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閑話休題:鬼ヶ島へご招待

今回、金太郎君の一人称視点です。本当に難しくて、御見苦しい箇所も多々あるかと思いますが、よろしくお願いします。

「ふう・・・・・コレで終わりか」

「いやあ、金太郎さんがいて助かりますよ。わしらもう年取っちゃって動けませんもん」

「いやいや蘭鬼らんきさん、まだまだですよ・・・・・あっ、俺が後片付けやっときますね」

「おっ!悪いねえ。じゃあ頼むよ、金太郎さん」


蘭鬼、もうだいぶ歳もいってる老人・・・・・いや、老鬼は畑仕事が終わると、後は俺に任せて家へ戻っていった。

俺はそれを見届けると、再び仕事に戻った。



現在、俺は鬼ヶ島復旧の手伝いをしている。

桃太郎によって破壊されつくされた鬼ヶ島であったけど、鬼の力ってモノも凄いものですぐに元通りになった。・・・・・あっ、俺、前の鬼ヶ島知らねえや


今では草木が戻りちょっとした集落も出来ている。中央塔も復元され、鬼丸たちはそこで鬼ヶ島の統治について話し合っているらしいけど、俺には今の力仕事のボランティアの方が性に合っていた。

今ではこの仕事も楽しんで、満足もできる。


今日の空はとても広く、青かった。


「ふう、今日もいい天気――――――いたっ!」

「差し入れですよ、キンタ」


なんだ、鬼丸か・・・・・。いつもは塔で篭りっぱなしなのに珍しいな。

ていうか、食べ物投げんなよ。


「珍しいな、お前がこんなところに来るなんて」

「私もいますよ~」


かぐやもいたのか・・・・・・。ってことはアイツも来るってことか。


「じゃじゃ~ん!ご明察だよ、キンちゃん!」


ウラシマ、テメエどっから沸いてきた!?

どっからともなく、本当にどこからともなく現れたウラシマはかぐやの後ろに立つと、いきなり・・・・・その・・・・・む、胸をもんだ。


「う~ん・・・・本当にかぐやちゃん、女の子?胸ほとんどないじゃん」

『ブッコロス!』

「はいはい、二人もやめろって。で、お前たちは何しに来たの?」


俺は二人の襟を持って、猫みたいに持ち上げる。二人とも持ち上げられると急におとなしくなった。

まるっきり猫だな、オイ。


「そうでした、こんなことろで油を売っている場合ではありませんでした。実はですね、この鬼ヶ島の鬼を皆さんに紹介しようと思いまして」

「鬼の紹介?俺はだいぶ知っているぞ。さっきの蘭鬼さんとか・・・・・」

「う~ん・・・・・。それよりも長達のことを知ってもらいたく思いまして。ほら、鬼ヶ島の長たちとコネを持っておいたほうがいいでしょう」


コネって・・・・・・。

まあ、そりゃ尤もだな。かぐやとウラシマもそれに同意したようだ。


「鬼ヶ島のトップとコネを持てるのか~。うん、悪い話じゃないね」

「分かりました!今すぐ行きましょうか!」

「それでは行きましょう。キンタもそれらの道具置いて行きますよ」


はいはい、分かりましたよ~っと・・・・・・。



   ▽   ▽   ▽



「ここが、鬼ヶ島の集落か・・・・・。結構大きくなったもんだな」


本当にでかくなったな、畑仕事ばっかりやってて分かんなかったけど、あの荒地だったころとは大違い。ちょっとした、じゃなくて結構な街になっている。

こんなことならもっと街を見とけばよかったぜ。


「ここが鬼ヶ島の中心地です。城下街、というよりは塔下街というべきでしょうか。塔を中心としてこの街はできています。今から私たちが向かうのは塔なのですが、ちょっと寄るところがあるので先にそちらに行きます」


寄るところ、ねえ・・・・・。


鬼丸はそういった後、とある家に入っていった。俺たちも鬼丸について入っていったが、家の中は真っ暗で何も見えない。ただ、剣のようなモノが見えた気がしたけど。

ここは、武器屋か?


「鬼丸さん、ここは何のお店ですか?」

「ここはですね、私の行きつけの鍛冶屋でして、このデザートイーグルもここで改造してもらったんですよ。・・・・・鬼六さん、いますか?」


鬼六さん?

鬼丸がそう呼んだ時、俺の目の前に火の玉が現れた・・・・・・って、ひっ!


「おお、こんなところにいたんですか、鬼六さん」

「やあ・・・・・鬼丸君、久しぶりだね・・・・・・」


どっからは知らんが消えるような声が聞こえてくると、鬼火が人型になって鬼になった。その鬼は俺と同じくらいの大きさで、魔女がかぶっているような帽子をかぶり、前髪が顔を覆いつくすほど伸びきっている。・・・・・って、怖っ!


「鬼六さん、頼んでいた50AE弾もう置いてありますか?」

「ああ・・・・・もう、あるよ。そこのテーブルに置いてある・・・・・」

「テーブルがどこにあるか分からねえよ」

「・・・・・おや?・・・・お客さんかい?・・・・」


髪が伸びきったその不審者はこちらを向いた。本当に不気味すぎる・・・・・。髪の間に僅かに残った顔のスペース、それが黒い闇となって、それを見ているとそれに引き込まれる感じがした。


とにかく不気味だ、それが俺の鬼六さんに対する第一印象であった。


「ああ、鬼六さん、紹介しますよ。彼らが鬼ヶ島攻略の際に共に闘った仲間です。左からウラシマ、かぐや、そして金太郎です」

「よろしくお願いしま~す!ウラシマで~す!」

「四方院かぐやです。姫様と呼んでくださいね」

「・・・・・坂田金太郎だ。よろしく」

「ああ・・・・僕の名前は鬼六。ゆっくりしていくといいよ・・・・・」


こんな暗闇じゃゆっくりできねえよ・・・・・・


「おや?金太郎君、だったね・・・・・・なんだかいい武器のにおいがするな・・・・・君の武器をちょっと見せてくれないかな?・・・・・」

「えっ、紫電を、か?」

「職業柄でね・・・・・いい武器は見たいものなんだよ・・・・・・」


いい武器、といわれて悪い気はしない。俺は鬼六さんに紫電を渡した。

鬼六さんはそれを嘗め回すように紫電を見た。・・・・・・なんかやらしいぞ、オイ!それに息が荒いぞ!


「ほう~・・・・コレはハルバードだね。それもだいぶ上等の・・・・・・おや?コレは魔道文字かな・・・・・」

「それは親父が書いたものだ。それのお陰でだいぶ――――――」

「だいぶ下手だね、コレ・・・・・」


・・・・今、何つった、この鬼?・・・・・・


「重力半減・・・・・それは分かるんだけど、他のヤツはよく分からないな・・・・・コレを書いたのは初心者かな?・・・・・・」

「テメエ、言わせておけば!それはな、親父が―――――」

「でも、何か愛情は感じるよね・・・・・・」


・・・・はっ!?愛?

鬼六さんはそう言うと、こちらを向いて髪を掻き揚げた。鬼六さんの顔はとても優しそうで、そして笑っていた・・・・・・。


「うん、コレを書いた人の愛を感じるよ・・・・・。いいよね、親っていうのは・・・・・僕には親がいなくてね・・・・・・。ちょうどこの文字の乱雑さが君の魔力にあっているみたい。コレはそのままにしといた方がいいかな・・・・」

「・・・・・・」

「とにかくコレは君の武器・・・・・・君専用の武器だね。コレは大切なモノ、絶対になくしちゃだめだよ・・・・・・」


鬼六さんはそう言って、紫電を渡してくれた。笑って、優しそうな顔で。

俺はちょっとこの鬼のことを見直したんだ・・・・・。



   ▽   ▽   ▽



「何か私じゃなくてキンタがメインみたいになっちゃいましたね・・・・・」

「というか、キンタさん・・・・あんな程度の言葉で人を見直すなんて甘いですね~」

「うるさい!別にいいだろ、実際にいい人なんだから!」

「まあ、そんな甘いところがキンちゃんのいいところじゃないかな~・・・・・・で、鬼丸君、君は僕たちをこんなところに登らせて何をさせる気だい?」


確かに・・・・・。何度も思うんだが、この塔作る意味はあるのだろうか?


今、俺たちは町を抜けて、中央塔を登っている。桃太郎討伐の時も思ったが、この塔はでか過ぎる。何で復元した時にもうちょっと小さくしなかったか?


「復元の時にもうちょっと小さくするように長老に言ったんですけどね、どうしてもそれを聞かなくて・・・・・・今から会いに行くのはその長老です」


鬼の長老さんね・・・・・って、アレ?俺の頭に一つ疑問が浮かんだ。


「長老と長って何が違うんだ?」

「・・・・・長老というのはもちろん私たち鬼のリーダーです。それで長というのは現在六人いまして、その六人と長老が話し合って鬼ヶ島の政治について話し合います。長というのは長老の補佐みたいな役割です」


なるほどね・・・・・。不思議の国の元老院みたいなモンか。

と、そんなこと話し合っているうちに塔の頂上についたみたいだ。あの桃太郎と戦った場所、この部屋も復元されたのか・・・・・


「長老、いますか?」

「鬼丸かい?いいよ、入っておいで」


なんだか優しそうな老人の声が聞こえてくると、俺たちは鬼丸について部屋に入っていった。

あの桃太郎がいたときとは大違い、装飾品やら何やらが置いてあってなんだか立派な部屋になっていた。

そこにいたのは二人、老人と若い男の鬼がいた。


「やあ、鬼丸君、来てくれたね」

「鬼珠さん、栄鬼さん、キンタ達をつれてきましたよ」

「ああ、ありがとう。・・・・・やあ、人間たち、自己紹介をしよう。儂の名前は鬼珠童子きしゅどうじ。鬼丸君から聞いていると思うが、儂は鬼ヶ島の長老なんぞやっておる」

「息子の栄鬼童子えいきどうじです。よろしく」


鬼珠、と名乗った白髪の鬼はもうかなり年が言っているように見える。腰は曲がっているし、顔はしわだらけだ。でも決して隙を見せない、鋭く真っ赤な目が俺たちを射抜いていた。

対して栄鬼と名乗った若い鬼はいつも笑顔を絶やさない、コレもある意味隙が見当たらない人だ。少し茶色がかっている髪に優しげな赤い目、凄い美系だ・・・・・。


ん、そういえば童子って?・・・・・


「鬼丸さんの親戚ですか?」

「いえ、童子というのは苗字ではなく、名高い鬼につけられるあだ名みたいなもので・・・・・・。とにかく皆さん自己紹介を」


おお、そうだった。忘れてたわ。


「俺の名前は坂田金太郎。退魔師です」

「四方院かぐや。姫様です」

「ウラシマ竜胆。会社員です」


・・・・・よくよく考えると凄いメンバーだな、俺たち。若干、鬼珠さんも引いているみたいだ。

でも何故かこの鬼を見ていると底知れない、というか・・・・・なんだか関わってはいけない感じがするのは何故だろうか?


「ふむ・・・・・やはり危険だな、この子たちは・・・・」

「えっ!?」


危険?俺たちが、か?

突然のことで戸惑っている俺たちに代わって、鬼丸が聞いてくれた。


「何が危険なのですか、長老?」

「ふむ・・・・・その退魔師の子じゃ、坂田金太郎殿」

「・・・・・・はい!?俺が!?」

「金太郎のどこが危険というのですか?こんな間抜けで、何も考えてなくて、金髪なキンタが」


オイ、待て鬼丸!そこまで言うのか、オメエは!それに金髪は関係ねえ!

しかし鬼珠さんはそんな俺らのやり取りにも構わず、というより無視して話を進めた。


「しかしこの子は退魔師じゃ」

「・・・・・・」


なんていう威圧感・・・・・。鬼丸だけでなく俺たち三人も圧倒されてしまった。コレが鬼のリーダーといったところ、か・・・・・。


「確かにこの子達はお主について鬼ヶ島を見事に奪還してくれた。それについては感謝しておる。しかしじゃ、儂にも長老としての立場もある」

「・・・・・・」

「儂は長老として皆を導いていかねばならぬ。それのためには一つでも不安因子を取り除かなければならぬ。皆が桃太郎という人間の恐怖を抱えている今、無闇に人間をここに入れるわけにはいかんのよ」


いかにも尤もな論理、コレには当事者である俺も納得させられてしまった。鬼丸もコレには黙っているほかないようだ。

・・・・・俺の鬼ヶ島生活もここまで、か・・・・・


「・・・・・長老、少しいいですか?・・・・」

「む?何じゃ?」


鬼丸はそう言って鬼珠さんと部屋を出て行った。出て行くときに見えた鬼丸の横顔がとても不気味なモノに見えた。

・・・・・一体何する気だ?


と、しばらく待っていると鬼丸たちが帰ってきた。そして開口一番、鬼珠さんは―――――


「キミタチノタイザイヲ、ミトメヨウジャナイカ」

「・・・・・えっ!?いいんですか!?」

「ホッホッホッホ!オニマルクンノ、タノミナラ、シカタナイネ」

「・・・・何で片言なんですか?」

「ホッホッホッホッホッホ!」


鬼珠さんはそう言って笑うばかり、笑いながらこの部屋に出て行った。

・・・・・・鬼丸オメエ、鬼の長老に何やった?


「ふふっ・・・・・私に逆らうからいけないんですよ、長老・・・・・」

「鬼丸君、そんなに長老をいじめちゃいけないよ」

「栄鬼さん・・・・・・」


栄鬼さん、と呼ばれたニコニコ顔の鬼が鬼丸のことを嗜める。しかしそれは本当に怒っているわけじゃなくて、兄が弟を叱るような・・・・・。

何かこの二人は似ているな。雰囲気というか、言葉遣いというか、まるで本当の兄弟みたいだった。

・・・・・そうか!鬼丸の黒い部分を抜いたら栄鬼さんみたいになるんだ!


「・・・・・キンタ、全部声に出ていますよ」

「あっ、悪い・・・・・」

「ははっ、君たちは本当に仲がいいね。長老もね、君たちの事を歓迎してないわけじゃないんだよ。ただ仕事上ね・・・・・。鬼丸君、幽鬼たちを紹介したかい?」

「いえ、まだ・・・・」

「じゃあ、早く行くといいよ。彼らも君たちを歓迎してくれるだろうしね」

「ありがとうございます。では、皆さん行きましょうか」


俺たちは栄鬼さんにお辞儀をして部屋を出て行く。最後まで栄鬼さんはニコニコ顔だった。本当に良さそうな人、というか鬼だったな・・・・・・。


「では次は図書館に行きますよ。長は残り五人いますからね」





続きます。


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