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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
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気がついたら木陰でした

前回、今回と少しほのぼの?した感じでした。ですがそれも今回までです(多分)。

次回も日曜日投稿です。

「それでは行くとしようか。」


 グラム王国現国王、アルバート・グラムの掛け声と同時に隊列を組む兵士たちが動き出す。そして、その兵士たちに守られる形で俺たちが乗っている馬車が動き出す。

 世界会議の行われるカラドボルグ魔法学園へ移動を開始したのだ。まずはカラドボルグ魔法学園へ転移が可能な魔法陣、そこまで向かう。

 魔法陣は元々、城下町に設置しようと考えられていたが、万が一何者かに国への侵入に利用されないよう、城から離れた土地に設置されたのだ。

 俺は馬車の窓から見える景色をぼーっと見つめていた。すると、アスモデウスが呟いた。


「何だかお金持ちになった気分です、イヅナ様。」


「まあ、分からなくはないな。」


 馬車は今まで俺たちが乗ってきた物の中で最も大きく、会議に参加する勇者たちも乗り込める程広い。また、備え付けのフルーツや飲み物もあり、アスモデウスが言ったように金持ちになったような気がする。


「僕は少し落ち着かないよ。」


「ルネには聞いてません。」


「しゃ、喋らしてもくれないのかい?」


 ルネは困った顔で言うが、アスモデウスは聞いていない。本当に酷いな。

 そんな2人も昨日はかなり真剣な顔つきをしていた。

 ダンジョン『聖なる祠』999階層。そこで俺はルシファーやアスモデウス、ルネ、ベルゼブ、他にもこれから創造神と戦っていく中でも重要な戦力となるであろう者たちを呼び、俺の考え、また、その大まかな流れを伝えた。もちろん、この通りいかない事も考え、行動をするようにと伝えておいた。そして、『死ぬな』とも。

 創造神との戦いとなれば間違いなく、ミカエルレベルの天使たちも戦いに加わるだろう。今考えてみると、そんな中で『死ぬな』と言うのは難しい事なのかもしれないと思う。悪魔達にとっては破壊神の、シヴァの仇である創造神との戦いだ。恐らく無理をする。死ぬ気の奴もいた。けど、それでも最後に笑って終われるよう生きていて欲しい。出来れば誰も欠けることなく、全員で。

 俺が昨日のことを思い出していると、歩が声をかけて来た。


「なあ、雅風。」


「何だ?」


 俺は体を歩の方へ向けながら、答える。


「これで魔神の居場所が分かって、俺たちが勝てば、そのときは帰れるんだよな?」


 俺はすぐに答えることが出来なかった。魔神を、つまりは俺を倒す。そんなことをしたところであの創造神が素直に俺たちを返してくれるとは思えない。寧ろ、更に何かを仕掛けてくると考えたほうが良いだろう。

 だが、そんなことを歩には言えない。だが、下手に嘘をつけば、勘が良く、俺のことをよく知っている歩は気づいてしまう。


「おい。聞いてるのか?」


「悪い、聞いてなかった。」


「お前なあ。」


 誤魔化す。今はこれしか出来ない。しかし、歩はこれだけでも何かを感じとったみたいだ。その後、同じ質問をしてくることは無かった。

 馬車の中は静かで皆、落ち着いているようだった。だが、俺の心が落ち着くことはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「やっと着きましたね。長い時間馬車に乗ってたせいで体中が痛いです。だから、動くのも面倒くさいです。だから、おぶって運んで下さい。


「自分で歩け。」


「ちっ!仕方ありません。ルネでも良いですよ。」


「イヅナくん、これは一体どれほどの高さがあるんだろうね。」


「あっ!こら、ルネ!」


 転移の為の魔法陣がある場所に到着した。どうやら、魔法陣があるのはこのそびえ立つ塔らしい。作動させるのに必要な魔力を供給、循環させる為の物だと国王は言っていた。

 そして、その作業や、最終確認に時間がかかるとのことで少し休憩を取ることとなった。


「イヅナよ、ちと良いか?」


「どうした?ラフィーエ。」


 木陰で休もうとしていると、ラフィーエが声をかけて来た。


「話に付きおうてはくれぬか。暇なのじゃ。」


「分かった。どうせならそこの木陰で休むか。日に当たっても大丈夫とは言え、その方が良いだろ?」


「流石はイヅナじゃな。妾のことを考えて。」


 俺はラフィーエが日が昇っているこの時間に歩いて大丈夫なのかと最初は心配していた。彼女はスキル『日光無効』?と言うものを所持しているらしく、普通の人などが所持していようと日焼けしなくなる程度のスキルだが、日光が苦手な吸血鬼からすれば弱点を克服するスキルとなる。その為、今のようにラフィーエは日光を浴びていても平気なのだ。

 俺たちが木陰に座り込むと、風が吹いた。


「気持ちいいな。」


「そうじゃな。しかし、こう話すのも久しぶりの気がするのう。」


「そうだな。寂しかったのか?」


「当たり前じゃろう。」


「そ、そうか。」


 俺はからかい半分に言ったが、ラフィーエのその反応に思わず照れてしまう。


「じゃから……。」


「な…。」


 ラフィーエは俺に肩を寄せる。


「イヅナが悪いのじゃ。妾をこんな気持ちにさせるのじゃから。」


「………。」


 近い。


「イヅナよ。」


「何だ。」


「やはり、妾はお主のことが……。」


 ラフィーエがそう言いだしたときだった。


 ドドドド…。


「ん?」


「恋人アターーーック!」


 その直後、俺とラフィーエがいた場所に何かが突っ込んで来た。咄嗟にラフィーエを抱え、飛んだので2人とも無事だが、普通に危ない。

 着地し、ラフィーエを下ろす。そして、突っ込んで来た張本人の方を向く。


「アスモデウス。危ないだろ。」


「何、イチャイチャしてるんですか!」


「いや、別に……。」


「飯綱くん。」


 俺の肩に誰かの手が触れた。直後、悪寒がした。俺はゆっくりと振り向く。するとそこには横山と琴羽がいた。


「横山、琴羽。」


「イチャイチャしてると思うよ、あれは。そう思うよね、琴羽ちゃんも。」


「ええ。思うわ。あんな事ばかりしてるから私たちみたいな人が増えるのね。」


「そうだね。私もそう思うよ。飯綱くんもそう思うよね?」


 どう答えろと?横山の目を見るが、何と言っても許されなさそうだ。

 それに何故、この2人は俺に気配を悟られる事なく接近出来たんだ?俺は様々な可能性を考えたが結局その方法は思いつかない。それに今はそんなことをしている場合ではない。


「イヅナよ、愛されておるな。まあ、妾はそれに負けぬくらいお主を愛しておるがな。」


 そして、ラフィーエは俺の腕に抱きつく。何故、このタイミングで火に油を注ぐようなことをするのか。そして、本当に逃げ場が無くなった。そのとき…。


「皆さま!魔法陣の準備が整いました。こちらにお集まりください!」


 兵士が声を上げる。流れを変えるには今しかない。


「よし、行くか。」


「あっ!イヅナ様!話はまだ終わってませんよ!」


「「飯綱くん!」」


 俺は塔の方へと歩き出した。これでカラドボルグ魔法学園へ転移すればいよいよ世界会議だ。覚悟をしなければならない。この今のような雰囲気を楽しめるのも今のうちだ。


「それに彼女のことも早く思い出さないとな。」


(そうね。早くしないと手遅れに…。)


 頭に声が響く。


「今のは……。手遅れになるか。」


 俺がもしこの言葉の意味を考えていれば、気づけたのかもしれない。











そろそろ『気がついたら魔神でした』が完結した後、何を書くのか考え始めました。

他に投稿(ほぼしていない』ものを進めるのではなく、別の作品にしようと考えています。

勇者が主人公の物語、魔物と心を通じあわせることの出来る少女の物語。どちらか迷っております。ですが、『気がついたら魔神でした』が完結してから始めるのでまだ、先の話にはなります。

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