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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
129/164

気がついたら強くなれませんでした

書きあがったので出します。日曜日にも投稿するのでご安心を

 ーーー天使“ガブリエル”SIDEーーー



「うおおおお!!!」


 私、天使“ガブリエル”は向かってくる悪魔を見て思う。醜いと。

 肥大化した筋肉、目つきの悪い目、汚い肌、手入れなされていない髪。その見た目には吐き気さえ覚える。

 完成することの無い欠陥品。何故、我らが神はこの様な者たちを作ったのだろうか。


「くらえ!」


 汚い拳が再び近く。

 先程と同様スキルを使用する。顔の目の前を拳が通過した。そのとき嗅いでしまった臭いに思わず嘔吐しそうになる。


「うえ…。やはり寄るな。」


「ぐっ!」


 悪魔は急加速をし、遥か上空へと打ち上がる。


「確実に殺す。あの様なものは存在してはいけない。」


 私の側を悪魔が通過し地面に落下する。だが、その勢いは留まることを知らない。体を押しつぶす様な重圧、地についたはずの体はが沈みむ。


「貴様の様な者はそこで朽ちればよい。」


「な、何だと!」


 悪魔は何とか立ち上がり、威勢良く声を上げる。しかし、もう遅い。


「なっ! これは。」


 ようやく気づいた。自身の体が腐っていることに。

 私の所持するマスタースキルは『救恤之神』。その効果は付与の掌握。あらゆる効果を自身や相手に付与することが出来る。先程、攻撃が当たらなかったのは腕にのみ『遅化』や『重化』を付与し、軌道をずらしたのだ。

 今、目の前の悪魔に付与した効果は『腐敗』。体を腐らせていくものだ。しかし、この程度とは思わなかった。いくら醜悪で、汚らわしく、臭い者とはいえステータスだけなら互角程度である。

 私は戦う前にステータスを確認した。エクストラスキルでの確認であった為、見えぬスキルがあったがマスタースキルだろう。だとすれば同じ土俵には立てていた。

 しかし、目の前の悪魔は。高い攻撃力でゴリ押しをしてきた。そんな物が私に当たるわけもない。また、低い精神力が問題だ。『救恤之神』が如何にマスタースキルとは言え同じマスタースキルを所持する相手に直接付与を施すなど余程集中しない限り出来ることではない。だが、目の前の悪魔は余りに精神力が低かった。圧倒的な実力差があるときを例外とすれば、付与を施すときその付与を受けるか拒絶できるかはその者の精神に依存する。そして、この悪魔にはそれ程の精神力は無かった。

 恐らく性格が原因なのだろう。私に猪突猛進してくる様子をみて分かった。何事も力でどうにかなる。条件、環境など関係ない。その考えが付与を受け付けてしまう。


「弱い。何も無い。何故、こんな存在が…。」


 私は気づいた。


「そうか。そう言う事か。」


 創造神様のお考えがようやく分かった。優劣をつけたかったのか。この様な者たちを見せる事で我々が選ばれた存在であるとお教えになりたかったのか。


「醜い悪魔も使い様、そう言う事ですか。」


 理解した。ならばそのお考えに従おう。この悪魔よりも我々は優れている。殺して確信しよう。


「死ね。」


 こんな者『死』を付与すれば終わる。

 そう思い悪魔に付与を行おうとした。だがおかしな事が起きた。私の前で苦しんでいた筈の悪魔がいない。もしやもう既に死んで…。


「どこ見てんだ?」


 背後から声。まずっ……!

 次の瞬間、世界が回る。いや、私が回ったのだ。

 地面まで叩き落とされ、右腕が折れた。あの醜い悪魔は私をやらしい笑みを浮かべながら見下している。勝てる。そう言った顔だ。

 烏滸がましい。自身に勝機がある。本気で思っているのか?


「私に勝てる。そんな者はこの世界に3人しかいません。」


 見せてあげよう。私の力を。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーマモンSIDEーーー



 未だ敵のスキルの正体は掴めず、攻撃に対処できない。こちらからの攻撃も届かない。そんな状況の中、マモンが取った行動単純だった。最力を付ければ良い。マモンはスキルの届く範囲内にいる天使たちから力を奪った。


「行くぜ。」


 マモンの体がぶれる。次の瞬間にはガブリエルの背後をとっていた。


「どこ見てんだ?」


 ガブリエルのは動きを見きれず、遂にマモンの一撃が決まる。

 マモンは確信した。やはり力こそ全てだと。


(考えることはねえ。届かねえなら届くまで奪い続ければ良い。スキル?そんなものは関係ねえ。使わせずに勝ちゃ良いだけだ。何でも来やがれ!何をされようが負けしねえ!全てを打ち砕いて完全勝利だ。)


「うおおお!!!」


 マモンは立ち上がったガブリエルに向かい、飛んで行く。その速度は先ほどの比では無い。地面がえぐれ、風が巻き起こる。


「死ねえええ!!!!!」


 マモンの拳がガブリエルの体を捉える。


(決まった。)


 ガブリエルの体は飛び散り、その頭部だけが残った。勝った。そう思ったときだった。


「君がね。」


 頭だけとなったガブリエルが口を動かす。しかし、体もなく、このような状態になった奴に何が出来るんだとマモンは笑う。


「ハハハハハ……はっ?」


 ここでマモンは異変に気付いた。先程まで頭しか無かったガブリエルの体が元の状態に戻っている。また、自分が落下しているような浮遊感を感じた。


 ドサ。


 何かが落ちた音がした。とても近い。マモンはゆっくりと下を見る。そこには地面があった。自身の体は見当たらない。

 マモンはガブリエルに視線を移す。


「何が起こったって顔だな。いいだろう、教えてやろう。貴様には『身代わり』と言う状態を付与した。効果はその名の通り、対象を私の身代わりとしダメージ等を肩代わりして貰うものだ。」


(何……だと。)


 マモンの意識が薄れていく。天使はマモンの頭を持ち上げる。


「君が弱くて助かった。お陰で苦労せず倒すことが出来た。これで創造神様のお考えを実行できた。」


(俺…が……弱い?…この……俺…が?)


「死ね。」


 マモンの頭は天高く上がり、そして落下する。頭だけのこの状態では助からない。

 天使の力により高速で落下している筈だ。だが、マモンには世界はゆっくりと動いて見えた。


(イヅナの…野郎。強い奴と……戦わせろとは言ったが……死ぬ程の奴は…ご所望じゃねえよ。)


 顔が下を向き、近く天使と地面が見える。最後に言われた一言がマモンの頭に響く。


『君が弱くて助かった。』


 結局、強くはなれなかったのか。マモンはそう自問する。自分よりも強い奴はいた。だが、自分よりも弱いものの方が多かった。いや、だから強くなったと錯覚していたのかもしれない。今考えてもマモンには分からなかった。だが、それでもマモンはまだ願っていた。力を得ることを。強くなることを。


(もっと……強くなりた……。)


 グチャ。


 鈍い音を立てマモンが落ちた。血しぶきは周囲を赤く染める。だがガブリエルはその様子を見ていない。必死に手を洗っていた。


「触ってしまった。汚らわしい。」


 ガブリエルは羽を広げ飛び上がる。


「創造神様に御報告を。」


 ここに1つの戦いが幕を閉じた。


 マモン・・・・敗北




数回の登場で死ぬマモンさん。

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