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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第5章 教師編
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気がついたら真っ白でした

この章はおそらくほかの章よりも短くなると思います。それでもしばらくは主人公たちの出番は無いです。

主人公たちの方が知りたい!と思いの方すみません。



「う、う〜ん。」


目を覚ますと中島はベッドの上にいた。そこで1つの疑問を持つ。何故、寝ているのかと。

自分の記憶が正しければ、生徒たちと共に夕食をとっていたはずだ。だがそこから先の記憶がない。


「えーっと。」


何とか思い出そうとしていると、扉が開きジエルが入ってきた。


「おはようございます。」


「おはようございます。どうやらよく眠れたようですね。」


「そのことなんですが。昨日の夕食の途中から自分が何をしていたのか、思い出せないんです。ジエルさんは何か知っていますか?」


中島は身の回りの世話もしてくれる彼女なら何か知っているのではと聞いてみる。しかし、ジエルは考えるはするもののわからないと首を振った。


「そうですか。」


中島が残念そうにすると、ジエルは頭を下げた。


「申し訳ありません。ただ…。」


「ただ?」


ゆっくりと上がってきた彼女の表情を見たとき、私は意外に思った。クールで表情を変えない、なんでも出来てしまうメイド、ジエルはそういう人物だと思っていたのだ。だが、今の彼女は微笑んでいた。そして、彼女は言った。


「もしかしたら、うっかりコックが睡眠薬でも仕込んでしまったのかもしれません。」


「……あ。」


その言葉で理解した。何故眠ってしまったのかを。


「まさか、ジエルさん。」


「どうされましたか?」


そう応える彼女はいつも通り、クールなイメージを持たせる姿であった。まるで先程の悪戯っぽい表情が嘘のように。

中島はこのとき思った。彼女の忠告には素直に従おうと。


「な、何でもありません。」


「そうですか。それでは準備をした後、朝食へと向かいましょう。」


中島はジエルの言う通りに従い、着替え等をすませ、すぐに朝食へと向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



朝食を済ませた中島は昨日と同じように本を読んでいた。ジエルもそれに伴いせっせと働いていた。ただ、そんな中で1つだけ昨日と違うことがある。それはジエルが運んできているものだ。


「この器具はここで宜しいですか?」


「あ、はい。ありがとうございます。」


何故、ジエルがそんなものを運んできているのかと言うと薬を調合しようと考えたからだ。いくら知識があったとしてもそれが役に立たなければ何の意味もない。

初めに何から調合しようかと悩んだが。


「睡眠薬はどうでしょうか。心地の良い睡眠をする為のものがあった筈です。きっと勇者様の助けになります。」


とジエルが言い、決定した。


「効果も中島様に使よ……偶々コックが投与してしまったものと似ています。疲れが取れることはご自身で体験しているので分かるのではありませんか?」


「そうですね。グッスリ眠れたので疲れは取れましたし、ですが、調合するにも材料や器具などは…。」


中島が皆まで言う前にジエルが口を開いた。


「問題ありません。午後には用意できます。」


ジエルのその言葉は何故か信じれてしまう。本を読んでいる間にもジエルはどんどんと物品を運んでくる。

そして、その言葉の通り、午後には全ての準備が整った。


「では始めましょう。」


「そうですね。えーっと先ずは……。」


薬草をすりつぶし、お湯に入れ、数分茹でる。そして、茹でた薬草をすりつぶし、そこに切り刻んだ魔物の睡眠袋と呼ばれる部位を加える。焦げ茶色と深い緑が入り混じった色に、酷く鼻に着く匂い、中島たちは苦しみながらも作業を続ける。

鍋に移し、さらに加熱する。そして、加熱が終わると……。


「何でこんなに真っ白になるんでしょうか?」


「確か先程の魔物の睡眠袋には漂白効果に似たものがあるようです。特に植物に効果が大きいのか、このように白くなると聞いております。」


「もともと茶色の物に漂白効果ですか、不思議ですね。」


「そうでしょうか?」


中島にとっては不思議なことでも、この世界で生きてきたジエルにとっては当たり前なのだ。だが、こんな軽い質問でもやはり地球ではない別の世界なのだと、理解できてしまう。

そして、それは生徒たちも同じだろう。普段の何気ない会話でここが自分の生まれ育った場所では無いと感じてしまう。だからこそ帰りたいと願う者がいて、中島はその者たちを早く帰らせてあげたいと思うのだ。

中島は今のジエルとの短い会話で改めて気を引き締めるのだった。


「よし、ジエルさん。早く調合を終わらせましょう。」


「あまり急ぎすぎるのも良くありませんが、承知しました。」


急な話題の変更にもジエルは的確に返答する。そして、2人は睡眠薬の調合を続けた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「で、出来た。」


「お疲れさまです。」


睡眠薬の調合には見事に成功したが、日はすっかり沈み、あたりには夜の帳が下りている。

初めてだったとは言え、簡単な部類に入る睡眠薬の調合にこれだけ時間がかかっていては先が思いやられる。


「ジエルさんに手伝って貰ってこれでは駄目ですね。」


「いえ、初めてであれだけのことが出来れば充分ではないでしょうか?」


「そうですか?それなら良いんですが。」


きっと世辞だろう。それでもジエルに褒められるのは素直に嬉しかった。


「調合を始めてから気づいたんですが、これくらいしかあの子達のためになるようなものも見つかりませんでした。だからあのときジエルさんは提案してくれたんですよね?」


「さあ、どうでしょうか。」


この世界に召喚された生徒たち全員が力を手に入れた。そして、その中には病気や怪我などを治せる魔法を覚えた子たちも何人もいたのだ。身体能力を上昇させるものもいた。他にも色々な力を持つ子がいて、大体のことは薬に頼らなくとも実行できた。

ただこの睡眠薬と同じことができる子はいなかった。ただ眠らせることができる子ならいた。しかし

心地よく・・・・眠らせる事のできるものはいなかった。

ジエルはおそらくそれに気づき、提案をしてくれた。今更だが本当に優秀なメイドだと中島は思った。何より自分の為に頑張ってくれている。

そんなジエルを中島は休ませてあげたいと考えた。


「ジエルさん、明日は私の手伝いをしなくて良いですから休んでください。」


「いえ、でしたら明日は通常の勤務に戻ります。」


ジエルは何処までも真面目だ。だが、それでは意味がない。中島はどうにかして彼女を休ませることは出来ないかと考えたが、思いつかない。しかし、別の案を思いついた。


「ジエルさん、明日は街に行きましょう。」


「街にですか?」


「そうです。それでジエルさんは私の……付き人?と言うことで同行してください。」


「かしこまりました。」


休ませることが出来ないのなら、せめてリフレッシュしてもらおう。それが中島の考えだ。そして、その誘いをジエルは仕事とは思っていても受けてくれた。


「それでは明日朝食を取った後に出かけましょう。」


「かしこまりました。それでは失礼します。」


そう言ってジエルは部屋を後にした。その後、中島は一体どうすればジエルがリフレッシュ出来るのかと考えたが、思いつかず、生徒の1人に相談したところ、何故か中島とジエルが出掛けるという話は広まり、数人の生徒たちが付いてくることとなった。

大丈夫と彼らは行っていたが、逆にジエルを疲れさせてしまうのではないかとどうしても心配してしまう中島であった。














次回は木曜日に投稿します。

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