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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
121/164

気がついたら友達を忘れてました

次回も日曜日投稿予定です

「それでは行くぞ。」


 国王“アルバート・グラム”がそう言うと魔法陣が光輝き始めた。時間が経つにつれその光は強くなっていき、周囲が見えなくなっていく。俺はその光景を見て、この世界に来ることとなった出来事を思い出す。訳もわからないままこの世界に来ることとなり、俺に至っては何も見えないただ暗いだけの空間に放り出された。あのときは本当に死ぬんだと思った。けど、シヴァのお陰で俺は助かった。そして、今ここにいる。

 信じられない話だ。地球にいた頃、こんなことを考えたことも無かった。いや、考えていたのかもしれない。記憶を失う前の俺なら。彼女と共に。

 思考していると服の裾を誰かが掴んだ。


「飯綱くん、転移が終わるまでこのままでいい?」


 横山だった。彼女は俺の顔を見ながらそう言う。俺の裾を掴むその手には力が入っていた。きっと彼女も思い出したのだろう。

 俺は横山の手を裾から離した。そして、その離れた手を握った。


「この方が良いだろ?」


「うん。…これなら安心出来るね。」


 そう答えた横山の顔は光に包まれ見えなくなっていく。そして、完全に俺の視界を光が包み、転移が発動した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 光が収まり、徐々に辺りが見えてきた。全員無事に転移が出来たようだ。まあ、出来ない方が稀だと思うが。


「もう良いか?」


「うん、ありがとう。」


 俺は横山と繋いでいた手を離し、周囲を見回す。建物内にあるようだが、その作りはサモン大陸にあった塔の内部と似ている。きっと、同じ作りなのだろう。

 列が動き出し、俺たちもそれにつれ進む。外に出て振り返ってみるとやはりそこには塔があった。ただ、1つ違うことがあるとすればこちらには塔が2本あるという事だろう。俺たちが利用したサモン大陸と繋がるもの、それとフィエンド大陸に繋がるものだ。俺たちがフィエンド大陸からカラドボルグ魔法学園に向かう時、利用することは無かった。たった2人の移動の為に利用するようなものではないと言うことだ。

 列が止まり、兵士が俺たちに声を掛ける。


「勇者様たちはこちらへ。」


 その先には馬車が用意されていた。俺たちの方がステータスが高く、体力もある。それなのに楽をしても良いものかとも思うが、折角の気遣いを無下にしない方が良いだろう。俺たちは馬車に乗り込み、学園へと向かう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お待ちしておりました。」


 俺たちを出迎えたのはとても魔法使いとは思えぬ名前の校長、“ニック・ニク”率いる魔法学園の先生方だった。

 国王“アルバート”が校長の前に出る。


「うむ、ご苦労。他の国の王たちは既に来ているか?」


「はい、巫女様御一行を除いては既に。」


「そうか、ならば我々も向かうとしよう。案内を頼む。」


「はっ!メーク。」


「はい。」


 1人の教師が案内役となり、俺たちは世界会議が行われる部屋へと向かう。ここからは徒歩だ。

 魔法学園の中を歩いていると、あまり日は経っていなくとも懐かしく思う。

 噴水の横を通りかかった。そう、ミカが雨に打たれていたあの場所だ。今頃、どうしているのだろうか。話せるのならまた。

 噴水を通り過ぎ、ようやく校舎が見えてきた。そして、そこには多くの生徒達が集まっていた。各国の王や勇者を見れるまたとない機会だ、こうなるのも当たり前か。アスモデウスが俺の肩を叩く。


「イヅナ様!あそこにニエーゼ達がいますよ!」


 アスモデウスが指差した方を見ると、そこにはニエーゼ、カレッタ、ソーマの3人がいた。ミカを除けば学園にいた頃最も関わりが深かった3人だ。


「ニエーゼ!カレッタ!ソーマ!」


 アスモデウスが大きな声をあげ、手を振る。俺は兵士たちがしっかりと隊列を組んでいる中でそう言うことはするなと注意しようとした。しかし、余りに大きな声が国王“アルバート”に聞こえたようで彼は俺たちに気を使ってくれた。


「構わん。久方ぶりなのだろう?話して来ると良い。ただ、余り時間はかけぬようにな。


 ラフィーエは頷き行って来いと、エルティナは仕方ないわねと言う表情で俺たちを行かせようとする。


「会議の場所は……。」


「第1円卓室です。」


「との事だ。」


「分かりました!では、行きましょう!」


「お、おい。」


 それでも本当に良いのかと思っていた俺をアスモデウスは強引に連れて行く。


「ぼ、僕も少し、久しぶりに友人と話したいんだ。」


 ルネも俺たちに続き、生徒達のほうへと向かう。


「皆さん、久しぶりです!」


「久しぶり!アモちゃん!会いたかったよ!」


「えっと、あの、その、わ、私もです。」


「久しぶりだね〜。その後、イヅナくんとは進展あった?」


「ふっふっふっ、勿の論です。ちゃんとイヅナ様の気持ちも知ることが出来ました!」


「おお〜。それでどこまで行ったの?僕、気になるなあ」


「気になっちゃいますか?しょうがないですねえ!では、全三部にわけてお話ししましょう!」


「するな、手短にと言われただろ。」


「そうでしたっけ?」


 相変わらずのアスモデウス。


「久しぶりだな、皆。元気にしてたか?」


「元気も元気だよ。まあ、2人がいなくなかったのは少し寂しかったけど。」


「えっと、は、はい、私もその…。」


「僕は普通かな。」


 3人は前と変わらない様子だ。こうやって話していると学園での生活を思い出す。勇者の監視、と言う目的で来てはいたがやはりここでの日々は楽しかったのだ。

 俺は笑顔の3人を見て、ふっと思った。闘魔祭のとき、彼女達はミカとも仲良くなっていた。今回のような、各国の王たちが集まるようなことがあれば勿論この3人は(ソーマが必ず行きたがる為)集まる。そのとき、この3人ならミカにも声を掛けると思うが。


「なあ、ミカはどうしたんだ?」


「ミカ?他のクラスの子か誰か?」


 俺の質問にニエーゼは首をかしげる。


「いや、ミカだよ。闘魔祭のときに一緒にいただろ?」


「いや、私そんな子知らないけど。」


「わ、私もです。」


「僕も知らないなあ。何?もしかしてイヅナくんの恋人か何か?」


 3人共、ミカのことを覚えていなかった。いや、この3人に限って覚えていないと言うことはあり得ないだろう。だとすれば考えられることは1つ。何者かによって、ミカに関する記憶が消された。そして、そんなことをするのは奴しかいない。


「……創造神め。」


「え?何か言った。」


「あ、いや、何でもない。気にしないでくれ。」


「そう?」


 思わず口に出してしまった。だが、それ程までに俺は怒りを覚えた。心を失い、心が無いことで悩み、葛藤し、傷つき、嘆いた彼女。そんな彼女がやっとの思いで手にした気持ちを共感しあえる友達。心を取り戻すきっかけとなるだろう存在。

 だが、それも一瞬で消えたのだ。ニエーゼたちからミカの記憶を消したことによって。そして、友達を失ったことはニエーゼたちも同じ。

 俺は友達を失ったことにも気づけない、3人に背を向ける。


「アスモデウス、そろそろ行くか。」


「ええ!まだ話したいです!」


全部・・終わったらまた話せる。」


「……わかりました。それでは3人ともまた後で!」


「じゃあね。」


「そ、そのまた。」


「バイバイ。」


 俺たちは歩き始める。ルネも丁度話が終わり、俺たちに合流した。俺はルネに聞いた。


「なあ、ルネ。」


「何だい?」


「ミカのことを覚えてるか?」


「あの静かな子かい?勿論、覚えているよ。」


「アスモデウスは覚えるな?」


「当たり前です。」


「そうか。だとすれば記憶を消されたのはこの学園の者だけ?いや、マスタースキルを持っているものの記憶は消さなかったのか?」


 俺は考えたが、すぐに辞めた。正直、どうでも良くなったのだ。創造神がどのように記憶を消したかは分からない。だが、結果としてミカの友達はいなくなった。それだけで十分だ。俺はあいつを許さない。


「アスモデウス、ルネ。」


「はい?」


「何だい?」


 アスモデウスたちは俺の顔を見る。


「創造神との戦い、必ず勝つぞ。」


 アスモデウス、ルネは瞬時に理解した。もうそのときは直前に迫っているのだと。そして、彼らは答えた。


「はい!」


「勿論!」


 俺たちは円卓室へと向かった。









なかなか始まらない世界会議。話が進まない。

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