あれは本物です。イヅナ様が瞬間移動させて強引に連れてきましたからこれが終わったら誰もお前の怠惰の邪魔をさせないからこの戦いだけは協力してくれーみたいなこと言ってたような。」


「じゃあそれがあるから協力したんじゃ。」


「そのくらいじゃ動きませんよ。きっと眠る邪魔でもされたんでしょうね。軽い警告とかはしてくれますがそれ以上踏み込むとやばいですからね。ルシファーも勝てるか分からない、と言うか戦いたくないっていうレベルですから。」


 床で寝ているベルフェル。その姿からはアスモデウスの言っていることはとても信じられない。だが天使に襲われた勇者たちが助かっている様子を見ると相当な力を持っているのだろうと予測できる。


「まあ、今はそんなことは後回しです。さて勇者たち。私たちは空を飛んでる羽虫たちをけちょんけちょんにしてきますが、貴方たちはどうしますか?来ないなら私の手柄が増えてイヅナ様にあんなことやこんなことを要求するだけですが。」


 後半言っていることは分からないが、覚悟を決めた勇者たちの中でその質問に対する答えは既にでている。

 勇者たちはそれぞれの顔を見て改めて皆の考えが同じだと理解する。


「「「僕たち(俺たち、私たち)も戦います!」」」


「いい返事ですね。」


「大丈夫なのかい?もしも何かあったら。」


「その時はルネのせいにします。それでは皆さん!いきますよー!!!」


「「「おおおお!!!!」」」


 アスモデウスに続き、勇者たちは戦場へと向かう。大切な仲間のため、故郷へ帰るため。武器を握り、進むのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「僕のせい?」


 勇者たちの背中を見ながらルネはアスモデウスが言っていた言葉を口にする。

 ルネのせい。つまりこの戦いで勇者たちに何かあったとき、責任を問われるということ。

 ルネの返事を聞かず走って行ったところを見ると拒否をさせない為だと思われる。つまり…。


「本当に全部僕のせいにするつもりだね。」


 ルネは風を纏い、勇者たちを追いかける。

 彼らを守らなくては。ルネはそう心に決める。イヅナの仲間を殺させないために。また、自身を守るために。




次回、やっとイヅナの出番です。

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