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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
132/164

気がついたら待たされてました

今日も投稿です。

ーーーレヴィSIDEーーー



「くっ!」


「まだ逃げるの?」


 レヴィたちは背を向け逃げるラグエルに向け、魔力弾を撃ち込む。幾多もの方向から飛来する攻撃。この程度であればラグエルは対処可能だ。しかし、回避を試みるラグエルに突然加速した魔力弾はそれを許さない。


「かはっ…。」


 背中に痛みが走る。

 今の戦闘を見ているものがいれば全員がレヴィが優勢であり、勝利すると考えるであろう。逃げ惑い、傷つき血を流す少女を誰が勝てると思うだろうか。負けを確信し、逃げているように見える少女。しかし、彼女は諦めてなどいなかった。以前、勝利の可能性を見出していた。


(あと少し。)


 ラグエルの所持するマスタースキル『忍耐之神』の能力は蓄積。力を溜め、強力な一撃を放つものだ。先程からレヴィの攻撃を受け、ダメージを負ってはいるがそれは彼女の策であった。自身の魔力だけを蓄積するだけではレヴィを消滅させることは難しいと考えたラグエルはそのレヴィの力さえも利用する。

 既に自身の中には膨大な魔力が蓄えられており、いかにレヴィと言えど死は免れない。だが強力な攻撃であろうと避けられては何の意味もない。今、ラグエルは攻撃を必ず命中させるそのタイミングを計っているのだ。

 突如、レヴィ達の攻撃が止む。レヴィ達は1つの場所に集まると1人のレヴィへと戻った。


「……もう奪い尽くしたわね。じゃあ、後は殺すだけ。」


 レヴィを中心とし、重力の渦が発生した。周囲の木々、大地を吸い込み、巨大なハリケーンを形成していく。


「フィナーレね。」


 ラグエルを押さえ込むようにして超重力地帯が生まれた。手、膝をつき、何とか耐えようとするがその手や膝は地面へと沈んでいく。身動きの取れないラグエルに重力の渦はゆっくりと近づいて行く。

 このときレヴィは自身の勝利を確信していた。この程度で這いつくばる天使など相手ではなかったのだと。心に余裕が生じる。そして、それをラグエルは見逃さなかった。

 ラグエルの姿が消える。それと同時に背後に感じる巨大な魔力。まるで先程までのレヴィの攻撃とラグエルの魔力が混ざったような不思議な気配だ。レヴィは気づく、あれは自身を殺せる攻撃だと。そして、その攻撃を放とうとしているものを見て心が更に焦る。


「『忍耐之神』!くらえ、悪魔!」


 放たれた魔力は閃光となり重力の渦を貫く。その勢いはとどまること無くイヅナの結界に直撃し、スパークが発生した。だが邪神であるイヅナの貼った結界がその程度で破壊されるわけもなく、ラグエルの放った一撃は消滅した。


「何という耐久力。しかし、あの悪魔は倒した。」


 閃光に呑まれ、消えていくのを自らの目で確認していた。ラグエルは勝利したのだ。


「予想以上に苦労した。魔力もあまり残ってはいない。一先ずは誰かとと合流することを…。」


「じゃあ、私と合流しましょうか。」


 ラグエルは咄嗟にその場から飛びのく。しかし、先程の一撃で疲労したラグエルの動きは遅くなっていた。その胸は容赦なく貫かれた。


 ズブリ。


「がはっ……。」


 大量の血が口から溢れる。肺や気管に血が侵入し、上手く呼吸ができない。ラグエルは自身の胸を貫いた腕を辿り、その相手の目を見る。


「な……かはっ…。」


「何故?確かに貴方は私を消したけれどもう1人の私は無事だった。それだけのこと。」


 レヴィはラグエルからゆっくりと腕を引き抜く。その体は後ろに倒れた。

 胸に空いた穴。ラグエルの被害はこれだけではない。腕から放たれた魔力に体内は掻き混ぜられ、内臓は損傷し、脳までもがダメージを受けていた。如何に高いステータスを持ち、マスタースキルを所持しているとは言え、こうなってしまっては助からない。


「ありがとう。また私は変われた。でもまだ足りない。そうまだ私よりも優れたものがこの世界にはあるのだもの。」


 レヴィはそう言い残し、その場を後にした。

 ラグエルは天を見上げている。しかし、その目には何も映っていない。何も感じない。ラグエルは理解した。死ぬのだと。

 それと同時に自身の記憶が蘇る。走馬灯だ。天使として、創造神の為に働いた自分。天使の1人として精一杯働いた。最初は何もできない子供だった。そう、ただの子供。


(そうだ……私は。)


 ラグエルの目から光が消える。何かを思い出した彼女。しかし、それを誰かが知ることは無かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーアスモデウスSIDEーーー



「ふっふっふっ。ようやく私の出番です!」


「何を突然。」


 創造神とイヅナとの戦い。その余波は凄まじく、地はめくれ、雲は吹き飛び、嵐のような風が吹き荒れ、大きな被害が周囲に出ていた。今、アスモデウスがいる場所、その戦いの場から近いその場所では特に被害は大きい。だがそれでもそこを動かない。なぜならイヅナの勇姿を最も近くで見ることのできる場所であるから。


「これはセリカには不可能なこと。つまり、私しか出来ないこと。私だけがイヅナ様の姿をまなこに焼き付けることができる。流石は恋人です。おっ!行け!イヅナ様!創造神なんかぶっ殺してくださ〜い!」


「もう良いか?」


「もう少し!もう少しだけお待ちを!」


 アスモデウスに話しかけ、待たされているこの天使はメタトロン。腰まで伸ばした白銀の髪に3対の大きな羽を持つ男である。マスタースキル『純潔之神』を所持し、その実力は天使たちの中でも1、2を争う程と言われている。

 そんな彼だが何故か背を向ける敵を前にして何もすることなく待たされている。

 メタトロンが創造神の戦いに邪魔者が現れないか上空で見張っていると1人の悪魔が現れた。赤い髪に瞳。引き締まった体は見るものを虜にする。美しい悪魔、アスモデウスだった。しかし悪魔である以上、敵は敵だ。メタトロンは直ぐに迎撃に移ろうとした。だがそのとき、メタトロンに待ったの声がかかる。


「貴方は良いんですか?今、イヅナ様と創造神の戦いが目の前で始まってるんですよ!その勇姿をこの目に焼き付けないでどうするんですか?恋人…あ、貴方は配下でしたね。とにかく配下としてそのカッコいい!それはもうかっこいい姿を見ないでどうするんですか!今、ですよ!今しかありません!さあ、行きましょう!今すぐ!見に!」


「そ、そうかもしれないな。」


 メタトロンはアスモデウスの熱意?に負け、現在の状況になった。冷静に考えてみれば先ほどアスモデウスの言葉を聞く必要など無かったのではと思いつつ、一度、了承してしまったことを無視し、背後から攻撃するのは如何なものかとアスモデウスが満足するのを待っている。


「惜しい!後少しだと思うんですけどね。あ!危ないじゃないですか!全く創造神の奴は。イヅナ様の顔に傷でも付いたらどう責任を取るつもりですか。」


「も、もうそろそろ良いのではないか?」


「……え?何ですか?」


 アスモデウスは耳を傾け、メタトロンの話を聞こうとする。しかし、その視線はイヅナに向いている。


「いや、だからもうそろそろ……。」


「あ!今のはかっこいいです!」


「き、聞いて……。」


「やっぱり【ダーインスレイブ】を持った姿はぐっとくるものがありますね。」


「頼むから話を……。」


「おおお!そのまま行っちゃってください!頑張ってください、イヅナ様!」


「………。」


 メタトロンは理解した。何を言おうと無駄であると。ならば仕方ない。この方法だけはとりたくは無かったが。

 メタトロンは光を纏った剣、盾を構える。メタトロンは3対6枚の羽を使うことで高速移動、機動を可能とする。その速さは天使1であると自負している。


(背後から斬りこめばそれで終わり。)


 メタトロンの体がぶれ、光がアスモデウスに向かい1つの線を引き、進む。交わすことのできない、神速の攻撃。メタトロンの攻撃はアスモデウスを捉える筈だった。


「何するんですか。」


 だがそこには無傷のアスモデウスがいた。メタトロンは驚愕する。まさか、自身の攻撃を回避したのかと。しかし、アスモデウスに動いた形跡はない。だとすればメタトロンは自身の剣を見る。


(ズラされたのか?)


 自身が振り下ろした剣。しかし、その軌道は自身の思い描いていたそれではない。


「無視するとはいい度胸ですねっ!」


 アスモデウスの拳がメタトロンに迫る。


(この程度、盾、いや、違う。)


 盾での防御を考えたメタトロンはその考えを捨て、アスモデウスから距離を取る。


「む?躱しますか。」


 アスモデウスの拳は虚空を殴る。

 メタトロンは考察する。先程の自身の攻撃を外させた力。認識をずらさせたのか、何をしたのかは理解できなかったが、それでもメタトロンが攻撃を外してしまった。であれば同じ力を使い、防御をずらさせることも可能なのではと考え、メタトロンは防御ではなく回避を選択した。


「厄介な力であるな。」


「厄介なスピードです。それにどうせマスタースキルも持ってるんでしょうし。はあ〜。私はただイヅナ様を見たいだけなのに。でも…。」


 アスモデウスの体から魔力が溢れる。


「戦うと言うのなら全力です。イヅナ様たちにカッコ悪い所は見せられませんからね。」


「そうであるか。私も本気で行かせてもらう。」


 アスモデウスとメタトロンの戦いが始まる。




久しぶりのアスモデウス。

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