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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
137/164

気がついたら同じでした

短いですがキリがいいので投稿します。

 

「はああああ!!!」


「やあああ!!!」


 ルネとガブリエルの剣がぶつかり火花が散る。力はガブリエルが、速さはルネが優っている。しかし、ルネの速さにガブリエルは対応していた。ルネが背後を取ったとき、ガブリエルは双剣を一瞬に持ち替え刃をルネに向けると『伸化』を付与し、ルネに一撃を与えた。回避を試みたが間に合わず、ルネは傷を負う。しかし、ルネもただやられたわけではない。『風装化』で風を纏っていたルネはその風を攻撃へと転じた。風魔法“ウィンドランス”となりガブリエルに一撃を与える。両者、一歩も譲らぬ戦いとなっていた。

 再び、両者の剣がぶつかる。ガブリエルはルネを睨んでいた。


「愚か者も分際で。」


 怒りだけがガブリエルの心を満たしていた。何故、自分が低俗で愚かな者の相手をしなくてはならないのか?何故、互角に渡り合っているのか?上位の存在である私が分からない。だからこそ気にくわない。


「がああああ!!!」


 ガブリエルの双剣は勢いを増す。ルネは何とか対応するもその猛烈な攻撃に隙はなく、攻めに転じることが出来ない。


(これはそろそろまずいかな。)


 ルネは【聖剣カラドボルグ】の能力により何とかガブリエルと戦えている。魔力を犠牲にすることでステータスを高め、渡り合っているのだ。だがルネの魔力は無限ではない。つまり魔力が無くなればこの均衡は崩れる。追い込まれているのは間違いなくルネであった。


(今のままじゃ駄目だ。戦えてはいるけど決定打に欠ける。何か策は…。)


 焦るルネは思考を巡らせる。しかし格上を相手にしているルネが戦闘中に取るべき選択ではなかった。ガブリエルがその隙を見逃すわけがない。


「『救恤之神』!」


「っ!」


 ガブリエルは今までにない加速を見せた。奥の手の1つである“多重付与”を使用したのだ。“多重付与”は同じ効果を何度も付与するというもの。本来付与とは1つの効果を付与してしまえばその効果が解除されるまで付与することは出来ない。また『加速』『超加速』などといった類似した効果を付与した場合、より優れている『超加速』のみが付与される。このように本来は1つの効果については1つの付与しかなされることはない。だがガブリエルの『救恤之神』だけが例外を可能とした。


(『超加速』『超加速』『超加速』『超加速』!)


 ガブリエルの皮膚や翼が裂け、血飛沫をあげる。“多重付与”は上位の存在である彼女にもそれだけの負荷を掛けるものだ。だが目の前の存在に一刻も早く死を与えたい、自身よりも下であることを早く実感したい彼女にとってその程度のことはどうでも良かった。だからこそガブリエルの剣は届いた。【聖剣カラドボルグ】を擦り抜け、ルネの肉に刺さり切り裂く。血が飛び出す。その量は先ほどのガブリエル以上の量だ。


「ぐっ!」


 ルネは手に力を込め、【聖剣カラドボルグ】を切り上げる。ガブリエルの頬を薄く切るがそれだけのこと。何とか距離をとるが状況は最悪だ。


(不味いね。)


 ルネは傷を抑える。しかし、溢れる血は止まらない。

 その様子を見てガブリエルは思わず笑みを浮かべる。やはりこの程度の存在に自分が負けるはずが無いのだと。


「愚か。戦わずに逃げればこのようなことにはならなかったものを。やはり貴様らはその程度のくだらない存在、価値など無い。私たちの幸福を理解させる以外にはな。」


 ガブリエルのその言葉をルネは不思議に思う。


「僕たちに価値がない?」


「そうだ。貴様らは所詮、私たち上位の存在を上位であると認識する為だけの存在。その命に価値などないのだ。」


 ルネは思う。彼女は知らないのだと。


「君の言うことは仕方のないことだと思うよ。」


「何?」


「僕は知ってる。人間にも君のような人がいる事を。誰かを虐め、貶めて優位に立とうとする人。そうやって優越感に浸るもの。またそうしないと自分を認められない人。君も同じじゃないのかな?」


 人間、悪魔、天使。どの種族も変わらない。同じなのだ。だがガブリエルはそのような事は認めたくない。認められない。


「変わらないよ。確かに捉え方によれば上位の存在もあるかもしれない。けどやっぱり根本は同じさ。」


「…黙れ。」


「人間も悪魔もそして天使も。」


「…黙れ。」


「だからきっと君も僕も同じさ。」


「黙れえええ!!!」


 ガブリエルは双剣を構え、再びルネに襲いかかる。まだ魔力はあるものの傷は深い。どう考えても不利だ。だがルネとて馬鹿ではない。そのくらい理解していた。だからこそ先ほどの会話で少しでも何か手を考えようと時間を稼いだのだ。


(今の僕に足りていないのは火力。なら僕が出来る事は…。)


 ルネの体に付いた傷が増えていく。皮を剥ぎ、肉を抉く。痛みがルネを襲う。だが彼は耐えた。こんな痛みを感じるよりも負けることの方が嫌だった。負けることでアスモデウスに迷惑をかけることが、会えなくなることが、そして想いを告げられずに終わることが。

 だが現実は残酷だ。心がどれだけ強くともステータスの差は変わらない。遂にルネの手数は追いつかなくなる。

 ガブリエルは双剣を振り下ろすとその手をその場で止め、剣柄をぶつける。剣柄はルネの鳩尾に突き刺さる。


「がはっ!?」


「貰った。」


 ガブリエルはもう一振りの双剣をルネに向かい振り下ろす。ルネは回避するが間に合わない。剣は間違いなくルネを切り裂くであろう。もしもガブリエルが魔法を使い、攻撃力や防御力のステータスが低ければ勝てたかもしれない。スピードで相手の視覚からはずれ急所を突くことが出来たかもしれない。だがそれら全ては叶わない。何故なら目の前のこの天使、ガブリエルが敵であったから。仮定など何の意味もない。ルネではそのステータスの差を経験を覆すことが出来なかったのだ。人間をやめても、戦い方を身につけても、レベルをあげても、魔力を『犠牲』にしても。


(自分でも嫌になるよ。どれだけ努力しても届かない力があるんだから。だから僕は…。)


 そう。だからルネはこうするしか無かった。この状況を作り、努力で超えられない壁を【聖剣カラドボルグ】の力で無理矢理超えると言う方法しか。


(【聖剣カラドボルグ】!僕の左腕を『犠牲』に力を寄越せ!この天使に勝てるだけの力を!)


 ガブリエルの剣がルネの体に迫る。しかし、右に回避していたルネは真っ二つに裂くことは出来そうにない。だが左肩からその先を切り落とせば彼とて無事ではない。

 ガブリエルは勝ちを確信した。だがルネは諦めていない。

 突如、ルネの左肩から先が消失した。まるで元から何も無かったかのようにその姿を消したのだ。あり得ないことにガブリエルは動揺する。その為彼女はもう1つのことを見逃していた。目の前で自分に負ける筈だった存在が自信を上回る力をその身に宿したことを。

 ルネは残った魔力までも犠牲にし、力を高める。出し惜しみはもうしない。ここで決着をつけるのだ。


「はああああ!!!」


「き、貴様!」


 そこで異変に気付いたガブリエル。咄嗟に双剣で防御に移るがもう遅い。風を纏い、光を放つ【聖剣カラドボルグ】。その異常なまでに高まった力は周囲にまで影響を及ぼす。風が吹き荒れ、放たれた光は木々を燃やす。天からまるで龍のように竜巻が唸り、雷を鳴り響かせる。まるでこの世の終わり。その一撃が放たれる。


「はああああああ!!!!」


「くっ!」


【聖剣カラドボルグ】と双剣が衝突する。風、光に飲まれ双剣が消失するのは一瞬の出来事であった。その勢い止まることなく【聖剣カラドボルグ】は振り下ろされた。放たれたその一撃はガブリエルを飲み込み、尚威力を落とさない。空へと向かい飛び続ける。その様子は夜空に煌めく流れ星だ。

 流れ星の中で声が上がる。ガブリエルだ。高いスタータスを持ち、更に『硬化』『防御力上昇』を“多重付与”をし何とか耐えている。だがいくら強固になろうとも限界は訪れる。


「がぁぁああ!私が!何故、上位の存在である私が!」


 ガブリエルの体は光に飲まれ、風に切り刻まれ、崩れていく。


「い、嫌だ!私はまだ!死にたくない!助けて!創造神様!いや!いや!いやあああぁぁぁぁ……。」


 死にたくない。その感情は当たり前であった。生きとし生けるもの全てが一度は抱くである感情。それは天使であれど人間であれど悪魔あれど変わらない。皮肉にもガブリエルが最後に抱いたものそれは彼女が見下していた人間たちと何ら変わらない当たり前の感情であった。








先日とある方から私の作品がコピペされているとの報告を受け確認したところ。本当にされていました。まさかこんなことをされるとは思っていませんでした。運営に報告し、削除していただきました。

今後このような作品を見つけましたらお手数ですがご報告お願いいたします。

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