スティック・コントローラー
そこにあるのは、一本の棒。
ボタンはない。
支えもない。
その棒は、宙に、浮いていた。
軽く押す。
棒の下には、線が残る。
持ち上げてみると、線が消える。
きっと、何かを伝えている。
勝手に僕が、そう思う。
握って、握って。
その太さを確かめる。
親指よりも太くて。
髪の毛よりも、細い、棒。
みしっ、と。
音を立て。
ばりっ、と。
裂け目が入り。
それでも。
宙に浮いている。
握られても。
押されても。
きっと、棒は、震えている。
いつか、地面につきたいと。
きっと、棒は、願っている。
その願いが、線になるように。
線が、棒を、繋ぐ日が来るように。
まるで、魔法のように、なんて。
棒が喋るわけがない。
棒が喋ったように、眠い目で押しているのは。