入学式のこと
実質1話です。
四月六日、曜日は忘れた。周りの雰囲気に流されそれなりに心躍らせて高校の入学式を迎えました。
ひとまず今日は九時に教室にいけばいいとのこと。そして、いく教室は新入生、一年生の下駄箱の先にある壁にずらーっと貼付けられた紙に書かれていると言った感じです。お決まりですね。
何も問題はありません。いいえ、あります。ありますとも。
現在時刻は八時三十分。下駄箱には我よとばかりに新入生一同が混み混みと……。あぁ、戦略的撤退です。時間はあります、二十分ほど外でぶらぶらするとしましょう。
宛も無く、迷うと困るのであまり興味がある訳じゃないですが花壇の花を愛でます。まじまじと、あら、どれがおしべでめしべでしたっけ。えーっと強そうなのがめしべです、女性は強いのです。たぶんそんな感じだったので長いのがめしべですね……あぁ、なにやら不毛です。
「へいそこのおねーさん!!」
「へ?」
いきなり声を掛けられました。右手を大きく広げる、口にせずとも「へーい!」と聞こえてきそうなくらいなポーズで声を掛けられました。びっくりして変な声がでましたよ、恥ずかしいです。
それが誰かは紹介済みなのでいいですね。早波実香奈、このとき初対面です。第一印象はすごい元気、結構かわいい子、テニス部かな? こんな感じでしたね。
「こんなところでなにしてんの? 教室わからないとか?」
どうやら私が迷える子羊と心配してくれたようです。なんといい子でしょう、余計な心配はさせてはいけません。
「戦略的撤退です」
「まけたの?」
あたしの適当な説明がどこかにつながりました。
「負けましたね、勝てる気がしません」
「それは大変だ。じゃあもしかして今は作戦会議してたとか?」
「いえ、漁父の利を得ようかと」
「それは策士ですな!」
彼女は目を大きく丸々と広げ驚いてみせました。そのあと何気なく下駄箱の方を見て、あー、と手を叩きました。
「人混みが苦手なの? 見てこようか」
「よくわかりましたね、けど大丈夫です。どのみちあそこを通らないといけないので……」
「そっか、じゃあ私と話でもしてよーか! 早波実香奈、みかなでいいよ!」
「えー……っと、あたしは雪沢芽羽です。適当に雪沢とかでいいですよ。けどいいんですか? 友達とか教室にもう言ってるんじゃない?」
物好きな人もいたものです。あたしが言うのも変でしょうけど、こんな日に花を見てぼーっとしている新入生に声をかけるなんて青春できないコースの入り口のような気がします。ついでに、すごい慣れ慣れしいので敬語が消えそうです、第二印象はうるさい子、ですね。
「えーいいよいいよ、どうせ後で話せるし! それにめはねちゃん面白そうだし!」
「変わってますねー」
「めはねちゃんに比べるとそうでもないよ」
「うるさい」
こんな感じで実香奈と知り合いました。このあとはお互いどこの中学だとか、クラス一緒だといいねーという定番な感じで話して分かれました。ちなみにこの時点で敬語は消えました。
入学式、ひとまずまず。そんな感じですね。