鬼人達の宴碧 プロローグ
鬼人達の宴碧がスタートしました。
今回のテーマは友情と愛情。
今までは鬼に主人の人間が優しく接しましたが、今回は逆をメインに考えています。
まずはプロローグでいろんなものを見てみましょう。
誤字、脱字があったらすみません。
「葉月!葉月!どこだ!」
中年男性が火でいくつか家が燃えている村の中で叫んでいた。
その周りには何人かの忍者やくノ一がいた。
「父上!見つけました!」
その声を聞き、男性はそちらに向かうと二人の少年忍者がいた。
「息はあるか?」
「はい。…しかし。」
目の先には斬られた夫婦がいた。
「…妹夫婦は駄目だったか。仕方ない。他に生存者はいないようだ。戻るぞ。」
こうして、葉月と呼ばれる少女は山の中の大きな館に運ばれた。
いくつかの村は時折荒らされて滅びる事がある。
葉月の村が狙われる事を知った時には手遅れだった。
この館には忍達がいた。表で情報収集や護衛をする者と、裏で暗殺を主に行う者だ。
葉月はやがて館の調理や衣服の洗濯等の仕事をする事になった。
忍者の頭領、輝光からは必要以上に忍者達に自分から接するなと言われていた。
…それでも陰で彼等が辛い時は彼女のハンカチが横に置かれていた。
時は過ぎていく。表の忍者で活躍する頭領の息子、草太郎と、裏の忍者で活躍する光明が目立つようになる。
葉月はいつも通り夕食の用意をしていた。
広間では他の女性やくノ一が準備をしていた。
「葉月、手伝うぞ。」
声をかけたのは草太郎だった。
赤色の鉢巻きは目立った。
「でも、悪いわ。」
葉月が言う。この時代は男が女性の仕事に手を出すと女々しい等言われるので断ったつもりだった。
「気にするな。決めるのは俺だ。」
草太郎はそう言って葉月を手伝った。
料理を運ぶ途中に光明とあった。
紺色の長髪に青色のフードを被っていた。
「光明さん。お帰りなさい。もうすぐ夕食の準備が出来ますからね?」
「御意。」
光明は黙ったまま通って行った。彼なりに気を使っているのだろう。
広間に行くと中にいた女性やくノ一がこちらを見たが、時折ある光景なので気にしていなかった。
「…草太郎。そこに置いたら後は私達がやる。」
「分かった。」
草太郎は料理を置いてその場を離れた。
「…草太郎のすぐ手や体が動くのは良し悪しだねぇ。」
「…申し訳ございません。」
「葉月。あんたは謝らなくていいんだよ。後で私達が怒られるからね。」
「…次の料理を運んで来ます。」
葉月が料理を取りに台所に戻る時に何かが飛んで葉月に当たった。
葉月の目の前はすぐにぼやけて意識が無くなった。
「…っ!葉月!」
少し離れた所から異変に気がついた草太郎が気がついて声を出す。
広間にいた女性やくノ一、光明もやってきた。
葉月には長い針が首に刺さっており、遠くには逃げる人影があった。
「敵襲だ!」
草太郎が言うと刀を持った忍者達が出た。
草太郎と光明が追いかけるとトラバサミがいくつか仕掛けられていたが、二人は避けて走った。
そして、人影に向かって草太郎がロープを投げると人影は木の葉を出して崩れた。
「馬鹿な!走っていたのが木の葉だとっ!」
「…曲者めっ!」
二人が戻ると若い女性やくノ一が泣いていた。
「…草太郎、光明。葉月は亡くなった。」
先程まで動いていた葉月は動かなかった。
「…何故だ。何故葉月が殺されたんだ。」
「そんなの誰も分からないよ。」
草太郎と年配の女性が話していると頭領の輝光がやってきた。
輝光は倒れている葉月を見て慌てて近づいたが、首の針と周りの者の姿で何が起きたか理解した。
「…敵はどうした?草太郎、光明。殺したか。」
「…逃げられました。」
草太郎が言うと輝光は鋭い目で睨み付けた。
「お前達二人がいて何故逃がしたっ!!」
「…追い付きましたが、草太郎がロープを投げると木の葉に変わりました。俺にも分かりません。…まだ、どこか屋敷にいるかも知れません。」
「皆で屋敷中を探せ!!」
光明に言われて屋敷中を探した。が、敵は見つからなかった。
敵が逃げた場所にはトラバサミはあったが、木の葉に包まれた服にロープが巻かれてあり、二人の話が嘘でないと分かった。
その夜は夕食が喉を通らない者もいて、悲しみと怒りで溢れていた。
次の日は全員不眠状態で屋敷の裏にある大きな木の下に葉月を埋葬した。
土がかかる葉月を見て、余りの辛さに嘔吐する者もいた。
それだけ彼女は愛されていた。
夜、異変が起こる。
「オッ!オォオオッ!」
白目を剥いて苦しむ者が出た。腕の血管が浮き出ると、そこから草の蔓を出した。
「…いかんっ!何かがおかしいっ!」
草太郎も腕から草の蔓を出していた。
「…草太郎、お前もか。俺もふらついてきた。」
光明も腕から草の蔓を出してふらついていた。
二人は頭領の輝光の元に向かった。
輝光も草の蔓を出して死んでいた。だが、他の者と違うのは頭から二本の角を出していた。
「…お頭様。」
「…父上のこの姿…鬼。」
光明と草太郎が言うとバタッと倒れた。
忍者の屋敷は黒い煙で包まれた。
意識が薄れる中、二人は頭から何かが出てくるのが分かった。
きっと鬼の角だろう。
二人は掌に何かを感じた。開くと葉月がよく皆に渡したハンカチだ。
(大丈夫。私が側にいるから。)
ハンカチの色は緑。葉月が好きな色だ。
「葉月…。」
二人はハンカチをギュッと握った。
「…ハアッ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!」
緑色のパジャマのポニーテールの少女が目を覚めた。
体は寝汗でびっしょりだった。
「…気持ち悪い夢だった。…着替えよう。」
パジャマを脱ぐと背中に草の蔓が付いていた。
「…何、これ?夢と一緒じゃない?」
鏡の前で背中を見た。
特に異常はない。
「…洗濯しよう。」
洗濯機に入れて、自分で用意した朝ご飯を食べた。
彼女の名前は中村双葉。父親と二人暮し。母親は高校になって、仕事に専念したいからと離婚して海外に行った。
双葉は知っている。
母親のネットの投稿にいろんな男の人が写っていた。
本当は、いろんな男と遊びたいんでしょ?私の事はほったらかしだったよね?
もう逢いたくない。
朝ご飯のパンを食べて、パジャマを干して、制服で一回ゴミを捨てに行ってから学校へ。
家はマンションに住んでいる。
最近物騒だから、ゴミ捨ての時も鍵をかけている。
「おはよう。双葉。」
「ふたちゃん。おはよう。」
マンションの外で短髪男子の林田誠義と短髪女子の林田朝子に逢う。
誠義はクラスメイト、朝子は美術部で一つ年下で仲良くなった友達だった。
「誠義君、あっちゃん。おはよう。」
双葉は三人で学校に向かった。
「聞いてよ、ふたちゃん。今日兄やん、背中に草の蔓があったんだよ?」
「…あれは気持ち悪いし、寝巻き汚れて最悪だった。」
丁度自分と同じ事を言ってドキッとした。
「…私も朝洗濯したの。パジャマ。蔓が付いていた。」
「えっ!本当!」
「…なんか、私っぽい人が首に針を刺されて亡くなる夢見たし。私の従姉妹の姉さんかと思ったけど、声がちょっと低いから、たぶん私だと思う。」
「俺もなんか死んだ感じだったな。腕から蔓を出して。」
「えー?…じゃあ蒼も朝起きたら体に蔓がついていたりしてね?…あっ!いた!」
道路の先に長髪の男子がいた。
月ヶ宮蒼真。ちょっと陰があるクラスメイトだ。
蒼真は誠義と幼馴染みだ。どちらもそんなに話さないタイプだが、誠義が武術を習い始めてから誠義はまあまあ話すようになった。蒼真は特に何も部活はしていなかったが、時々誠義を相手に我流で武術は覚えた。
「…おはよう。」
「蒼。今日さ、兄やんとふたちゃん、背中に蔓があったって。蒼はあった?」
「…あった。親に怒られた。」
「…っ!やばい!」
朝子は口元に手を当てて言った。
ドン引きしたのは双葉も誠義も一緒である。
「…なんか、夢で俺が死んだ。確か横に誠義がいた。…違うな。草太郎だ。」
「…光明だったな。蒼真は。」
「私は葉月。」
一瞬静かになった。
「…シンクロ?なんかの前触れ?お告げ?気を付けろって事なのかも。…まあ、いいや。学校始まるし、行こっか?」
朝子に言われて四人は歩き出した。
朝子の教室は二階なので途中で別れて三人は三階へ。
昼休みは誠義は教室で弁当を食べる。双葉と光明は学食。
そして、授業を終えて帰る。
朝子は美術部なので美術室へ、双葉は特に用事がないなら誠義と光明と三人で帰った。
だが、その日は違った。
学校の外には双葉の学校の緑色の服とは違う、青色のリボンをつけた雫と要、透がいた。
「…っ!しずちゃん!?要に透も!?」
「…久しぶり。…来ちゃった。」
雫は双葉と抱き合った。
「要も透もどうしたの?今日学校でしょ?」
「学校、終わったから来ちゃった。」
透が嬉しそうな顔で爆弾発言する。
「こら!…今日は学校休みだから、来たんだ。」
要は慌てて言った。
「でも、ここまで交通費かなりかかるでしょ?よく来たね?」
「結花さんに聞いたら住所そのままだって言っていたから来ちゃった。…初めまして。黒澤雫です。」
「二瀬透です。」
「二瀬要です。透とは従兄弟同士です。」
雫、透、要が挨拶した。
「月ヶ宮蒼真です。」
「林田誠義です。」
蒼真と誠義も自己紹介した。特に誠義は深く頭を下げた。
「…結花姉にあったの?」
「うん。たまたま近所の民宿に来てね。…今日何かあった?例えば、草の蔓。」
雫の言葉に三人は驚いた。
「…君もか?」
誠義が聞いた。
「…やっぱり。今日来たのはその事についてです。私も、透も要も。他に結花さんを含めて、何人か背中に草の蔓があったって聞いたの。」
「…しずちゃん。蔓が背中にある原因、知っているの?」
双葉に聞かれると雫は周りを見回した。
「…今ならいいかな。要、私達六人を空間から切り離して。」
「分かった。」
雫が言うと周りは静かになった。
「…今、私達六人だけ周りから気配消しているから。最近、私は池に眠っていた呪いの力に巻き込まれたの。自分に似た菫って名前の人が生け贄として池に落ちて亡くなって、それが原因で呪いによって悪鬼になる人が出たの。…そして、夢を見た次の日に悪鬼が現れた。…たぶん、草の蔓は葉月さんが原因のもので、今度はふたちゃんの番だと思う。」
「…私?…これから何が起きるの?」
「…たぶん、悪鬼になった人が現れると思うの。その人を倒して、石に食べ物をお供えして、鬼達から力を借りて葉月さんを呪いから解放しないといけないと思う。」
「…悪鬼なんて、いるのか?」
蒼真が聞いた。
「…鬼なんてって、思いますよね?でも、要や透は鬼なの。…本当は今日ここに来れたのは要や透の鬼の力があったから。」
雫が言うと要は青色の髪の鬼に、透は白色の髪の鬼になった。
「…俺は水の鬼。」
「僕は風の鬼なんだ。」
要や透の姿に双葉達は驚いた。
「…きっと、林田さんも月ヶ宮さんも、ふたちゃんの鬼。」
雫が言うと周りの雰囲気が変わりだした。
学校の道の先に草が生えてきた。
「…今日はね。ふたちゃんが悪鬼に出逢うと思って心配して来たの。…やっぱりね。私の時は水滴の音がしたの。ふたちゃんは不自然に草が生えるみたい。」
「…怖い。」
双葉は不安になって言った。
「俺達が守るから。」
要が言うと双葉はビクッとした。
「大丈夫だよ!僕らは普通の鬼!…違うか。善鬼って言うヒーローになっちゃうんだ!」
透が自慢気に言った。
「…私の時がそうだったけど、林田さんも月ヶ宮さんも後で鬼に変身すると思う。その時はふたちゃんが援護しないといけないから。…私も始めは鬼が怖かったけど、鬼は怖がられると悲しくなる、それ位繊細になるの。だから、優しく接してあげて。」
「…うん。」
草の道の方に行くと赤色の炎が浮かんでいた。
「…あれは火の玉。たぶん妖怪。こんな場所は妖怪がいるの。それと、火なら悪鬼の鬼は火の鬼。弱点は水かな?要が水の鬼だから、私は要君の力を借りて水の術で攻撃出来るの。ちょっと見ていて。」
雫は掌に水を溜めると勢いよく出した。
水を浴びた火の玉は塵になって消えた。
「…うん。術には得意不得意が皆あるみたい。私は攻撃の術が得意なの。結花さんも光の術が使えて攻撃型。後、九尾な狐になれる市村さんが援護系の術。看護師の紫織さんが回復系かな。」
雫はちょっと笑顔で双葉に言った。
その時双葉達の後ろにも火の玉が飛んでいる事に気がつく。
「…ふたちゃん、林田さんと月ヶ宮さん。後ろに火の玉がいるからこっちに来て。」
三人に声をかけた時だった。
ボンッ!
火の玉は
勢いよく爆発した。
「…っ!嘘っ!三人が巻き込まれちゃった!」
雫は慌てて風の術で火を吹き飛ばした。
煙の中から双葉を守るように結界を張り、鬼になった誠義と蒼真がいた。
「…やっぱり、私の時みたいに危険な事に巻き込まれると鬼に変身するのね。」
双葉は緑色の角を出す誠義と黄色の角を出す蒼真に近づいた。
「…誠義君、蒼真君。大丈夫?」
「ガアッ!」
誠義が怖そうな声を出した。それはまるで獣の鳴き声のようだった。
「…ウ…ガアッ…?」
蒼真も同じような鳴き声を出した。
「…ねえ?なんか…二人の様子がおかしいんだけど…。」
双葉に言われて雫も困惑した。
「…雫。二人は人間の言葉が話せないみたいだ。」
「うん。林田君は『大丈夫』で蒼真君が『これは?』って言おうとしたらあんな声が出たみたい。」
要と透が言った。
「…え?…そんな事ってあるの?」
双葉はどうしていはいか分からず、固まっていた。
(…言葉が話せないなんて…。でも、これって…まるで…)
「…悪鬼の力が半分二人に宿っているのかも。」
悪鬼達は今まで彷徨や唸り声を出していた。
それと同じようだった。
三人の物語は不穏な雰囲気で幕を開けた。
今回の双葉ちゃんは雫と違ってお父さんとは仲は良いけど、お母さんはイマイチにする予定が飛びました。
ネグレクト、離婚、知らない男性と遊びまくる。
逆にお父さんがあるかも知れませんが、現在の子供のストレスって深いかもしれません。
片親が子供を拒絶したらそちらのストレスの方が勝ると思います。
蓋をしても離れるものではないです。
前回の雫の友達が活躍していたのでサブキャラクターを朝子を含めて六人用意。
様々な人、そして鬼達と双葉がどうなるのか。
次回に続け。