第一羽〜はじまり〜
初投稿ですが、がんばります!よろしくお願いします!
鵺。
平家物語に登場する伝説の怪鳥。
顔は猿。
胴体は狸。
手足は虎。
尾は蛇であるとされる。
そして現代。
鵺の『生まれ変わり』がいた。
北東の寅 睦新京極
南東の巳 小倉皐月
南西の申 宇治弥生
北西の乾 鹿苑寺龍
これは、そんな4人と1人の嘘つきの物語。
なーんて。
壮大な物語が始まっちゃうよー、みたいな大げさなプロローグなんかしてみたりして。
いや、全然そんなこと無いんで。
あ、申し遅れました。
僕の名前は三条京。
とっても素敵で愉快なこの物語の主人公です。
プロローグでいってたプラス1人の嘘つきくんです。
…そんな同情するよみたいな目で見ないでください。
主人公だからって鵺の『生まれ変わり』とかいう特別な立場に置かれると思ったら大間違いですよ。
さて。皆様への説明も済んだことですし、ちょっとある人のところへ行きますか。
そうして僕がやってきたのは、塀に囲まれた白い庭付き一戸建ての家の前。インターホンを押そうとしてー
ガチャ
「お帰りなさいアナタ。ご飯にする?お風呂にする?それとも、あ・た・し?」
「………」
出てきたのは大きめのTシャツにスタイリッシュなジーンズ、そしてフリフリのピンクのエプロンという意味のわからない姿の女性。
誤解の無いように言っておくと僕はまだ16歳で結婚なんてもちろんしていませんし、まだ朝の9時を少し過ぎた頃です。
僕は一瞬のフリーズの後、その女性の横をすり抜けて家の中に入っていきました。
「あ、ひどいよ三条くん。お姉さん傷ついちゃうなー」
その女性、もとい知闇うゆみさんはぶちぶち文句を言って、ついでにエプロンを脱ぎ捨てながら僕の後ろをついてきます。
8畳間の和室が一部屋にトイレ風呂キッチン付き。
部屋の真ん中にはお菓子やらパソコンやらが広がった卓袱台がおいてあり、その周りにはラノベやマンガ。そして出しっぱなしの布団。
「うゆみさん、いい加減ちゃんと仕事してください。あなたの歳でコレはそろそろやばいです」
「いやいや。これでも一応バイトはしてんだよ?いや、してたんだよ?昨日までは」
「…またクビになったんですか」
「いやー、居酒屋さんってちょこっとお客さんと世間話して盛り上がってただけでクビにされるんだね~。ひとつ賢くなっちゃった♪」
てへっ。そんな風に舌を出しておどけてみせる無職の26歳なんて見ていて残念でしかありません。
「で、三条くん。アレ持ってきてくれた?」
「えぇ、もちろん持ってきましたよ」
言って、僕は『例のもの』を取り出します。
「深夜アニメのドラマCDプレミア版です、どうぞ」
「きゃっほーぅ!!三条くん大好き愛してる~!」
うゆみさんは僕からドラマCDを受け取ると、それを高々とかかげクルクルと回りながら小躍りし始めます。
な、なんて痛い26歳なんだ…絶対こんな大人にはなりたくない…。
「三条くん今失礼なこと考えてるでしょ」
「バレましたか」
「バレましたとも」
うーん、このどうでもいいことに対する敗北感。ちくせう。
「まぁ、とにかく目的は果たしましたので僕は家に帰ります。お邪魔しました、うゆみさん」
「ほいほーい、またおいで~…っと。ちょっと待って、三条くん」
「はい?」
「ほい、これ」
ぽん、と気軽な感じに僕の手の上に置かれたのはB5サイズの紙束。
「……」
「お仕事の依頼。がんばってねん♪」
「…うゆみさん」
「ん?」
「めんどいんで不受理ということで「死んでしまえ」
「……」
ニートなうゆみさんの前で仕事を蹴るというのはどうやらタブーのようでした。