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「ため息なんかついちゃって、どうしたの?」

「…………不審者」

「あっ酷いなぁ」


突然音もなく現れた14〜5歳の少年は、にこにこと笑っていてそれがなんとも胡散臭い。

笑顔で無茶振りな質問をしてくる狸教師並みに胡散臭い。

それだけ大人の顔が出来るということは、そういう大人に囲まれてきたということだ。

さらには、っていうか服装からもうそれ、としか言いようがない。


「王子たる人が無断で女性の部屋に侵入するなんて、非常識も甚だしいと思う」

「………さっきの方がまだマシだよ」


わざとらしく肩をすくめているけれど、別に本当に傷ついている訳じゃないから罪悪感はない。

演技感丸出しだもん。

ここんとこはまだまだ子供ね。

そして私の王子発言はスルーなのか。

肯定したわけだ。


「で、何の用?」


だからと言って不届き者に敬語なんか使わないけど。

アレの子供だし、年下だし。


「今日は勇者が来る日だったからね。どんな人なのか見に来ただけだよ。それに父上と兄上達が緊急会議始めちゃったし、何か問題でも起きたのかなって」


はん、問題、ね。

勇者云々や王を(軽く)切り捨てて叩きつけて踏みにじった覚えがあるから、それのことかしら。

ってかそれしかないか。


しかし王と王子(恐らく二人以上)が緊急会議とはね………。

今思いつく限りでは、まず一つ目が王子達による説得。

この目の前にいる子は大変見目麗しい。

綺麗な言葉で羅列するなら太陽のような金髪は見るからにサラサラしてそうで、空のような水色の瞳は意志の強さが見え隠れしてる。

眉は細くもなく太くもなく綺麗な流線形をしていて、鼻筋も真っ直ぐ。

おきれーな顔立ちだ。

立ち方も背筋が伸びてて隙がない。

んで、上記を簡単に言うとだ。


典型的な王子様(観賞用)。


だから胡散臭さが際立つのよね。

無駄に整ってるから。

だからこそお兄さん達も負けず劣らず似たり寄ったりのはずだ。

あの王に奥さんが何人いても、ね。

片方の素材はおんなじだからねー。

ミーハーな女の子ならあっちゅう間にコロッといきかねないな。

惚れさせて篭絡されていざ魔王討伐、ってとこ。

そして二つ目は取引か。

一つ目とほぼ同じだけど………魔王を討伐した褒美に何でも叶えてやろう、と王子達を背に置いて言うのよ。

三つ目は脅迫。

本気で襲ってくるかはさておいて、なんにしても不利なのは私なんだし、手っ取り早い。


………おえ。

汚さに吐き気をもよおすわ。

本当にしてくるかは実際わからないけど、この流れできたら、やだなぁ。

全力で逃げるしかないよね。

魔力は莫大なようだし。

使い方知らないけど、火事場の馬鹿力か防衛本能がきっと発動するよ。


「どうしたの?」

「別に」


もう、出てってくれないかなコイツ。

鬱陶しいっていうか邪魔っていうか、どっちもなんだけど。

魔力の使い方とか知りたいんだけどなぁ。

特にコイツが使ったとされる瞬間移動。

ありゃあ便利だ。


「何考えてんの?」

「君には関係ないこと」


邪魔だなんだと言っても、緊急にはハブられているということは、暫定的に警戒レベルは低い。

油断はしないけど。


「じゃあ、お姉さんの名前は?」

「全く脈絡がないわね…………教える気はない」

「もしかして、名前を言ったら呪われるとか操られるとか思ってない?」


胡散臭さはやっぱり伊達じゃないね。

頭の回転が早いわ。


「生物以外を操作する魔術はあるけど、それだって数少ない高位の魔術師の、さらに一握りしか使えないよ」

「ああそう」


勝手に答えてくれてるけど、馴れ合いをしたくないんだが。

KYか、それとも美形特有の自己中独壇場スキルなのか。


「僕ね、勇者の歴史が好きなんだ。だから知りたいこと、なんでも聞いていいよ。多分、父上や兄上たちは秘密にしようとか思ってることがあるだろうから」


なんだ、ただのミーハーか。

しかし………この申し出はありがたい。

仮にコヤツが私を騙そうとしていようがいまいが、いずれは知れること。

ことあるごとに、信用がおけるおけないの『ふるい』にかけられる。


「その代わり、お姉さんの名前、教えてね?」


…………ああ、なるほど?

勇者はこの世界の『ヒーロー物』なわけね。

中二廟みたいな夢見る少年の眼差しで見ないでくれるかな。






※※※※※





それはそれはもう、キラッキラした目で答えてくれましたまる


…………つまりはあれなのよね。

周りが大人だから大人っぽく背伸びしてるんだけど、背伸びは背伸びであって、中身はヤンチャな少年だったわけだ、この王子は。




王子はマクファーレン・ド・ヴァルス・ルクセンドリアと名乗った。

マクファーレンは長いからマックと呼ぶことにした。

呼ぶたびに某ファーストフード店を思い出しそうだ。


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