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第一章・第二十四話:鬼ごっこで追いかけられる人はなんと言うのでしょうか?


「月光・七夜!」

「本当に便利な武器ですね・・・・・。見つかるのも時間の問題ですか」

「ウラシマも可哀想だな・・・・」


長関中央広場、ここに金太郎たち三人が集まっていた。中央広場にはたくさんな人が集まっており、通常ならここを含めた都市全体から一人の子供を見つけることは至難の業である。


しかし金太郎たちにはかぐやがいる。かぐやの武器、月光を用いれば見つけることは簡単である。そうであったはずなのだが・・・・・・・。


「見つからない?・・・・・」

「ええ、商店街の大通りから現在無職の山田さん(38歳)の家の隅々まで見ましたが、ウラシマは見つかりませんよ」

「他人のプライバシーを覗いたことは置いといて、ウラシマは魔術師だったな。かくれんぼは得意かもな・・・・・」

「とにかく隠れられると面倒です。かぐや、もう一回お願いします」

「しょうがないですね・・・・・・」


かぐやは再び手を広げ、精神を集中させる。

かぐやが取り込んでいる間、鬼丸はウラシマと話して気になる言葉を思い出した。


「竜宮城・・・・・・」

「ん?竜宮城がどうしたって?」


金太郎が聞き返し、鬼丸は比較的まじめな顔でそれに答えた。


「いえ・・・・・ただウラシマは竜宮城直属の魔術師と言っていたことが気になって・・・・・・」

「竜宮城直属、ね~。何かおいしいものでも出してくれるのかね~?」

「キンタ、竜宮城は夢の国のようなものではありませんよ」

「えっ!?」


金太郎はサンタクロースの正体をばらされたような、衝撃を受けた顔になった。


「竜宮城。それはここ、長関のどこかに本社を置く世界規模の貿易会社の略称です。ただの漁港だった長関がここまで貿易都市として発達できたのは、それこそ竜宮城のお陰です。そんな大企業が抱え込んでいる魔術師となれば、もしかしたらウラシマはかなり高名な魔術師かも知れないと思いまして・・・・・」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!じゃあ乙姫様って何だ!?」

「乙姫とは現在の竜宮城代表取締役につけられた名前です。決して姫様などではありません」

「そんな・・・・・・」


金太郎はガックリとヒザをつく。そんな金太郎をよそに、かぐやが口を開いた。


「見つけました!」

「―――――本当ですか!?」

「ええ、ここから東の方に・・・・・・。どんなに有名でも所詮は地上だけの話。月には到底敵いませんよ!」

「よし、かぐや、キンタ行きますよ!」

「おお!・・・・・・」


鬼丸とかぐやは意気揚々に、金太郎は少々意気消沈して、かぐやの指した方向に向かった。



   ▽   ▽   ▽


「ふう~・・・・・。ここまでこれば追ってはこないだろう。いつも悪いね~。亀吉君」

「いやいや、いつものことですから。ウラシマさんの部下になったときからこういうことは覚悟していましたよ」

「はっはっは!僕も良い部下に恵まれたな~」


長関東に位置する路地裏。巨大亀に助けられたウラシマは難を逃れ一息ついていた。亀吉、と呼ばれた巨大亀も今では人並みのサイズになっており、二足歩行が出来る単なる亀になっている。


・・・・・・・二足歩行が出来る亀が普通かどうかは分からないが。


「この巨大な都市、長関。その中から僕を見つけることなんか出来るもんか!はっはっは!」

「見つけた!」

「へっ!?」


どこからともなくかぐやの声がする。ウラシマの表情には明らかに動揺の色が浮き出しており、周りをきょろきょろしている。


「どこ!?ねえ、どこ!?」

「ここですよ~!」

「上!?」


ウラシマは上を見上げる。と、そこには黒い影があった。


「何アレ?・・・・・・」

「お~ち~る~!」

「相変わらずこの落ちる感覚だけは馴染めませんね・・・・・・」

「慣れると楽しいものですよ、鬼丸さん」


ウラシマの目の前に三人の人間。一人は退魔師にも関わらず着地が上手く出来ず地面に落ち、もう一人は音もなく見事に着地する。

そして最後の一人は着地したと同時に、何かのポーズを取って一言。


「マジカル☆美少女、かぐやちゃん!ただいま参上!」

「・・・・・・・・」


ウラシマはしばらく固まっていたが、ハッと我に帰る。


「逃げろおおおおおお!!」

「あっ!逃げた・・・・・・」

「キンタ、そんなところで寝ていないで追いますよ!」

「お、おう・・・・・・・」


金太郎は飛び起きて、すぐさま追いかける。

相手は子供の体で、こちらはほぼ大人。しかも相手の中身はオッサン。すぐに追いつくのも必然であった。


「ひい・・・・・ひい・・・・・。こんなとこで捕まってたまるか!風塵!」

「っ!?」


ウラシマが符を取り出すと、突如として風が巻き上がりウラシマを押し出す。

以前雉が使った風の魔法、対象者を高速で移動できるようになるこの魔法の効果は絶大で、一瞬のうちに金太郎との距離を離した。


「はっはっは!僕が魔術師であることを忘れたのかい、君たちは!?爪が甘いんだよ!」

「そうか・・・・・・。魔術師は退魔師と違って色々な魔術を使えるのでしたね。すっかり忘れていましたよ」

「忘れていたじゃ済まないんだよ!それじゃ、ばいちゃ~!」

「・・・・・・キンタ、お願いします!」


鬼丸に言われる前に詠唱を始めていた金太郎は、鬼丸の言葉にすぐに反応できた。そして最後の詠唱を唱える。


「電磁結界、First Drive Set Up・・・・・create!」

「のわっ!?何じゃこりゃ!?」


ウラシマの目の前に光の壁が突如として現れる。金太郎の雷の結界、円形に囲んだそれを見て、思わずウラシマは顔を引きつらせた。


「マジで?・・・・・」

「さあ、これで逃げれませんよ、ウラシマ。もう諦めて私たちを連れて行きなさい!」

「くっ・・・・・・亀吉く~ん、助けてよ~!」

「は~い!」

『上!?』


今度は金太郎たちが見上げる番。上空から野太い声が聞こえたと思うと、巨大な足が金太郎の結界を踏み潰した。

巨大な足の指先にはウラシマが掴まって、結界から這い出てきた。


「流石だね、亀吉君。君がいると本当に助かるよ!」

「・・・・・・このまま飛びます。掴まってください、ウラシマさん!」

「うん、分かった!・・・・・それじゃ、皆さん、ばいば~い!」


ウラシマは優雅に手を振り、亀は再び跳躍する。

ウラシマならまだしも相手がこんなにも巨大では手が出せない、金太郎たちはその様子を黙ってみるしかなかった。


「くっそ!また逃げられた!」

「かぐや、追いかけますよ!奴が飛んだのは西。我々の来た方向を逆戻りすれば良いです」

「分かりました。目標は巨大。すぐ見つけれますよ!」



しかしそんなかぐやの言葉とは裏腹に、見つけては亀によって邪魔をされ、見つけては亀によって邪魔をされ・・・・・・・。

このやり取りを六回繰り返しているうちに、西の海に日が沈ずみはじめていた



   ▽   ▽   ▽



「鬼丸、さすがにこの鬼ごっこ、ハードすぎないか?」

「確かに・・・・・・。一日中走りっぱなしで、膝がガクガク。・・・・・・かぐや、生きてますか?」

「な、何とか・・・・・・」


日がすでに沈みかけ、町が橙色に染まりかけている。

鬼丸と金太郎は壁に手をついて肩で息をし、かぐやにいたっては立ってすらいない。


「いくら場所が分かってもこう簡単に逃げられてはジリ貧ですね~・・・・・。キンタさん、雷力であの亀、感電させること出来ませんかね?」

「あのガメ○をか?・・・・・・ちょっとデカすぎるだろ。巨大化される前だったらまだしもな、それにこんな街中で雷ぶっ放しては死人が出るぞ」

「・・・・・・大事を為すためなら多少の被害は気にしない、という方向で」

「バカか、テメエは!俺は絶対にヤダからな!」


金太郎は拒絶の意を示す。

かぐやの、ケチ、という言葉が聞こえてきたが聞こえないこととした。


というかケチって・・・・・・。ケチって言う問題じゃないと思うが・・・・・。


「鬼丸さん、ウラシマはどこにむかっているのでしょうか?」

「・・・・・・竜宮城の本社、じゃないでしょうか?竜宮城の本社は長関にあるといわれていますし・・・・・・」

「だったらそこに先回りすれば・・・・・・」

「残念ながらかぐや、竜宮城本社は誰一人として知らないのですよ。誰も知らない本社・・・・・・。情報流出も何もないところが、竜宮城の強みなのですよ・・・・・」

「マジかよ・・・・・・。打つ手ねえじゃねいか」


金太郎はがっくりうなだれる。

これ以上追い続けてもこちらが不利になるのは圧倒的に明らか。おまけに所在不明の本社に逃げ込まれては、まさに打つ手なし。


皆の気力がそがれている中で、一人だけ頭を動かし続けているものがいた。


―――――鬼丸であった。


「と言うか鬼丸、地図なんか見て何やってんだ?」

「・・・・・・キンタ、この町の構造を知っていますか?」

「ああん?・・・・・確かアレだろ。三方向は海に囲まれていて、残りは俺たちが来た山。山から見て東は貿易関連の商業部分、逆に西は漁業が盛んな港。あと南は・・・・・鬼ヶ島か」

「その通りです。そして今まで私たちは西へ、東へ走り回っていました。しかし私たちが走っていた方向は真東でも真西でもないんですよね」

「?どういうことだ?」


鬼丸が地図から目を離し、金太郎の目を見る。


「微妙に南に向かっているんですよ。ウラシマ含めて私たちも」

「・・・・・・すまん、それがどうしたのか俺には分からん」

「いえ、ただ私たちは上手く誘導されていたのではないのかと思いまして」

「誘導、だって?」


金太郎は思わずオウム返しする。


「どういうことだ?」

「いいですか、先ほど金太郎が言ったとおり、この町の東側は商業都市として成り立っています。私は今まで竜宮城がそこに隠されていると思っていました」

「竜宮城ほどの大企業なら商業都市にあるのは当然、と思ったのですね」

「ええ。しかし南に向かっていると分かれば話は違う・・・・・・。竜宮城はこの街に南にあるのではないでしょうか?」

「でもこの街の南側って鬼ヶ島しかないんじゃ・・・・・・」


確かに金太郎の言うとおりである。

この街の南には港も何もない。何故ならすぐ近くに鬼ヶ島があるからだ。鬼ヶ島のせいで人は寄り付かず、あるのは青く広がる海だけ。そこに大企業の本社があるとは思えなかった。


「あの海しかないところで、どこに本社があるんだ?」

「・・・・・・・海の中、とか?・・・・・」

「こりゃ、期待できねえな」


金太郎は明後日の方向を向く。

―――ああ、夕日がまぶしいぜ・・・・・・。


と、その時かぐやが不意に叫んだ。


「ウラシマを見つけました!本当に南の方向に向かっています!」

「本当ですか!?」

「マジかよ!?」

「ええ、それも凄いスピードで!早く行かないと間に合いませんよ!」


かぐやが二人をせかす。

その言葉を聞くと、二人の表情から疲労が消え、希望に満ちた顔となった。


「やっべ、テンション上がってきたああああ!」

「かぐや、月光お願いします!」

「分かりました。・・・・・月光・新月!」


三人の周りを望月が囲み、その後黒色に染まっていく。

次に見た瞬間にはそこには誰もおらず、ただ夕日が見えるのみ。


ようやく鬼ごっこも終わりにさしかかっていた。





ただ今作者は絶賛テスト期間中です(笑)


今週でようやく終わる&春休みに入るので更新を早めたいです。

今後ともよろしくお願いします!



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