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第三章・第五話:海洋生物って面白い

今回のお話、今まで一番馬鹿げたお話になっていますので、肩の力を楽にして、リラックスしてお楽しみください(笑)

竜宮城第肆区画。竜宮城の東門から入って最初にあるこの区画は、規模としては広さ的にも人口的にも竜宮城最大である。

というのもここの開発部の部長がすばらしく人がよく、別のある開発部から人が流れてきたという話だ。

そんな第肆技術開発部部長、岩士は敵に対しても友好的であった。表面上は。


「ははっ!大変そうですね、手を貸しましょうか?」


そういいながらも岩士は手を休めない。人差し指で空に印をきり、右手で部下に指示を出している。それに従い半魚人たちは先ほどとは比べ物にならないほど、知的に、戦術的に攻撃を仕掛けていく。

正直言うと、金太郎とかぐやは岩士の部下に囲まれ、八方塞がりであった。


「何が大変そうだ!全員オメエの部下じゃねえか!」

「そんなこと言うんだったら、早く引き上げさせてくださいよ!」

「はっは!それはできないねえ」


そう文句を言っているうちに部下の数が増えていく。その原因は岩士の後ろに存在する黒い穴のせいであった。

岩士が作り出したあの黒い穴、おそらくは空間と空間をつなぐものなのであろう。そこからウジャウジャと、まるで働き蟻のごとく岩士の部下が出てくるのであった。

金太郎が部下をいくら雷で倒そうが、かぐやがいくら月光で防ごうが、その倍の数の部下はでてくる。

金太郎も、かぐやもうんざりしていた。


「キンタさん!貴方の結界でどうにかなりませんか?」

「ええ?だって、結界は防御用・・・・・いや、待て。使えるかも・・・・」


金太郎は何かに気づく。そういえば・・・・・。

とにかく、このままではジリ貧だ。駄目元でも試すしかない。


「FirstDriveSetUp!Create!」

「無駄無駄。どんなに防ごうが、彼らはあの穴からでてくる・・・・・」


金太郎の結界が発生する。黒い穴の周りに。


「えっ!?」


岩士の素っ頓狂な声をあげ、後ろを振り向く。

するとそこで起こっていたのは、部下が出てくる瞬間、金太郎の結界に触れ感電して倒れていく様であった。黒い穴から出てきた部下が、出てきた時にやられるその様はあまりに滑稽で、かぐやは笑いを必死に堪えていた。


「あの穴をふさいちゃえば出てくることもないかな~、って思ってたけど、本当にどうにかなったな。コレでオッケーか?」

「オッケーですよ、キンタさん。見てくださいよ、あの顔。凄い顔ですよ、アレ。あっはっはっはっは!」

「・・・・・・」


岩士の顔は口端がひきつりながら固まっている。

先ほどのジェントルマンな彼とのあまりのギャップに、かぐやの笑いはついに爆発した。


「そんなに笑うなって」

「あっはっは!・・・・・・ふう、さて、どうしますか?このまま貴方一人で戦いますか?私たちはそれで一向に構いませんけど、キンタさんのビリビリは痛いですよ」

「ビリビリ言うな」

「・・・・・・そうだね。彼のビリビリは痛そうだ。ここは一旦引くのが得策でしょう」


その言葉と反して、岩士は自分の武器を構える。


「しかしここで諦めては倒れていった部下たちに面目が立たない。最後の一人になっても僕は戦うよ」

「ほう・・・・・」


なるほど、こういう態度が部下に慕われている理由なのか。どこの誰かは知らないが、こういう人間に部下を取られても仕方なかろう。敵ながらあっぱれである。

金太郎は岩士と正面に向き合うと、紫電をとって構えた。


「来るなら来い!俺が相手してやる!」

「・・・・感謝する。それでは、覚悟!」


岩士は駆け出す。倒れていった部下のために。金太郎は力を入れて、それを受け止めようとする。

さて、余談だが金太郎は魔術師ほど魔力の制御に長けていない。なので感情の起伏によって、不意に魔力が漏れ出すことが多々ある。周りの者を痺れさすこともあった。

残念ながら今回も例によって、魔力が漏れ出した。


―――――――ビリビリビリビリ!

「・・・・・あれ?」

「・・・・・最悪」

「・・・・・ひどい」


岩士は感電して、黒焦げになって倒れる。金太郎はしばらく呆然として立っていた。

金太郎、かぐや、リュウ、第肆区画突破・・・・・・。



     ▽      ▽       ▽



「キンタさんは本当に慈悲も欠片もありませんね。あういう場面では一騎打ちするのが礼儀でしょう」

「し、仕方ねえだろ!力入れたら出ちまったんだから!」

「・・・・・かわいそう」


非難轟々・・・・・

かぐやはともかくとして、リュウにまで言われるとは・・・・。子供が好きな金太郎にとって少し、いや、だいぶショックであった。


「そんな・・・・・リュウまで・・・・」

「当然の反応ですよ。ねえ、リュウちゃん」

「ねえ」

「いつのまに仲良くなったんだよ?」


リュウがかぐやに同意を示す。自分にはあまり反応してくれないのに・・・・・。

この差は何なのであろうか、とリュウに聞いてみると、女の子だからという簡潔な答えが返ってきた。

なるほど、それならば仕方ない。


「ていうよりココはどこですか?随分広いホールですけど」

「さあな・・・・・」


そういえば金太郎たちはリュウに目的も何も聞かされず、ここまで来た。ここがどこかも分からず変な場所に進んできて不用意にも程があるだろう。

そしてさらに悪いことに変な場所には変な奴が現れるのであった。


「ふはっは!お困りのようだね、お嬢さん方。俺が出口まで案内しようカ?」


広いホールにジャージ姿の黒髪、浅黒の肌の男。少し自分たちとは顔立ちも違うように見える。この国の人間ではないことが分かった。初めて見たその人種に、金太郎は少々驚いていた。

かぐやとリュウは、というと眉をひそめ金太郎の影に隠れた。


「あの人どことなく暗鬼に似ているから嫌いです・・・・・」

「確かに・・・・・。オメエ誰だ?」

「ふっは!俺の名前は第伍技術開発部部長、真黒まぐろ。野郎には興味ネエゼ!」

「やっぱり暗鬼だ・・・・・・」


なるほど、この会社の部長というのは碌な奴はいないらしい。

まあ、あのウラシマが勤めている会社だ。まともじゃないと思っていたからそこまでショックじゃない。

ところで、金太郎は先ほどから疑問に思っていたことを口にした。


「ところでオメエ。何で常に走り回ってんだ?」

「あ?オメエしらねえのカヨ?」

「はあ?」


はて、何のことだろうか。


「マグロっつうのは海水から酸素を補給するだろ?だからたとえ休んでいるときでも常に動き続けているんだよ。つうか止まったら死ぬ。そんなこともしらねえノカ?」

「いや・・・・・っていうかオメエ、マグロなの?」

「んなわけねえジャン。ばっかじゃネエノ?」

「・・・・・・」


・・・・・駄目だ、こいつ。話が通じていない。人種の壁が高いことを金太郎は始めて実感した。

と、半ば絶望していると、そんなことも無視して真黒は動き出す。


「オメエたちの命運もここでエンド。死んでもらうゼ、高速泳法“九七式”」


今までジョギング程度だったスピードが突如加速する。まるでそれはジェット機、音すらも遅れて聞こえるほどのスピードであった。

金太郎は目でしか追えないそのスピードに驚愕しながら、その顔は笑っていた。


「おお!はええな、おい!」

「はっはっは!マグロは最高時速で魚雷並み(約90キロ)のスピードを出せるんダゼ!しかも俺の皮膚は抵抗を極限までなくしたものだし、心拍数はオメエらの4倍。まさに走りに特化してんダ!そんな俺についてこれるカナ?」

「だからオメエ、マグロじゃねえだろ!?」


と、ツッコミながらも自分にはどうすることもできない。槍斧なんて扱っていることから分かるとおり、金太郎は速さというものに疎い。自分の専門は力と結界による防御だ。

一人の戦士としてならば自分は未だに半人前なのだろう。しかし金太郎はそれで納得していた。


―――――自分の専門外ならば、仲間に任せればよい。


「かぐや、いけるか?」

「・・・・・正直あんなものに触りたくもないんですが仕方ないですね。一つ勝てる方法を思いつきました。キンタさん、少し協力してください」


自分には仲間がいる。何も全てを自分でやる必要もない。自分の強さとはこういうものだ、と金太郎は思っている。

かぐやは首をけだるそうに回しながら月光を取り出し、それを振るった。するとそれは一筋の光となり、絹糸のように美しかった。


「月光。キンタさん、コレに掴まってください」

「えっ・・・・ああ――――って何する気だよ?」


・・・・・・自分で頼んどいてアレだが、金太郎の脳裏に嫌な予感が走る。


「そんなもん・・・・・こうするに決まっているじゃないですか!」


かぐやは月光を大きく振りかぶり、そしてそれを釣りの要領で投げ飛ばす。

金太郎はなす術もなく吹っ飛ばされ、女性に吹っ飛ばされた悔しさと、何がなんだか分からないで叫ぶばかりであった。


「うっそおおおおおん!」

「うおおおおおお!!獲物きたああああああああ!!」


まるで金太郎が吹っ飛ばされたタイミングを見計らうかのように真黒が迫ってくる。金太郎は逆さまになりながら、真黒が大きく右手を振りかぶっているのが見えた。金太郎はそれを不安定な体勢の元で必死に防ごうとした。


「――――ごぶっ!」

「キンタさん、絶対に放さないでくださいよ」


金太郎は必死に命令を果たそうとする。

とにかく今はかぐやに従うしかない。腕を絡ませ、真黒の拳が抜けないように固定し引き寄せる。


「ちょ、お前、離せっテ!」

「かぐや!どうにかしてくれ!」

「分かりました。どうにかしましょう!」


そう言ってかぐやは月光を両手で握り締める。まるでその姿はベテランの漁師のように堂々と、威厳に満ちていた。。

しかしかぐやの顔をよく見ると、彼女の口が三日月形に歪んでいた。


「マグロ、一本釣り!」

『ちょっとおおおおおおお!』


突然糸状になっていた月光が巻き上がる。離すこともできない金太郎と真黒は引っ張り上げられるばかり。

―――――まずい、このままだと地面に直撃する!

地面に叩きつけられる直前、とっさに金太郎は体を入れ替える。下に真黒、上に金太郎が来る形となり、そのまま地面に直撃した。


「いてええ!」

「ぐぼおおおおお!!」


床に叩きつけられた衝撃と、金太郎による衝撃が合わさりそれは非常に甚大なものとなる。真黒は口から血を少々吐きながら、ピクピク動いていた。


「つ、釣られた、ゼ・・・・」

「・・・・・こんなことで勝ったって言っていいのか?」

「いいんですよ。さあ、もっと奥に進みましょ」

「いや、待て・・・・・・。こいつ何か言っているぞ」


真黒が倒れながらブツブツと何か喋っている。遺言を聞いておくのも悪くないかもしれない、そう思ってかぐやは耳を近づけた。


「び、美少女に釣られるのも・・・・・悪くないかも・・・・」

「――――死ね、変態!」

「ごぶああああああ!!」


真黒の腹に力一杯、それこそ殺す勢いで蹴りを入れる。口からは胃の中にあった何かを吐き出し、体はビクビクと痙攣している。

金太郎は言いようもない気持ち悪さを感じながら、彼に少し同情していた。かぐやの蹴りは本当に苦しい。


「不愉快です!早く行きますよ」

「うん」

「ああ・・・・・・分かった」


当の犯人のかぐやとリュウは当然のように奥へと進んでいく。金太郎はその後を追うしかなかった。女と言う生き物は怖い、と金太郎は不意に思った。


かぐや、金太郎、リュウ、第伍区画突破。



      ▽      ▽      ▽



「オメエも大概、情け容赦ねえよな」

「ふん!そんなもの、乙女に不用意に近づこうとする野郎共が悪いのですよ!」

「お前のほうから近づいたんだけどな・・・・・・んな事よりも腹が減ったな。俺たち昼から何もくってねえから・・・・・」

「そうですよね。敵も鰯やらマグロやらおいしそうな名前ばかりですからねえ。今度は何がでてくるでしょうか?」


今まで見た魚の種類は鮪、鰯、鰆、鮟鱇、鯖、秋刀魚、鰹、鯛、鰤・・・・・実においしそうなものばかりである。見ていて飽きないからいいが、想像するだけで涎が出てくるから困ったものだ。


部長クラスにもなると何故かおいしそうに見える。少し楽しみにしていた。


「いたぞ、敵だ!誰か来てくれ!」

――――――了解。第陸区画に増援を送る。敵を見失うな。


辺りにけたたましく警報音がなり、ワラワラと半魚人が武器を持って出てくる。彼らもおいしそうに見えるが、部長の登場を待っていたのに・・・・・。

雑魚には興味ない。早々に退場してもらおう。


「あちゃあ。雑魚のお出ましですか。ビリビリお願いします」

「もう俺の名前、ビリビリでいいや・・・・・」


金太郎は手を振るう。と、一瞬にして半魚人が倒れこんだ。ただ単に地面に電気を流しただけだ。常に水に晒され、感電しやすくなっている彼らにとって金太郎と言う存在は死活問題であった。

そして、今の金太郎にとってもこの部下たちは死活問題であった。


「お疲れ様です。キンタさん。・・・・・どうしましたか?」

「やべえ。本当に腹が減ってきた・・・・・マジ死にそう」


魔力を使うと体力や精神力も磨耗する。体がエネルギーを求め叫んでいた。

腹と背が引っ付きそうとはこのことなのだろうか、あまりの空腹感に幻覚すら見える。かぐやは月見団子に、リュウはショートケーキに見える。

と、どうにもならないことを考えていた金太郎に声がかけられる。


「へえ。随分とアタシの部下をやってくれたじゃないの・・・・・」

「おや、誰ですか?」


いつの間にか後ろにいたのはまだ年端もいかない少女。林檎のような真っ赤な髪の毛を二つ結び鋭い釣り目が、彼女がどういう人間かということを主張していた。

彼女の右手は明らかに人間のものではない、はさみになっていた。


「竜宮城第陸技術開発部部長、可児かにや!よろしゅうな!」


・・・・どこぞの関西弁の猿を思い出させるような少女だった。

かぐやは少女の登場に少し驚いていた。


「あら?女の子の部長もいるんですか?」

「そうよ!竜宮城は実力主義だからさ!アタシみたいな女でも部長になれるのさ」

「へえ・・・・・じゃあ私も竜宮城に入りましょうかね?―――――ってキンタさん、どうしました?」

「・・・・・・・った」


金太郎が聞き取れないほど、小さく何かを呟く。


「腹が・・・・・減った」

「えっ?」

「腹が減った・・・・・蟹か・・・・・蟹はうまいよな・・・・・」


よろよろと、今にも倒れそうな雰囲気な足取りで金太郎は歩いていく。

しかし彼は倒れない。何故なら彼には目標があるから。

―――目の前の食料を手にするために


「しゃぶしゃぶ・・・・・刺身・・・・・鍋・・・・・締めは、雑炊か?・・・・・」

「・・・・ちょっと、あんさん。こっち、くんなや・・・・・」


可児の表情がひきつる。迫り来る金髪の敵は、弱々しく、しかし抗えない雰囲気を携えこちらに向かってくる。逃げようとしても逃げられない、こちらが逃げた瞬間、捕食されるだろう。

なす術もなかった。


「でもやっぱり、蟹は刺身か・・・・・・新鮮な蟹は、生で食べるのが一番いいよな!」

「ちょっと!あんさ――――アッーーーーーー!」



         ▽        ▽       ▽



※蟹は金太郎がおいしくいただきました。


「ふう・・・・・ごちそうさまでした」

「ひどい―――――アタシ、初めてだったのに・・・・・」

「ちょっ!誤解を招くような言い方すんなって!」


そう言われても仕方ない。かぐやはどこか軽蔑の眼差しで金太郎を見る。

どうやら少女の右手のはさみは後で付けられたものらしく、簡単にはずれ、そしておいしかったです。本当にありがとうございました。


と、金太郎が満足しているとかぐやが何かを発見した。


「あっ!出口」

「本当か!?じゃあ急ご――――――いや!かぐや、待て!」

「?・・・・どうしましたか?」


金太郎がかぐやの進行を止める。


「この魔力・・・・・他の奴らとは違う・・・・・。膨大に、おぞましくて・・・・・。かぐや、リュウ、ここで待ってろ!俺が見てくる」

「はいはい。分かりました」

「・・・・・・」


リュウとかぐやは金太郎の後ろへと下がる。

この角の先に何かを感じる。さっきまで感じなかった魔力。部長レベルとは比べ物にならないほどの魔力。

金太郎の額に汗が流れる。


「この魔力・・・・・たくさんの色を持っているな。魔術師か・・・・・。しかし、瞬発力なら退魔師のほうが上。ならば一撃で―――――」


金太郎が飛び出す。


「――――――決める!」





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