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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
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気がついたらもう1人の天使でした

前、日曜日に投稿出来なかったので投稿します。

 雲が眼下に広がる上空ではルシファーとラファエルが激しい戦闘を繰り広げていた。2人の手には武器は無く、素手で攻撃をしている。が、手と手がぶつかり合うその瞬間、火花が散り、まるで剣がぶつかり合ったような音、衝撃を起こしている。


「何故、武器をお使いにならないのですか?」


「それは貴様が一番よく分かっているのではないか?」


 ルシファーはラファエルのスキル『慈愛之神』を受け、その能力の予想をしていた。

 腕を一瞬で枝のようにしてしまった力。時間を操作したと言う予想も出来たがそれは違うと確信していた。時間の流れを操作されたとき、魔力の流れなどに独特の違和感を覚える。前回、イヅナと戦ったときにはそれを感じた。しかし、今そのような気配はない。

 ルシファーはラファエルの手を弾きながらも予想を続ける。強者の戦いになればその勝敗を決める要因は情報。いかに早く相手のスキル、力量を見抜くかなあるのだ。


「考え事とは余裕ですね。」


「まあな。この程度ならば余裕だ。」


「では、これは如何でしょう。」


 ラファエルのその言葉とともに先程まで2人を照らしていた光が遮られた。それは突如として現れた大量の巨木のせいであった。巨木は重力に従い、落下していく。


「くだらん。」


 ルシファーは『堕天之王』の能力を使い、自分から少し離れたところに引力を発動させる。引力に引き寄せられた巨木たちはルシファーに当たることなく、落下していく。が、不自然に巨木が通らない空間があればそこにルシファーがいるのだと、馬鹿でも気づける。


「『破魔の槍』。」


 ルシファー目掛け、金色の槍が投擲される。この程度のものとルシファーは槍へ『堕天之王』を使用する。この程度の武器ならば自分に当たる前に圧縮し消し炭に出来ると考えたのだ。しかし…。


「無意味なことをなさりますね。」


「何?」


 槍は『堕天之王』による圧縮などまるで無いようにルシファー目掛け突き進んだ。予想外の出来事と更に加速した槍によりルシファーは左肩を貫かれた。


「ほう。」


「如何でございますか?創造神様から頂いた『破魔の槍』の力は。」


「この槍は悪魔にしか害をなさないわけか。」


「はい。そして、所持また使用できるのは創造神様に認められた私たち天使のみ。流石にこの一撃は効いたのではないですか?」


「かすり傷だな。」


「強がりを。それにこの勝負、私の勝ちです。」


 ラファエルは地震に満ち溢れた表情でそう宣言する。


「貴方の能力は基本的な武術、魔法、それと攻撃の耐性のスキル。マスタースキルは重力を操作するものと、力を反射するものでしょう。

 貴方の切り札であるマスタースキル。それをあそこまで全面的に出されてしまわれては頭の悪いお方でも分かります。まあ、反射の力はばれないようこっそりお使いになられていましたが。それ私と同程度の力を持つ貴方はマスタースキルを所持していたとしても2つでしょう。つまり、ほぼ全てのスキルを知られた貴方に勝ち目はない。」


 ラファエルは翼を大きく広げ、笑う。


「あははは、あははは。」


「何がおかしい。」


「いえ、ただここまで力を理解されてしまった貴方が余りに可哀想で、可笑しくて。更に貴方はわたしの能力を未だに理解できていない様子。これを笑わずにはいられません。」


『慈愛之神』の何処が貴様に相応しいのかとルシファーは思う。


「では、そろそろ終わりにしましょう。大丈夫です。貴方は死にますがきっと天使として生まれ変われます。そうすれば…。」


「もういい。」


 ルシファーがラファエルの言葉を遮る。


「もううんざりだ。さっさと終わらせよう。このまま話を続けていても気分が悪くなるだけだ。」


 ルシファーが俯く様子を見たラファエルは彼が負けを認め、命を差し出すことを決めたと考えた。自分が悪であり、その償いとして命を差し出すのだと。


「ああ、素晴らしい。私の愛が伝わったのですね。」


 ラファエルはルシファーの側によりその首元に手を添える。


「大丈夫。痛くはありません。さあ、目を瞑…。」


 そのとき、ラファエルは自分の身に何が起きたのか理解できなかった。先程まで目の前にいたルシファーは消え、何故か天を仰いでいた。


「え?ごふっ。」


 口から血を吐きながらも何とか現状を理解しようとする。ゆっくりと起き上がると何体かの天使が自分の下敷きになり潰れている。既に死んでいる。


「何が起きて…。」


「まだ分からぬか?」


 振り向くとそこには漆黒の翼を広げたルシファーの姿があった。がその翼は悪魔のそれではない。まるで天使のもののようだ。


「何故、その翼を。」


「そんなことも知らないのか?馬鹿なやつだ。まあ、私が天界にいた頃に見たことのない奴だ、私の存在を知らなくても不思議ではなかろう。ふざけた創造神だ、情報もまともに流していないのか。」


 ルシファーはラファエルを見下しながら告げる。


「私の名はルシファー。堕天はしたがもともと天使長をやっていたものだ。」


「あなたがあの…。」


「ようやく気づいたか。だが、遅すぎたな。」


 直後、ラファエルの視界からルシファーは消える。


 グシャ。


 そんな音が聞こえた。ラファエルは自分の胸から血に濡れた手が飛び出しているのを見た。


「あ、あ、あ。」


 ルシファーは貫いている手を力任せに振る。ラファエルの体は引っ張られ、そのまま手から離れ、吹き飛ぶ。

 ラファエルはボロボロになった体を何とか動かす。


「『慈愛之神』よ。」


 ラファエルのマスタースキル『慈愛之神』。その力は…。


「成長か。」


 貫かれた体が修復されていく様子を見てルシファーは確信する。

 生物の成長とは最もよく発達した形への変化だ。そのとき、細胞分裂などを繰り返す。ラファエルの『慈愛之神』はそう言った成長などに関連したことを掌握する能力なのだろう。ルシファーの腕を枝のようにした攻撃は老化でもしたのだろう。

 ルシファーの言葉にラファエルは黙る。が、それではルシファーの言葉が正しいと言っているようなものだ。


「貴様は私にスキルを理解され、私のスキルを理解できていない。」


 ルシファーはラファエルに近づき、その髪を掴む。そして、顔を近づけた。


「この勝負、貴様の何処に勝機がある?」


 その言葉と同時にルシファーの魔力が上昇する。その魔力はあまりに強大。ラファエルが自分の負けを確信するには十分だった。

 ラファエルはルシファーの手を払いのけ、空へと逃げる。


「勇敢な天使たちよ!私を守りなさい!」


 ラファエルの言葉に従い、天使たちはラファエルとルシファーの間に入る。

 ラファエルは考える。ルシファーを倒すにはどうすれば良いのか。考えられる選択肢な2つ。天使長の中で最も力を持つミカエルに頼るか、それとも創造神に頼るか。ラファエルの決断は早かった。創造神に自分の負けている姿を見せるわけにはいかない。だとすればただの機械とかしたあのミカエルに頼る他ない。

 ラファエルは翼に宝を込め、ミカエルの元へ向かおうとする。しかし、それは叶わなかった。


「何処へ行く。」


 ラファエルは振り向く。するとそこには漆黒の翼を広げたルシファーの姿があった。ルシファーはラファエルの翼を掴み、ラファエルの逃亡を阻止している。


「いちいち逃げられては面倒だ。」


 ルシファーは更に力を込める。ラファエルはその意味を一瞬で理解した。


 ゴキ。


 骨が折れる音がする。


「やめっ…!」


 ラファエルはルシファーを止めようとする。が、もう遅い。

 ラファエルの耳に今まで聞いたことのない音が届く。それと同時に背中に激痛がはしる。翼を千切られたのだ。落下するラファエルの目に血で汚れた純白の翼を持つルシファーの姿が映る。


「『憤怒之神』。」


 ルシファーは『憤怒之神』を使用する。

『憤怒之神』。それは己の力、感情を掌握し、純粋に力を上昇させるスキル。今までルシファーは『憤怒之神』を使用するとき『怒り』の感情から力を得てきた。それは創造神に対するものだった。創造神がいなければ、創造神のせいで、そういった憎悪とも言える感情を糧にしてきた。それはまるで轟々と燃え上がる赤い炎のような『怒り』であった。

 しかし、最近その『怒り』に変化が起きた。恐らく、いや、間違いなくイヅナのせいであろう。ルシファーはイヅナに完膚なきまでにやられた。だからこそ、思った。この者なら創造神を倒せるのではと。だが、そこで『怒り』の感情が芽生えた。それは創造神に対するものでも、ましてやイヅナに対するものではない。ルシファー自身に対するものだった。

 イヅナが倒してくれる。そう甘い考えを持った自分に『怒り』を覚えたのだ。それは以前のような燃え上がる赤い炎のような怒りではない。己の中で静かに燃える青い炎のような怒りであった。激しく燃える訳ではない。だが、その感情は今までのものよりもあついものだった。

 そして、その青い炎のような『怒り』は『憤怒之神』の力を向上させた。ルシファーにとって自分への『怒り』は創造神に向けられていたものよりも強い感情だったのだ。

 ルシファーの魔力は上昇していく。まるで限界などないように。

 ルシファーの体が青く燃える。しかし、それは炎ではない。余りに増えた魔力がルシファーの体から溢れてしまっているのだ。


「魔力の許容量が今後の課題か。」


 ルシファーは溢れた魔力も『傲慢之神』の力でかき集める。ルシファーは右手をラファエルに向ける。


「死ぬがよい。」


 ルシファーは溜めた魔力を闇として一気に放つ。ラファエルの姿が闇に消える。

 放たれた闇は地面をも貫く。しかし、イヅナによって張られた結界を貫くことは出来ない。闇は地中にまで達していた結界に阻まれた。


「全く、これでも破壊できぬか。」


 分かっていたが、悔しい。弱く情けない自分に『怒り』を覚える。『憤怒之神』がその『怒り』に反応する。


「おっと、危ないところだったな。スキルに飲まれては元も子もない。」


 ルシファーはラファエルの姿を確認しにいく。弱かったと言えど天使長、死体くらいは残っているかもしれない。

 闇に飲まれた場所を探す。しかし、ラファエルの死体はおろか、痕跡すら見当たらない。


「可笑しい。いや、そうか。逃げたのか。」


 ルシファーはラファエルの魔力が此処から離れた場所にあるのを感知する。


「逃がさ…。」


 そのとき不思議なことが起こった。先程まで離れた場所に感じていたラファエルの魔力が自身の背後に突然移動したのだ。もう1つの大きな魔力を連れて。


「『天使之神』。」


 その言葉とともに空が白く染まる。しかし、それは先程と同じような天使たちせいではない。空を埋め尽くす程の光の剣が出現した為だ。


「ちっ!」


 光の剣はルシファーに向け、放たれる。ルシファーは『反逆之王』『堕天之王』を使用し、光の剣を迎え撃つ。

 しかし、1つ問題がある。ルシファーが使用した2つのスキルはどちらもマスタースキル。最高峰のスキルにして、最強の力。しかし、そんなマスタースキルの 中にも優劣がある。『王』を名に持つスキル。『神』を名に持つスキル。殆どのマスタースキルがどちらかの名を有している。『王』と『神』、どちらが優れているかは言わずとも分かるだろう。

 ルシファーが使用したマスタースキルはどちらも『王』を名に持つもの。しかし、光の剣が現れたとき、聞こえたのは『神』を名に持つスキル。であれば『王』のスキルでは太刀打ちができない可能性が高い。しかし、ルシファーが多数の攻撃を捌くのに有効な手はこの2つのスキルなのだ。何より火力の高い『傲慢之神』『憤怒之神』は反撃に使用したい。

 ルシファーは剣は光の剣を反射で跳ね返し剣と剣をぶつけ破壊し、重力で進路を反らす。間を抜けてくるものは剣で対応する。


「はあああ!!!」


 最後の光の剣を砕く。

 ルシファーは後ろを振り向く。そこには翼を取り戻したラファエルともう1人の天使の姿があった。


「…素直に逃げていればよいものを。死にに来たのか?」


「私はそのような愚かなことはしません。それに2対1のこの状況です。私たちが負けるわけがありません。」


 ラファエルは自信ありげにそういう。が、ルシファーからすればラファエル程度の者が2人いたところで大した問題はない。しかし。


(こいつは…強いな。)


 ルシファーはもう1人の天使を見る。白髪の髪に金色の瞳を持つ天使。その肩には鳥が止まっている。不思議な気配を感じた。何より。


「貴様、前回の戦争の生き残りか?」


「………。」


 反応はない。だが、ルシファーには見覚えがあった。


「まあ、良い。どちらにせよ殺すのみだ。」


「……ラファエル。」


 ここで漸く白髪の天使が口を開く。


「な、何でしょうか?」


「……貴方は……離れて……下さい。……邪魔です。」


「ですが。」


「……貴方は……他の手伝いでも……していて……下さい。」


「しかし、ミカエル……。」


 ラファエルは2人で戦えば必ず勝てる。その考えでどうにか残ろうとする。が、自分よりもミカエルが邪魔言っている以上、戦いに参加するべきではないのかも知れない。


「……行って……下さい。」


「……分かりました。私はサポートに回りましょう。」


 ラファエルはそう言ってこの場を去ろうとする。


「逃がさぬ。」


 ルシファーは『堕天之王』を使い、ラファエルを捉えようとする。しかし。


「『天使之神」。」


 天から光が降り注ぐ。その光はラファエルを遮る壁となる。光の壁はルシファーともう1人の天使だけの空間を作り出す。


「ちっ。」


 ルシファーはラファエルを諦め、目の前の敵に集中する。


「ミカエルだったか?貴様は私を失望させるなよ。」


「………。」


 ルシファーとミカエルの戦いが始まる。







ミカエル再登場。果たしてミカエルとルシファーはどうなるのか?また、ミカエルは再びイヅナと会えるのか?

今後の展開をお楽しみに!

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