気がついたら【聖剣デュランダル】でした
突然の投稿。
それとお知らせ。
今週の日曜日に急用が出来てしまい投稿出来ないかも知れません。なので土曜日に投稿しようと思います。よろしくお願いします。
3日後、俺たちはラフィーエに呼ばれ、再び彼女の部屋を訪れた。リルカスとの一件があったあの部屋に呼ばれると思っていたのだが、彼女の部屋に最初から来てもらった方が後の移動が楽だと言い、ラフィーエの部屋へ行くこととなった。
3日ぶりに見た彼女の顔は前よりも楽しそうに見えた。吸血鬼である彼女だ、顔色が変わったりなどの変化は特にない。しかし、今この瞬間を楽しんでいるような印象を受けた。エルティナを小馬鹿にするときも自然と笑顔が出ており、『傀儡』の状態の時とは大違いだ。
ラフィーエは全員が揃ったことを確認しすると、【聖剣】についての話を始める。
「勇者たちよ、お主らには約束通り【聖剣デュランダル】を授けよう、と言いたいのじゃが、確実に渡せるとは限らない。」
「それはその【聖剣デュランダル】がここにいる者を使い手として認めなかったら、と言うのはことでしょうか?」
颯太はラフィーエの話から予測し、質問をする。そして、それは正しくラフィーエは首を縦に振った。
「その通りじゃ。まあ、その場合は諦めて貰うしかないがのう。」
確かにいくら【聖剣】を手に入れたところで、【聖剣】自身が使い手として認めなければその力を使うことは出来ない。いや、それ以前に剣として振るうことすら出来ぬだろう。
【聖剣】が手に入ると少し浮かれていた勇者たちはそのことを考えていなかったようで場の空気が暗くなる。だが、俺の親友はそんなことを気にするような奴ではない。
「問題ないな!【聖剣】が認めなかろうと俺が認めさせてやるぜ!」
「ぷっ…。」
何の根拠も無いその言葉に思わず吹き出してしまった。
「何笑ってんだよ、雅風。」
「悪い悪い。余りにも何も考えてなさそうだったからつい。だが、そんな考え方は嫌いじゃない。」
「それは褒めてんのか、馬鹿にしてんのか、どっちだ?」
「想像に任せるよ。」
俺はラフィーエの方を向き、話を進めるように伝える。
「まあ、お主たちを案内しないことには始まらない。付いて来るのじゃ。」
俺たちは【聖剣デュランダル】の元へと向かう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「この階段の先じゃ。そこに【聖剣デュランダル】がある。」
まだその姿は見えぬが肌で感じられる気?とでも言うのだろうか、それがラフィーエの言葉が嘘でないのだと理解させる。
【エクスカリバー】、【カラドボルグ】、【グラム】。今までの【聖剣】からも似たようなものを感じた。それは長年の間に培われて来たその剣の意思であり、力。戦場を超え、時空を超えた。そんな超常の剣こそが【聖剣】なのだ。
「そう言えば【聖剣デュランダル】の力って何なんだ?」
ふっと歩がそんなことを言い出した。王国にいたときにその辺り勉強はしただろ、と颯太は言うが、歩の他にも忘れている者がいたので頭を抱えてしまった。
「すみません。ラフィーエさん。」
「別に気にしなくとも良い。それに王国では知り得なかった知識があるかも知れぬしな、妾が説明してやろう。」
以前のラフィーエは人を自分よりも下の存在だと認識していた。だが、今のラフィーエの言葉聞き、彼女の中で何かが変わっているのではないかと感じた。そして、その変化は俺からすればとても嬉しいものだった。
かつてケリアと共に過ごしていたときと同じように、いや、そのとき以上に、彼女が自身の心に素直になってくれることを俺は願う。
俺がラフィーエのことを考えている間にもラフィーエは【聖剣デュランダル】の話を続ける。
「【聖剣デュランダル】。その力は『不滅』じゃ。」
「『不滅』?無くならないってことか?」
「うむ、その通りじゃ。【デュランダル】を使用している間、その者が死ぬことも、消えることもない。唯一にして無二の力。」
「つまり無敵ってわけか!」
歩はそう言うがラフィーエはそれを否定する。
「無敵などではない。『不滅』確かにそれだけ聞けば大層な力に聞こえよう。じゃが、それ以外には何もないのじゃ。いや、正確に言えばあるかも知れぬが今までに発動した記録はない。他の【聖剣】であれば『犠牲』により強大な力を生み出すことや、自在に形を変え、攻撃を跳ね返し『守護』する力などがある。じゃが、【デュランダル】だけは違う。決して死なぬ、決して逃げる事は出来ぬ、そんな状況下で己の力のみで戦わなくてはならない。ある意味では【デュランダル】の使い手となる者は最も過酷な戦いを強いられるとも言えるじゃろう。」
ラフィーエの言葉に一同は言葉を失う。【聖剣デュランダル】は今までの【聖剣】とはあまりにも違った。
『不滅』。最早それは一種の呪いなう様なもの。戦い、どれだけ傷付き、どれだけ血を履こうとも、使い手は死ぬ事はない。そんな地獄の様な戦いをしなくてはならないのだ。
「もう一度だけ問おう。お主らはこの【聖剣デュランダル】を望むか?」
「望むだろ。」
皆が暗い顔になり、俯いてしまう中、1人即答する者がいた。まあ、それが誰かなど言うまでも無いことだが一応、言おう。歩だ。
「歩、一応聞くが話は聞いてたのか?」
「雅風、幾ら何でもこの距離での言葉を聞き逃すほど俺の耳は悪くないぜ。」
「だろうな。」
つまり、歩にとって先のラフィーエの話などその程度に過ぎないと言うことだ。彼の場合、既に「2つ名を付けるとしたら『不滅の歩』とかか?」などと考えているのかも知れない。
「俺が選ばれたら『不滅の歩』と呼んでくれ!」
ほらな。
「ハハハ、イヅナの友人とやらも随分変わっておるな。」
「その言い方だと俺も変人だと言ってるようだが。」
「ん?そのつもりじゃが。」
「……そうか。」
「こんな孤独な吸血鬼に手を差し伸べる者など変人しかおらんじゃろ。」
「……かもな。」
変人だと言われ、少しショックを受けたが、その後に続いたラフィーエの言葉に俺は照れてしまう。全く、こんなことをしてる場合ではないと言うのに。
長い階段を登り終えた俺たちの前に鎖で縛られた剣が現れる。そう、【聖剣デュランダル】だ。
「勇者たちよ。準備は良いか?」
ラフィーエの確認に、勇者たちは首を縦に振る。すると次の瞬間、【聖剣デュランダル】が輝き始めた。そのあまりの眩しさに目を開くことはできないが、金属の音が聞こえる。恐らく【聖剣デュランダル】を縛っていた鎖が千切れてしまったのだろう。暫くして金属音は聞こえなくなり、ようやく光が治る。そして、担い手が選ばれた。
「よっしゃあ!『不滅の歩』の誕生だぜ!」
【聖剣デュランダル】は俺の親友、木下歩を選んだ。