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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
124/164

気がついたら始まりました

先週は投稿できず、申し訳ありませんでした。また、9、10月は忙しくなり、投稿ペースが落ちると思われます。可能な限り上げていこうとは思いますので今後とも『気がついたら魔神でした』をよろしくお願いします。


 

「それでは始めます。」


 巫女の体は手を合わせ、精神を集中させる。その様子を見る者たちの目は様々だ。どのような事が起こるのだろうか、と言う好奇心に満ちた目。また、これで魔神の居場所が判明し、遂に戦いが来るのだと不安に満ちた目をした者もいる。

 それぞれが思うことがあり、その結果であろう。しかし、この中に誰一人として落ち着いているものはいなかった。


「“神よ……我が身を依代とし……この地上に現れたまえ。そして……。」


 巫女が呪文のように唱える。すると蛍のような小さな光が現れ、巫女の周囲に集まり始めた。


「これは魔力か。」


 俺は目の前に来た光を見つめる。

 本来魔力とはそのままでは見ることは出来ない。魔法などの形を与えられ始めて認識できるのだ。しかし、例外もある。それは魔力の濃さ、密度に関係する。魔力が凝縮され、ある一定以上の密度に達することで人の目でも見ることが出来るのだ。

 つまり、今俺たちの目の前にある光はその一定の密度を超えた魔力と言うわけだ。

 魔力はその数を益々増やす。そして、部屋全体を明るくする程の魔力が集まったとき、巫女は手を掲げた。


「“今……ここに!”」


 その言葉で魔力は動きを変える。巫女の周囲に集まっていた魔力は巫女の体の中へと吸い込まれていく。それと同時に巫女の体に赤い線が浮かび上がり、徐々に宙へと上がっていく。そして…。


 〈僕を呼んだのは君たちか?〉


 巫女、いや、創造神は口を開いた。その声は中性的で先程まで聞いていた巫女のものとは違う。光を纏っているため神々しく見えてはいるが、外見が巫女のままである。が、それでも創造神の言葉に反応出来ない程には王たちは圧倒されていた。

 やっと自分たちに向けての問いかけだと気づいたアルバートは膝をつき、答える。


「そ、その通りでございます。この度は我々の為によくぞ、この地上に降臨して頂き、感謝しております。」


 アルバートも流石に神の御前ということもあり、緊張しているようだ。そんなアルバートの様子を見た創造神は大きな声で笑った。

 一体どうしたものかとアルバートは戸惑う。また、その様子を見て創造神は笑う。


 〈ハハハ、もう少しリラックスしなよ。そんなに緊張したって良いことないよ。〉


「は、はあ。」


 まさか、そんなことを言われると思っていなかったのか、アルバートは再び戸惑う。戸惑い過ぎだな。


 〈まあ、今回僕をここに呼んだ理由は分かってる。魔神の居場所を知りたいんでしょ?でも、その前に。〉


 創造神は宙を浮きながら、勇者たちの前へと移動する。


 〈勇者の皆にはお礼と謝罪をしたい。〉


 そう言って、創造神は頭を下げた。しかし、宙に浮いている奴が頭を下げたところでその頭は勇者たちよりも上にある。俺にはそれが自分の方が上の存在であると主張しているように見えた。

 創造神は頭を下げたまま、話を続ける。


 〈まず、訳もわからないままこの世界に召喚してしまい、また、大切な仲間たちを失わせるような結果を出したことを謝る。申し訳なかった。〉


 創造神はそう言うが、勇者たちの中には暗い顔をする者たちがいる。いくら謝られようと大切な人を失ったことには変わりない。それを簡単に許すなんてことは出来ないのだろう。創造神がやったことでは無いと勇者たちは思っている。しかし、それでも許すことなんて出来ない。


 〈そして、仲間を失っても君たちはこの世界の為に戦ってくれている。そこには感謝したい。ありがとう。そこで僕からの提案なんだけど、もし、君たちが良いのならこの世界で死んだ仲間たちを蘇らせたいと考えている。〉


「本当なの!?」


 創造神の提案に田中は他の勇者たちを掻き分け、前にでた。先生が死んでしまったことを最も悲しんでいた彼女にとって蘇るということは救いであったのかもしれない。

 必死な田中に創造神は優しく言う。


 〈本当さ。ただ、僕の力を持っても一度失われたものを蘇らせることは難しい。〉


 嘘だ。

 しかし、そんなことを知らない田中の体からは力が抜ける。


 〈けど、魔神を倒し、彼の体内にあった魔力を利用することが出来れば可能さ。〉


「じゃ、じゃあ…。」


 〈うん、仲間は、先生は生き返るよ。〉


 田中の目からは涙が溢れる。それは先程までの悲しみによる者ではない。また、先生に会えるかもしれない。そう言った希望による嬉し涙であった。


 〈じゃあ、僕の提案には賛成ってことでいいかな?あ、杉本くんにも聞いておこう。〉


「お、俺?」


 突然の名指しに杉本は驚くが、すぐにその理由に気づく。


 〈そう、山田くんのことだよ。彼も生きかえらして良いかい?〉


 自分が殺した山田を生き返らせる。それは反省した杉本にとっては辛いことだ。それが分かっていて創造神は聞いたのだろう。が、杉本の答えは決まっていた。


「当たり前だろ。俺はあいつの為にも生きなきゃって思った。けど、一番はあいつが生きてるってことだ。それに生き返ったら謝れるだろ。」


 〈……そうかい。なら決まりだね。〉


 創造神は円卓の中心に移動する。そのとき、俺と目があった。そして、その顔には汚い笑みを浮かべていた。やはり、俺の正体に気づいていたか。


「イヅナ様…。」


 アスモデウスも創造神の顔を見たのか、少し心配そうに俺の方を見る。そんなアスモデウスに今してやれることはあまり無いが、こいつならこの一言を言うだけで理解してくれる。


「大丈夫だ。」


「……そうですね。」


 俺たちのやり取りの間に創造神は魔神の居場所を突き止めるふりをし、魔力を集める。そして、よく分からない文字を手に浮かび上がらせ、こう言った。


 〈ま、まさか……。〉


 何が『まさか』だ。


「どうなされました?」


 アルバートは創造神に問いかける。


 〈すまない。取り乱してしまったよ。まさか、魔神がここにいるなんて思いもしなかったからね。〉


「「「「!!!」」」」


 創造神の言葉に俺、アスモデウス、ルネ、ベルゼブ以外の者が驚く。


 〈今も何食わぬ顔でそこにいる。〉


 創造神はゆっくりと俺の前へ移動した。そして、俺にこう言った。


 〈本物の飯綱くんはどこだい?魔神“シヴァ”。〉


「ここにいるだろ。何言ってんだ?」


 俺は創造神に引かない姿勢を取る。

 創造神が何を言ってるのか、分からない、理解したくない、そう言った顔で俺たちを見つめる。そんな中、声を上げる者がやはり1人いた。


「おいおい、神様よ。あんたも大したことねえな。まさか、魔神の居場所どころか、目の前にいる奴が魔神じゃないことすらわからねえなんて。」


 歩だ。いつの間にか創造神の後ろまで移動し、その肩に手を置いている。


「こいつが魔神だったら、俺が分からねえわけ無いだろ。」


 〈本当にそうかな?〉




「何だ…と…。」


 歩が静かになったと同時に、俺を見る目が変わる。創造神が何かしたようだ。


「離れろ。」


 俺は歩から創造神を引き離す。


「大丈夫か?歩。」


「お、お前は……お前は……雅風じゃない。」


「何言って…。」


 俺は咄嗟にその場から飛び退く。すると先程まで俺がいた場所で剣が空を切る。その剣の名は【聖剣デュランダル】。そうつまり俺を攻撃したのは親友であるはずの歩だ。


「歩。」


 俺は歩と距離を取る。恐らく、いや、間違いなく操られている。となればもとの状態に戻せば…。

 歩にスキルを発動させようとするが、俺と歩の間に横山と琴羽が割って入る。


「歩くん!何をしてるの!」


「貴方らしくないわ。」


「どけ、そいつは偽物だ。親友の俺が言ってるんだ!雅風は…雅風は…そいつに殺されたんだあ!」


 明らかにいつもの歩ではない。しかし、親友が本当に殺されたのなら歩ならこうなりそうな気もする。

 歩の気迫に押され、2人は一歩後退りする。だが、直ぐ後ろに俺がいることに気づき、足を止める。


「…ここにいる飯綱くんが偽物な訳がない。歩くんが飯綱くんのことを知ってるように私も飯綱くんのこと知ってるよ。歩くんが知らない優しさだって知ってる。だから、言えるよ。今、ここにいる飯綱くんは本物だって。歩くんがここにいる飯綱くんを傷つけたら一生後悔するって。だから……。」


「結衣?……。」


 2人の雰囲気が変わる。歩と同じ流れだ。

 いつの間にか2人の側にまで移動した創造神が優しく語りかける。


 〈本当に彼は本物かい?〉


「違う。私の知ってる飯綱くんじゃない。」


「私に優しくしてくれた彼では無いわ。」


 本当にクズだな、創造神は。


 〈その通り。彼は魔神であり、世界の敵。つまりは君たちの敵だ。〉


「魔神よ。イヅナを何処へやったのじゃ!」


 ラフィーエが声を上げる。


「そうよ!あいつはあんたみたいに弱そうじゃ無いわ!」


「我も同意見だ。」


 エルティナ、モートが続く。そして、俺と関係を持つ者たちが声を上げれば俺と関係が深く無い者たちはそれに連なる。


「誠か。」


「つまりは裏切り者か。」


 アルバート、ユンは各国の王たちを信じる。

 創造神は好機と思ったのか、他の勇者たちにも矛先を向ける。


「あいつは飯綱じゃねえ!魔神だ!」


「飯綱の仇を取るんだ!」


 創造神の力の前では今の勇者たちでは無力。次々とその手に落ちて行く。

 狂気に満ちた目で俺を見る勇者たち。その異常な光景を目の当たりにした颯太は皆を鎮めようと一歩前に出る。しかし…。


 〈ここまで僕の娯楽のためにご苦労様。このまま最高のフィナーレを迎えられそうだよ。〉


 颯太の耳元で創造神が囁く。その言葉を聞いた颯太はこの現状の正体を理解した。


「まさか!」


 〈バイバイ。〉


 颯太の意識は呑まれた。


「魔神を倒せ!」


「魔神を殺せ!」


 俺の周りは敵だけとなった。


「本当に腐ってるな。創造神。」


 〈褒めてくれるなんて嬉しいよ。魔神さん。あ、そうそう。逃げれるなんて思わないでね。ここには既に結界が貼ってある。それに天使長たちも連れてきてる。もう死ぬしか無いね〜。どうする?味方に殺される?それとも僕?ハハハハハ!〉


 アルバートたちにもスキルを使い、何を聞かれても問題ない状態を作り、やっと本性を現した。その表情は反吐が出るほど汚い笑顔である。勝利を確信した顔だ。

 しかし、創造神。貴様は勘違いをしてる。


「なあ、創造神。」


 〈ん?何かな?〉


「逃げられないのは貴様だぞ?」


 〈は?ぐはっ!?〉


 俺は『色欲之神』を使い、創造神に標的を合わせる。そして、空かさず『ヨグ・ソトース』を使い、時間を止め、空間を捻じ曲げる。その捻じ曲げた先は神界だ。曲がった空間に手を突っ込み、創造神の本体を引っ張りだし、そして力一杯殴った。

 創造神は天井に穴を開け、勢いよく飛び出していった。スキルが切れたのか、巫女の光は収まり、落下する。落ちてきた巫女を受け止めている。どうやら気絶しているようだ。


「イヅナ様!グッジョブです!いや〜スッキリしますね。でも、巫女は駄目です。」


「落とすわけにはいかないだろ。」


「ん…。」


「お、起きたか?」


 俺がいつも通りのアスモデウスに仕方なく答えていると巫女が目を開けた。


「少し寝てろ。」


「あ、ありがとう。」


「お、おう。」


 てっきり魔神だの何だのと言われると思っていた為、予想外の言葉に驚いた。


「照れました?今照れたんですか?イヅナ様!」


「よし、俺は創造神を追いかける。勇者たちは動かないよう時間で縛って、結界を張ったから大丈夫だろう。」


 面倒くさそうなので無視する。


「ルネ、やっぱり酷いですよね?」


「酷いんじゃないかい。」


「むむー(ルネが考えることをやめた)。」


 後ろで何か聞こえるが気のせいだろ。


「総員に告ぐ。戦争だ。」


 俺のその言葉と共に悪魔たちが俺の周りに集まる。


「ルシファー、指示はお前に任せる。」


「ああ、わかった。」


 俺は『瞬間移動』を使い、創造神の目の前へと移動する。


「痛いじゃないか。僕だって痛覚くらいあるんだよ。」


「対して聞いてないだろ。」


「まあね。それにしても僕のことも結界で閉じ込めるなんてやるねえ。しかも、天使たちは悪魔で押さえて、僕と一対一で戦えるようにして……でも僕に勝てなきゃ意味ないよね、勝てると思うの?」


「当たり前だろ。勇者たちや、この世界の奴ら、そして、シヴァの為にもお前には死んでもらう。」


「ぶふ…。あ、ゴメンゴメン思わず吹き出しちゃった。」


「意味のわからない、奴だ。」


「そのうち分かるよ。」


 俺は【邪神剣エクスカリバー】、【邪神剣ダーインスレイブ】を取り出し、構える。創造神も剣を二本取り出し、同じ構えをする。

 俺は音も立てず、創造神の背後に一瞬で周り剣を振り下ろす。が、当然のように創造神は背後に回した剣で受け止める。


「ハハ、楽しくなりそうだ。」


「一瞬で終わらしてやるよ。」


 邪神と創造神の戦いが幕を開けた。

















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