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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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寿綾乃という女 第3部 75

従妹の寿綾乃は、美人ではなかった…


 本物の寿綾乃は、キレイではなかった…


 彼女には、すまないが、これは、事実…


 事実だった…


 本物の寿綾乃の母は、姪の私から見ても、思わず、目を見張るほどの美人だったにも、関わらず、娘の彼女は、平凡だった…


 だが、これも、また、この世の中には、ありがちなこと…


 そうでなければ、美人の子供は、美人ならば、美人が、加速度的に増えることになる…


 例えば、ひとりの美人が、二人の美人の娘を産み、その二人の娘が、また美人の娘を産み…


 と、いうことは、ありえない…


 つまりは、美人は、必ずしも、美人を産むということは、ないということだ…


 そして、叔母にとっては、残念ながら、実の娘ではなく、姪の私が、美人に生まれた…


 だから、血筋というのは、あるのかも、しれない…


 美人の血筋というのは、あるのかも、しれない…


 そして、それゆえ、私の母は、亡くなった従妹の綾乃になりすませと、私に遺言した…


 美人の叔母に似た私なら、娘の綾乃になりすますことが、できるからだ…


 そして、それは、以前、何度も書いたが、母にできる唯一のことだった…


 決して裕福ではない、母子家庭に育った私…


 だから、母が亡くなったとて、譲り受けるべき、財産もなにもない…


 そんな母が、私に譲ることのできる唯一の財産が、亡くなった従妹の寿綾乃になりすまして、生きろ!


 と、いうことだった…


 母は、おそらく、従妹の綾乃が、ホントは、誰の子供か知っていたのかも、しれない…

 

 ただ、私には、曖昧に、綾乃の父親は、お金持ちと、濁しただけで、名前は、明かさなかった…


 しかしながら、綾乃は、お金持ちの血を引くがゆえに、争いに巻きこまれるに、違いない…


 だから、そのときに、私に、


 「…強い男…」


 「…いざというときに、綾子を護ってくれる、強い男を探しなさい…」


 と、私に厳命した…


 そして、その際の強い男というのは、当然、腕力ではない…


 強さ=お金…


 強さ=知力だ…


 つまりは、母は、お金持ちの遺産争いに巻き込まれたときに、私を護ってくれる、お金があり、知力がある男を探しなさいと、遺言した…


 そして、私は、その通りにした…


 私にとって、お金があり、知力がある男は、難なく見つかった…


 それが、藤原ナオキだった…


 当時、女子高生の私が、ナオキの会社で、アルバイトをしたのが、きっかけだった…


 当時は、まだナオキは、会社を興して、まもなくだったが、成功の階段を、上り始めたときだった…


 もちろん、出会った当時は、そんなことは、わからなかった…


 だから、偶然…


 ホントは、偶然に過ぎないのだろう…


 偶然、母の言った通りの、金があり、知力もある、私を護ってくれる男に巡り会えたということだろう…


 私は、思った…


 そして、今になって、考えれば、なぜ、私に、母が、従妹の綾乃になりすませという言葉の真意が、わかってくる…


 それは、私が、叔母に似た美人だからだった…


 従妹の綾乃には、すまないが、彼女は、母には、似つかぬ容姿…


 あの母を見て、娘はこれ?


 と、でも、呼べるルックス…


 それに比べれば、姪の私の方が、美人で、叔母に似ていた…


 だから、母は、私に、従妹の綾乃になりすませと、言ったのだ…


 現実に、亡くなった五井家前当主の建造の弟の義春は、私を一目見て、叔母の娘だと、気付いた…


 私が、叔母に似たルックスだったからだ…

 

 だから、母の狙いは、的中したわけだ…


 私は、今さらながら、そんなことに、気付いた…


 そして、そして、だ…


 あのときは、気付かなかったが、私が、伸明に好かれた理由…


 それは、伸明が、私を、五井家前当主、建造の娘と誤解していたから…


 それに、尽きる…


 伸明は、自分と血が繋がってないにも、関わらず、自分を次の五井の後継者に推した、建造を慕っていた…


 だから、以前、建造の墓の前で、伸明と、キスをしたのだ…


 あのときは、気付かなかったが、伸明は、建造に、娘の綾乃の面倒は、ボクが見る…


 と、でも、言いたかったのでは、ないか?


 その事実に、遅まきながら、気付いた…


 つまりは、伸明は、私が、建造の血を引いていたと、誤解していたから、好きになった…


 そういうことだろう…


 私は、今さらながら、気付いた…


 が、


 その後、明らかに、それが、ウソだと、わかったにも、かかわらず、伸明の態度は、変わらなかった…


 私に対する伸明の態度は、変わらなかった…


 それは、なぜか?


 今になって、考えると、謎…


 実に、謎だ…


 だから、私は、誤解した…


 もしかしたら、伸明と、結婚できるかも、しれないと、誤解した…


 そして、誤解したままで、今に至っている…


 が、


 もしかしたら?


 もしかしたら、伸明も和子と同じ…


 FK興産の買収を視野に入れていた?…


 ナオキの会社、FK興産の買収を視野に入れていた…


 そのために、私を無下に扱わなかった?…


 私とナオキは、親しい…


 私は、ナオキの事実上のパートナー…


 だから、仮に、五井が、FK興産の買収をするとしたら、私にナオキを説得させる?


 FK興産の株を手放せと、ナオキを説得させる?


 そのために、私に親しくした?


 つまりは、あくまで、私は、道具?


 藤原ナオキに、FK興産の株を手放せるための道具に過ぎない?


 そうも、思った…


 が、


 これでは、和子と同じ…


 伸明もまた、五井の女帝である、伸明の叔母の和子と同じだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えながら、気付いた…


 いわゆる、愛情の問題だ…


 例えば、A男が、B子を好きだと、する。


 すると、当然、A男が、B子を好きなのは、B子もわかるし、A男とB子の周囲の者も、皆、気付くものだ…


 ただ、それを、口にするか、しないかの、違いだけ…


 それだけだ…


 そして、A男が、B子を、どう好きか?


 わかりやすく言えば、将来、結婚したいぐらい好きか?


 あるいは、


 そうではなく、ただ好きか?


 要するに、その違いは、なにかといえば、難しいが、下心があるかないかの違いだろう…


 つまりは、相手を、性的な対象に含むか、否かの違いだろう…


 そして、それは、大方、B子本人のみならず、周囲の人間も気付くものだ…


 そして、私が、なぜ、そんなことを、突然、言い出すのか?


 それは、伸明のことを、言いたいからだ…


 伸明が、私を好きなのは、わかる…


 これは、断じて、私の思い違いでも、なんでもない…


 が、


 どうして、好きか?


 と、問われれば、答えに窮する…


 つまりは、答えが見つからない…


 私が、美人だから、好きなのでは?


 とも、考えられるが、伸明にそれは、当てはまらない…


 なぜなら、伸明は、大金持ちだからだ…


 だから、私以上の美人は、腐るほど、手に入るだろう…


 おまけに、私は、もう若くない…


 歳も32歳…


 私より、もっと、若くて、きれいな女を、伸明は、その気になれば、簡単に手に入れることが、できるだろう…


 だとすれば、やはり、私が、建造の娘だと、誤解していたからか?


 そうも、考える…


 私は、本物の寿綾乃ではない…


 本物の寿綾乃は、亡くなった…


 が、


 それを知らなかった伸明は、私を本物の寿綾乃だと、思っていた…


 だから、好きになった…


 それが、真相だろう…


 が、


 しかしながら、それが、ウソだと、わかっても、伸明の私に対する態度は、変わらなかった…


 これは、一体なぜ?


 考えれば、考えるほど、疑問が沸く…


 それとも、これは、ナオキのせい…


 そうとも、気付いた…


 伸明は、ナオキと仲がいい…


 だから、ナオキの、事実上のパートナーだった私を無下にできない…


 そんなことをすれば、伸明は、ナオキとの間の友情にヒビが入るからだ…


 だから、できない…


 そうとも、言える…


 が、


 確証はない…


 あくまで、推測…


 が、


 それも、伸明が、ナオキから、FK興産の株を譲り受けるのが、前提とすれば、どうか?


 もしかしたら、すでに、伸明は、ナオキから、FK興産の株を譲り受けたのかも、しれない…


 だから、急に私に冷たくなった…


 そうとも、考えられる…


 つまりは、私は、用済み…


 すでに、利用価値がなくなった?


 そうとも、考えられる…


 が、


 本当のところは、わからない…


 まだ、わからない…


 が、


 おそらく、まもなくわかる…


 そんな予感がする…


 それは、なぜか?


 それは、ナオキが、おそらく、和子の元にいるから…


 もし、ナオキが、今、和子の元にいて、FK興産の株を五井に売却すれば、目的は、終了する…


 和子と伸明の目的は、あくまで、ナオキの持つ、FK興産の株を五井に売却させるのが、目的…


 だから、ナオキから株を買い取れば、目的が終了する…


 目的が、終了すれば、伸明の真意がわかる…


 そういうことだ…


 これは、変な話、男が女と一夜を共にするのと、同じ…


 同じだ…


 一度、ヤレば、女は、用済み…


 そんな男は、この世の中に、ごまんといる…


 そして、それは、女もまた同じ…


 同じだ…


 一度、寝ただけで、終わるのは、男だけではないと、いうことだ…


 男だけの専売特許ではないということだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 いずれにしろ、まもなく、すべて、わかる…


 和子の狙いも…


 伸明の狙いも、わかる…


 伸明の私に対する真意もわかる…


 そう、思うと、怖くなった…


 同時に、変な話、わかりたくもあり、その一方で、できれば、一生、わからない方が、いいとも、思った…


 なぜなら、このままだから…


 中途半端のまま…


 現状維持のままだから…


 このまま、人生を送ることができるからだ…


 が、


 世の中は、そんなに甘くない…


 まもなく、意外な展開を見せることになる…


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