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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第4章 デミア大陸編
109/164

気がついたら我儘でした

最近、総合PVを見ていなかったなあ、と思い。確認して見ました。10万PV?なんか減ってない。そう思い、もう一度確認して見たら100万PVでしたね。

………100万!?と思わず言ってしまいました。本当にびっくり。

皆さま、本当にありがとうございます。これからも頑張っていきますので『気がついたら魔神でした』を引き続きよろしくお願いします。

それと次回の投稿は日曜日を予定してます。もしかしたら木曜日かもしれません。

ーーーラフィーエSIDEーーー



妾は椅子に腰をかけ、窓を眺めていた。そう、窓から見える景色ではなく窓を見ていたのじゃ。何百年も前に同じことをしていた記憶がある。毎日が夢のようで楽しかったあの頃、ケリアがまだいた頃のこと。あやつはいつも窓から部屋に入って来ていた。気づけば妾はケリアを待ち窓を見つめていたのじゃ。

ケリアと別れてからも同じことをしていた。もしかしたらケリアはまだ。そんな可能性もないことを考えながら。じゃが、数年が経ちそれもやめた。虚しくなるだけじゃと気づいたのじゃ。それからは床に敷かれたカーペットの模様をぼーっと見ていた。そして、誰かが来れば扉の方を向き、受け答えをする。呼ばれれば付いて行く。何も楽しいことなどなかった。

じゃが、それも変わった。ある日、いつもとは違い、声を掛けられることもなく扉が開いた。するとそこには黒いマントを身に纏った銀髪の人間がいた。その者は話がしたいと言った。妾は意味がわからなかった。何故、妾と話そうと、話せると思ったのかと。じゃが、そう思う反面、ケリアとの出会いを彷彿とさせるその様子に気がつけばその人間と、イヅナと話をしていた。久しぶりに楽しいと感じた。また、あの頃のような日々が送れるのではないかと思った。

しかし、妾はリルカスによって自由を奪われた。ただ黒い世界が広がっていた。何もない、そんな世界が。そんな中で妾はケリアのことを思い出した。あの別れの瞬間を、後悔を。もう終わりだと思った。

じゃが、イヅナは妾を終わらせてはくれなかった。もう一度話したいと、今度は後悔したくないとそう思わせて来れた。イヅナを呼んだ。今、イヅナを待っている。最初にも言ったが、妾は窓を見ている。普通なら、扉の方を向き、待っているのかもしれん。ただ、妾は思ったのじゃ。どこかケリアに似ていて、妾のことをよく知ってしまったイヅナは窓から入ってくるのではないか、と。そして、どうやらそれは当たったようじゃ。


「来たぞ…ってまさか気づいてたのか?」


窓から入って来たイヅナは驚いた表情でこちらを見ておる。そんな表情もするのじゃな。良いことを知れた。


「無論じゃ。お主の考えそうなことくらい妾には分かる。」


「少し驚かせようと思ったんだが、逆に驚かされたな。」


「そうか。まあ、座るが良い。」


「そうさせて貰う。」


イヅナを座らせると妾もイヅナと向かい合う形で座る。心音がするわけではないのじゃが、ドキドキしてある気がするのう。頰も赤くなっておる気がする。

じゃが、仕方ない。なにせ妾は惚れてしまったじゃからな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーイヅナSIDEーーー



「それで部屋に呼んだわけは何だ?」


俺はラフィーエにそう問うが、どう答えるかは予想は出来ている。きっと彼女なら…。


「話をしたいだけじゃ。」


と答える。


「そうか。じゃあ、何を話すんだ?勇者たちがくるまでの間に色々話したしな。もう話題もないんじゃないか?」


「何を言うか。妾はまだまだ話題を隠し持っておるわ。それに最近も1つ出来たではないか。妾が『傀儡』された事件が。」


「……そうだな。」


リルカスの企みで起きた一連の事件。ラフィーエが操られ、勇者たちが死にかけた。俺はてっきりそんなことは忘れてしまいたいと言って話題にはならないと思っていたが、彼女からすればそんなことは些細なことらしい。


「まさか妾が操られるとはのう。驚いたものじゃ。」


「それはこっちのセリフだ。」


「ハハ、そうなのか?じゃが、それもこれもある意味では妾の自業自得じゃな。上に立つものでありながら、下にいる者たちのことを理解しておらんかったのじゃから。」


「それは仕方ないことだろう。」


身近にあるもの程気づかないこともある。まあ、ラフィーエの場合はただ興味もなく、そんな可能性のことなど考えもしなかったと言うのが正しいとは思うが。それでもあのときのラフィーエでは仕方がないと思ってしまう。


「仕方なくなどない。目を背けていたのは妾なのじゃからな。」


「ラフィーエ……。」


「ん?ああ、すまない。暗い雰囲気になってしまった。少し話を変えよう。イヅナ、遅くなったが、礼を言うぞ。よくぞ、妾を救ってくれた。」


「どういたしまして。」


「うむ、礼を素直に受け止めるところもついでに褒めてくれようぞ。」


「それはどうも。」


ラフィーエは俺のことを褒める。今の様子を見れば今までもそうしてきたように見えてしまう。それ程までに自然だ。

だが、それは本来の彼女に戻っただけだからだ。ケリアを失い数百年。その長い期間が彼女を変えてしまった。だが、『傀儡』から解放されてからの彼女は別のものからも解放されたかのようだった。きっとそれが今ならラフィーエに至った1つの要因なのだろう。


「そうじゃ、イヅナよ。1つ、妾の願いを聞いてはくれぬか?」


「願い?」


俺は思わず首を傾げた。ラフィーエが俺に対して寝顔を言ったことにだ。彼女の立場ならばある程度の願いを叶えられると思う。しかし、俺に対して言うとはきっと何かしらのわけがあるのだろう。

俺は深く頷き了承する。


「そうか、なら明日いや、今で良い。妾にお主を送り出させてはくれぬか?」


「送り出す?」


俺は再び首を傾げる。ラフィーエは送り出すと言ったが、見送りのことを言っている。だが、ラフィーエも一国を統べるもの、世界会議には出席する。つまり、一緒に行くのだ。そんな彼女が何故、とまで考えて俺は気づいた。そして、それと同時にラフィーエが口を開く。


「妾はケリアを送り出せてはやれなかった。本当はしてやりたかったのじゃ。じゃが、あやつが死ぬことをわかっていてはそんな事など出来んかった。」


俺も見た彼女のつらい過去。愛する者が死ぬ為に戦場へ行くと伝えられ、止めようとして、止められなかった。涙を流すことしかできなかった出来事だ。

後悔はしたくない。そんな彼女の思いの表れが、今の願いなのだろう。


「だから、妾はしたいのじゃ、この部屋から出て行く、ときでも構わん。この場所で、夜都“デリン”でおくりだしたいのじゃ。妾の心を奪った者を。」


「ラフィーエ。」


「これは妾の我儘じゃ。じゃが、お願いでもある。イヅナよ、頼まれてはくれぬか?」


ラフィーエは俺の目を見つめ、頼む。俺もラフィーエの目を見返す。よく見ると彼女の目は潤んでいた。断られたらどうしよう。そんな思いが伝わってくる。

まあ、前の男に出来なかったことを今やりたいなんて言ったら、よく思わない奴もいるだろう。だが……。


「……なあ、ラフィーエ。」


「な、なんじゃ。」


「俺のことどう思ってるんだ?」


その質問に何故か、ラフィーエは俯いて、応える。断られるとでも思ったのか?


「……話していて楽しい。優しい。それに強い。そう思っておる。それと可愛らしい容姿とも…。」


「そうか。優しいもあるか。」


「あるぞ。」


「なら……俺が断れるわけが無い事くらい分からないのか?」


「え?」


ラフィーエは顔を上げ、再び俺を見つめる。


「よ、良いのか?ケリアに出来なかったことをお主でやろうとしているのじゃぞ?」


「それがどうしたんだ?やれば良い。それが今のラフィーエの願いなんだろ?だったら俺はそれに応えてやりたい。」


「そ、そうか。うむ。そうか。」


嬉しそうにしながら、目をそらすラフィーエ。照れてるんだな。


「だが、残念なことにそれを今すぐやるとこれ以上の話は出来なくなるぞ?」


「構わぬ、明日の為の準備もあるしのう。丁度良い。」


「そうか。」


俺は窓の方へと向かい、窓を開け、振り向く。


「それじゃあ、言ってくる。」


ラフィーエはそんな俺の方へと駆け出し、俺に口づけをした。


「行ってらっしゃい。必ず帰ってくるのじゃぞ?」


「あ、ああ。」


俺はそのまま窓から飛び出し、ラフィーエの部屋を後にした。


「一体どんな見送りだ。」


俺はそう言いながら、自分の唇に触れる。


「何度されても慣れないもんだな。」


こうして俺は自分の部屋へと戻り、明日の為の準備を始めた。

そして後日、世界会議に出席する為、勇者、エルティナ、ラフィーエ、護衛の騎士たちと共に“夜都デリン”を後にしたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーイヅナの去った後のラフィーエの部屋でーーー



「あ、あれで良かったのか?な、何とか平静は保てたのう。じゃ、じゃが、口づけなど初めてした。へ、下手ではなかったかのう?大丈夫じゃったか?」


ラフィーエの独り言はその後も続いた。





これでデミア大陸編は終わりです。次回からはサモン大陸に残っていた方の話となります。

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