ヤンデレ息子に幽閉された。
『捨てた息子がヤンデレになって戻ってきた』を先に見た方が分りやすいと思います。
「お母様、いい子にしてましたか?」
優しく優しく、綺麗に閃光弾の如く笑みを放つラミに私はブチキレそうになる気持ちを抑える。
いい子とか、中年女に使う言葉じゃないし両足に鎖をつけた奴が何をいっているんだ。
彼はアレックス・ラミンレクス....だったと思う。
適当に付けた名前だから、ラミと省略している。
私はコイツの母だったのだが、適当に育てた後は適当に捨てていき、10年間好き勝手に生きていたが、先日ヤンデレになった息子が戻ってきた、城に幽閉された。
更に何をトチ狂ったのか、彼は実の母である私と結婚するとかアホなことをほざいている。
「いい子にしてたよ、鎖外してくれない?」
私がピッキング出来ることを知ってか特殊な構造の鍵穴な為に開けることは出来ない。
「あ、実は結婚についてなんですけどお母様は白無垢とドレス、どっちがいいですか?確かお母様は東洋人だったから、白無垢もいいとは....」
話し聞けよ。
目の前の息子は私との結婚について、ペラペラと喋りだした。本気で気持ちが悪い。
「息子と結婚する気はない」
この男はまがりなりにも私の息子なのだ。確かに見た目は美形で素晴らしく、皆から神のように崇めたたえられても、気持ち悪いことこの上ない。
「息子だと、思ったことなんて無いでしょ?」
「息子とは思ってたよ」
単に、愛情が無かっただけ。
だって考えてもみてほしい、私は子供とか欲しく無かったし、産むつもりも無かった。
それでも、気まぐれな私が8年間育てた程度にはラミの母という自覚はあったのだ。
自覚はあった、けど愛情とか存在しない。もしラミが死んでいても私は悲しむことはなく、下手すればザマーミロとか最低なことを考えていただろう。
「もう諦めませんか?どうせ愛されるしか道はないんですから」
少し、悲しそうにいう息子に少しだけ考えさせられる。
「私たちは親子だよ。子供も産めないし、こんなの間違ってる」
取り合えず、正論を言ってみた。人間として間違ってる私がいっても、ある程度の重みはあるだろう。
「でも、貴方を抱くことはできますよ。子供とかいりませんから」
コイツ、頭イカれてんのか?
母を抱くとかどんな性癖をもってるんだ。気持ち悪い。
そのむねを言う前にラミは泣きそうな顔でいった。
「お母様....本当に、あいしてるんです」
涙を浮かびあげそうな、悲しそうな目と表情をしているラミに少し考えさせられてしまった。
「少し、時間をくれる?」
「いいですよ。いくらでも考えてください」
そういって、彼は部屋から出ていった。不適な笑みが気味悪いが、このさい仕方ない。
私はフカフカのベットに寝転がりながら考える。
「もういっそのこと、全てを諦めて私の老後を彼にささげてみるというのはどうだろうか?」
ラミはこの国の王子で独裁者だ。金はあるし、きっと凄い贅沢も出来るだろう。
「NOだ。私は贅沢がしたい訳じゃないし、やりたいことも沢山有りすぎる。老後を任せる時間すら、私には惜しい」
ならば、償いという意味でラミに愛されるというのはどうだろうか?罪悪感から、私はラミに対して償いをしたいという思いは私にあるだろうか?
「NOだ。そんな綺麗で優しい気持ちがあるのなら、そもそも私はラミを捨ててないし、仮にあったとしても孤児院とか学校を作った時にケジメはつけている」
だったら、彼をヤンデレにしてしまったという責任感から彼の傍にいるというのはどうだろうか?
ラミをヤンデレにしてしまったのは私だ。だから、母として責任を取るという最低限の気持ちは存在するのか?
「NOだ。ヤンデレになったのは、彼が勝手になっただけの話だ。私は悪くない」
ヤバイ、考えれば考える程にラミを受け入れる選択が思い付かない。
息子だから、生理的に愛されることに対しての気持ち悪さがあるにも関わらず、母としての罪悪感や責任感とか存在しない。
なんだか客観的に見たら、私は本当に母して人間として最低だな。こんな人間を好きになったラミは相当頭がイカれてるだろう。
しかしながら、そんな風にしてしまったのは私なのである。
適当に愛情っぽいものを与え、希望みたいなものを与えたせいで、彼はちょっと可笑しくなってしまった。
「....ふぅ」
私は息を整えて結論をだす。
「逃げよう」
やっぱ気持ち悪いし、ラミがヤンデレになったのは私のせいじゃなくてラミ自身のせいだ。私は悪くない。
息子の人生を償える程、私はいい人間じゃない。
そう結論づけた私は足首の関節をはずして鎖をとき、窓を開けた。
「お母様!!」
嫌な予感がした俺は母を幽閉した部屋に入る。
母の為に用意した部屋は絢爛豪華な調度品で揃えられていたが、そこに母の姿はない。
あったのは、母の足にはめていた足枷と開いた窓だった。
「お母様....」
俺は開いた窓の傍に近より、空をみる。
あぁ、逃げたんだ....分かってはいたんだ。彼女を繋ぎ止めるには足枷なんて取るに足らないということも分かっていた。
「諦めないからな....絶対に諦めねぇ!!絶対に見つけ出してやる!!愛してやる!足なんて潰してやる!目も潰してやる!!手も切り刻んでやる
地の果てまで追いかけて閉じ込めてやる!!!」
窓の外にむかってほえる俺に、淡々とした声が聞こえた。
「我が息子ながら、なんて怖いことをいうんだ」
後ろを振り向くと、呆れたように笑う彼女がいた。
結論からいうと、私は逃げなかった。
足枷をといて、窓を開けたまではしたけど、やっぱり逃げることはやめた。理由は単純で明確だ。
気まぐれ
この一言で終わる。
寸前まで、息子との結婚を嫌がったが急にきまぐれで、それもいいかもと思った。
「これは暇潰しと考えるのはどうだろうか?母としてではなく、私個人として面白そうだから、暇だから、という理由でラミの傍にいるというのはどうだろうか?」
誰もいない部屋で自問自答をし、結論をだした。
「Yesだ。それならまぁ....いいかもしれない」
私には罪悪感も責任感も母性本能もない。けれど、面白いことは大好きだ。暇潰しの為ならばどんなことだってする。
だから、息子に愛されるのも案外面白いかもしれない。下手すれば殺されるかもしれない奴の傍にいるほど面白そうなことはないだろう。
「うん、まぁ....そのアレだ。結婚はしないけど、よろしく」
そういった瞬間、彼は泣きながら私に抱きついた。結構な勢いだったが、なんとか持ちこたえた。
「もう....もう、何処にも行かないで....俺、何でもするから....いい子になるから...もう捨てないで」
「捨てないよ」
ウソだ。飽きたらまた、私は彼を捨てると思う。
ラミが泣いているにも関わらず、私は何の感情も出てこない。ラミが泣いているという事実確認だけだ。
「ごめんね、ラミ」
この言葉は嘘かどうかは、各自判断して欲しいと思う。
「お母様....」
泣き止んだ彼は、目をはらして私と目を合わせる。
ラミの方が身長は高いけど、小さな子供みたいで少し笑ってしまう。
「お母様の名前はなんていうの?」
あ、そこからか
そういえば私は今まで名前をいっていなかった。
「私の名前はね....」
普通の親子のようなコミュニケーションは、私にとっては心地いいかもしれないし、面白味がないのかもしれない。
飽きるのは明日か明後日かもしれないし、10年後か100年後かもしれない。だってあくまでもこれは私にとってこれは暇潰しでしかないのだから。
それでも私は....なんとなく、この暇潰しは長く続くかもしれないと、ぼんやりとそう思った。
主人公は愛情はないけど、母としての自覚はあります。快楽主義の最低人間ではあるけど、一応成長はしたのかも?
読んでいた本で面白いのがあったので参考にさせて頂きました。