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第一章・第二十五話:いざ、行かん!鬼ヶ島へ!

やっとテスト終わったああああああ!!

「はあ・・・・。はあ・・・・。ようやく彼らも諦めたのかな?ここまで来れば、僕たちの安全は確保されたも同然。無問題モーマンタイかな?」

「ウラシマさん。それフラグ発生中ですよ」

「?フラグって何?」


ここは南側に位置する海岸。昼に鬼丸たちとはじめて会った場所でもある。

ウラシマは巨大亀の手から華麗に飛び降りると、その亀も次第に小さくなっていき、人間の大人と同じくらいになる。


人間と違うところといえば背中に亀の甲羅があるくらいである。

改めて自分の部下の姿を見て、ポツリと不意に思ったことを漏らした。


「・・・・・・亀○人みたいだな」

「はい?」

「いやいや、何にも・・・・・・。ところで、フラグの説明を続けて」

「フラグ、というのは小説、漫画、アニメなどにおいて、後に特定の展開・状況を引き出す事柄のことです。例えば『ここは俺に任せて先に行け!』とかの言葉を放った人物は十中八九死にます。それをフラグ、というんです」

「へえ~・・・・。ってことはアレかい、“お決まりパターン”って言うやつかい?最近の若者は難しい言葉を使うんだね~」


ウラシマは自分の容姿からは考えられないような言葉を吐く。

姿だけを見れば子供同然、しかし中身はオッサンそのもの。違和感たっぷりのその光景に亀吉は口端を引きつらせる。


「と言うことは僕が『追いかけてこない』と言ったら、彼らは追いかけてくるということかい?」

「そういうことです」

「はっはっは!まさかそんなことあるはずが・・・・・・・」

「―――――――見つけたぞ!ウラシマアアアア!」

「あっちゃったよ・・・・・。ってエエエエエエエエエ!!??」


突然、自分の目の前に現れた金太郎、鬼丸、かぐやの三人に目玉が飛び出るかと思うほど驚くウラシマ。対して亀吉の方はそこまで驚いてない様子だ。


ここで亀の一言。


「フラグ回収、お疲れ様です」

「うるさいよ!また訳の分からない言葉を使って。・・・・・・・なんでここが分かったんだい、御三方?」

「ふっふっふ!それは私の力ですよ、ウラシマ」


ウラシマに自分の力を説明し始めるかぐや。説明を聞くに従って、ウラシマの表情がどんどん沈んでいく。


「はは・・・・・それじゃあ、逃げても無駄だった、ということかい?」

「そういうことになりますね!」

「はは・・・・・そういうことか。そういう、ことか・・・・・・」


ウラシマの絶望した声が響く。

一日中逃げ惑った今まで努力を考えると・・・・・アレ、雨も降ってきていないのに自分の顔が濡れているのは何故だろうか?


「そういうわけでウラシマ、もう観念して大人しく私たちを鬼ヶ島に連れて行きなさい!」

「もう逃げても無駄だぜ!」

「・・・・・・・・まさか君たちは僕が逃げるだけのただの腰抜け、とは思ってはいないかい?」


金太郎と鬼丸は互いの顔を見合わせ、声をそろえて言った。


『うん!』

「・・・・・・・そこまでハッキリと言われるといっそ清々しい・・・・・、じゃなくて、大企業のお抱えである僕が何の算段もなしに逃げるなんて思えるかい?」

「そういう人なんじゃ・・・・・・・」

「ところがどっこい、さっきの話じゃないけどそれもフラグだよ、お二人さん。ハッキリと言おう、僕は君たちが思っている以上に、強い!」


突如、辺りの雰囲気が変わる。空気中に漂っている魔力がウラシマの下へ集まっていくのが肌で感じられた。

ウラシマの不気味な笑みを見て、鬼丸たちも武器を取り出す。


「キンタ・・・・・・。奴が攻撃してきたらこちらも反撃します。良いですね?」

「分かった!」


金太郎と鬼丸が構えたと同時にウラシマが詠唱を開始する。


「我に宿るは水・・・・・・。モノ」

「ん!?」

「何だこれ?水の弾?」


鬼丸たちの目の前に一つの水の弾が出来る。傍から見れば綺麗なものだが、これはウラシマが生み出したもの。迂闊には触れなかった。


「ジ」

「今度は後ろ?」

「トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ」

「ど、どんどん増えてるぞ、コレ・・・・・・」

「・・・・・・マズイ」


鬼丸たちの周りに、計六つ水の弾が出来上がる。

鬼丸がようやくその危険性に気が付いたが、それではもう遅い。完全に囲まれてしまった。


ウラシマは声高らかに笑い出す。


「はっはっは!どうだい、お二人さん?これが僕の魔術、水の陣、六重結合。君たちは四方八方迫るこれを逃げることは出来るかな?」

「たかが水でか?」

「水と言っても甘く見ちゃいけないよ。水は全てを押し流す。その隠された破壊力は伊達じゃないよ」


確かにウラシマのいう通りである。水属性の魔法は主にヒーリングなどの補助、と思われがちであるが実は違う。上級になれば火属性や雷属性などにも負けない破壊力を手にすることが出来る。


そしてここは海の近く、水の魔法を使うにはうってつけの場所であった。

声高らかに、勝利を確信してウラシマは声を張り上げた。


「喰らえええい!水の陣、六重結―――――――」

――――――ランランランラン、ランララランラン・・・・――――――――

「ん?僕のか?」

『――――って、おい!』


ウラシマは自分のポケットから携帯電話を取り出した。お陰で金太郎と鬼丸は浜辺にずっこけてしまった。


「K・T・ウラシマは携帯を持っているのか?・・・・・」

「そして誰からの着信なのか?・・・・・」

「何言ってるんですか?二人とも?」


かぐやがどこか冷めた目線を二人に送る。そんなやり取りも気にせず、ウラシマは話を始めた。


「もしもし。あっ、お疲れ様です。こちらは何も異常は・・・・・・えっ?今何と?・・・・・・はい!?ちょっとそれは・・・・・・いえ、そういうわけでは・・・・・・」

「誰と話しているんだ?」

「さあ?」


流石の鬼丸にも検討がつかないので、大人しく聞くこととした。


「はい。ではその方向で・・・・・・はい、分かりました。はい、はい。それでは失礼しま~す・・・・・・」


ピッ!

ウラシマは携帯を切ると、鬼丸の方に向かって言い放った。


「君たちを鬼ヶ島に連れてってあげるよ!」

『エエエエエエエエエエエエエエ!!??』


爽やかな笑顔でこう言い放ったウラシマのあまりの変わりように、三人は大いに驚く。

恐ろしいまでの変化振りにウラシマに詰め寄る。


「お前、いったい何が起こったんだ!?」

「いや~、困ったときはお互い様って言うじゃないか」

「先ほどまでとは大違いですね・・・・・・」

「ゼンゼンカワッテイマセンヨ」

「何故そこで片言に?というよりも先ほどの電話相手ですがもしかして――――――」

「――――――とにかく!」


鬼丸の言葉を遮り、ウラシマは三人から距離を取る。


「僕は君たちに協力するといったんだ。これ以上に君たちに不利はあるかい?」

「それは、ありませんけど・・・・・・」

「だったら良いじゃないか。互いの利益のために協力し合う。これは一つの契約、社会の一つの動きでもある。少なくとも君たちの力になるよう僕は君たちに尽力しよう。分かった?」

「・・・・・・・・・分かりました」


ウラシマの言い分は正しい。鬼丸にとっても互いの利益のために動く、という理念は扱いやすいものであるから魅力的ではある。


しかし急に態度を改めたウラシマが不気味に思えて仕方がなかった。


「それでよし。亀吉君。僕の船を取ってきてくれるかい?」

「すでにここに」


亀吉がさした方向には一隻の船が見える。コレがウラシマ所有の船なのだろう。

ウラシマは満足そうな笑みをうかべる。


「用意周到だね。上出来だよ。・・・・・・鬼丸君、いつ出発するんだい?」


ウラシマが鬼丸に問う。しかしその答えはすでに決まっていた。


「今です。早速出ます」

「・・・・・・・分かった。それでは、いざ、行かん!鬼ヶ島へ!」




   ▽   ▽   ▽


話は数時間前に遡る・・・・・・・・

――――――――――鬼が島―――――――――――――――――――


かつて鬼を含めた魔の楽園であったここは、今は見る影のなく荒れ果てている。人もこの地に近づくこともなくほぼ無人島と化していた。

そんな島に一隻の船が近づいてくる。船が島に着くと二人の人間が上陸した。


「はあ~、やっとついたか・・・・退屈やったで~」

「あっはっは!それは君の気が短いだけだよ。」

「お前の笑い声はいつも鼻につくねん!ちょっと黙っときい!!」」


桃太郎の部下、“猿”と“雉”であった。彼らは長関付近の山で鬼丸たちを襲ったが、かぐや姫のせいで逃げられてしまった。


それでも彼らの仕事は終わったも同然なのだが・・・・・・・

その2人を迎えるように一人の男が出てくる。


「お疲れだ、2人とも。そちらの仕事はうまくいったか?」


彼の名前は“犬”。猿、雉と同じ桃太郎の部下である。彼のほうが早く仕事が終わったので、先に島に帰っていた。


「雉、奴らは今どの辺にいるか分かるか?」

「う~ん・・・・そろそろ長関に着いたんじゃないかな?と、考えればあのガキが連れてくるのは時間の問題かな」

「そうか・・・・・・」

「せやけど犬、俺にはどうも、あいつらが桃太郎を倒せるとは思えへんのやけど。このまま来ても犬死やで」

「・・・・・・・力は関係ない。ただ桃太郎様と戦ってくれさえすれば。そろそろ我が主人は限界だ」


犬が鬼ヶ島中央にある塔を向く。かつて鬼たちの栄華の象徴であったそこは今では桃太郎の家。


そこから突然、うめき声と共に爆音が鳴り響く。こんなことが出来る人間はただ一人、桃太郎だけだ。


「今日はまた派手に壊されたな・・・・・」

「・・・・・本当に時間がないよね。あの人の我慢はもう限界に近づいている。ここら辺でガス抜きをしないと、あの人は・・・・・・世界を壊そうとするんじゃない?」

『・・・・・』


雉が冗談めいたことを言う。しかしその冗談が本当に実行されそうで犬と猿は笑えなかった。

犬は鼻をフン、と鳴らし二人の方へ向かってこう言い放った。


「雉、猿、客人のもてなしの準備だ。宴が始まるぞ」





ちなみに言いますとウラシマの着信音はU.N.オーエンは何たら。

私も大好きな曲です。


更新速度をなるべく上げたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。


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