表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
134/164

気がついたら騎士でした

先週は投稿できず、申し訳ございません。

今回は長めです。

メタトロンの発言を一部修正しました。

 目の前に広がる炎にアスモデウスの視線は遮られる。アスモデウスは咄嗟に体を翻し、その場を離れる。直後、光を放つ剣が空を切る。


「流石に慣れたか。」


「この程度の攻撃でへばる私じゃありませんからねっ!」


【色欲之神】を使用し、メタトロンへ向け無数の火弾を放ち自らも応戦しようと前へ踏み込む。


「遅い。」


 メタトロンの手元がブレる。それと同時に飛来していた火弾は全て爆ぜた。無論、この程度の攻撃でダメージを与えられると考えるほどアスモデウスも馬鹿ではない。しかし、一瞬で対処されるとは考えていなかった。だが少しは時間を稼げた。

 アスモデウスはメタトロンの上を取り、足を叩き込む。メタトロンは右手を出し、その足を掴もうとするが対象をずらされる。


「くっ!」


「お返しです。」


 防御は間に合わずメタトロンは急降下する。畳み掛けるなら今しかないとアスモデウスは追撃に移る。

 火、氷が空を埋め尽くし、地面が隆起する。竜巻が雷を伴って木々をへし折る。その光景は世界の終焉を思わせるものであった。

 だがこれだけの魔法を持ってしてもメタトロンは表情一つ変えない。翼を広げ、勢いを殺し空中で停止する。そこへ他の攻撃より速く炎が飛来するが先ほどのようにメタトロンに当たることなく消滅する。


(やはりそうですか。ですが2度も同じ手には引っかからないですよ。)


 アスモデウスは更に魔法を唱える。それは『空間魔法』。空間に干渉するその魔法はあらゆる事を可能とする。空間を固定し、見えない壁を作ることや極まれば空間と空間の距離を無視することつまりは『瞬間移動』を可能とする。しかし、『瞬間移動』には移動先の正確なイメージや座標が必要であり、瞬時に発動することは難しい。

 また移動距離や対象の重さなどに比例して消費魔力が上がる。その為、使われるのは個人の移動や回避が主だ。だからこそメタトロンの不意をつくことが出来た。彼もまさか自身のそれも1メートルもない超短距離に魔法を全て転移させるとは想像もしなかった。


「なっ!」


 炎、水、土、風、雷。その全てがメタトロンを襲う。魔法は消えることなく、直撃したのだ。だがメタトロンから少し離れた途端、魔法は消える。


「やっぱり指定した空間にしか発動しないみたいですね。」


 アスモデウスは初めてこのスキルを目にしたとき、自身の数メートル先にあった炎たちが砂のようになり消えた。このとき予想外の出来事に焦りを覚えたアスモデウスであったがこのとき、後々から考えればこのとき相手のスキルについて1つの情報を得ていたのだ。それはスキルの対象が個体ではなく範囲、座標と言うことだ。だからこそ自身よりも前にあり、スキルの対象範囲内に入った火弾は消えた。ただ手に触れた物などには範囲など関係なく、発動できるなどの例外もある。

 また、強力なスキル故の弱点もあった。それはスキルがメタトロン自身にも影響を与えると言うことだ。証拠に彼の手に火弾と同じ砂のような現象が見られた。しかし、耐性はあるようでアスモデウス程の被害はない。だが流石にスキルの範囲内に居座れるほどのものでもない。アスモデウスはその隙を突いた。

 あれだけの魔法を放てば回避、または剣での迎撃は難しい。ならば必ずスキルを使う。メタトロンはアスモデウスがスキルを理解できていないと考えている。2度目とは言え見抜くことは出来ないと慢心していた。その結果、メタトロンはアスモデウスの攻撃を回避することは出来なかった。


「まだ倒してはいないでしょうが、死んでは無さそうですね。今の内に腕を直して、おまけも上げましょう。」


 アスモデウスは腕を『再生魔法』で治しながら、巨大な火球を生成すると先ほどと同じように『瞬間移動』をさせる。しかし転移した筈の炎は真っ二つに裂けた。その間から盾と剣を構える無傷のメタトロンの姿があった。


「無傷…。はあ〜、いったい何したんですか。」


 アスモデウスはメタトロンの耐久力に呆れる。


「驚いた。まさか私をあそこまで追い詰めるとわな。」


「嫌味ですか?」


「いや、賞賛だ。おかげで【レイジェク】の力を使わざるを得なかった。」


「忌々しい盾ですね。」


 アスモデウスは盾を睨む。あれさえなければ勝負がついていたかもしれないと思うと苛立ちを覚える。


(面倒ですね。やっぱり使うしかないですかね。イヅナ様のサポートに回るまで使いたくはなかったんですけどね。)


 アスモデウスは肩の力を抜く。メタトロンは諦めたとは思わない。むしろ警戒心を高めた。1度でも自身を追い詰めた相手を軽視しない。


「何のつもりだ?」


「いえ、少し落ち込んでいるだけですよ。」


「落ち込む?」


「そうです。本当ならこれを使わずに貴方を倒してイヅナ様の下に行きたかったんですよ。なのに私が弱いばかりに使わざるを得ない。」


「ほう。」


 メタトロンの剣を持つ手に力がこもる。


「私がその発動を見逃すと?」


「見逃さないでしょうが、間に合いません。」


「そうであるか。ならば……。」


 メタトロンは自身の最高速でアスモデウスに迫る。彼女の視線から速度にはついてこれていないことがわかる。振り下ろされた剣は首元をに迫る。スキルを発動素ぶりもない。


(取った。)


 ズブリ。


 体を貫かれる感覚。それを感じたのはアスモデウスではなく、メタトロンであった。


「ほら間に合わないじゃないですか。」


「がはっ!?」


 吐血により服が赤く染まる。何が起こったのか理解出来なかったのはメタトロンだった。ただ1つ分かっていることがあるとすれば貫かれたということだけ。視線を下げる。そこには黒い荊のような形をした槍があった。その槍がメタトロンを貫いていた。


「くっ!」


 メタトロンはその槍に触れる。恐らく、例のスキルを使おうとしたのだろう。だが槍に変化は見られない。メタトロンは剣を投げ付ける。アスモデウスが回避すると同時に強引に槍を体から引き抜き、距離をとった。

 先程までそんな物はなかった。にも関わらず槍は攻撃を防ぐどころか、メタトロンにダメージを与えた。更にはスキルを無効化した。異常であり、異様であり、異形の槍。


「な、何だ、その槍は。」


 傷を抑え、絞り出した言葉。メタトロンのその辛そうな表情、自身の槍についての質問にアスモデウスは気分を良くし、笑顔で答える。


「ふっふっふ、仕方ないですね。聞きたいですか?聞きたいですよね?ならば教えて上げましょう。私がイヅナ様から頂いたこの槍を。その名は【邪神槍アサル】!私の為に!私だけの為に!イヅナ様が作ってくれた愛の証です!」


【邪神槍アサル】。その名の通り邪神であるイヅナが作成したものだ。荊が巻きつき、体動するその様はまさに呪われし武器。とても愛の証には見えない。実際、本来は創造神がどのような攻撃をしてこようとまた防御をしようとも対処出来るよう様々な武器を作り、その1つがこの【邪神槍アサル】なのだが、形状が気に入ったとアスモデウスがイヅナに私にくれないかと頼んだのだ。イヅナもいくつもの武器がすでに仕上がっており、創造神をなめているわけでは無いが貯蔵は充分であると思っていた。その為、そこまで気に入ったのならとアスモデウスに渡したわけだ。


「魔神が作ったものなのだな。ならばその性能にも納得がいくというもの。」


(正確には邪神ですけどね。まあ、細かいことは良いでしょう。)


「さあ、反撃ですよ!」


「何、貴様の負けは変わらない。」


「私は負けませんよっと!」


 アスモデウスは【邪神槍アサル】を放つ。その威力を身をもって知ったメタトロンは回避に移るが、【邪神槍アサル】は追尾する。


(能力は分かっていても対処に困るとは厄介なスキルだ。)


 メタトロンは光魔法を放ち、迎撃を試みるが【邪神槍アサル】の速度が落ちることはない。追いつかれることは無いが戦いにくいことには変わりない。何よりアスモデウスの動きにも目を向けていなければならない。メタトロンは槍に光弾を放ちながらアスモデウスに目を向ける。するとそこには【邪神槍アサル・・・・・・】を手にしたアスモデウスの姿があった。メタトロンは後方を確認する。そこには先程と同様に自身を追尾する【邪神槍アサル】がある。ではいったい彼女が持っている槍は何なのか?


「もう1つ追加です!」


 再び、【邪神槍アサル】が放たれた。その気配は今、メタトロンを追っているものと変わらない。間違いなく本物である。

【邪神槍アサル】の力は想い、思いにある。【邪神槍アサル】はここにある。その思いがあれば【邪神槍アサル】はそこに現れる。貫くと思えば敵を貫く。思えば消えることはなく、その数を増やす。その槍をイヅナへの想いが強く、そんな彼から貰った物への想いも強いアスモデウスが使用しているのだから槍は真の力を発揮できている。

 正面、後方から挟む形で槍が迫る。一か八かメタトロンはギリギリの回避で槍同士の衝突を狙うが、【色欲之神】が使用されている以上、そのようなことにはならない。槍と槍は互いを躱し、メタトロンを追いかける。


「仕方ありません。」


 メタトロンはその場に停止し、身構える。


「【純潔之神】。」


 メタトロンはマスタースキルを発動する。しかし、槍が止まることなく、彼の羽に突き刺さる。だがそれはおかしなことであった。


「何かしましたね。」


 アスモデウスはメタトロンを見てそう呟く。アスモデウスは【色欲之神】を使い、メタトロンの頭部、胸部を狙っていた。しかし、実際に槍が命中したのは羽。その理由は間違いなく【純潔之神】なのだろう。


「あれが先程から使っていたスキルですか。」


【純潔之神】。その能力は分解、分散の掌握。水を分解し水素と酸素にすることや同じように人体を原子、元素レベルまで分解することも可能である。

 初めにアスモデウスの視界を奪った炎は彼女の周囲にあった無数の水球を分解しすることでもともとあった火球と反応して起こったのだ。また、彼女の腕が消されたのは分解された為であった。

 では今、メタトロンは【純潔之神】を何の為に発動したのか。それは魔力の分散である。魔力は集まることにより魔法などとして形を持ち、効力を発揮する。魔力が大きければ大きいほど威力は上がり、少なければ弱まり、一定量を切れば形を失う。今回、アスモデウスが発動した【色欲之神】には魔力が消費される。考えれば当たり前のことだ。魔力を消費することの1番の例である魔法もスキルであり、【色欲之神】もマスタースキルであり、スキルなのだから。メタトロンはそこを利用した。魔力を分散させることで狙いを晒したのだ。とは言え、マスタースキル相手ではそこまで効力を発揮することは出来ず、少しズラす程度しか出来なかった。だがそれで十分であった。

 厄介な槍が出た時点でこれ以上勝負を長引かせる気はなかった。次で終わらせる。


「【レイジェク】。」


 メタトロンは盾を掲げる。盾は光を放ち、周囲を照らす。アスモデウスはまたこの隙をついてくるのかと警戒するが、どうやら違うらしい。光が収まるとそこにはメタトロンがいた。ただその数が尋常ではない。

【レイジェク】の能力は2つ。1日一度だけ使うことのできる『パーフェクトシールド』。これは先程の魔法に呑み込まれそうになった際に使用した。

 そしてもう1つは『アーミーコープス』。自身を軍団にする能力だ。この力は莫大な魔力を引き換えに、自身を軍団となる数に分身させること。全員が本物であり、勿論、スキルも使うことが出来る。つまり…。


「「「私たちの誰かが其方に触れればそれで終わりだ。」」」


「面倒くさいですね。まあ、いいでしょう。」


 アスモデウスは【邪神槍アサル】を宙に浮かせる。1つ、2つ、100、200。みるみるとその数を増やしていく。黒い荊の中、赤く染まる一点の薔薇アスモデウス。メタトロンはやはり殺すのは惜しいと考える。しかし、そんなことを言ってられる相手では無い。


「私の想いは貴方たちには負けませんよ。」


「では勝負といこう。」


 メタトロンたちは一斉に、アスモデウス目掛け飛来する。それに向け、【邪神槍アサル】は放たれる。次々とメタトロンたちを捉える【邪神槍アサル】。頭を貫き、確実に絶命させていく。しかし、それでもメタトロンたちは止まらない。いや、止められない。1人落とそうとも別のものが次から次へとやって来る。


「貰っ…。」


「って無いですよ!


 目の前にまで迫ったメタトロンの頭部を【邪神槍アサル】が貫く。


(まだ!まだです!私のイヅナ様への想いはこんなもんじゃありません!)


 荊がその数を増やす。


(もっと眺めたい。もっと一緒にいたい。もっと触れたい、抱きしめたい。そしてもっと…愛して欲しい!)


 槍の速度が上がり、メタトロンたちの数が急激に減っていく。


「「「私は負けるわけにはいかないのだぁぁああああ!!!」」」


 メタトロンたちも魔力を高める。魔力の高まりメタトロンの体は光を放つ。アスモデウスの想いは強く、自身を高める。【邪神槍アサル】の荊はその数を増やし、まるで森のように広がる。

 光と荊はぶつかり合い、魔力はスパークとなりぶつかり合う。メタトロンが距離を詰め、アスモデウスの右耳を分解する。荊がメタトロンに巻きつき、その体を切り裂き、貫く。


「はあああ!!!」


「うおおおお!!!」


 メタトロンの最後の1人が荊をくぐり抜け、剣を振り下ろす。アスモデウスは右手に現れた【邪神槍アサル】を放つ。剣が先か、槍が先か。音速をも超える速さの世界。その中で一撃を届かせたのは。


「私が……まけ…るのか?」


「そうです!吹っ飛んで下さい!」


 アスモデウスだった。メタトロンの腹を【邪神槍アサル】が突き刺さる。そのまま、メタトロンごと【邪神槍アサル】を放つ。全力で放たれた槍がイヅナの貼った結界に届くまでは一瞬のことだあった。結界に槍は刺さり、メタトロンを縫い付けた。


「消えてください。」


「創造神さ……。」


 轟音。

 辺りを赤く照らす巨大な爆発。【邪神槍アサル】を中心に起きたものだ。

 アスモデウスは煙の上がる結界を睨む。しかし、あれだけの爆発を魔力がほぼ無い状態で防ぐことは不可能だ。アスモデウスは肩の力を抜く。


「やっと勝ちました。あの人強すぎです。でもこれでイヅナ様に褒めてもらえますね。ご褒美にキスとか貰えませんかね?」


 1人妄想に浸り、キャッキャッとするアスモデウスだがその体はボロボロであった。魔力はそこを切り、『再生魔法』をする余裕も無い。


「イヅナ様のサポートに回りたいですけど、流石に少し休まないとやばいですね。」


 アスモデウスはイヅナが結界を張ったカラドボルグ魔法学園の校舎に戻ろうとする。しかし…。


「どこへ行く?」


 最も聞きたくなかった声だった。

 アスモデウスは振り返る。そこには天使がいた。長く伸びた白銀の髪に3対の純白の翼。まるで芸術品のような完成された美しさは本来、人に感動などを与える。だが今、アスモデウスに与えたものは絶望であった。


「なっ……。」


「何故か?」


 メタトロンは距離を詰め、アスモデウスを殴り飛ばす。何とか両腕にガードには成功したが威力まで消すことは出来ない。何とか態勢を立て直し、メタトロンを睨む。


「そうであるな。最後に教えよう。私が所持していた武器。その名を【クリューサーオール】と言う。この剣は大した力を持っていない。他の創造神様の武器と比べれば攻撃力などには乏しい。しかし、1つだけ特別な能力がある。それは『死を無かったことにする』というものだ。」


「まさか…。」


「その通り。私は死んだ。だが死は無かったことにされた。剣は能力を発揮し、壊れてしまったが、魔力、体力を万全の状態にまで戻してくれたようだ。」


「………。」


 万全の状態のメタトロン。魔力、体力が底を尽きているアスモデウス。勝負は目に見えていた。

 メタトロンは一瞬で距離を詰め、アスモデウスを殴る。武器は先程の壊れてしまいもう拳以外に使うものがないのだ。


「かはっ!」


 右、上、下。あらゆる方向から殴られる。頭がグラグラする。上下が分からない。口の中が血の味でいっぱいだ。


(私、死んじゃいますね。)


 絶望的な状況だと言うのにアスモデウスは冷静だった。それは諦めてしまったからなのか、何故なのか分からない。だがそのお陰で最近のことをよく思い出せた。


(イヅナ様と出会えて変われました。最初はふざけて恋人だの何だの言ってましたが、一緒にいるうちに楽しくて、嬉しくて、笑顔が見たくなって、もっと一緒にいたくなって好きになってました。)


 イヅナの優しさが好き。普段はそっけない癖にしっかりと自分のことを考えてくれる、そんな所が。


(セリカたちに嫉妬もしちゃいました。まあそのお陰でイヅナ様に本心が言えて、イヅナ様の気持ちも分かりました。)


 イヅナの気持ちを知れて嬉しかった。


(ルシファーやベルゼブ。悪魔のみんなは私が死んだら悲しむんですかね?)


 ろくなやつらはいないがみんな大切な仲間だ。


(それから大事な弟子がいましたね。)


 アスモデウスはルネを思い浮かべる。


(最初はナンパしてきましたね。でも後から聞けば人生初めてのナンパで何であんなことをしたのか分からないとか言いますし、勇者と戦わせるための特訓とかして途中で逃げるかと思ってたらまさかこんな所まで付いてくるとは思いませんでした。)


 誰よりも努力家で、必死で。揶揄い甲斐があって、面白い。そんなルネを見ているのはとても楽しかった。


(イヅナ様、ルネ、悪魔のみんな。)


 メタトロンはアスモデウスの胸ぐらを掴む。


「これで終わりだ。最後に言い残すことはあるか?」


「……まだ……死にま…せんよー……だ。」


「そうか。」


 メタトロンはアスモデウスを宙に投げ、魔力を集める。


「死ね。」


 閃光がアスモデウスに向かう。光が近づくに連れ、視界は白く染まっていく。


(死にたくない。)


 アスモデウスの頬から涙が溢れる。


(みんなに会いたい。)


 アスモデウスは目を瞑る。もう終わる。そう思ってから記憶が次々と蘇ってきた。今もそれは止まらない。楽しかった記憶、悲しかった記憶、どうでもいい記憶まで蘇ってくる。

 アスモデウスは思った。こんなに記憶を思い出せるとは死が迫ると時の流れが遅く感じるのは本当だったんだと。だがそれにしても遅い。けれども光が迫っているのではと思うと目を開けなかった。そんなアスモデウスに誰かが言った。


「ようやく僕も守ることが出来たかな?」


 よく聞いた声、もう一度聞きたいと思っていた声。アスモデウスはゆっくりと目を開ける。


「ルネ?」


「うん、そうだよ。アスモデウスさん、間に合って良かった。」


 そこには騎士がいた。アスモデウスを想い、この戦場まで追いかけてきた、ルネと言う名の騎士が。


































ルネ参上!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ