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第三章・第七話:理想と現実に飲まれて水没しやがれ


金太郎は成り行きでココまで来た。

リュウに勝手に連れてこられ、かぐやとなんとなく奥を目指し、そして鬼丸たちと合流した。成り行きで来た自分には特に今回は何かをすべきことはなかったはずだ。

しかしココまで来たのは、ありふれた言葉だが“必然”だったような気がする。自分はココに来て仲間を連れ戻す、使命を帯びていたのだと。


「だから、ウラシマ……」


暗い通路から明るい場所にでる。そこに立っているのは見知った青髪の少年。金太郎はその少年に大きく呼びかけた。


「お前に会いに来たんだぜ!」

「やあ、ようこそだね。鬼丸君、キンちゃん!」


ウラシマは人懐っこそうな笑顔で二人を迎えいれるように腕を広げた。その顔はいつものニヤニヤ顔とは違い、妙に爽やかで、逆に気味が悪かった。


「社会見学はどうだったかな、二人とも? 楽しんでくれたかな?」

「社会見学?」

「僕が特別に用意したんだよ。感謝して欲しいね」


ウラシマは大げさにポーズを取り、後ろを向く。何かを探したような素振りをしたかと思うと、その手には一枚の紙が握られていた。

その紙には入場許可と、鬼丸の名前が書かれていた。


「鬼丸君も将来のためにこの経済の中心地、竜宮城を見たいだろうと思ってね。君にも来てもらったんだ。おもてなしに満足していただけたかな?」

「随分なおもてなしでしたよ……」

「まあ何でか知らないけどキンちゃんとかぐやちゃんも来たんだけど、それも好都合だったかな。前に来たいって言ってたよね。良かったよ」

「そんなことはどうでもいい! お前どうして俺たちを裏切ったんだよ、ウラシマ!?」

「……」


ウラシマの表情が一瞬だけ止まる。しかしそれも一瞬だけで、何事もなかったかのように正常に、いつもと違う表情で口を動かし始めた。


「僕は君を裏切ったりなんかしてないよ。鬼丸君の言うとおり、始めから僕は君たちと仲間になった覚えはない。初めから仲間になっていないのなら裏切ったことにもならないよね。言うならばスパイ、コレも仕事のうちだって事さ。今じゃあ元の仕事に戻ってせいせいして――――」

「――――ならば何故、あの時あんな顔をしたのですか?」


鬼丸が口をはさむと、ウラシマの表情が凍ったように止まる。

しばらくしてようやく溶け出した彼の口はぎこちなく、動き始めた。


「……あの時の顔? 一体どんな顔だったっけ?」

「とぼけないでください。あの時の顔、貴方のあんなに疲れた顔を見たら誰でも一生忘れませんよ。せいせいしているのならば、何故あんなに疲れたようだったのですか?」

「……そりゃ、仕事もだもの。疲れることはあるさ」

「いえ、貴方の疲れはそういうものじゃない。もっと何か違う、負い目から来ているような……」

「―――――うっさいね」


今度はウラシマが鬼丸の言葉を遮る。

その声はとても激しく、荒々しい波のようにウラシマの感情の全てを孕んだような声で、今までとは明らかに違う彼に圧倒されてしまった。


「とにかく! 僕は君たちの仲間なんかじゃない。その証拠に僕は君たちに三つ、嘘をついている! 一つ、僕の歳は39歳ではないということ。本当の僕の歳は今年で700歳を越えている。僕は魔術師だ。それぐらいどうとでもなる」

「二つ、僕は鬼丸君を前から知っていたということ。鬼が鬼ヶ島奪還を目指すと聞いた時、全ての鬼を洗いざらい調べさせてもらったよ」

「三つ、何度でもコレを言ってやろう。僕は君たちの――――仲間じゃないということ。僕こそ竜宮城第零技術開発部部長、浦島竜胆。逃げ出すと言うのなら見逃そう、しかし向かってくると言うのならば……排除する」


ウラシマの声は変声期を迎えていない少年ように高い。しかし今、その声が重厚で凄みのある、押し付けがましいものに聞こえた。

それに少しでも抗うために、鬼丸は声を荒げた。


「そんなものできるはずないでしょう。さあ、ウラシマ。玉手箱を返しなさい。返さない限り私たちは帰りませんよ」

「やだね。返すつもりなんて毛頭ないよ。君たちだって無用な戦いはしたくないだろう?さあ、帰った。帰った」

「キンタ、黙っていないでどうにか言ったらどうですか?」

「……俺はウラシマと争う気はない」


予想外の返答に鬼丸も、そしてウラシマも耳を疑った。


「キンタ!?」

「そ、そうかい。いやぁ、キンちゃんが懸命で助かったよ。それでは出口はあちら――――」

「――――だからウラシマ、俺はオメエを受け入れるよ」

「……はっ?」


ウラシマは、今度は自分の脳を疑った。

今この目の前の男はなんと言っただろうか、今までこの男の甘さに関しては認識していた。そこがこの男のよき点と思っていたし、弱点であると思っていた。


しかしコレはただの馬鹿だ。


「だから敵であるオメエを受け入れるって言ったんだ。俺はオメエのことを赦すよ」

「――――間欠泉」


ウラシマは短くそう言霊を放つと、金太郎たちの真下の地面から熱水が噴出する。

もちろん、二人ともこんな攻撃で死ぬような奴らじゃない。瞬時に二手に別れ、熱水から脱した。

こんな攻撃、無駄だと分かっていても攻撃してしまった。いや、せざるを得なかった。怒りで気が狂いそうになったが、あまりの怒りで一周回ってまた正気に戻った。


―――――馬鹿は死んでも治らないと言うし、だったら殺してやるしかない。



「オメエが仲間じゃないと何度でも言うのなら、俺は何度でもオメエを赦してやるよ。だから――――」

「――――ふざけんじゃねえぞ!」


ウラシマの感情が爆発した。

普段からニヤニヤ、道化のように振舞っている彼には感情なんてものは存在しないと思っていた。

しかしなんてことはない。彼も一人の人間。あまりの憤怒に圧倒ばかりされている金太郎だが、心の奥では少し安堵していた。


ウラシマの感情はあふれでた洪水のように止まらない。


「敵を受け入れるだと? 僕を赦すだと? 甘ったれてるんじゃねえぞ、坂田金太郎! 僕は竜宮城の人間で、君たちは鬼ヶ島の者だ。双方相容れない存在なのに赦すも何もねえだろ!? 敵は敵らしく、全力で敵を排除するのが筋ってもんじゃねえのよ!? さあ、今決めろよ、俺から逃げるか、俺と戦うか。どちらか選べよ!」


ウラシマは憎悪のこもった目で金太郎を睨みつける。

彼の全身から放たれる感情の波は、金太郎は肌で感じていた。しかしその感情は金太郎をすり抜けもっと別の所に向かっているようにも感じられた。

憎悪の篭っているにも関わらず、ウラシマの言葉は宙に消え、誰に向かっているのか分からないまま発せられていた。


金太郎は紫電を構える。自分が、彼を何とかしなくてはいけない。


「今から俺がオメエに決着をつけさせてやるぜ、ウラシマ」

「上等だ。理想と現実に飲まれて水没しやがれ」



       ▽       ▽      ▽



「オクタ、八重結合」


ウラシマは短く詠唱を唱える。と八つの水球が出来上がり、それぞれが金太郎たちを襲う。彼は魔術師、コレぐらいのことなら造作でもない。

しかし金太郎にとっても、コレを防ぐことは造作でもない。


「FirstDriveSetUp Ceate!」

「……デカ、過重結合」


今度は十個、しかもそれぞれの大きさが先ほどより一回り上回っているように見える。しかしどんなに強くしたって、金太郎の結界は壊せない。


「無駄だああああ! 鬼丸、後ろ頼むぜ!」

「仕方ないですね。コレもあの箱を取り戻すためです。ウラシマはおまけですからね」

「……」


ウラシマは金太郎が自分に向かって突っ込んでくる様子を見ていた。

ただの退魔師と鬼ならば倒すことなんて簡単だ。人間の70パーセントは水、ちょっとそれを弄ってやれば簡単に死ぬ。

ただ、鬼丸と金太郎は二人揃ったら厄介だ。

――――何故なら彼らは無敵だから。

桃太郎(最狂)を倒し、天人(監視者)を退ける。今までの彼らは負けなし、そしてこれからもおそらくそうだろう、とウラシマは思っている。その様を傍観していると、自然とそう思ってしまったから不思議だ。

ウラシマの右手が光りだす。敵が無敵ならば、自分も全力を出さなくてはいけない。


「我に宿りしは圧……逆浸透、開始」

「む?」


鬼丸が何かに気が付く。あの魔力の光は明らかに水の魔術ではない。


「キンタ、気をつけて! ウラシマは何かやろうとしています。不意討ちをくらうかも」

「おう! 分かったぜ、鬼丸」

「逆浸透、完了……モノ、純一重結合」


ウラシマは左手と右手を合わせる。圧力と水が混じりあい、新たな水が生まれる。その水はどこか今までとは違う、透き通った青であった。

金太郎は雷で迎撃しようとする。しかし……


「な!?……」


信じられないことが起こった。水が雷を打ち破った。

その勢いは止まることなく金太郎に命中する。腹部に直撃し、腹の中身が吐き出そうになるが何とか堪える。

口の中に酸味が広がるが、関係ない。今はウラシマのことが重要だ。


「な、何しやがった、ウラシマ?」

「それぐらい自分で考えろ、坂田金太郎。尤も、鬼丸童子のほうは分かっているらしいけどな」


鬼丸は少し考えてから、考えうる最大の可能性を呟いた。


「純水?」

「その通りだ、鬼丸童子。濃度の違う二つの水を用意し、その間に半透膜で遮る。すると水は浸透圧によって濃度の高いほうに水が流れ込む。コレによって生じた圧力と同じだけの力を加えてやると純水が出来上がる。コレを逆浸透法と呼ぶ」

「純水は不純物を持たない。だから電気は純水を分解することはできない。実験で水を電気分解したいときに不純物を加えるのはそのためです」

「……ごめん、意味わかんない」


……残念、金太郎には理解できなかったようだ。


「要するにだ、坂田金太郎。貴様の雷の属性的アドバンテージは失われ、魔術同士の対決では魔力の保有量によって決まるようになったわけだ。さて、退魔師の出来損ないの魔術と、魔術師でない鬼の魔力が700年生きた魔術師の魔力に勝てるかな?」

「勝てる? 愚問ですね。魔力の保有量では勝てなくとも、色はこちらの方が上です。見たところ、そんな少ない色の数で、貴方こそ勝てると思っているのですか?」


ウラシマにデザートイーグルを向ける。

鬼丸の力は魔力自体を操るもの。だから力を扱うものは鬼丸にとって格好の餌食。金太郎がウラシマにとって天敵であることと同じように、鬼丸も魔術師にとって天敵なのだ。

敵は二人、しかも二人とも自分に不利な相手と言う一般的に考えれば絶望的な状況で、ウラシマは震えていた。


――――彼は笑っていた。


「くっくっく……アハッハッハッハッハ!」

「……何がおかしいのですか?」


鬼丸の眉間に自然と皺が寄る。収まることを知らない笑いを必死に堪えて、ウラシマはようやく喋りだした。


「いやあ、悪いね。流石の鬼丸童子でも知らないことがあったとはね。くくく……失礼。鬼丸童子、君は一つ勘違いをしている」

「何? ……」

「もし君の言うことが正しければ、歴史上いかなる偉大な大魔術師も君には勝つことはできないだろう」

「そうです。全ての魔術師は私に劣る」

「違うね。魔力を方法としか思っていない君はどんな魔術師にも劣る」


ウラシマはふうっと大きく息を吐き出した。

鬼丸にはそれが、出来の悪い生徒を教える教師がするように思えて不快でならなかった。彼の眉間の皺はさらに深くなっていく。

ウラシマは出来の悪い生徒に、魔術をもう一回学んでもらうために彼らに向き合って教授を始めた。


「魔力には色々な種類がある。火、水、風、土、雷……数えるのも馬鹿らしく思えるほどにね。命一つの魔術回路は一つ、それも一色だ。だから君の隣にいる退魔師は雷しか使えないし、他でも例外はない」

「……」


君の隣の退魔師、その言葉に金太郎は言いようもない寂しさを感じた。もはや名前すら呼ばれなくなったか……。

彼が感情の波に襲われているのを予測していたのか、はたまた違うのかは知らないが、ウラシマは構わず鬼丸に教授する。


「ところが僕たち魔術師というのは、魔術回路は一つだがあらゆる色に染まることができる。言うなれば白色、いや、透明かな。だから僕たちは色々な魔術を使えるし、一般的にはそこが魔術師の強みだと思われている。しかしそれは違う。僕たちの本当の強みは色を極めたからなんだ」


魔術師でも何でもない鬼丸と、退魔師の金太郎にはウラシマの話は理解できない。


「色を極める?」

「そう。あらゆる色が見えるからこそ、一色しか極めることができない。僕たちは魔力の研究者だ、狂気に取り付かれたね。本来なら“最狂”の称号は魔術師のためにあるんだけど残念ながら今代はちがうようだ」


誰かは言うまでもない。ココにいる人間誰もが知っている規格外だ。


「さて、僕も魔術師だ。当然極めるべき色もある。それを今から見せてあげようじゃないか」

「……水、ですか?」


鬼丸はそう呟いた。そうあって欲しいと思ったからだ。今のウラシマでさえ自分たちでは止めるのは難しい。これ以上のものはあってほしくない。

そんな鬼丸の願望を打ち砕くように、彼は首を横に振った。


「水の魔術はココにいて自然と身についたものだ。僕の本当の命題は――――“時”」

「時間?」

「そう、今から見せてやろうじゃないか。僕が700年生きている由縁と、700年かけた研究の成果を!」



      ▽      ▽      ▽



人は見かけによらないものだ、とは誰が言い始めたかは知らないが良く出来た言葉だと、鬼珠は思う。コレこそ人付き合いの真理だとさえ思う。

かく言う鬼珠の周りには、体つきがまるで子供にも見えるのに鬼一番の怪力の持ち主だったり、同性から見てもかなり整った顔立ちをしているのに女関連の縁がまるでなかったりする鬼もいる。

――――亀の動きはノロいもの。

だから亀だからと言って目の前の巨大亀の動きが決してノロいとは限らないし、自分も老人だからと言ってまったく戦えないと言うわけではないのだ。


「グシャット・ハンマー!」


亀とは思えないスピードで繰り出される拳を、老人とは思えない動きでかわす鬼珠。

音もなく地面に着地した鬼珠の目に入ってきたのは巨大な足の影であった。


「ふん!」

「もしもし亀よ、亀さんよ……」


今度は蹴り、いや、この規格になると蹴りというよりは踏み潰すという表現が正しい。巨大な亀の全体重をかけた踏みは、予想通りかなりの威力をほこり竜宮城の床を踏み抜いてしまった。

あんなものが当たってしまったらひとたまりもない、と鬼珠は人事のように思っていた。所詮仮定の話、自分に当たるわけもない。


「世界の内でお前ほど……」

「ハアアアアア!」

「歩みの遅い者はない……」


ちょこまかと動く鬼珠をしとめるために、亀吉は必殺の一撃を放つ。


「ギガント・プレス!」

「どうしてそんなに……速いんじゃろうな?」


鬼珠は結界の発動と共に唄をしめる。結界と亀吉の圧力がぶつかり合い、辺りの木々は激しく揺れていた。

彼はいい加減飽き飽きしていた。と言うのもコレまでずっと避けてばかりで、こちらから攻める機会がなかったからだ。そろそろ終わりにしたかった。


「亀だからと言って遅いとは限らない。むしろ亀は案外速いもんです」

「……そうじゃの。亀と言って遅いと見限っておった儂の勉強不足だったの」

「そうです。だから早く老いぼれは潰れた方が良いと思いますよ」

「不謹慎な……」


亀吉はさらに力を入れる。いくら強力な結界と言えども、人の何十倍もの大きさの全体重に耐えられるはずもない。ギリギリと、音を立てながら少しずつ結界は崩壊していく。


「早く潰れれば楽になると思いますよ」

「……さて、亀吉君。鬼の強さとは何か知っているかな?」

「はあ?」


一瞬だけ力が抜けた。この老いぼれは何を言っているのだろうか?絶体絶命のこの状況にそぐわない話題だ。

自分の隙を生み出すためか、別の目的か。どちらかは知らないが、冥土の土産に答えてやることにした。


「鬼の強さとは狼男を遥かに超える身体能力と圧倒的な魔力保有量、じゃないんですか?」「うむ。30点じゃ」


思ったより低い点数に亀吉は思わず顔をひきつらせた。


「……どこが違うと言うのですか?」

「ほっほ、若造。鬼の強さとはそれだけじゃないんじゃよ。鬼の強さとはな――――終わりの恐怖とそれを具現した魔力なんじゃよ」

「……」


―――――ゾクッ!

背筋が凍てつく。鼓動が早くなっていく。

今自分の目の前の老いぼれが自分以上の化け物に感じられた。


「その名は“滅”。元々地獄に住んでおった我々は、物が滅んでいく様をその目で見てきた。その家庭で身についたのがこの力。さて、お前にも滅びと言うものがある。その未曾有の恐怖に打ち震えるがいい」

「……笑止。僕は滅びなど怖くない。彼女のためならね」

「それこそ笑止。お主、人のために死ぬほど空しいものはないぞ」


呼吸が荒い……。生きるために必要なことなのに、今ではそれすら煩わしく思われる。

鬼珠が手の平を上に向ける。するとそこに見たこともない色の魔力が巻きついていく。

――――どす黒い混沌とした色。

生命が警笛を鳴らしている、早く逃げろと。

しかしそれでは遅かった。


「鬼の力は滅びの力……鬼闘術・絶!」

「む? な、何!?」


結界は対象を選ばない。いくら壊れかかっているとはいえども、解呪しなければ鬼珠も攻撃できないはずだ。

しかしそんなことを無視して、鬼珠は攻撃を仕掛けた。

結界を易々突き破り、亀吉の拳と激突する。すると亀吉は妙な感覚に襲われた。自分の腕がなくなっていくような、ぶつかり合っているはずが無に腕を突っ込んでいるような感覚。激痛と共に。


「―――――ぐっ!」

「鬼闘術・戒」


腕は完全になくなり、バランスが取れなくなった亀吉に追撃が入る。

亀の甲羅は一方は強固だが、もう一方は弱い。とは雖も自分のガードの固さには自身が合った亀吉であった。

しかしそんなこと関係ないと言わんばかりに、自分よりはるかに小さい老人に吹っ飛ばされた。


――――理解不能。


「な、何が起こっている?……ほ、報告によれば、鬼の長老の力は以前より弱まっていると……」

「モノは見かけによらないんじゃよ、若造」


鬼珠は華麗に着地する。その口端はニヤリと釣りあがっていて、亀吉はその顔を見てようやくこの鬼珠に恐怖、と言うものを感じた。


「若いときには本物を見るべきじゃ。儂が人生の先駆者として、本物を見せてやろう。本物の、恐怖というものをな」



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