表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/86

第三章・第六話:最深部に突入だ!

「まったく・・・・・なんで男の人はこんなにもでしゃばりなんでしょうね?ここで待っていれば敵は向こうから来るというのに」

「・・・・・・」


かぐやは呟くがリュウはその問いに答えない。かぐやも元から期待していなかったのでそれで別によかった。双方喋ることもなかったので、辺りには静寂だけが漂っていた。

さて、金太郎は自分に任せろと言って出て行ったきり、帰ってこない。どうせあの人のことだから、と大して気にしてもいないのだがすごく暇である。金太郎からココを動くな、と言われているが、暇で暇で仕方がない。


かぐやがつまらなさそうにあくびをすると、リュウがポテポテと歩いていった。


「ちょっと、リュウちゃん!どこに行くのですか?一人で行ってしまっては危ないですよ」

「・・・・・・」


リュウは答えない。

流石のかぐやでもこんな小さな子が迷子になるのは気にかかる。

仕方のない。大きく息を吐いて、その小さな背中を追いかけた。


「まったく・・・・・貴方も大概仕方ない子ですね。ちょっと待ってくださいよ」


リュウはどんどんと歩いていく。迷うことなくまっすぐに目的地まで歩いていく。

リュウを見失ってしまっては逆にかぐやが迷ってしまいそうだ。


と、しばらく無言でリュウについていくと明るい場所に出た。海中トンネルのような、周りが海に囲まれたその美しい光景にかぐやは目を奪われていた。


「うわあ・・・・・綺麗・・・・」


澄み切った青、それに太陽の光が差し込んでより一層輝いている。その青を優雅に泳ぐ魚達。こうして見ると本当に優美で、儚くて、まるで夢のようだ。

・・・・・・この会社の部長を見ていると、どうしてもこの美しさを忘れてしまう。自分たちは今海の中いると言う神秘の中にいるのだ。


しばらくかぐやが見とれていると、リュウが突然口を開いた。


「リュウ、かぐやが好き」

「え?」

「リュウ、かぐやが好き」

「な、何言っているんですか?いきなり・・・・・」

「リュウ、かぐやが好き。だからココ連れてきた」


リュウの口数が途端に増える。突然の変貌ぶりにに少々驚きが隠せないが、自分たちの立場を忘れてはいけない。自分たちは侵入者、長くココに留まることは危険だ。


「私もリュウのことは好きですが、ココは危ないですよ。早く戻りましょうよ」

「危なくない。リュウがかぐやを守るから」

「――――ちょっと!」


突然リュウがかぐやに抱きつく。

甘えんぼの子が大事なものを抱きしめるように、ギュッとかぐやを抱きしめた。


自然と嫌な気分にはならなかった。


「・・・・・どちらかというとこちらが守る側なんですけどね」

「リュウ、かぐやが好き。だってあの人の匂いがするから」

「・・・・・・あの、人?」

「あの人はいい匂いがする。蓬莱の花の匂い。かぐやもおんなじ匂いがする」


蓬莱の花、それは月にしか咲かない花である。かぐやはそれが幼いころから好きで、カナモリをはじめとする周りの天人に押し花をあげていた。

何故その花のことを知っているのだろうか、そうかぐやが疑問に思っていると、リュウが予想外のその名を口にした。


「リュウ、かぐやが好き。ツクヨミ様とおんなじ匂いがするから」

「っ!?・・・・・何故その名を?」


ツクヨミの名前を知っていることは別段不思議なことはない。御伽の国のほとんどの人がその名を知っているから。

しかし、今この子はなんと言っただろうか。匂いが同じ、だと・・・・・。どういうことか?


かぐやはリュウに詰め寄った。


「答えなさい。貴方、一体誰なんですか?」

「・・・・・リュウは――――――」



      ▽      ▽      ▽



「――――覚悟!」

「――――決める!」


二人は同時に自分の武器を敵の首筋に向ける。互いに相手を殺す勢いで出て行ったのだが、拍子抜けしてしまった。

互いに顔を見合わせ、しばらく間が空いた。


「・・・・・ってキンタ?」

「・・・・・鬼丸か!?」

「貴方こんなところで何をしているのですか?」

「それはこっちのセリフだぜ。お前こそココで何やってんだよ?・・・・・長老と一緒に」


長老はほっほっほと、笑っている。どうやらこうなることが分かっていたらしい。それよりも金太郎は彼がまともに動いている見たことがない。

本当に何をやっているのだろうか?


「私は、ウラシマを追ってきたんです」

「ウラシマを?何で」


ウラシマといえば金太郎の中では渦中の人間である。そのウラシマが何かをしたと言うのならば一番気にかかる。自然と声のボリュームが大きくなってしまった。

鬼丸は別に語りづらそうもなくはっきりと言い放った。


「ウラシマが鬼ヶ島を強襲し、玉手箱を奪っていきました」

「―――――えっ?」

「コレは竜宮城と鬼ヶ島の間に結ばれていた契約違反です。ですから私は長老と共にこの会社の社長、乙姫に―――――」

「ちょ、ちょっと待てよ!ウラシマが竜宮城に攻めてきたって・・・・・それって俺たちを裏切ったって事か!?」


金太郎からサッと血の気が引く。

ウラシマは確かに掴みどころもないし、いつもヘラヘラしていて何を考えているのか分からなかったが自分たちが助けを求めれば必ずそれに答えてくれた。

だから金太郎はウラシマのことを頼りにしていし、その仲は変わることのないものだと思ってさえいた。

鬼丸は金太郎のそんな表情を見て答えにくそうに、しかしはっきりと答えた。


「正確に言うならばウラシマは私たちを裏切ってなどいません。ウラシマは元々竜宮城の人間。本来ならば私たちの仲間ですらなかったのですよ」

「・・・・・そんな・・・・・」


金太郎はあまりの衝撃に呆然とする。

ウラシマは自分たちを鬼ヶ島に連れて行ってくれた。

―――――仲間でもなんでもないのに

ウラシマは天人を退ける鬼丸の計画に協力してくれた。

―――――なんとなく?

ウラシマと共に祭りを駆け巡った。

―――――それも嘘。


それでもすぐさま否定しようとするが、鬼丸の言葉が重くのしかかった。


「とにかくコレは事実。竜宮城がこちらを攻めてきたのならばこちらも攻めるまでです。・・・・・・キンタ、どうしました?」

「―――――いや、なんでもない・・・・・」

「・・・・キンタ、貴方はこんなところで何をしているのですか?」

「ああ・・・・・。俺は、鬼ヶ島からかぐやと一緒に知らん女の子に連れてこられたんだよ。そんで今に至る」

「おや、かぐやがいるのですか?かぐやはどこに?」


鬼丸にとってかぐやは最優先事項。すぐさまこの話題に喰らいついた。


「お~い、かぐや。出てこいよ」


自分が先ほどまでいた角に話しかけるが、返事はない。


「・・・・・あれ?おかしいな。さっきまでいたはずなんだけど―――――お、おい、鬼丸!そんな目で俺を見るなって!」

「キンタ・・・・・かぐやに何かあったらどうするんですか?・・・・その場合の責任、キンタに百八回の鞭叩きですよね」

「除夜の鐘!?ていうか怖い!そんなに不安なら自分で探しに行けばいいだろ!?」

「はっ!そうだ!今すぐいかないと!キンタ、後頼みま―――――」

「――――何言っておるんじゃ、鬼丸。仕事をサボル気か?」


今まで黙っていた長老が俊敏な動きで鬼丸の首根っこを掴み持ち上げる。鬼丸はなす術もなく大人しく持ち上げられ、説教を受ける覚悟をしていた。


「お主、自分の仕事の責任とかぐや、どちらが大切なんじゃ?」

「かぐ――――」

「仕事に決まっておろうが。早く行くぞ、鬼丸。金太郎君も」

「・・・・・はい」


長老の言うことは絶対である。それは立場上の問題だけでなく、彼が発する雰囲気に飲み込まれるからだ。当然鬼であり、若輩者である鬼丸は逆らうことはできず、素直に顎を引くことしか出来なかった。


「――――って俺も?」


それは金太郎ですら例外ではない。



      ▽      ▽      ▽



「・・・・・本当にココ、海の中なのか?」


金太郎はその光景に唖然としていた。

大体海のなかに酸素があること事態、非常識なこと。それなのに今自分の目の前に広がっているそこは今まで以上に広く、何故か草木も生きている。

何も知らされずココに来たら、間違いなく海の中とは思いもしないだろう。


「正真正銘海の中じゃよ、金太郎君。さてようやく第斜区画か・・・・・そろそろ来るかの」

「来るって・・・・今までの流れから言うと第斜技術開発部とやらでも出てくるんですか?」

「いや、第斜技術開発部なんてものは存在しん。技術開発部は6つしかないからの」


では誰が来るというのだろうか、鬼丸の頭に疑問詞が浮かぶ。


「ただ、例外が一つある。存在するはずのない七つ目。その名は・・・・・」

「はいは~い。僕たちの事ですか~?」


木の陰から人影が現れる。トロンと眠そうな目、ヨレヨレのスーツを来た覇気なんてものは感じられない・・・・・・二足歩行の亀。


「あっ!あの時の亀だ!」


金太郎はこの亀の顔に見覚えがあった。

この男はウラシマと最初に会ったときに、ウラシマの側にいたこの男、そして突然巨大化して自分たちを邪魔したあの亀だ。


「どうも、お久しぶりです。第零技術開発部副部長、亀吉です。どうぞよろしくお願いします」

「第零技術開発部?」


見た目とは裏腹にはっきりとした口調で疑問を残すような自己紹介をする亀吉。

鬼丸と金太郎の頭の上には疑問詞が増えるばかりである。


「零って何ですか?零って・・・・」

「何もないってことか?」

「あながち間違っていないかもな。零というよりi(imaginary number)というほうが正しいか?」

「う~ん、そうかもしれないですね」


Imaginary number、虚数と言われるそれは通常の数には含まれず、大小関係すら存在しない本来ならば存在し得ない数である。

その言うとおりであれば何故彼らは存在するのだろうか、虚数というものは実数(現実)には存在しないはずなのに。


「貴方が僕たちのことを覚えていてくれるなんて光栄ですね」

「御託はいい。どうせ儂たちのことを今まで監視していたのじゃろう」

「ご名答です。いやあ、流石ですね~。うちの部下たちにはこっそり、と言っておいた筈なんですけどね。・・・・・こりゃ減給かな?」


亀吉がそういうと、木陰がガサっと揺れた。亀吉がそちらに目線を配ると、木の陰に感じられた気配が二つ、消えうせた。

金太郎は驚いているが、鬼丸と鬼珠にとっては何てことない。ココに来たときから誰かに監視されていることなど分かっていた。

だから何事もなかったかのように、鬼丸は亀吉に問うた。


「で、その第零技術開発部の副部長さんがどういうつもりですか?」

「君たちを止めようかな、と」


丁寧な口調でサラリと言う。あまりの爽やかさに少し言葉に詰まってしまった。


「へえ・・・・・私たち三人を相手にして、ですか?」

「うん、そうだね」

「随分と自信があるじゃねえか。いっておくが、俺たちは結構強いぞ」

「できるさ。彼女のためなら・・・・・我に宿りしは形、我の姿形は変幻自在―――――超巨大化!」


・・・・・・驚くようなことは何もない。

この男のやることは分かっていたし、こういう魔術もあることは知っていた。自分の細胞を変化させ巨大化、凶暴化させるような魔術が。

この魔術は強力だ。少なくとも身体強化の魔術の分類では最強の一種である。しかし元には戻れなくなる危険があり、今では誰も使わないはずだ。

そんな情報を頭の中で反復させながら、鬼丸はデザートイーグルを取り出す。現実は現実、現実ならばそれをぶち壊すのみ。


「もうこの展開には慣れましたよ。さあ、全力で――――」

「まあ待て。鬼丸」


長老が右手で鬼丸の進行をふさぐ。何もかも分かっているような顔で自分の行動をとめる長老に鬼丸はイライラが溜まっていく。

いい加減こんな展開はうんざりだ。


「もう、一体さっきからなんなのですか?長老。私のセリフをことごとく邪魔して・・・・・今度は何です?」

「ありていの言葉を言うならば、“ここは儂に任せて、先に行け”かの」

「よっ!フラグ一級建築士!」


巨大化した亀吉が野太い声で茶化すが長老と鬼丸は聞く耳をもたない。

イライラしている鬼丸は長老を糾弾するように言い放つ。


「長老、何故ですか?ココまで来たのは貴方が襲撃、もとい交渉するためにでしょう。ココで貴方がとどまる必要はない」

「まあ、聞け。鬼丸。こいつら第零技術開発部の部長は、お前らがよく知っているウラシマじゃ」

「・・・・・・」


今度は金太郎の表情が曇る。

ウラシマ、その名を今は聞きたくはなかった。しかし・・・・・

―――――放っておくわけにはいかない!


「儂よりお主らのほうが、話があるんじゃないのか、彼に?ん?」

「いえ、私には話など――――」

「あるぞ、俺たちには!アイツと一度話さなくてはならない!」

「・・・・・・もう!二人揃って私のことは置き去りですか?酷い人たちですね。いいですよ!そこまで言うのならば行ってやろうじゃないですか!」


こうなった金太郎は止めても無駄であることを鬼丸は知っていた。


「さあ、行け。若者たち。・・・・・ああ、そうだ。助言を言うとすれば、“後ろに気をつけろ”。それと餞別じゃ。ほい」

「む・・・・・」


鬼丸は長老から何かを受け取る。

手の中にあるそれを見ると、三枚の紙切れ。もちろんただの紙切れではなく、長老自家製の結界の符。その力は折り紙つきである。


「あ、ありがとうございます・・・・・・」

「うむ。気をつけてな」


鬼丸と金太郎は駆け出して行く。巨大化した亀吉の股を抜け、扉に向かっていく。

亀吉はその光景をボウッと見ていた。


「おや?止めないのか?」

「うん。僕に言われた命令は“鬼の長老の足止め”だからね」

「なるほど、のう・・・・・」


自分のことはすでに相手に知られている。敵はこうなることも予想済みだったらしい。

大方この亀吉で自分を疲れさせておいて、全力で討つつもりだったのであろう。

しかし残念だ。こいつらの予想は間違っている。人生とはいつもうまく行かないものだ。その法則に則って今回も、無敵の鬼丸と金太郎イレギュラーが現れた。

長老はフッと笑った。


「では、始めようか巨大亀。いや、それともこういった方が良いかな?“キメラ君”」

「・・・・・違うね。ガ○ラだよ。始めようか、老いぼれ」

「ほほっ、若造め。覚悟せよ」



      ▽     ▽      ▽



長老と亀吉が戦い、鬼丸と金太郎が奥へと進んでいるとき、その光景をモニターしている二人がいた。


「・・・・・・来るわね、敵が。ウラシマ」

「はい・・・・・」


一人はイスにチョコンと座っている女。まだ成人していないように見え、都市は17,8と言うところか。陶磁器のように白い指にその長い指を絡ませて、モニターを凝視していた。彼女の名前は乙姫、この竜宮城の社長である。

そしてもう一人はよく見知った青い髪の少年。竜宮城最後の部長、浦島竜胆であった。


「貴方が果たすのは竜宮城との契約。それ以外は――――」

「いえ、違います」


乙姫の遊んでいた指が止まる。信じられないものを聞いた際に、聞き返すような目で浦島をにらみつけた。

浦島は当然のようにそれに答えた。


「僕が果たすのは、貴方との契約です」

「ウラシマ・・・・・・」

「―――――それでは、第零技術開発部部長、浦島竜胆。参ります」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ