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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
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気がついたら忘れてました

先週は投稿できず、申し訳ありません。今週からはしっかりと投稿していきます。

(考えていてもしょうがない。もうそんなことも言えないな。)


 俺は先程の夢のことを思い出し、そんなことを考えた。

 世界各国の王や巫女と呼ばれる者が集まる世界会議。そこで巫女のスキル『神体憑依』を使い、創造神に魔神の居場所を聞き、今後の方針を話す。

 創造神はその名の通り神だ。抑えようとして来たとは言え、俺の存在には気づいていると考えた方が良い。そして、あの創造神なら世界会議という場を利用しないわけがない。何か仕掛けて来る筈だ。

 つまり、始まるのだ。創造神と邪神の戦いが。


(ついにこの時が。シヴァの願いを叶えるときがくる。だと言うのに…。未だに思い出しきれない彼女がどうしても引っかかる。)


 元々、何度も夢に現れる彼女のことは気になっていた。過去に会ったことがあるのかも知れない。何故、思い出せない。色々と思っていた。だが、先程見た夢で得た情報は今までの物とは訳が違う。この世界に来ることとなった理由が彼女にある可能性が出てきたのだ。

 この世界に来ることとなった理由が彼女と過去の俺に有るのならば一体俺たちは何をしようとしていたのだろうか?そして、今の俺はその何かを果たせているのだろうか?

 いくら考えても、思い出そうとしても、何も浮かばない。ただただ時間だけが過ぎていた。薄っすらと明るかった窓からの景色は、既に夜の闇に染まっている。


 トントン。


 誰かが部屋の扉を叩いた。が、俺は動かなかった。何故なら……。


「イヅナ様〜〜!!!」


 彼女なら入って来ると確信していたからだ。


「イヅナ様!時間になりました!さあ、行きましょう!私たちの愛の巣へ!」


 考えてばかりだったからだろうか。アスモデウスのテンションに全くついて行けない。

 俺は仕方なく彼女のことを考えるのをやめ、アスモデウスの方を向いた。


「……ん?どうしたんですか?創造神と戦うことを予想して出掛けようと声を掛けたのはイヅナ様じゃないですか。」


「確かに俺は出掛けるぞと声を掛けた。だが、愛の巣へ行くとは言ってない。そもそも愛の巣などないし、もしも存在して行くとしても、ルネとベルゼブは連れて行かないだろ。」


 そう言ってアスモデウスの後ろを指差す。

 アスモデウスは俺の指を追い、後ろを向く。そして、あからさまな態度で2人を見る。


「ちっ!…ルナ、いつから居たんですか?私の背後を取るとは少しは成長したようですね。」


「むー(舌打ち)。」


「おかしいな。さっきまで話をしていた気がするんだけど。」


「気のせいですね。」


「き、気のせいなのかい?」


 不遇の扱い。頑張れ、ルネ。

 とここまではいつもの流れだ。場は和んだ……のかは分からないが普段の調子にはなった?筈だ。


「それでこんな時間に僕たちを呼んだ理由はなんだい?」


 ルナが話題を変える。


「それについては移動してから話す。アスモデウス、ルネ、ベルゼブ、俺につかまってくれ。」


「むー(了解)。」


「これでいいかい?」


「もうイヅナ様ったら、つかまってじゃなくてちゃんと抱きついてくれって……。」


「よし行くぞ。」


 俺は『瞬間移動』を使用した。景色が変わる瞬間、『ま、待っ……。』と聞こえたのは気のせいだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ここは…。」


 ルネが辺りを見回す。

 そこはまるで何処かの城内を思わせる場所だった。何本もの柱が立ち並び、天井を支える。絵画や彫刻などはなく、赤い宝石がシャンデリアのように吊るされているのみ。

 ルネはその景色に見とれていて気づかなかった。目の前に現れた存在に。


 キィーン。


 金属同士がぶつかったような音が響く。


「え?」


 ルネはそこで初めて気づいた。自分の目の前に翼を持った男がいることを。その男の手刀を首に当たる直前で俺が防いでいることに。


「止めろルシファー。こいつは仲間だ。」


「仲間…か。この程度の実力で役に立つのか?」


 ルシファーはそう言いながら下がる。


「イ、イヅナくん?」


 ルネが何が何がなんだかわからないという顔で俺を見つめてきた。まあ、いきなり転移して知らない場所に来た瞬間に、知らない奴に殺されかければ誰でもこうなるか。


「悪かったな。こいつはルシファー。悪魔王だ。それでここはダンジョン『聖なる祠』の最深部だ。」


「………。」


「むー(動かない)。」


 ベルゼブが放心状態のルネを突くが、理解が追いつかないようでなかなか動いてくれない。そんなルネにルシファーは容赦しない。


「動かぬの者など戦力にならん。邪魔なだけだ。」


「まあ、そう言うな。ルネの実力は俺が認める。ルシファーのレベルでは戦えなくともレッサーデーモンレベルなら一撃で倒せる。」


 フォローするが、ルシファーはまだ納得がいかないようだ。認めればしっかりと仲間と認識するが、その認めるまでが長い。少しめんどくさいな。


「イ、イヅナくん。」


 ようやく動き出したルネが俺が話を本題へと移す。


「結局、何で僕たちはここに連れてこられたんだい?」


「そう言えばまだ説明してなかったな。それはだな………あ。」


「ん?どうしたんだい?」


 俺はふっと思い出した。


「ルネ、大事?かは分からんが何か忘れてないか?」


「忘れてる?……あ。」


 ルネも気づく。


「むーむー(アスモデウスを置いて来たまま)。」


 そう、アスモデウスのことを忘れていた。本当ならばルネたちをこちらに連れて来てすぐに戻ってアスモデウスも連れてくる予定だったのだが、ルシファーがルネをいきなり攻撃してきたり、そのルシファーの説明をしていたりで忘れていた。


「怒ってると思うから?」


「まず間違いないね。」


「むーむー(早く戻った方が良い)。」


「そうだな。じゃあ、行ってくる。説明はその後だ。」


 俺は『瞬間移動』を使用し、グラム王城内の俺の部屋に移動した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 俺はアスモデウスが部屋の隅で泣いていたり、頬を膨らませ怒っていたり、突然攻撃をしてきたり、と様々な可能性を考えた。そして、例えどんな対応をされても先ずは素直に謝ろうと思っていた。が、目の前の光景にその気も失せる。


「はあ、はあ、はあ、イヅナ様のベッド。イヅナ様の匂い。すぅ〜〜〜〜……はあ〜〜〜。たまりません!いや、置いていかれたときは怒ってしまいましたが、今の状況を考えると逆にラッキーでしたね。帰ってくるまでこの匂いを堪能して、帰ってきたら布団に包まり泣いているふりをする。流石、私!完璧な作戦です。」


「完璧か?」


「ええ!何処にも疑われる心配もない完璧な作戦です。イヅナ様もそう思いますよね?……ってイヅナ様?」


 ようやく気づいた変態アスモデウスは布団に包まったままゆっくりと振り向く。その顔は先ほどの楽しそうな表情からは想像できないほど、青く、絶望に満ちた表情だった。


「あ、そのイヅナ様……わ、私を置いて行くなんて酷いじゃないですか!」


 成る程、今のことをなかったことにしようとしているわけか。追い込まれた状況でどうにかして絞り出した考えなのだろう。


「………アスモデウス。」


「な、何ですか!」


「俺も直ぐに戻ってアスモデウスを連れて行こうと考えていたが、うっかり忘れて遅くなった。だから、最初は謝ろうとそう考えてた。ここに来るまでは。」


「今さらっと酷いこと言いましたよ。」


「……まさか、アスモデウスが付き人から変態に変わっていたとは思わなかった。」


「へ、変態じゃないですよ。ただ、イヅナ様の匂いを堪能していただけです。良い匂いするんですよ!何で分かんないんですか!」


「何で逆ギレするんだ。」


 良くこの状況でと思わず感心する。全く、何で俺はこんな奴を好きになったのか。


「はあ〜。これ以上話していてもキリが無い。ほら掴まれ行くぞ。」


 俺はそう言ってアスモデウスに手を差し出す。が、何故かアスモデウスはその手を取らない。それどころかベッドから出ようとしない。


「どうした?」


「え?いや、あの。じ、実はテンションが上がりすぎてその……服を……。」


 アスモデウスの視線の先には先程まで彼女が着ていた服があった。


「ち、違うんですよ!ただ、私はイヅナ様に私の匂いを堪能してもらおうと!」


「………。」


「イ、イヅナ様!待っ……。」


 俺は『瞬間移動』をし、『聖なる祠』へと戻った。


「あれ?アスモデウスさんは?」


「…………。」


 ルネの質問にどう答えれば良いか思いつかず、俺は渋々アスモデウスのもとへと戻る。そのときにはアスモデウスは既に服を着ていた。そして、珍しく静かだった。





久しぶりの登場から暴走するアスモデウスでした。

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