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第一章・第三十話:桃太郎、陥落

途中に空白がありますが表現上のことですので、ご了承ください。

「やった、のか?・・・・・」

「キンタ!」


金色の雷光が塔の壁を貫き、桃太郎が光に飲み込まれる。


全ての光が失せ、金太郎が倒れそうになったところを鬼丸が支えに入った。無理もない、自分の魔力を総動員させて攻撃したのだ。金太郎の体は外部的にも、内部的にもボロボロになっていた。


「も、桃太郎はどうなった?・・・・・」

「・・・・・まだです。ヤツはまだいます」

「だったらまた俺が―――――」

「キンタは休んでいてください。キンタの魔力は空っぽ・・・・・・私に任せてください」

「で、でも・・・・・」


不安がっている金太郎。先ほどまで首を絞められ、鬼丸の方もボロボロなのだ。

鬼丸は人差し指を唇にあて、こう言った。


「たまには私も活躍させてくださいよ、キンタ」



   ▽   ▽   ▽



「あの金髪・・・・・・。足がもう使えねえじゃねえか!」


瓦礫の中から這い出てくる桃太郎。あの一撃の中でも彼女は生き残り、尚且つ戦意は失ってはいない。

そこは流石というべきなのだろうが、彼女の右足からは血が止まらない。もはや闘える状況ではなかった。


「流石、ですね。・・・・・・まさかあの一撃でも死なないとはたいしたもんですよ」

「鬼、か・・・・・。アタシはまだ負けてねえぞ!死ぬまで闘い続けてやる!アッハッハッハッハ!!」

「・・・・・・上機嫌になっているところ悪いですが、貴方にちょっと聞きたいことがあるのですがいいでしょうか?」

「あん!?何だよ!?」


桃太郎は鬼丸に戦いを邪魔するようなことを言われ、不機嫌さを露にする。鬼丸はそれを無視して笑顔で桃太郎に問うた。


「それでは失礼を承知して・・・・・・

貴方は“何のために強くなったのですか”?」

――――お前は何のために強くなるのじゃ?――――――

「っ!!」


鬼丸の姿が桃太郎の記憶の人物と重なる。

自分の最も忌々しい記憶であり、自分の人生を変える一言。


先ほどは金太郎のことで動揺したが、今回は本当に精神的に動揺した。


「な、なに言ってやがる?・・・・・」

「・・・・・キンタは、仲間や人々を助けたいがために力を求めます。私といえば自分の道を邪魔するヤツを排除するために力が必要です。そこで貴方はどうなのかな、と思いまして」

「そ、それは――――」

「―――――ないのでしょう、貴方には。強さを求める理由など最初から」


鬼丸が桃太郎の核心を突く。

桃太郎は鬼丸の言葉を打ち消すように、大声で否定した。


「そんなことねえ!アタシは“最強”になるっていう理由がある!」

「最強?・・・・・そんな存在がいるのですか?」

「いるさ!だってアタシのじいさんなんだからな!」

「へっ!?」


今度は鬼丸が動揺、というよりは驚きを隠せなかった。なんという天文学的確立・・・・・。

桃太郎はゆっくりと語りだした。


「・・・・・・アタシには親なんかいねえ。だから生きていくためには闘うしかなかった。殴って、蹴って、ぶち殺して、そして奪って・・・・・・そんななかアタシの目の前に現れたのがジジイだった」

―――――・・・良い拳だ・・・餓鬼、名をなんと言う?―――――

「ジジイは強かった・・・・・・。アタシはヤツに勝つことなんか一度もなかった。だからこそ、アタシはヤツに勝って最強になりたかった!でも!」


桃太郎は自分の刀を握り締める。自分に向かってはいない、大きな憎悪を鬼丸は感じれた。


「ジジイはアタシが勝つ前に逝っちまった!だからアタシはアタシなりの方法で最強を目指した!だからこの国、最強の鬼を倒した。アタシはこれからもどんどん倒し続ける!コレがアタシの強さの道だ!」

「・・・・・・なるほど。最強ですか・・・・・」


最強・・・・・・コレが桃太郎の強さを求める理由・・・・・・。コレのせいで鬼ヶ島も滅んでしまった。こんな理由で自分の故郷滅ぼされたなど、普通なら激怒するところである。

しかし、鬼丸は笑いがこみ上げて抑え切れなかった。


「くだらないですね」

「・・・・・何だと?」

「くだらないですよ、貴方の言っていることは・・・・・・。それに貴方の言っていることには一貫性がなさ過ぎる」

「一貫性?」

「そう。もし、貴方が最強になりたいのであれば、こんなところで引き篭もってないで色々な敵と戦えばいい。吸血鬼、九尾の狐、黒狼、ハイエルフ・・・・・この世界には私よりも強いものなどたくさんいますよ」

「だが、鬼も最強種族の一つだろ!?それを待って何が悪い!」

「ええ、確かに・・・・・。しかし、一度勝ったことのある種族よりもありとあらゆる敵と戦ったほうが最強に近づくのではないですか?」

「そ、それは・・・・・・」


明らかな動揺、桃太郎の額に汗が流れる。今までこちらが追い詰めていたのに、今では逆にこちらが追い詰められている。


あんな小さなガキが自分の行く手を大きく阻んでいるように感じられた。


「結論から言いましょう。貴方は強さを求めるよりも負けることを避ける弱者になっているのですよ!」

「弱者・・・・・・。アタシが弱いって言うのかい!?」

「ええ」


鬼丸は迷わず肯定する。そしてついに迷うことなく桃太郎に突きつけた。


「だから貴方はキンタに負けた。貴方はもはや強くはないのですよ」


さて、今まで強さばかり求めてきたものが突然、自分の前に現れた子供によって強さを否定され、挙句の果てに負けてしまってはどうなるだろうか?


――――――結果、狂わずにはいられない。


「う、うわああああああああ!!嘘だあああああああああ!!」

「本当ですよ、桃太郎・・・・・私が早く最強の元へ送って差し上げましょう。我に宿りしは滅――――――」


取り出したデザートイーグルの銃口に黒い何かが集まる。アレが滅びの力。自分の終わり・・・・・・。

いつもなら楽に避けられるものも、今では避けることも出来ない。


―――――体が重い。


―――――叫びたい。


―――――まだ終わりたくない!


「嘘だ・・・・・アタシは強くなるんだ・・・・・もっと、もっと強くだああああああああ!」

「・・・・・滅びなさい、“最狂”!」

































   ▽   ▽   ▽



「なあ、鬼丸・・・・・。お前、桃太郎に何やった?」

「あっ、ばれましたか?」


金太郎と鬼丸、二人は一緒に中央塔の螺旋階段をおりているとき、唐突に金太郎がこういった。

闘うことしか考えてないあの桃太郎がこうも簡単に倒されるとは疑問に思ったからだ。

案の定、鬼丸はすぐにタネをばらした。


「実はアレ、鬼の一族に伝わる一種の催眠術みたいなものでして、ちょっとした暗示をかけたのですよ。まあ、桃太郎にはそういう予兆みたいなものがありましたからね、簡単にかかりましたよ」

「そう、か・・・・・」

「・・・・・・」


互いに無言、金太郎はもちろん、鬼丸も今回は後味の悪い終わり方だと思っている。道を外れた哀れな敵・・・・・・・。とても楽しく笑いあえる状況ではなかった。


そしてこの沈黙を破ったのは、金太郎であった。


「・・・・・・なあ、鬼丸」

「何ですか?」

「桃太郎は結局、どうしたかったんだろうな・・・・・・」

「・・・・・私は超能力者ではありませんし、まして人間でもありません。だから真相は闇の中ですよ」

「そうだな・・・・・・」

「ただ私の意見としては・・・・・・」


先に歩いていた鬼丸が振り向く。


「桃太郎は最強に認められたかったのではないでしょうか?」

「認められたかった?・・・・・・」

「ええ、彼女のおじいさんとやらに・・・・・・・・。桃太郎は強い・・・彼女の有り余るほどの戦いの才能によって、他のモノなどただの雑魚。そんな彼女の前に現れたのが、絶対的強者の存在です」

「おじいさん、か・・・・・」

「彼女の目標は最強に勝つこと・・・・・・。しかし親のいない彼女にとってそのおじいさんは父同然。勝てなくとも、認められれば彼女は良かったのではないでしょうか。キンタも、そういうことあるでしょう?」

「ああ、まあな・・・・・」


金太郎の頭に紫電をくれた父親の姿と自由奔放な兄の姿が浮かび上がる。

確かに、初めて父親に褒められたときはうれしかったし、兄に一撃を当てれたときの満足感はすばらしいものがあった。


自分も、桃太郎も一緒・・・・・・。所詮は子供なのだ。


「まあ、コレじゃあ勝ちたい、という理由と大差はありませんね。すみません」

「いや、ありがとう・・・・・。なんだか分かったような気がするぜ」

「そうですか。早く、帰りましょうか」

「おう!」


どこかすっきりした顔で金太郎が鬼丸を追いかける。

途中、塔の大広間でかぐやが腕を振っているのが見えた。


「鬼丸さ~ん!」

「かぐや!よくここが――――って言うかその怪我なんですか!?」

「ええ、ちょっと・・・・・猿と遊んでいたらこうなりまして・・・・・」

「サル、コロス!」

「おい、鬼丸!追い討ちかけんな!」

「そうだよ~。もう会うことないと思うし~」

「―――――って、ウラシマどっから沸いてきた!?」

「はっはっは!別にそんなこと、ええじゃないか!」


四人が集まり、いよいよ塔の出口に向かおうとしている時、何かの音が聞こえた。

――――――ズドドドドドドドドドド・・・・・・・


「何?この音?」

「塔が崩れる音だね~。流石は破壊欲求者、ただでは帰してはもらえないか・・・・・・」

「・・・・・はっ!?」

「だから、あの桃さんが自分を倒した相手をただで帰すと思うの?・・・・・ああ、こりゃ全部壊すつもりだな?多分、爆弾でも仕掛けているんじゃないかな?全部壊すために」

「爆弾ってコレですか?」


かぐやが、どこから持ち出したのかは知らないが、着々と時を刻んでいるタイマーと筒が三本取り付けてある何かの装置を取り出す。


タイマーの現在の時間は十五秒・・・・・・。鬼丸は冷静に、なるべく冷静に指示を出した。


「かぐや、とりあえずそれをどこかに置いてください。・・・・・ええ、そうです。さてこの塔の出口は?・・・・・・一つしかない?・・・・・なるほど、それでは皆さん――――――逃げましょうか!」

『うわあああああああ!!』


四人は駆け出す、自分の命を守るために・・・・・・・。

金太郎は走りながらかぐやに聞いた。


「かぐや、残り時間、あと何秒だった!?」

「え~っと・・・・・確か八秒くらい?」

「鬼丸の話を入れると・・・・・・あと、五秒くらいじゃねえか!」



残り5秒・・・・・・


「くっそ!桃太郎!最後の最後にやりやがってええええ!」

「楽しいね~。アッハッハッハッハ!!」

「何がじゃ!?」



4秒・・・・・・・


「ところで鬼丸さん、私、“絶対に燃えない布”を持っているのですが、何かに使えないでしょうか?

「う~ん・・・・・・火は防げても爆風は防げませんからね、ちょっと無理ですね・・・・・」

「何喋ってんだよ、テメエらは!?」



3秒・・・・・・・


「ていうか、この塔でかすぎだろ!出口見えねえじゃねえか!」

「あっ!出口!」

「マジで!?」



2秒・・・・・・・


「役に立たないのでしたらこんな布もういりません!」

「ちょっ!かぐや、こんな時にモノ投げんな!前が・・・・・・見えん・・・・・」



1秒・・・・・・・


「もうちょっとですよ!」

「前が見えんから・・・・分からん!」

「アッハッハッハッハッハッハ!

「キンタ、皆さん、飛び込んでください!」



―――――――ズドオオオオオオオオオオオン!!




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