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鬼人達の宴碧 第七章 強い絆

今回は双葉が誠義君と蒼真君とべったり過ごす回になりました。

それ位です。

誤字、脱字があったらすみません。

朝、双葉が目を覚めると一心が椅子に座っていた。

「おはよう、双葉さん。お父さんなら仕事に行ったよ。朝御飯におにぎり作っていたよ。」

テーブルには手紙があった。


(双葉や鬼の皆へ、おにぎりを作ったから皆で食べて下さい。お父さんは仕事に行ってきます。また、来週に逢いましょう。

秀雄)


双葉は鬼達を石から出して朝御飯を食べた。

朝御飯を食べたら食器を洗って、部屋の掃除をした。

一通り終わると鬼達を石に戻して、自室で勉強をした。

10時前にインターフォンが鳴った。

マンションのエントランスに荷物を持った誠義と蒼真がいた。

「おはよう」

「おはよう、双葉。二人で昼ご飯作ったんだ。」

「…あっ、ありがとう。今開けるね?」

二人は双葉の家に入ると荷物をテーブルに置いた。

「双葉、少し台所借りるぞ。」

二人は手洗いをしていた。

「今日は親父さんがおにぎり作ってくれたんだろ?だから、誠義はサンドイッチ、俺はロールパンにクリームコロッケとか野菜入れて来た。」

「ありがとう。鬼の皆の分も作ってくれたんでしょ?助かる。」

「…じゃあ、ちょっと三人でゆっくりしよう。三人だけでいるのってなかなか出来ないから。」

ソファーに座ると誠義と蒼真は鬼に変わった。

「双葉は俺達の鬼の姿に大分慣れてきたよな。…初めは双葉が恥ずかしがると思ったから気にしていたけど、鬼になっている方が力が溢れるから落ち着くんだ。」

誠義は腕に力を入れると血管が浮かんだ。

「んー。初めは二人共言葉を話せなかったから、結構焦ってた。…こうしてゆっくり近くで見ると、ちょっと恥ずかしい…かな?」

普段は双葉が誠義や蒼真の体を正面からゆっくり見た事はあんまりなかった。

日常の生活で精一杯なので特にドラマを見たり、漫画を見る事はほとんどない。

ただ、どちらでもないのが二人の鬼の姿、そう感じた。

「…鬼と聞くと悪いイメージがあるからな。双葉が俺達を恐れなくて良かった。…双葉は俺達と友達だからと思っているが、怖れて嫌う人もいるからな。…もう友達なんて軽いものではない。双葉は俺達の事を愛しているんだ。もう我慢しなくて良い。愛している者と肌を重ねていいんだ。」

蒼真が双葉の肩に掌を乗せて言った。誠義も双葉の肩に掌を乗せた。

「俺も、蒼真も双葉を愛している。俺達は双葉を守る鬼であり、双葉を愛している人間でもある。昔は一緒に家族のように過ごして、双葉への愛情を押し殺していた。…少し前の双葉と同じ気持ちだったんだ。」

誠義が笑って言った。

「…双葉。俺は裏忍だった。暗殺をする忍者。だから、昔は己を鬼にして大切な人を遠ざけていた。今は違う。双葉を愛しているんだ。今の双葉は昔の葉月では無い。姿は一緒だが、違う。でも、今、葉月と双葉がいたら、双葉を取る。何故だと思う?」

蒼真の顔も笑顔だった。

「…俺は昔の草太郎の時に葉月の手伝いをしていた。…今の双葉には少し嫉妬をさせてしまうな?でも、少し前に鬼の記憶が戻る前は双葉が好きだった。林田誠義として、中村双葉を愛していた。」

「俺も双葉が好きだった。月ヶ宮蒼真として中村双葉をいつも見守っていた。…他のクラスの女が双葉に物を隠すイタズラをしようとした時に『俺の女に手を出すな』と言った。今になったら良い思い出だ。」

「俺も教師が学校の荷物運びを頼む時に双葉に押し付けようとした女がいて、俺が代わりにやったら『お前が何でやってるんだよ』って言われたから『俺の女に仕事を押し付けるな』って言ったかな?」

誠義と蒼真の話に双葉は顔を赤くした。中学生の時に引っ越して来て学校の雰囲気が慣れなかったが、裏でそんな事があったとは思わなかった。

「記憶が無くても忍びとしての意思はあったみたいだな。双葉を傷つけるものがいないか目を光らせていた。」

「俺もだな。だが、不思議と激しい対立はしなかったな、俺と蒼真は。双葉はなんとなく、悩みを抱えている感じがして、守りたいと思った。」

誠義と蒼真は双葉の手を胸に当てた。

「…双葉、分かるか?双葉と一緒にいるから俺の心臓の音が強くなっている。」

「俺も。双葉と一緒にいるから嬉しい。少し心臓の動きが速くなっている。」

蒼真と誠義の心臓の鼓動は少し手に感じていた。左右交互に心臓の音がした。

「…双葉、人に甘えるというのはどういう事か教えよう。相手の心臓の音を聞くんだ。さあ、今度は頭を俺の胸に当てるんだ。」

蒼真に言われて双葉は横向きで蒼真の胸に耳を当てた。双葉の頭を蒼真が抱える。蒼真の金色の目が嬉しそうに笑った。まるで子供のような姿な気がして双葉は恥ずかしくなった。

「双葉、恥ずかしいかもしれないが、気にしなくて良いんだ。主人を持った鬼は主人に愛情を注がなければならない。今は俺と双葉だけの時間だ。双葉、お前は俺達に甘えなければいけない。人の胸に抱かれる必要がある。こうして俺から愛情を受け取らなければならないんだ。」

蒼真の体は少し熱くなった。双葉を子供のように抱き、体をゆっくり揺らした。双葉はまるで母親に抱かれる子供のようだった。不思議な感覚だ。蒼真は男性なのに不思議な感覚だった。

双葉も少し体が熱くなった。

「…蒼…真…君…。」

「…あぁ、双葉、俺はここにいる。蒼真と言う鬼がお前を愛している。」

誠義も蒼真の前にしゃがんで双葉を抱いた。

「双葉。俺もここにいる。愛しているからな。」

誠義の胸にも耳を当てた。心臓の音が強く聞こえた。誠義も体が熱くなり、息も少し荒くなった。双葉には誰かに抱かれた記憶はなかった。幼い赤子の頃にあったかもしれないが、覚えていなかった。

二人の鬼の腕の揺りかごに双葉は揺られていた。

双葉は思った。

学校みたいな人がいる所で抱かれたら、きっと心地良さで堕落する。

「…双葉、声を無理に止めなくていいからな?俺も良い気分だ。鬼にとって愛は最高のご馳走なんだ。」

誠義の顔は赤かった。

「誠義君。嬉しい?」

「あぁ、大好きな双葉をゆっくり抱けるからな。とても嬉しいよ。」



昼御飯の時には双葉はフラフラだったが、これで終わりではなかった。

他の鬼達を出したら様子が少し違った。

皆顔が赤くてぼんやりしていた。

「…皆、大丈夫?」

「いや、たぶん双葉の感情と連動しているみたいだ。鬼達も双葉と同じ感じになっている。」

蒼真が言った。昼御飯を食べた後は鬼の石の皆は双葉の手を握ったり、腕に触れたりしていた。

その表情に少し双葉はドキッとした。昼御飯の洗い物はなかったが、鬼達は石に戻る時に双葉に「大好き」や「愛している」と言った。



その後は誠義と蒼真が交互に双葉を膝に乗せてギュッと抱きついていた。

大きな手、少し鋭い爪が目に入る。

始めは後ろから抱きしめていたが、暫くして向かい合って座った。

「双葉、いろんな所、触っていいよ。」

誠義に言われて腕を触ると血管が浮かんでいるのが分かる。

胸は普通の人より大きくて、腹筋は深く割れていた。

全部が普通の人と違った。

「双葉の従姉妹のお姉さんが羨ましそうに言ってたな。鬼の身体は普通の人と違う。身体能力が人間離れしてるからな。強い力、相手を癒す力、自然を操る力。双葉が望むなら俺は全てを双葉の為に使う。もちろん、愛する為にも使う。双葉を愛する鬼に俺はなる。優しさに満ちた双葉だけの鬼だ。」

誠義はそう言うと双葉を抱きしめて背中を擦った。

「誠義…君…」

ギュッと双葉は誠義の背中に手を回す。逞しい背中の筋肉の感触が掌に感じた。

「よしよし。双葉。それで良いんだ。鬼に甘えて良いんだ。双葉は特別。鬼に甘える事が出来る特別な存在なんだ。」

「…誠義君。私って子供っぽい?」

「そんな事ない。ただ、優しくされると皆子供みたいになるんだ。だけど、それは相手の気を引きたいから。双葉が俺に甘えてくれて嬉しいよ。」

誠義は優しい声で言った。双葉の背中を擦って言った。

暫くして、蒼真の膝に乗った。

蒼真も大きな胸、深く割れた腹筋、血管が浮かぶ腕だった。

「双葉。俺の体もしっかり見て、触れてくれ。」

蒼真の体も双葉がぎこちなく触った。

人差し指で蒼真の体の谷間のラインを触ると筋肉が少し揺れたりした。

「双葉。触った刺激で筋肉が反応するが、気にしなくて良いからな。腹筋も見たり、触る事がないだろ?鬼は普通の腹筋と違うんだ。普通の人間の腹筋は柔らかいが、鬼の腹筋は硬いんだ。そして、力を入れると筋肉が膨張して腹の皮膚が指で触れなくなるんだ。少し人間に戻って見せようか?」

蒼真は人間に戻って、腹部を見せた。

人間の姿の蒼真も腹筋が割れていたが鬼の時とは違って、柔らかくて、皮膚が触れた。

「…うん。違うね。…って、触って良かった?」

「あぁ、人の姿も、鬼の姿も気持ちは一緒だ。双葉を愛する者の姿だ。」

蒼真はまた鬼の姿で双葉を抱きしめた。

暫くして、誠義も人間の姿になった。

「双葉と人間の姿でも愛さないとな。この姿でも俺は双葉を愛しているんだ。双葉。愛しているよ。」

双葉は鬼の姿、人間の姿の誠義と蒼真と抱きあった。

鬼と人間、どちらも同じ誠義と蒼真。双葉を抱きしめて愛していた。

14時30分位になると蒼真のアラームがなった。

「…さて、そろそろ井川の兄貴が怪我にあって救急車が呼ばれる。出かける準備をするか。」

双葉は軽く準備をすると三人で外に出た。

遠くでは救急車の音が聞こえた。

恐らく南東の病院だろう。

誠義と蒼真が鬼に変身すると蒼真が双葉を背負って走った。



病院の二階の手術室前に行くと井川さんの家族と木元さんの家族がいた。

「…中村さん!」

「お前らっ!来たのかよ!」

「うん。…って、あんまりお兄さんの状態、良くないんでしょ?」

「悪いな。井川、木元。下手に手助けしたら確実に助からない事故にあうから止めなかったぞ。」

蒼真は言った。誠義は手術室の方を見た。

「…中は月詠夫婦が手術にいるのか。」

誠義は目を閉じると緑色のオーラを出した。

「…月ヶ宮、兄貴は助かるのか?」

「手術は終わるが、今日中に意識が戻らなかったらアウトだ。意識を戻すのに井川と木元が俺達と冥界に行く必要がある。やるだろ?」

「…私は良い。…レナは?」

「…行く。すずも、皆も行くなら。」

井川さんと木元さんの会話に二人の家族は不思議そうな顔をした。

「…お前達、何の話をしているんだ?」

「この三人はクラスメイト。ちょっと普通の人間と違うんだよ。あっちの林田から緑色のオーラが出ているだろ?…月ヶ宮。未来予知出来るだろ?後何分で手術が終わる?」

「終わるのは15時30分。後30分だな。今日の事故は井川の兄が重機の横を通ったらタイヤが破裂して重症を負った。おそらく、ここの医師が出てきてこう言う。『手術は終わったが、危篤状態で意識が戻らなければ今夜が限界。意識が戻る確率は極めて低い。』普通の医師なら無理と思うだろう。…一応、井川の家族と木元の家族は後で一緒に来る眼鏡の看護師の邪魔だけはしないでくれ。彼女は人の傷を回復させる力がある。」

「…ほ、本当かよ?なんか信用出来ねぇな…。」

井川さんの父親は疑っていた。

「…井川の親父は左耳の聴力がかなり落ちているな。昔、頭を強く打って感覚が麻痺したから。」

蒼真が井川さんの父親の左耳に手を当てると表情を変えた。

「…聞こえる!音がハッキリ聞こえる!」

「…木元の母親は右腕を棚の角にぶつけて切り傷がある。棚は黒色だ。」

木元さんの母親は驚いた顔をして腕を出した。赤い傷が確かにあった。蒼真が掌を当てると傷が消えていった。

「…嘘。私の傷、なくなった。」

木元さんの母親は不思議そうに腕を見ていた。

「…蒼真君。聞いて良い?何で井川さんのお兄さんの事故で木元さんの家族がいるの?」

「ん?井川の父親と木元の父親は同級生だぞ?小学校から中学校まで一緒。」

蒼真が双葉に説明して二人の父親は驚いていた。

「すず!お前話したのかっ!?」

「言ってねーよ!だからいろいろぶっ飛んでんだよ!林田と月ヶ宮は鬼なんだよ!人間じゃねーんだよ!」

それを聞くと井川さんの父親は双葉を見た。

「…あっ。私は鬼じゃないです。鬼の力が少し使えるだけです。」

双葉は掌から雪を出しながら言った。

「あっ!昨日雪が突然積もって無くなったニュース!あれ!鬼のせいでしょ!」

「うん。昨日根綱君のワンちゃんが凍りづけにされかけたり、金川さんの家に氷が出来たりしたから明日は氷鬼の一心君と謝るの。」

木元さんに双葉は説明した。

ここまでいろんなものを見たり、聞くと井川さんの家族と木元さんの家族は三人の話を信じた。

15時30分になり、全員が立つと手術室のランプが消えて医師が出て来た。

「…井川さんの家族とお知り合いの方々ですね。手術は終わりました。が、危篤状態で意識が戻らなかったら今夜が限界です。覚悟して下さい。意識が戻る確率は極めて低いです。」

「分かりました。どうも。」

たぶん大丈夫だろうと思っているが、井川さんの母親は涙目だった。

医者が行くと月詠夫婦が出てきた。

「あっ!先生!この前はどうも!」

「あぁ、中村さん、久しぶりだね。…井川さんと木元さんの家族の方々ですね。手術は終わりました。先程の菅山(すがやま)先生には言っていませんが、井川銀河(いのかわぎんが)さんの魂は冥界にあります。今からこちらの世界に戻すのに鈴奈さんと麗奈さんに手を引いてもらう必要があるので少し協力してもらいます。後は今から集中治療室に銀河さんを運びますが、我々の方が終われば銀河さんは目を覚ますのでそれまではお待ち下さい。」

達弥が説明すると紫織が他の看護師と銀河の担架を運んできた。

井川さんの母親は泣きながら銀河に声をかけた。

「…じゃあ、親父。兄貴探しにレナと行ってくる。」

「母さん、父さん。私もすずと行ってくるからすずの母さん、見てあげて。」

「…井川さんと木元さんの家族の方は集中治療室前までご案内します。」

紫織は井川さんと木元の家族と一緒に行った。

「…不思議だろ?他の看護師の前で鬼の話をしたのに変な顔をしなかっただろ?俺の鬼の話を理解しないように暗示をかけた。」

達弥は片目を紫色にして皆に見せた。

「…先生、本当に鬼なんだ。」

「それより、兄貴を早く見つけないと!」

六人は個室に入った。

「…さて、冥界の銀河さんは動けない。これは中村さんのお姉さんの時も一緒だ。こちらに連れて来るには知り合いの手を握って戻る必要がある。鈴奈さんと麗奈さんは銀河さんと付き合いが深いからな。銀河さんを双葉さんの鬼に背負わせて戻る必要がある。…が、途中で悪鬼の闇鬼公正さんがいるはずだ。この時に死霊や餓鬼と戦いながら戦う必要がある。気をつけてくれ。」

「公正はかなり強い。双葉、木元と井川は鈴音と舞に守らせろ。井川の兄貴は一心に守らせて俺と誠義、天外と月詠さんで公正を、朱馬と鐵広で周りの死霊や餓鬼を倒す。」

「うん!任せて!」

「…中村!二回目だけど、頼むぜ!」

「私も!銀兄(ぎんにい)には世話になったからさ!」

「…良し、行くぞ。」

達弥が冥界の入り口を開くと六人は入った。



冥界に行くと紅葉が散っていた。近くには大きな川が流れていた。

「…これ、三途の川じゃない?」

双葉が言うと近くで老夫婦の鬼に見られた銀河がいた。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

鬼はニヤニヤ笑っており、銀河は震えていた。

挿絵(By みてみん)

「ヤバい!兄貴がヤバい!」

鈴奈が慌てて銀河を引っ張ると老夫婦が怒っていた。

「す…鈴奈?」

「何ボーッとしてんだよ!手術終わったぞ!こんなやべー所にいないで帰るぞ!」

双葉は慌てて一心を出した。

「銀河さん!乗って!」

「…あ…足が…動かない。」

「すず!銀兄の足持って!」

鈴奈、麗奈が銀河の足を持って、誠義や蒼真が背中を押した。

「良し!戻るぞ!鈴奈さん!麗奈さん!銀河さんの手を握るんだ!」

八人は慌てて川から離れた、

「やべえっ!あの鬼のじいちゃん、ばあちゃんヤバいだろ!」

「奪衣婆と懸衣翁だ。あの二人に服を取られたらアウトだ。」

辺りは暗くなり、骸骨の頭や餓鬼がゲラゲラ笑いながらこちらに来た。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

それを達弥、誠義、達弥が倒しながら行くと空気が変わった。

「…双葉さん、鬼を出してくれ。」

達弥に言われて鬼を全部出すと暗闇に揺れながら黒い鬼がこちらに近づいた。

挿絵(By みてみん)

「…朱馬!天外!明るくしろ!鈴音と舞は井川と木元を守れ!」

「皆!善鬼化して!」

『オォオオオオッ!』

蒼真が鬼達に指示をして、双葉は鬼を善鬼化させた。

だが、公正の力なのか、暗闇から黒い蛇や黒い炎や無数の黒い刃が飛んだ。

双葉が周囲に意識を集中させると様々な場所に移動をしていた。

鈴音や舞はなるべく避けたが、やがて狙いが双葉になった。

(あぁ、私を狙ってる。腕を伸ばしてる。今ならいけそう。)

双葉は公正の足元に電流の柱を呼び出した。

公正は青い電流に包まれながら痺れていた。

そこに誠義、蒼真、達弥、天外が刀で斬りつけた。

公正は姿を消すと周囲の黒い闇が公正のような姿になった。

(…全部、偽者。本物は上から私を狙っている。)

公正はゆっくり双葉の方に黒い刀を向けて落ちて来た。

双葉の頭上で爆発が起こり、火に包まれながら公正は吹き飛んだ。

誠義の近くに落ちて、斬りかかろうとしたが公正は消えた。

「…さっきから中村ばかり狙ってないか!?きったねえ野郎だなっ!」

鈴奈は言った。

「…そう、私が一番弱い。誰にも守られていないから。あの人は分かっている。昔なら葉月さんが弱かった。私に似た、忍者の世話をしていた人。」

公正は周りの闇を集めて巨大な鬼を作り、双葉に手を広げると黒い炎を出した。

(炎はフェイク。あれは本当は闇の力。明かりに弱いから炎と雷を足して放てば押せる。)

双葉が無数の雷の槍を飛ばした。それは青い炎を出し、巨大な黒い影の鬼を塵にして公正を燃やした。

公正は片手で刀を双葉に向けながらもう片方の手の爪を伸ばして向けた。

『公正、あの女を殺せ。この中で一番弱い。弱いものを殺せ。』

「御意。」

公正は刀を向けて双葉に走り出した。赤い瞳と赤色の角を持つ黒髪の鬼。

双葉は身構えたが、その手が緩んだ。

双葉の近くまで公正は近づくと手に持っていた刀を腹に刺した。

「…公正さん。どうして?」

「…今、一番弱いのは俺だ。お前は葉月に似ているが、違う。葉月より強い女性だ。」

蒼真、天外、鐵広が近づいた。

「…師匠。」

「…葉月は弱かった。女だから簡単に死んだ。でも、お前達を育てた。そして、俺も支えられた。俺達、暗殺を行う裏忍に愛情は不要と言った。だが、死んで分かったのだ。本当は葉月が大切な女性だったのだ。俺の冷酷な心が葉月を失った悲しみに耐えれなかったのだ。冥界をずっとさ迷った。葉月を探していた。逢いたかった。謝りたかった。守れなくてすまないと…。」

公正は涙を流すと黒い石になった。


「…公正さんが冥界にいたのは葉月さんを探していたのね。こんな暗い場所で。ずっと…」

「…中村さん。あの人も一緒に帰れるんだよね?」

「…うん。皆で帰ろう。」

双葉と木元さんが話すと皆で光る方に走った。

出口を出ると一心に背負わせていた銀河の姿は無かった。

「…あっ!兄貴がいない!」

井川さんは慌てて言った。

「体に魂が戻ったんだ。中村さんの鬼を石に戻したら集中治療室に行こう。」

達弥は元の医師の姿に戻った。そして六人が部屋を出ると看護師が慌てて達弥に話しかけた。

「あっ!月詠先生!井川さんの意識戻りました!」

それを聞くと鈴奈と麗奈は顔を手で覆って泣いた。

「…っ!あぁーっ!良かった!マジでダメかと思った!」

「…良かった。」

二人は蒼真と誠義に支えられながら集中治療室に向かった。

中では井川さんと木元さんの両親がいた。

「…あっ!鈴奈!麗奈ちゃん!」

「…おかん。マジ!ヤバかった!兄貴が三途の川で鬼のじいちゃん、ばあちゃんにやられかけてた!な?兄貴!」

「…暫く爺さん婆さんは見たくないな。ハハッ。」

銀河は少しボーッとしていたが、笑っていた。

「さてと、銀河さん。大型車両のタイヤのバースト事故で体の骨折と内蔵の損傷があったので手術をしました。ここだけの話ですが、助かる確率はほぼありませんでした。ご両親方もレントゲン写真を見て菅山先生から説明があっています。で、今の所、体の骨折はほぼ治ってます。元々骨折で内蔵の損傷がありましたが、内蔵も治ってます。体を動かすと少し痛みがありますからね。本来は半年は入院が必要ですが、銀河さんは来月に友人の方と出かける予定があるみたいですから、明後日の水曜日にリハビリをして金曜日のお昼に退院しましょうかね?いやぁ、林田さんの癒しの力が強すぎてちょっと通常の医学ではあり得ない状態なので強運で怪我に強いとか言って誤魔化して下さい。」

達弥さんが無茶苦茶な事を言っていた。

そこに看護師がやってきた。明らかに表情は良くない。

「…月詠先生。井川さんの食事、今日の夕食から有りで本当に大丈夫ですか?かなり内蔵損傷激しいから暫く止めた方が良いと聞いたんですが…。」

「うん?ビックリするけど、もう大丈夫だよ?後で菅山先生に新しい検査結果見せて夜に一般病棟だね。明後日からリハビリで大丈夫。金曜日退院。良かったですね。」

看護師は出て行くと暫くして奥から「やべぇ、あり得ないし。」と聞こえる。

「…やべぇ!兄貴やべぇ!」

「俺に言うなよ。」

鈴奈に言われて銀河は困った顔をして言った。

「さてと、双葉さん達は明日から学校だからそろそろ帰宅した方が良い。井川さんの家族は今から荷物を取りに行くかな?今日の20時に6階B棟607号室に移動です。うん、窓側かな?入って左奥です。」

「…じゃあ、あんまり長居しても悪いから行きますね。銀河さん、お大事に。」

銀河に挨拶をすると集中治療室を出た。

「…井川さん、木元さん。私達は帰るからまた明日ね。」

「…あ。あぁ…。またな。」

「三人共お疲れ様。」

双葉は井川さんと木元さんに手を振ると誠義と蒼真を連れて帰った。

「…とりあえず、俺の耳が治ったから良かった。」

「な?ぶっ飛んでるだろ?あいつら。」

「母さんも傷治って良かったね?」

「本当。傷痕が残ると思っていたから。」

鈴奈と麗奈は父親と母親に話していた。




双葉は蒼真に背負わせて家のマンションに着いた。

「じゃあ、また明日な。双葉。」

「うん。また明日。蒼真君。」

双葉は蒼真と抱き合って言った。

「…明日は朝子と来るから今のうちにな?」

「うん。また明日ね。誠義君。」

双葉は誠義とも抱き合って言う。そして、双葉がエントランスの奥に行くまで見守っていた。

双葉は奥に行く前に手を振ると中に入った。

家に帰ると手洗いを終わらせて夕食の用意をした。

人数が多くなったのでその日は鍋で味噌汁を作って、フライパンで肉と野菜を炒めた後にフライドポテトも軽くフライパンで焼いた。

調理が終わると鬼達を出して料理を運ばせた。

その日は皆静かだった。居間に行った四人も静かだった。

双葉が黒い石を出すと公正が現れた。


「…ここは?家の中か?」

「今から夕御飯の時間なので。一緒に食べましょうか?」

双葉はついいつも通りに鬼を呼び出したが、呼び出して思い出した。

(公正さん。よく考えたら鐵広君や天外さんや蒼真君のお師匠さんって言ってたんだよね。この人、皆よりかなり年上だった。)

「…すまなかったな…。確か、中村さんかな?」

「あっ、中村双葉です。皆は双葉って呼んでます。じゃあ、食べましょうか?」

公正が椅子に座ると夕御飯を食べたが、鐵広と天外は静かだ。

この人は無茶苦茶怖い人なのか?と思っていたが、夕御飯を食べている時は普通に笑っていた。

挿絵(By みてみん)

「…うむ。なかなか美味いな。昔より良いものを食べているんだな。」

「そうですか?今日は皆頑張っていたからフライドポテトも焼いちゃった。」

鐵広と天外を見るがやはりまだ表情は硬い。

「はははっ。鐵広、天外。普通にしろ。双葉さんが緊張するだろ?」

「…はい。」

公正は笑っているが、やはり天外は表情が硬い。大丈夫か?

洗い物を天外と鐵広がした。その後ろを公正がニコニコしながら見て、気になる事は聞いていた。

その間にお風呂を沸かそうとすると一心とすれ違う。

「…一心さんも緊張してる?大丈夫?」

「…う、うん。いや、公正さんって昔は常に表情怖くて皆緊張していたからさ。あんなに笑顔で笑った事、ないんだよ。葉月さんにも笑わなかったから。葉月さんはよく笑顔だったなって思っていた。」

…そんなに怖い人なんかい。

双葉はお風呂を沸かしに行った。そして、こっそり台所を見たが、緊張する朱馬、鈴音、舞だが、公正は笑顔でいた。

「そろそろ皆戻ろうか?」

双葉が言うと鬼達と一人ずつ抱き合って鬼の石に戻った。

最後は公正が残った。

「…双葉さん。皆は緊張していたが、普通に見えていたかな?」

「はい。…って、いつもは結構怖かったとか?」

「…うむ。昔は暗殺者が屋敷に侵入する事があった。今は鬼になり、周辺を感知出来る。後は闇の鬼は強い気を出せるみたいだ。威嚇は日常生活に禁止だな。」

公正は掌を見ながら真剣な顔をして言った。

「…明日はたぶん、悪鬼になった輝光さんかな。気をつけないとね。」

双葉が言うと公正はギュッと双葉を抱きしめた。

「…上手く出来ているか?抱き合った事がないんだ。人を愛さないと決めていた。だが、所詮人間。本当に感情を捨てるのはなかなか出来ないものだな。」

「…大丈夫ですよ。…どんな気持ちですか?」

双葉は公正の背中を擦りながら言った。

「…温かいな。俺は闇の鬼になったが冷酷な心は捨てよう。」

公正は暫く双葉と抱き合った後に鬼の石に戻った。

双葉は洗濯物を干した後に早めに眠った。


元々井川銀河をメインにするつもりが、木元さんを加えて薄くなりました。

まあ仕方ない。

後、月詠夫婦や誠義の回復能力のせいで銀河が化け物になりました。

仕方ない。

公正はとりあえず笑顔のイラストを作ってあれやこれやと考えたら、他の鬼が緊張する位元は怖い人だったとなりました。

次回はかなり年上の鬼が手に入りますね。

次回に続け。

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