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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
126/164

気がついたら人も悪魔も天使もでした

やっと始まる戦い

 

「いきなり殴ることはないんじゃないかい?」


「ルネ。全く、何処へ行ってたんですか。もう敵はそこまで来てると言うのに。」


「無かったことにする気だね。」


 ルネは溜息をつき、いつものことかと話を切り替える。


「あれが…。」


「天使ですね。気持ち悪いくらいうじゃうじゃいます。」


 天使。それは光り輝く輪と純白の翼を持った神の使徒。その美しさは見る人を一瞬で虜にすると言われているが、空を覆い尽くすほどの数が目の前にいてはアスモデウスの様な感想を持つことも頷ける。


「あれだけの数だと苦労しそうだね。こちらももっと仲間を呼べなかったのかい?」


「呼べますよ。呼びませんけど。」


「どう言うことだい?」


 矛盾している様にも聞こえるその返答にルネは再び質問で返す。


「前回の戦いのとき、私たちは勿論多数の悪魔を連れて挑みました。でも、意味は殆どありませんでした。天使長たちの攻撃の余波だけで散っていき、私たちが全力を出せば巻き込まれる者もでる。はっきり言って邪魔なだけでした。この世界の戦いは量より質なんだと思い知らされましたよ。」


 アスモデウスはいつものように軽い雰囲気でそう口にした。だが、その瞳からは何処か悲しさを感じさせた。


「敵の雑魚天使たちも同じでしたね。少し鬱陶しいくらいでいてもいなくても変わりません。弱い者は戦うことすら出来ないんです。だから、私たちは今回は強い力を持つ私たちだけで戦うことにしたんです。仲間を無駄死にさせたくは無いですし、私たち悪魔にも家族とかはいますからね。悲しい思いはさせたくありません。」


「家族がいるのかい?」


 ルネは意外そうに言った。今まで聞くような機会も無かった為知らなかったのだ。一般的に悪魔はダンジョンの奥地や異空間に住むとされ、その発生は魔力が集合や魔物の進化と言われて来た。その為、悪魔に家族という定義があるとは思わなかったのだ。

 ルネの言葉に何を言ってるんだとアスモデウスが口を開く。


「当たり前じゃ無いですか。私たち悪魔だって生物ですよ。更に言えば翼とか尻尾とか角があったりはしますけど、殆ど人間と変わりませんからね。

 考えて感じて、楽しんだり、悲しんだり。仲間がいて、家族がいて。好きな人が出来て結婚して子供を産む人だっています。まあ、力があるので人間とは違うとか、少し見下したりするような悪魔もいますが、人間だって貴族と平民は違うとか権力持って見下すような人もいるので同じです。

 こんな感じで悪魔は殆ど人間と変わりませんよ。」


「…そうだね。じゃあ、天使は?」


「天使は少し違いますよ。」


「違う?」


「そうですよ。あいつらは生物と言うよりは機械ですからね。天使長クラスになれば分かりませんが、今目の前に浮いてるやつらは自分の気持ちも考えも持たないような奴らですから。」


「そうなのかい?」


「そうなのです。まあ、無駄話はここら辺にしておきましょう。私は天使長を押さえてくるのでルネは天使たちをお願いします。じゃあ、また後で。」


「わかったよ。……え?ちょ、ちょっと待っ…。 」


 ルネがアスモデウスに確認を取ろうとするが彼女は既に移動を始めていた。1人残されたルネは視線を戻し、白に染まった空を見上げる。


「まさか、僕1人であの数を倒すのかい?」


 空が見えなくなる程の数の天使。それを1人で倒す。不可能にしか思えない。


「けど、アスモデウスさんが僕に任せるということは僕なら出来ると信じてくれているという事かな。」


 ルネは風を起こし、体を浮かす。そして、天使たちに向かい飛んでいく。高度はぐんぐんと上がり、天使たちの下まで数秒でたどり着いた。


「さあ、僕が相手だよ。」


 ルネを敵と認識した天使たちは一糸乱れない動きで光魔法を放ってきた。光の間に隙間はなく、巨大な壁が迫ってきているようだ。

 ルネは【聖剣カラドボルグ】に魔力を吸わせ、更に『風星之神』を使用し風を纏わせる。


「はあああ!!!」


 ルネは【カラドボルグ】を振りかざす。放たれたその一撃は光を裂き、天使たちを襲う。荒れ狂う暴風になすすべなく吹き飛ばされていく天使たち。どうやら、ルネと天使たちのステータスには大きな差があるようだ。しかし、ステータスに差があろうとも数には差がある。アスモデウスには量より質と言われたが、ルネは少し不安に感じていた。


「まあ、だからと言って諦めるようなことはしないけどね。」


 半分程の天使たちは魔法を掻き消された為か、剣や槍を構える。残った天使たちは援護をするのだろう。再び、光魔法が放たれる。それと同時に武器を手にした天使たちがルネに向かう。

 光魔法を回避し、天使たちの攻撃を弾く。が、その間にもルネの攻撃は始まっていた。


「姑息な手は紳士の僕としてはあまり使いたくはないけど、この数の差なんだ大目に見て欲しい。」


 ルネは天使たちを対処しながら戦場に不穏な風を起こす。するとどうだろうか。何体かの天使たちが苦しみ始める。


「『黄泉之神』。」


 ルネは『黄泉之神』を発動し、風に毒の効果を乗せていた。それに気づかなかった天使たちを毒は襲っていたのだ。

 不可視の毒。厄介な技である。

 天使たちは次々と血を吐き、落下していく。しかし、最後の悪あがきか血を吐きながらルネに向かう天使がいた。


「うおおお!!!」


「はあっ!」


 が、単調な動きはルネに見切られる。天使の体に斬撃が決まる。


「ごふっ…。ミーリア、すま…ない。」


「え?」


 天使はそう言いながら、落下していった。


「今の天使は…。くっ!」


 天使の魔法がルネに着弾する。ルネの動きが一瞬だが鈍った為だ。先ほどの天使の一言を聞き、ルネはアスモデウスの言葉を思い出したのだ。


『こんな感じで悪魔は殆ど人間と変わりませんよ。』


 悪魔は人間と変わらない。アスモデウスは天使は少し違うと言っていた。しかし、先ほどの天使はまるで人のように感じたのだ。


「はあっ!」


 ルネは向かってくる天使たちを次々と切る。しかし、先ほどの天使とは違い皆、表情を変えずに切られ落ちていく。その様子はまるで機械のようだ。


(さっきの天使が特別だったのか。いや、もしかしたら僕を混乱させるための作戦?けど、そんな風には感じなかった。)


 思考するルネの肩に再び魔法が着弾する。


「くっ。考えるのは後にした方が良さそうだね。」


 ルネは未だ絶えることのない天使たちを相手にするのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーールシファーSIDEーーー



「それで貴様は何者だ?」


 天使の大群よりも更に上空でルシファーはある天使と相対していた。


「ああ、天使たちよ。勇敢に立ち向かうその姿、ご立派です。」


 その天使はルシファーを無視し、ルネに向かっていく天使たちを見ている。


「貴さ…。」


「貴方もそうは思いませんか?この過酷な世界に生まれてしまった天使たち。その頑張る姿はとても立派で愛おしい。ああ、どうして彼らは戦わなければならないのでしょうか?それは貴方たちが存在するからです。」


 突然、天使の姿が消える。が、ルシファーは微かに感じた魔力から『瞬間移動』を使用したと判断する。そして、その移動場所は…。


「甘いな。」


「あら。」


 背後に現れた天使はルシファーに手を伸ばすがそれを回避し、逆に拳を放つ。が、天使もそれを予測していたのかガードする。2人は距離を取る。


「お見事です。しかし、無傷とは行きませんでしたね。」


「何?」


 ルシファーは自分の左腕を見る。すると、そこには枝のように細くなった腕があった。まるで一瞬で年老いたかのようだ。


「貴様のスキルか。」


「はい。『慈愛之神』の能力で御座います。まさに私に相応しいスキルで御座いますね。」


「どうでも良い。」


「そうですか。まあ、これから死ぬお方にはどうでも良い情報で御座いますね。あ、そうそう。申し遅れましたが、私、ラファエル。貴方を殺す者です。」


「なるほど、『慈愛』を持つものとはとても思えぬな。」


 ルシファーとラファエルの戦いが始まる。





次回は日曜日に投稿出来ればなと思います。出来なかったらすみません。

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