気がついたらレベルが上がってました
更新が遅くなってすみません。
目を覚ました俺は、すぐに部屋から出た。
「まだ、夜か。」
外はまだ暗く、地球のときの時間で言うと2、3時くらいだろう。
「ギルドには今日の午後に行けばいいんだよな。だとすると暇だな。」
午後まではまだまだ時間がある。そこで、俺は力のコントロールの練習をすることにした。一応、コントロールは出来てはいるが、少し心配な部分がないわけではないのだ。
とりあえず俺は街の外の平野に行くことにした。道中の街は昼間とは違い、とても静かだった。一部の酒場を除いては…。
門の前まで行くと俺に見とれていた衛兵がいた。よく働くものだ。
「お勤めご苦労様です。」
「へ、あ、は、ヒャイ!あ、あ、あ、ありがとうございましゅ!」
そんなに慌てることはないだろう。俺は昨日見せたものと同じ身分証(偽物)を見せた。
「こ、こんな時間にどこへ行くんですか?」
「少し採取したい薬草がありまして、それで。」
「そうですか、でも気をつけてください。街の近くとはいえ、夜になるとゴブリンやグレーウルフが寄ってくることがあります。そのときは大声で助けを呼んでください。近くの衛兵が直ちに向かいましゅ。」
最後まで頑張って欲しかった。
「わかりました。ありがとうございます。」
俺は衛兵の話を聞き終わると平原へ向かった。街から少し離れたところまで移動すると、俺は“索敵”を使った。すると、すぐ近くにグレーウルフの群れがいることがわかった。
「よし、まずはあいつらからやるか。」
俺は“瞬間移動”で群れのど真ん中に移動した。グレーウルフたちは突然、俺が現れたことに驚いていたが、すぐに体勢を立て直し俺を囲んだ。
俺を囲んでいるグレーウルフは12匹。俺は『ジュブ・二グラス』で“プラチナソード”を作り構えた。
「どっからでもかかってきな。」
俺はグレーウルフたちを挑発した。すると、早速後ろの3匹が飛びかかってきた。俺はその攻撃を避けず、剣を軽く振った。
「ギャン!」
3匹は声を上げながら真っ二つになった。そのタイミングで残っていたグレーウルフたちが一斉に飛びかかってきた。
今度は剣を使わず、攻撃をさばいていった。俺はグレーウルフたちを吹き飛ばさないようにそっと流していった。
「コントロールは完璧だな。」
俺はグレーウルフたちを1匹も吹き飛ばすことなく攻撃をさばいた。
「次は魔法かな。」
魔法はそれぞれの属性ごとスキルが分かれていて、詠唱をすることで発動する。スキルのレベルによっては使えない魔法もある。まあ、どれも俺には関係ないことだ。
「とりあえず初歩的な魔法からいくか。」
俺はウルフに向かって“無詠唱”で炎魔法“フレイムボール”を放った。フレイムボール”は炎魔法の中で最も簡単な攻撃魔法だ。威力は人によって差はあるが、だいたいゴブリンに瀕死のダメージを与えるレベルだ。
しかし、俺が放った“フレイムボール”はその比ではなかった。
1匹のグレーウルフを倒すつもりが、周りにいた奴らも合わせて計6匹も倒してしまった。『ヨグ・ソトース』で押さえて尚且つ、手加減してこの威力なのだ。普通に売ったらどうなるか考えるだけで恐ろしい。
俺は戦いでは魔法をあまり使わないようにすることにした。
「さてと、残りは3匹か…」
俺はそう言いながら振り返り、グレーウルフたちの方を向いた。
しかし、残りの3匹は俺と目が合った途端すぐに逃げて行ってしまった。
「まあ、いいか。」
俺は逃げた奴らを深追いせず、倒したグレーウルフたちから素材になりそうなものだけ採取した。採取をしていると頭の中に声が響いた。
《レベルが上がりました。》
「ん?レベル?」
試しに俺はステータスを確認した。
【飯綱 雅風】
レベル:10
レベルが10になっていた。ちなみに他のステータスには特に変わりはなかった。まあ、もともと測定不能だしな。
俺はこの後も日が昇るまで、グレーウルフの群れを見つけては倒し、また見つけては倒し、を繰り返した。
その結果……
【飯綱 雅風】
レベル:563
「どうしてこうなった?」
どうやら、今の俺はモンスターを1匹倒すごとにレベルが上がるらしい。そのため、グレーウルフやゴブリンなど、合わせて562匹を倒した俺は今のレベルまで上がってしまったということだ。
「さすがに、上がりすぎだろ…。」
途中から、モンスターと戦っていると拳圧などだけで吹き飛ばしてしまうようになったので、『ヨグ・ソトース』で俺の周りの空間から外の空間に出る力を、数億分の一から数兆分の一にまで下げた。
「ここまですれば、大丈夫だろ。」
俺は試しに拳を突き出し、拳圧による周りへの被害がないかを確認した。
「よし、大丈夫そうだな。」
俺は問題がないことを確認すると街へと向かった。
帰り道に一度だけゴブリンがいたので倒した。
《レベルが上がりました。》
あまりにしつこかったので、レベルが上がったときに報告がないようにできるか調べた。
すると、どうやらこの声の正体は“神のお告げ”と呼ばれているものだとわかった。
“神のお告げ”はレベルが上がったときや、スキルを習得したときなどに頭に響く声のことだ。そして、“神のお告げ”はその名の通り神だけが操作することができるらしい。例を挙げると俺が魔神になったことの秘匿と、伝言だ。これは、魔神が“神のお告げ”を操作して行ったことだ。
つまり、今の俺ならば“神のお告げ”の操作が可能ということだ。俺はすぐに自分に対する“神のお告げ”を世界から秘匿することと、レベルアップのときにお告げが来ないようにした。
そして、再び街を目指した。
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結局、街に着いたのは昼過ぎだった。ゆっくり歩きすぎただろうか。
俺は、身分証を衛兵(さすがに、俺に見とれていた人は交代していた。)に見せ、街に入った。
「もう午後になってるし、そろそろギルドカードできてるかな?」
俺はすぐにギルドへと向かった。道中、人の視線が気になった。やはり、そう早くは慣れないものだ。
ギルドに着き、受付に向かった。
「あの、すみません。ギルドカードを受け取りに来たんですけど…。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
今日の受付は昨日の人ではなかった。ただ待っているのも暇なので、依頼が貼ってある掲示板を眺めていることにした。
掲示板のところに行くと、昨日の受付の人が新しい依頼書を張っていた。
「どうも。」
「ん?ああ。昨日の方ですか。本日はギルドカードを受け取りに来たんですか?」
「はい。そうです。」
「そうですか。では今日から冒険者の一員ということですね。」
そんなことを話していると先ほどの受付の人がギルドカードを持ってきてくれた。
「こちらがギルドカードとなります。」
「ありがとうございます。」
「では、少し説明をさせていただきます。」
「あ、少しいい?アニス。」
「何?リア?」
どうやら、昨日の受付の人はリア。ギルドカードを持ってきてくれた人はアニスというらしい。
「その人には私が説明するから受付の方に戻ってもらってもいい?」
「いいわよ。じゃあお願いするわね。」
そういうとアニスさんは戻っていった。
「では、あちらの席へ。」
「あ、はい。」
俺とリアさんはテーブルの方へ移動した。
「では、これから冒険者について説明をさせていただきます。が、その前に少しよろしいですか?」
「何ですか?」
「えっと、実はこの堅苦しい喋り方が苦手で、普段通り話したいのですが、よろしいですか?」
「いいですよ。その代わり、俺も普段通り話しますね。」
「ありがとうございます。では、これから冒険者について説明します。」
あまり、喋り方が変わってない気がするが、本人がいいならいいのだろう。
「ああ、よろしく頼む。」
「はい。ではまず最初に冒険者という職業の大まかな説明をしますね。
冒険者というのは依頼を受け、その依頼を完了してその報酬で生活していく職業です。」
「随分と大雑把だな。」
「気にしたら負けですよ。」
そういう物なのか?
「ちなみに依頼には採取や討伐など、いろいろなものがあります。また、ランク分けもされており、F〜Sまであります。どのランクの依頼でも受けることはできますが、依頼に失敗するとそれなりのペナルティーがありますし、あまりランクの高い依頼を受けると死亡する確率も上がります。なので目安としては、自分と同じランクの依頼を数人で挑むのがいいでしょう。」
「わかった。」
「では、次にランクについて説明します。ランクは高いほうから順にF<E<D<C<B<A<S<SS<SSSとなっています。ちなみに、最初にはFからスタートになります。また、ランクを上げたいのなら、試験を受ける必要があります。試験を受けるためにはある程度依頼をこなしていないといけません。」
どうやら、ランクはすぐに上げられそうだ。
「あとは、ギルド倉庫が使えるくらいですかね。」
「なるほどな。少し質問してもいいか?」
「いいですよ。」
「じゃあ、まずモンスターを倒したときに手に入れた素材を売りたいときはどうすればいい?」
「それなら掲示板の隣のカウンターで素材を買い取ってますので、そこでお願いします。」
「わかった。じゃあ、次の質問だが、倉庫ってどうやって使うんだ?」
「受付に倉庫を使いたいと言ってギルドカードを渡してくれれば使用できます。」
「そうか。これで俺の質問は終わりだ。」
「はい。では、これで。」
「ああ。ありがとな、リアさん。」
リアさんは名前を呼ばれて少し驚いた顔をしていた。
「何で、私の名前を?」
「いや、さっきアニスさんと話してるとき、お互いを名前で読んでただろ?」
「あ、そういえばそうですね。」
リアさんは意外と天然なのかもしれないと思った。
「じゃあ、あなたの名前も教えてください。私だけ知られてるのは何か嫌です。」
リアさんは頬をふらませて、そう言ってきた。可愛い。
「わかった。俺の名前はイヅナだ。」
「イヅナさんですか。いい名前ですね。」
「そうか?リアさんだっていい名前じゃないか。」
「そ、そうですかね。」
リアさんは少し頬を赤くしながら嬉しそうに言った。本当に可愛い。本当に可愛い。大事な事なので二回言った。
「あ、そうでした。私一つだけお聞きしたい事があるんですが…。」
「何だ?」
「イヅナさんって女の子ですよね?」
「いや、男だぞ。」
「え!?」
相当驚いたらしく、目を大きく開いたまま固まってしまった。
「大丈夫か?」
「……………。」
反応がない。
「おーい。」
「……へ?あ、はい大丈夫です。」
全く大丈夫そうには見えない。
「それじゃあ、ありがとな。」
「はい。」
「また、何かあったら、よろしく頼むよ。」
「はい。」
まだ、意識がしっかりとしていない気がするが、大丈夫だろう。
俺は放心状態のリアさんを置いてギルドから出て行ったが、すぐに戻ってきた。
「素材を売るの忘れるところだった。」
俺は、素材を買い取ってくれるカウンターへと行った。
「素材をこちらにお願いします。」
そう言って小さな銀皿を出してきた。どう見ても足りない。今、俺は500近い素材を持っている。それをこんな小さい皿に乗せるのは不可能だ。
「あの。これじゃあ。乗り切らないんですが…。」
「わかりました。では、素材の種類と数をお願いします。」
「はい。えっと、素材の種類は、ゴブリンの持ってた武器とグレーウルフの牙、爪です。数はおそらく500くらいです。
「わかりました。素材の種類はゴブリンの武器、グレーウルフの牙、爪ですね。数は500…………500………500!?」
「え、あ、はい。」
そんなに驚く事なのか?
「で、ではこちらの穴に素材を入れてください。」
「これですか?」
「はい。素材の個数と値段を図り、さらに、倉庫に運んでくれる便利ものです。」
それは本当に便利だ。一家に一台欲しいレベルだ。
俺は、別空間にしまっておいたアイテムを穴に全部入れた。
素材:ゴブリンの武器
グレーウルフの牙、爪
個数:523
値段:24万8000ウェル
ちなみにウェル=円と思ってもらっても構わない。
「ご、合計24万8000ウェルとなります。」
「はい。」
俺はその金を別空間に入れると今度こそギルドを後にした。
おまけ
ゴブリンとグレーウルフのステータス
【ゴブリン】
種族:亜人族
レベル:5
攻撃力:600
防御力:400
魔攻撃:10
魔防御:200
魔力:30
俊敏:400
運:10
【能力】
スキル
『投擲レベル3』
(『剣術、槍術、弓術、盾術、レベル1』)
【グレーウルフ】
種族:ウルフ
レベル:6
攻撃力:600
防御力:500
魔攻撃:30
魔防御:300
魔力:50
俊敏:700
運:20
【能力】
スキル
『威嚇レベル5』
『以心伝心レベル5』・・・ある一定のものと念話ができる。
リアとアニスについて
【リア・グレイシア】
身長:165
髪と瞳の色:薄い青色
髪型:癖のあるショートボブ
特徴:胸が大きめ。笑顔が可愛い。
【アニス・フォスター】
身長:163
髪の色:金髪
瞳の色:緑
髪型:腰まである髪をそのままおろしている。基 本的にはまとめたりはしない。
特徴:無表情。クール。