第二章・第四話:祭に現る変態共
タイトルがひどすぎる・・・・・・。
魂流し、それは鬼たちの間に古くから伝わる唯一のお祭りである。
鬼とは元々死んだ命が逝く地獄の門番であり、そういうことから幽霊など霊的なものとかかわりが深い。そのため霊的なものにとり憑かれやすく、それらをまた地獄に戻ってもらうのがこの祭りの起源である。
祭りは日が沈むと同時に始まる。するとまず各々の一家の物を持ち寄り、それを祭りの中心の地に集める。それらに火を灯しそれを巨大な炎で一気に燃やす。それの周りに酒や米やその他諸々の食べ物を供え、その周りを鬼たちが踊る。
悪霊たちには炎と共に成仏してもらい、この炎の煙に当たれば病気も患わず健康に一年を過ごせるという。
ただ現在では飲んで食って踊って騒ぐという行為が主だっており、この祭りの起源を知ろうとするものは少なくなっている。それでも鬼たちにとっては重要な祭りということは変わりなく、ほとんどの鬼がこの祭りに参加する。
その数は伊達ではなく、金太郎はこの規模のお祭りを見たことがなかった。
「すげえな、コレは・・・・・・」
現在鬼丸たちがいるのは祭りの中央、すなわちこの祭りの象徴である巨大な炎が燃やされているところである。金太郎はそこから祭りの様子を見ていた。
炎とは違う、別の熱気がムンムンこちらに伝わってくる。完全に金太郎はその熱気に圧倒されていた。
各々の家が屋台を出すこともあって、様々な種類の屋台がそこら中に存在している。射的、りんご飴、綿飴・・・・・・どこから聞き出したかは知らないがクレープなんて代物も見られた。
鬼丸は自慢げに金太郎を見てきた。
「どうです?すばらしいものでしょう」
「・・・・・ああ、こりゃすげえな!もうだめだ、待ちきれないぜ!」
金太郎はいきなり上着を脱ぐ。ついに露出魔の仲間入り、ということはなく金太郎の上着の下には青いハッピが。金太郎の表情はいつにもまして輝いていた。
「それじゃ、行って来るぜ、鬼丸!ひゃっほおおお――――――」
「待ちなさい」
「―――――ぐえっ!」
ハッピの襟を掴み取る。金太郎は蛙をひき潰したような声を出して地面に盛大に倒れこんだ。すぐに起き上がり鬼丸に非難の声を浴びせた。
「な、何すんだよ、鬼丸!?」
「・・・・・貴方は目的を見失いすぎている。貴方はすべきことを分かっているでしょうね」
「そりゃ遊び――――――いえ、かぐやを守ることでございます」
すぐに前言撤回、本能がそうするように告げていた。金太郎の答えを聞くと般若のような形相から一転、鬼丸の表情が元に戻る。
正直ホッとした・・・・・。
「よろしい。では貴方はここにいてすぐに行動できるように待機しておいてください。分かりましたか?」
「で、でも綿飴が、焼きソバが、たこ焼きがああああああ!」
金太郎が喚きだす。どこかの長と姿がかぶってとても煩い。
仕方なく鬼丸は妥協することとなった。
「・・・・・・仕方ない。では30分、時間を差し上げます。それが貴方に与えられた時間です」
「30分・・・・だと・・・・・」
希望が見えたのも束の間、一気に表情が落胆する。
「それじゃ短すぎるぜ!もっと、もっとおおおおお!」
「煩い・・・・・・ほらほら、後28分40秒ですよ。早く行かないとどこにもいけないですよ」
「くっ!・・・・・いったいどうすれば・・・・・」
金太郎は芝居がかった口調で、頭を抱え悩みだす。そんなことする前に早く祭りに行ったらいいのに、鬱陶しい・・・・・・、と思ったのは内緒である。
「ふふふ・・・・・どうやらお困りのようだね、キンちゃん!」
「そ、その声は!?ウラシマ!?」
青髪の少年、ウラシマはいつの間にか二人の後ろにいた。
すでにウラシマの格好もハッピである。
「その通りだ、キンちゃん!どうやらお祭りを楽しみたいのに時間がないらしいね」
「そうなんだよ、ウラシマ!どうすればいいんだ、俺は!?」
「ふふふ・・・・・僕がお祭りの楽しみ方を教えてあげようじゃないか!」
「マジでか!?」
金太郎は目を輝かせる。亀の甲より年の功、金太郎の答えはすでに決まっていた。
「行くぞ、キンちゃん!いざ、祭り(戦場)へ!」
「うおおおおおおおお!!!!」
金太郎とウラシマは屋台が多く存在している通りに駆け出していった。金太郎は18歳、ウラシマは自称39歳の大人たちが何をやっているのだろうか?
鬼丸は何かを諦めた。
「ふう・・・・・ようやく行きましたか・・・・・。かぐやもどこかに行きますか?」
「・・・・・・・」
かぐやは何も言わず首を横に振る。鬼丸は少し残念そうに俯いた。
「そう、ですか・・・・・・。ならばここにいましょうか」
「・・・・・・・」
▽ ▽ ▽
さて、ここで各々の祭りの楽しみ方を見てみよう。
「いいねえ!この熱気!テンション上がってきたよ~!」
「お祭り最高!!」
まずは金髪と青髪のバカ二人・・・・・・いや、金太郎とウラシマを見てみよう。二人は屋台が集まる通りを全速力で走っていた。人の迷惑など知ったことではない。
「さて、キンちゃん!ココが僕らの戦場となるわけだが・・・・・・」
「はい、先生!」
このテンションである。正直金太郎自身も何を言っているのか分からなくなっているのだろう。
「まず、手当たり次第に子供用お面を買う!」
「はい!」
二人が手にしたのはヒョットコのお面をつける。
いかにも子どもの容姿のウラシマはともかく、すでに成人の域に達している金太郎がつけるのは見ていて、とても痛い。しかし今の彼にとってみれば関係のないことだった。
「そしてまず焼きそばの屋台に向かう!」
「はい!」
「そして焼きそばを受け取る!」
「はい!」
「そして駆け出す!」
「はい―――――って待てゴラ!!」
ウラシマのハッピの襟を引っ張り上げ宙に浮かす。ウラシマは必死に手足をバタバタさせるが、それは何の意味を成さなかった。
「何すんだよ、キンちゃん!?は~な~せ~!!」
「テメエのやっていることはモロ犯罪じゃねえか!・・・・・って、うわ!?オメエいつの間にこんなに盗りやがった?」
ウラシマの懐からはバラバラと、りんご飴、綿飴、たこ焼き・・・・・・しかもそれをご丁寧に一つずつ袋に包んである。ココまで来ると尊敬に値する。
ウラシマはかわいらしく舌を出した。
「えへっ☆」
「えへっ☆――――じゃねえよ!何が☆じゃ、ボケ!とにかく、コレ全部帰してこい!」
「えっ・・・・・・」
途端ウラシマの表情が一変、絶望に染まる。
「そんな・・・・・頼むからそれだけは・・・・・」
「何がじゃ!?はよ帰して来い!」
「・・・・・こ、これは僕のものだ。誰にも渡さないぞおおおおお!!」
どこぞの悪役のようなセリフを吐き捨て、その場から逃げ去ろうとするウラシマ。もちろん金太郎はそれを見逃すわけもなく、骨髄反射並みの行動を取った。
「逃がすかああ!親父、コレ借りるぜ!」
「あっ、ちょっ・・・・・」
「この17年間培った射的の腕前、見せてやるぜ!」
金太郎は射的に使われる銃を逃げるウラシマに標準を合わせ、コルクの銃弾を放つ。通常射的の筒は曲げっているものだが金太郎はそれを考慮に入れ、銃弾はウラシマにまっすぐ向かっていく。
しかもそれは単なる銃撃ではなかった。
「三連弾、だと!?」
三発の銃弾が全てウラシマに当たる。ウラシマが地面に倒れこむの確認してから金太郎は側に寄った。
「伊達に鬼丸と一緒に過ごしてきたわけじゃないんだ!さあ、それ全部返して来い!」
「でも、もう時間ないよ・・・・・」
ウラシマが時計を見せる。現在時刻は7時31分、鬼丸と約束してのは7時4分だから残り時間は・・・・・・3分。
「ウルト○マン!?」
「仕方ないね・・・・・。じゃあ、ちょうど射的があることだしそれやって帰ろっか・・・・」
金太郎はそれに同意する。というより周りにそれにしかないからだ。
まあ、金太郎が最も得意とすることだから別にいいのだが。
「キンちゃん、ココは勝負といこうじゃないか」
「ほお、この俺に挑むとは、ウラシマ。浅はかだな・・・・」
「ふっ・・・・・こう見えても僕が若いときは散々暴れたものだよ。その熟練した僕の腕前に勝てるかな?・・・・」
二人は顔を見合わせ、見えない火花を散らす。
しかしよく考えて欲しい、二人は未だヒョットコのお面をつけているのである。傍からみれば彼らは変態以外の何者でもない。幸か不幸か、二人はそれに気づくことはなかった。
二人は屋台の親父から弾を受け取ると、銃も選び出す。さながらこれから戦場に行く兵隊のようだ。その雰囲気を周りも汲み取り、場は一瞬で整然とする。そして同時にこいつらは変態であることを目にした。
「ウラシマ、お前三発でいいのか?」
「・・・・・一発で弾道を把握し、二発目で命中させる。三発目は不発のときの予備だ」
「不発なんてねえけどな・・・・・・。まあいい。だったら三発で“アレ”を倒せるかで勝負だな」
アレ、とは射的の一番高い台にあるゲーム機のような一番高価な代物である。今回のターゲットはプラモデル、今人間の間で流行っているものである。
当然それを落とすのは重さなどから言って至難の業であり、アレを落とそうと者は単なるバカか、はたまた余程腕に自身があるものだけである。
「いいだろう・・・・・。ではまず僕から行かせてもらおうかな」
「お手並み拝見だな」
ウラシマは銃を構える。辺りに静寂が立ち込めた。
何故かウラシマの隣には二丁の拳銃があるのだが・・・・・。
「必殺・三連砲!」
『きたねええええええ!!』
周りの声と金太郎の声がまるっきりかぶる。
ウラシマは三丁の銃を高速で切り替え、三発を同時に的に当てる。しかしそれでも的は少し動いただけで、落ちるには至らなかった。
「な、なに!?」
「ふっ、お前の力はその程度か・・・・・。俺の出番のようだな・・・・・」
「キンちゃん、敵の弱点は足だ。そこを狙え・・・・・」
「・・・・・ウラシマ、何故それを教えるんだ?お前と俺は敵同士だろ?」
ウラシマはフッと鼻で笑う。いかにも演技くさい行動に周りは少々呆れ始めていた。
「敵とは言え僕らは元々“戦友”じゃないか、キンちゃん・・・・・」
「ウラシマ・・・・・」
ウラシマは親指を立て、金太郎に笑いかけた。二人の目にはうっすらと涙が。
周りのギャラリーは完全に呆れ返っていた。
「ウラシマ、俺と一緒に戦ってくれるか?」
「・・・・・いいのか?僕は敵なんだよ?」
「戦友だろ、俺たちは?行くぜ、ウラシマ!」
「・・・・・ああ!行こうか、キンちゃん!」
・・・・・・結局、金太郎たちは巨大な敵を倒すことに熱中し、約束の時間は過ぎたという。鬼丸の怒りが爆発したのは言うまでもないことである。
こんにちは、作者です。
実は今日で春休みが終わり、明日から学校が始まります。
更新が今まで以上に遅れるかもしれませんが、どうぞこれからもよろしくお願いします。