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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第1章 フィエンド大陸編
14/164

気がついたら人助けしてました

  俺は今、フォートレスの街(壁しか見えないけど)を馬車の上から眺めていた。

  短い間しか滞在しなかったがそれでも、どこか名残惜しく感じる。


  「そんな顔するもんじゃねえぞ。イヅナちゃん。」


  「デイビット…。」


  「2度とあの街に行かねえわけじゃねえだろ?それならまた戻って来ればいい話じゃねえか。」


  「ふっ…。」


  思わず鼻で笑ってしまった。

 

  「そんな当たり前のこと言うなよ。」


  「そんじゃお前もそんな顔すんじゃねえ。」


  「…そうだな。」


  俺はフォートレスの街を眺めるのを止め、王都を目指す。

  しかし、思っていたよりも馬車は暇だった。この後の2日間はこれといったことも起きず、ただただ馬車に揺られていただけだ。

  道は平野をただ走るだけで景色もあまり変わらず、たまに他の馬車とすれ違う程度だ。暗くなると馬車を停めて(デイビットが)夕食の準備をする。夕食を食べ終えるとすぐに就寝だ。デイビットは外で寝て、俺を馬車の中でねむらせてくれたが、結局、俺は“部屋”に入るので正直な話、デイビットに馬車の中で寝て欲しかった。

  そんな生活を続けて今日で3日目。

  デイビットが言うにはこの先、『イフィートの森』に入るらしい。『イフィートの森』は、『イフィート火山』を囲むようにある森で、グリーンウルフやオーガなどが出るため、注意が必要らしい。


  「そろそろ、『イフィートの森』だ。気引き締めてけよ!」


  「おう。任せとけ。」


  「ガーハッハッハ。やる気十分だな。」


  「ああ。一応、冒険者だからな。」


  「知ってるよ。だから・・・、乗せたんだからな。」


  「え?そうなの?」


  初耳だ。


  「ああ、そうだぞ。俺は王都にできるだけ速く向かいたくてな、そのためには海沿いを通って行くよりも『イフィートの森』を抜けて行った方が速い。ただ、そのためにはどうしても護衛が必要になっちまうんだ。そこに丁度良く現れたのがイヅナちゃん。お前だ。」


  なるほど、つまり俺はデイビットにうまく利用されて、報酬なしで護衛をしてるってわけだ。さすが、商人だ。


  「まあ、この調子ならその必要もなさそうだがな。ガーハッハッハッハ!!!」


  そんなに大声で笑って大丈夫なのか心配になった。すると、早速“索敵”に反応があった。


  「デイビット、お前が大声で笑ったから魔物が寄ってきたぞ。」


  「え!?マジか。何でわかんだ?」


  「スキルを使った。」


  「なるほどな。てことは本当に魔物がきてんのか。そりゃやらかしちまったな。ガーハッハッハ。」


  こいつ…。わざとやってるんじゃないだろうか。


  「まあ、まだ距離はあるから大丈夫だ。」


  そんなことを言っていると“索敵”に新たな反応があった。今度は魔物とそれに人もいた。


  「デイビット、この先で人が魔物に襲われてる。」


  「そりゃ、助けてやらねえとな。」


  デイビットは馬車を加速させた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  ーーー姫SIDEーーー

 

  「姫様おさがりください。」

 

  「全員で姫様を守れ〜!!!」


  「「「オォ〜〜!!!」」」


  エスカ王国王女“グレイシア・メル・エスカ”と数人の騎士たち、それに商人の二人を囲むようにして魔物たちはこちらの様子を見ている。

 

  「皆さん無理をしないでください。」


  「姫様。それはできません。我々はこの命にかえても姫様を守りきらなくてはなりません。」


  「皆さん…。」


  グレイシア姫たちを囲んでいる魔物は8匹のグリーンウルフだ。グレーウルフの上位種でステータスも高くさらに風魔法まで使ってくる。

  普通ならこの程度の魔物に遅れをとる王国騎士団ではないが、今ここにいる騎士たちは騎士見習いの者たちだ。

  今日は試験も兼ねてこの『イフィートの森』の調査にきていた。姫は、試験官として王国騎士団長とともにこの調査についてきていた。

  だが、調査の途中に『イフィート火山』にいるはずのフレアドラゴンの群れに遭遇したのだ。騎士団長は自分を囮にし、騎士見習いたちにすぐに姫を連れて逃げるように指示を出した。

  その指示通りにその場から離れた姫と騎士見習いたちだったが、運悪く魔物に追われていた商人たちに巻き込まれてしまったのだ。

  そして、現在に至る…。


  「グオォォォ!!!」


  グリーンウルフたちは風魔法:ウインドカッターを放ってきた。


  「姫様たちを守れ〜!!!」


  騎士見習いたちが盾になるが、


  「ぐぁぁ〜!!!」


  全員ウインドカッターにより吹き飛ばされてしまった。


  「皆さん!!!」


  騎士見習いのもとへ駆け寄ろうとするグレイシア姫だったが、グリーンウルフたちに遮られてしまった。


  「グオォォォ!!!」


  グリーンウルフの爪がグレイシア姫に向けられた。


  「だ、誰か…。」


  姫が自分の死を自覚したそのときだった。

  姫の前にいたグリーンウルフたちの首が一瞬ではねられ、血しぶきをあげたのだ。


  「え?」


  突然のことにグレイシア姫は理解できないでいた。すると、そこにこの世のものとは思えない美しさを持つ銀髪の少女が現れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


  ーーー雅風SIDEーーー


  「ほら急げって早くしないと魔物に殺されちまう!」


  「んなこと言ったってこれが限界だ!」


  俺たちは魔物に襲われている人たちのもとへ向かって馬車を全力で走らせていた。相当追い込まれているらしく、防戦一方の状態だ。


  「ていうか、俺らも魔物につけられてんじゃねえのかよ。そいつら連れてって大丈夫なのか?」


  確かにデイビットの言う通りだ。このままついてこられても邪魔にしかならない。


  「それもそうだな。よし、倒すか。」


  「は?倒すってどうやってやんだよ。わりいが、馬車は止めねえぞ。」


  「ああ、わかってる。わざわざ止めてもらわなくてもここから仕留めてやるよ。」


  そう言って俺は『ヨグ・ソトース』を使い追いかけてきている魔物たちの位置を把握し一体一体に氷魔法:アイスランスを放った。ちゃんと手加減したので魔物を倒し、少し地面をえぐる程度で済んだ。


  「よし、倒したぞ。」


  「……俺もうお前が何やってもおかしくないって思えてきたぜ。」


  信じてもらえないかと思ったが、簡単に信じてもらえたので少し驚いた。まあ、その方がいいのだが。

 

  「あと少しで見えてくるはずだ。」


  「おう!てか、お前が魔法使えば魔物た「ほら!見えたぞ急げ!!!」


  「……。」


  デイビットの視線が痛い。確かに俺もそう思った。しかし、魔法のコントロールが心配で人が近くにいると怖くて撃てなかったのだ。

  俺はそんなことを思いつつ、剣を抜き、魔物たちの横を通る瞬間に馬車から飛び降り剣を振った。

  軽く振ったつもりだったが、人の命がかかっていて少し焦っていたのだろう。グリーンウルフたちの首を全てきり落とし、さらに周りの木々まで切り倒してしまった。

  やはり、まだコントロールが心配だ。


  「とりあえず、どうにかなったな。」


  そんなことをつぶやきながら周りを確認すると目の前に少女がいることに気づいた。少女はグリーンウルフの血を浴びたのか、全身真っ赤になっている。


  「大丈夫か?」


  「は、はい。」


  「そうか。」


  少女は突然の出来事に理解が追いついていないのか、ボーッしている。


  「本当に大丈夫か?」


  「はい……。いえ、大丈夫ではありません!騎士の皆さんが私たちのために、それに騎士団長がフレアドラゴンと戦っています!早く助けに行かないと!」


  「少し落ち着け。」


  俺はそう言って周りを見てみると5人の男が倒れていた。全員怪我はしているが命に別条はないだろう。

 

  「とりあえず騎士たちのほうは大丈夫だ。命に別状はない。」


  「では、騎士団長を助けにいか「だから、落ち着け。」


  この少女は相当パニックになっている。早いうちに騎士団長を助けないとこの少女の精神が持たなそうだ。


  「わかった。俺が騎士団長とやらを助けに行ってやる。」


  「しかし、相手はフレアドラゴンですよ?大丈夫なのですか?」


  「問題ない。」


  「お〜い。大丈夫か〜?」


  もう少し空気を読んで欲しいものだ。まあ、タイミング的には丁度良い。


  「デイビット、ここにいる人たちの介抱を頼む。」


  「おう!任せとけ。で、イヅナちゃんはどこ行くんだ?」


  「ん?ちょっくらフレアドラゴン倒してくる。」


  「フレアドラゴン!?さすがにそいつはイヅナちゃん一人じゃ…………どうにかなりそうだな。」


  話が早くて助かる。


  「ああ。たぶん大丈夫だ。」


  「ということでよろしくな。」


  「おう!あ、そうだ。イヅナちゃん。」


  「何だ?」


  「このタイミングで聴くのはどうかと思うがこれだけ質問させてくれ。」


  本当に何でこのタイミング何だ。本当に空気が読めないないやつだ。


  「何でイヅナちゃんは女なのにそんな男っぽい話し方してんだ?」


  「男だからだ。」


  すでに性別は無いが、一応元男なのでそう答えた。


  「は?」


  このリアクションも見慣れてきたものだ。俺はデイビットたちをそこに残し、こっそりスキルを使い“結界”を張って騎士団長のもとへと向かった。


 


 

 


 


 


 


 


 


 

 


 


 


 


 


 

いつも「気がついたら魔神でした」を読んでいただきありがとうございます。

気まぐれで確認したら総合PVが5000を超えていました。とても嬉しかったです。

今後の目標としては、

ブックマーク数100

総合PV10000

を目指して頑張りたいと思います。

これからも応援よろしくお願いします。

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