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手を以て談するが故に手談

 次の日、あたしが出かけようとした時だった。

 「あかねちゃん、いるー?」

「今から出かけるんだが……」

「出かけるんだ?」

「ちょっと碁会所までな。桜も来るか?」

「いいの?じゃあ行く!」


 街中にある碁会所。今日もじいさん達が碁を打ちに来ていた。

「おはようございます!」

「茜ちゃんか、いらっしゃい。今日は友達も一緒か?」

「ああ。あたしの友達の桜。囲碁始めたばっかなんだ。ほら桜、あたしの後ろにかくれてないで……」

「こ……小袿、桜です……」

奥で碁を打ってたらしきおじさんやお爺さんまでこっちに来た。

「誰か、桜に指導碁してくれるか?」

数人のおじさんが立候補する。

「桜、遠慮しないで打ってもらえ。あたしより教えるのうまいから」

「う、うん……」

そう言って、桜はおじさん達のところへ向かった。

 「席亭、打ってもらえるかい?」

「あいよ。ちょっと待ってくれな」

あたしはいつも、最初は席亭と打ってる。強い相手と打つのは楽しい。勉強になるしな。


 「茜ちゃんはいつも守りが弱いね。だから隅を這われて生きられる」

負けた。六目差。六子局(置き碁で六階級差の場合)で。

「むー、守りは本当にわかんない……」

「攻めはできてるから、もうちょっと守りの勉強したほうがいいと思うよ」

「わかりました……ありがとうございました」

打ってもらった後にはありがとうございました、欠かせない。

 挨拶は礼儀だ。


 「桜、どうだ?」

「うー……おじさん達つよいー……」

お茶をもらって休憩中の桜。机を挟んで向かいに座る。

「ツケハネがどうとか、シチョウとか、もーワケわかんない」

「あー、桜には教えてなかったな。ツケってのは相手の石の隣に置くこと、ハネはそこからナナメに、相手の隣に置くこと。シチョウはまだちょっと難しいかもしれないけど、絶対に逃げられない手のことだ」

 ざらざらと石を並べて、横並びの白石二つを黒が上ひとつだけ開けて囲んだ形を作る。

 「ここからな。このままだと白は取られるから逃げる」

白石を包囲の空いた場所に置く。その上を塞ぐように黒を置く。

「で、黒がこうするだろ?するとまた取られそう。で……」

そのまま碁盤の端まで続ける。

「はい、行き止まり。取られましたっと」

碁盤の上を片付ける。

「ちなみに実際は盤面がごちゃついてて繋がって助かることもある。この時繋いだ石を“シチョウアタリ”って言うんだぜ」

「ほおー、茜ちゃん、難しいこと知ってるねえ……」

「慣れだよ、慣れ」

 「桜、そろそろ帰る準備しなよな」

桜を待っている間に三局やっていた。ここはちょっと遠いから、四時には出ないと。

「あー、もう三時半かー」


 桜はすっかりここで人気になっていた。上達が早いから教えがいがあるそうだ。

「桜、碁会所どうだった?」

「んー、レベル高い人たくさんいるなーって。楽しかったよ」

「そうか……」

 何局もやって、思う存分話したみたいだな。

 囲碁の別名、“手談”という言葉を思い出した。

「明日は学校だよな」

「そうだね。また明日も茜ちゃんと打ちたいな」

「いいぜ。学校終わったらうちで打つか」

 そんなことを話しながら、帰る道。あたしと桜は手を繋いだ。


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