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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第5章 教師編
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気がついたら眠ってました

中島先生再び。忘れている方もいそうですね。

ーーー中島先生SIDEーーー



時は少し遡り、イヅナたちがグラム王国を発ったとき、残った勇者たちはその背中を見ていた。彼らがそのとき思っていたことは様々だろう。頑張って、【聖剣】を絶対手に入れろよ、必ず帰ってこい、他にもあるだろう。

そんな中、1人の人物は胸に手を当て、その姿が見えなくなるまで、旅立っていった彼らの無事を祈っていた。その者の名は中島小百合。地球の高校で国語の教師をしていた。だが、そんな彼女も勇者たちと同様、異世界へと召喚されてしまう。

教師である自分が生徒たちを守ると考えるも、上手くいかず、悩みを聞いてもらっていた相手から、自分がただ逃げていたこと、自分を大切にしていたことに気づかされた。

彼女の心は一度折れた。だが、だからこそ今の中島小百合がいるなかもしれない。気づかされ、気づいたこと。いや、正確には1つの決心がついたと言った方が正しいのかもしれない。彼女は考えに考え、自分を変えないことを決めたのだ。

逃げ出してしまった。それはもう認めよう。

自分を大切にしていた。だとしてもそれで生徒たちの為に行動をするならそれで良い。

嘘で見繕った自分がバレたならそのときに素直になれば良い。だから、今自分に出来ることをやろう。



「よし!」


中島は両手で頰を力一杯叩いた。


「…っ!流石に強すぎたわね。」


ヒリヒリとする頰。しかし、そんな事を気にしてはいられない。中島は勇者たちが向かった方向に背を向け、王城へと向かう。

彼女の今の目的は2つ。1つは戦えないのなら救護などを出来るようになろうという事だ。例え、回復の出来るスキルが無くとも薬を作ったり、カウンセリンをする事は出来る。戻ってきた彼らに最大限出来る事をしてあげる。そのための知識を身につける。

そして、もう1つは魔神を倒さずとも地球に戻れる方法を探すことだ。残った勇者の中には地球を恋しく思い、何処か上の空の者もいる。そんな者たちの為にするのだ。


「出来るかはわからない。けどやるしかない。それに今のままの自分で行くとは決めたけど、あの子にまたあんな事を言われないようにはなりたいものね。」


そう言って中島は学園で出会った不思議なあの少女のことを思い浮かべる。結局、お礼も言えていない。また、会える機会があればそのときに言おう。中島の目的が1つ増える。



「王城内にある書物を読む許可を貰う。まずはそこからね。」


中島は王への謁見を求めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



3日が経った。王城内のとある一室では本が山のように積まれていた。そして、その中に中島の姿があった。

王から書物の許可を貰った中島は次の日から行動に移った。まずどの様な種類のものがあるのかを確認した。薬などについて書かれているものは多く出てきたが、カウンセリングの書物はそのものは愚か、近いものすら見つからない。この世界ではあまり、広まっていないのだろう、と考え、中島はカウンセリングの書物を見つけることを早々に諦めた。探す時間があるなら知識を詰め込もうと考えたのだ。

だが、逆にもう1つの目的である、地球への帰還方法は書物が見つからなくとも、探し続けた。こちらは諦めるわけにはいかない。

中島は午前中を書物を探す時間に、午後を読む時間にし、1日を過ごしていた。大量の本を読んだせいか、いつの間にか『高速思考』と言うスキルを手に入れていた。本人に自覚はなかったのだが、本を読むの速くなったと言われ、ようやく気づいた。そして、それに気づかせてくれたのが。


「こちらは何処に置けば宜しいでしょうか?」


「そこの本の上にお願いします。」


「かしこまりました。」


王が中島の為に付けたメイドである。名前をジエルという。平民でではあるが何でも仕事を正確に速くこなすことでメイドたちの中では有名らしく、それを知った王がジエルを中島の専属のメイドとしたのだ。そして、その仕事は素晴らしく、中島がどう言った本が必要か説明すると、何冊もの本を見つけてくれる。因みに今、山のように積まれている本は中島が最初に…。


「薬についての書物をお願いしても良いですか?」


と言い。


「かしこまりました。」


とジエルが言い。この量なのだ。更に言えば今持って来たものも薬についてのものだ。一体何処から持って来たのだろうと思うがこれだけ大きい王城の中ならこのくらいはあるかと考えた。

また、本を読み終わり、次の物に手を伸ばそうとするとジエルの手によって遮られる。


「ジエルさん?」


「そろそろ夕食のお時間です。それに少しは休まれないと体調を崩してしまいます。無理をしては駄目ですよ。」


「ありがとうございます。けど、生徒たちの為ですから、少しくらい無理はさせてください。


中島の要求にジエルは少し考えるが、中島の純粋な気持ちが伝わったのか、溜息をしながらも許可してくれた。


「少しだけですよ?度が過ぎたことをしたら、料理長に頼んで貴方の料理に睡眠薬をいれて貰いますから。」


冗談か、本当なのかは分からなかったが、中島はジエルに感謝をした。

それから数日後、夕食を食べているとき中島が急に眠るという事件が起きた。勇者たちは心配したが、ジエルは……。


「お疲れになっただけです。私が部屋まで運んでおきますので皆様はごゆっくりと夕食をお楽しみください。」


と言い、中島を部屋に運んで行ったのだった。





ジエルさんは完璧メイド。隙もありません。多分。

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