GWは五月病の原因かと
家でのお話です。五月上旬、ゴールデンウィークを明日に控えた素敵な夕刻。
そんな素敵な時間にあたしは家の玄関で力尽き、靴を脱いだ所から座り込んでいました。
それもたったの二十分。たったの二十分であたしの安息の時間は壊されてしまったのです。弟の帰宅によって、気分的に。
「ただいまー……ってめはね。明日から遊ぶ友達もいないからって悲しく惚けてんじゃねーぞ」
これが弟の台詞です。あらあら、偉大なお姉さんに向かってなんて口の聞き方を! というのは置いといて。
雪沢 葉生、14歳。中三でちょっと前にあたしの身長をぐんぐんと追い抜いていった成長期の弟です。入らない説明ばっかですね、それで十分でしょう。
「しんどい」
で、口から出るのはこの一言。だって、ねぇ。自宅でくらいゆっくりしたいでしょう。
「今日の掃除当番お前だからちゃんとやれよー」
「あーい」
ちなみに風呂掃除の当番です。
ふぅ、明日からゴールデンウィークですね! そうなんです!
せっかく高校になって仲良くなれたいいんちょーとか、仲良くなったのかな? 実香奈とかと遊ぶのが高校生一年生たるべきもののとる行動でしょう。
しかし、あたしは怠惰を貪りたいのです!
ドヤッとした感じで言っていますが、表情は虚ろに扉を眺めています。あー、あれですね。ゆっくりしたいけど無心になって休みたい訳ではないのです。ただぼーっとする、これが怠惰の第一条件なのです。
「めはねー、ごはんできたってー」
柔らかい語調であたしを呼ぶ声、それはお姉ちゃんの花音です。ああ、ふわっとしたお姉ちゃんの声はなんだか落ち着きます。
「めはねー、もう七時よー……いつからそこいたっけ?」
ショートカットで長身、といっても160後半あたりでしょうか。スタイルが良いけどちょっとボケたところのあるお姉ちゃんはあたしの自慢なのです。ちょっと人見知りが激しいところが大変ですが……。決してこれをいいたいがために家での事を書いた訳ではありませんよ? そうですともっと、いけないいけない。
「わかったー、すぐいくー」
「ていうか風呂入れてないだろ。もう入れといたから今度俺の番の時洗っとけよ」
「これで許せ弟よ」
生意気な弟には、食後のデザートに買っておいたプリンを渡しておきましょう、なんだか食べる気力が無くなりました。
「……あいよ」
ちょろい弟もまあ嫌いではありません。