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第一章・第二十三話:信用できませんね、色々な意味で・・・・・

「で、かぐや、それっぽい人とはどこにいるんですか?」


現在、鬼丸たちがいるのは浜辺。海の方を見やれば、鬼ヶ島がはっきりと見える場所である。

そしてかぐやはここにウラシマっぽい人物がいると言った。遮るものはない長く続く浜辺、それっぽい人間がいればすぐに分かりそうなものなのだが・・・・・・・・


「誰もいねえな・・・・・・」

「おかしいですね~。もう行っちゃったんでしょうか?」


浜辺には人っ子一人、見当たらなかった。かぐやは首をかしげている。


「かぐや、あなたが見たウラシマというのはどういう人物だったのですか?」

「ええっと・・・・・・・確か麦藁帽子をかぶっていて、ランニングシャツを着ていて、ズボンは短パンでした」

「まるで虫取り少年だな・・・・・・そんな人間いるわけが・・・・・ない?」


かぐやの言葉を否定しようとした時、金太郎はチラッと見てしまった。

かぐやがいっていた通り、ランニングシャツに短パン、青い頭に麦藁帽子をかぶった男の姿を。

しかしその男の姿を見ても、金太郎の疑念は消えなかった。


「子供?・・・・・・」

「あっ!いた!」


そう、その男の風貌はまるで子供。かぐやが放った言葉からも、彼女が見たウラシマというのは彼のことらしい。

しかし勝手に腕の立つ、熟練の船乗りの風貌を想像していた金太郎にとって、ギャップは激しかった。


「アレがウラシマ?・・・・・」

「どこをどうやって見れば、ウラシマって分かるんだ?」

「分かりますよ~。何となく、雰囲気が滲み出ていて。とにかく話しかけてみましょうよ!」

「ああ・・・・・・」


今はとにかく、かぐやの言葉に従うほかなかった。



   ▽   ▽   ▽



「あ、あの、君、ちょっといいかな?」

「・・・・・・誰?お兄ちゃん達?」


金太郎は現在、釣りにいそしんでいる少年に話しかけた。少年は警戒の目で金太郎を見ている。

声も少年らしい変声期も来ていない高いもの、どうも普通の少年にしか見えなかった。


「四方院かぐやです」

「鬼丸童子・・・・・・」

「俺の名前は金太郎っていうんだ。君の名前は?」

「・・・・・・知らない人には自分の名前言っちゃだめだって言われているんだ。だから・・・・・・あっ!来た!」


少年の釣竿がピクッと動いた。かなりの大物らしく、少年の体ごと引っ張られ今にも釣竿は折れそうだ。


「お兄ちゃん、代わって!」

「えっ!?おお、分かった」


金太郎が竿を受け取る。と、気を抜いて瞬間持っていかれそうになってしまう。

少し、ムッとする。


「海洋生物が・・・・・・陸上生物なめてるんじゃねえぞおおおお!」


金太郎は凄まじい力でリールを一気に巻き、引き上げる。

と、その瞬間、金太郎達は信じられないものを見た。


「でかっ・・・・・」

「こんな深海魚、いましたっけ?」


金太郎の釣り上げた生物、それは提燈アンコウっぽいもの。何故確信が持てないかというと、如何せんでかすぎる。空中に舞い上がったそれは金太郎の視界を覆いつくすには十分な大きさ。

金太郎はその光景に呆然として、動けなかった。


そしてそれは重力法則に従って、落下する。


「すご~い、大きい!」

「――――って逃げろおおおおお!!」

「なんで退魔師の貴方が逃げるんですか?・・・・・逃げるまでもない。一発で終わらせます」


鬼丸はデザートイーグルを取り出すと、巨大魚に標準を向ける。そして・・・・


「吹っ飛べええええ!!」


鬼丸が使った力は“圧力”。圧力の銃弾が当たった瞬間、巨大魚の体が九の字に折れ、重力に逆らい再び中を舞う。そして再び自分が元いた場所に、凄まじい音を立て戻っていく。

―――――――ザッパアアアアン―――――――


「おお!すっげ~な!!」

「まったく貴方という人は・・・・・・・かぐや、少年、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。・・・・・って言うより少年、貴方は何をしているのですか?」

「うわ~ん!お姉ちゃん、怖かったよ~!!」


ウラシマらしき少年はかぐやに抱きついている。かぐやの身長は少年より高く少年が抱きつくと、少年の手はかぐやのお尻にちょうど当たる。

しかも妙な手つきを加えて。


「う~ん、柔らかい・・・・姉ちゃん、ええケツしとんな~・・・・」

「こ、の、ゲスがああああああ!!」


かぐやが少年を引き剥がし、動きづらい着物を着ているのに関わらず華麗な後ろ回し蹴りを放ち、そして見事にそれは少年の頭に当たる。


少年は傍から見れば重さを感じられないように吹っ飛んだ。


「恥を知りなさい、この変態!」

「ちょっとは落ち着け、かぐや。死んでないか、アレ!?」

――――――ガシュンッ!―――――――

「えっ!?・・・・・・・」

「あの糞餓鬼・・・・・どうしてくれましょう?銃殺?撲殺?それとも絞殺?・・・・・ふ、ふはっ、はっはっはっは!」

「おい、鬼丸、落ち着け!お前、口調が変になってんぞ!」


かぐやはセクハラを受け怒り、鬼丸は狂気にかられている。金太郎以外誰も蹴られた少年を心配しようとしない。未だに笑っている鬼丸は放っておいて、金太郎は少年を助けに向かった。


「おい、少年、大丈夫か?」

「いたた・・・・・・・これは効くね~・・・・あっ、でも何か新しい世界が見えそうな・・・・・」

「お、お前、声がおっさんになってんぞ!」

「あっ、やべ・・・・・」


少年は手を口に当て、本当にやばそうな表情をする。しかしそれはどこか演技臭く感じられるもので、金太郎は不審に思った。


「お前、どうなってんだ!?」

「ふふふ・・・・・体は子供、頭脳は子供、その名も名―――――」

「やめろおおおおお!版権的に危ないから!」

「ええ~・・・・いいじゃん、いいじゃん」

「だめなもんはだめだ!お前、いったい何者だよ!?」


少年の口が微妙に歪む。


「坂田金太郎君、改めて自己紹介をしよう。僕の名前は浦島竜胆うらしまりんどう。ピチピチの39歳さ!」

「おっさんじゃねえか!何処がピチピチなんだよ!?」

「なっ!?39歳と言えば働き盛りの時じゃないか!ほら、肌もこんなにピチピチ!」

「それは餓鬼の体だからだろ!・・・・・・・じゃあ、何だ?お前はそんな歳で、その体なのか?」

「うん、十歳で成長期終わっちゃった!」


・・・・・果たして成長期とはこんなにも極端なものであっただろうか?

金太郎は目の前で平然としている、少年の姿をしているおっさんに唖然とした。

金太郎が呆然としている間に、落ち着きを取り戻した鬼丸とかぐやもやってきた。


「キンタ、結局この糞餓鬼がウラシマだったんですか?」

「糞餓鬼って・・・・・・そうだよ、こいつがウラシマらしい」

「鬼丸さん、これ、殺してもいいですか?」

「もちろんいいですよ!」

「―――――って、おい!やめろ!」

「あっ、でもかぐやちゃんなら殺されてもいいかも・・・・・・」

「お前も早まるなああああああ!」


金太郎は殺そうとしているかぐや、殺されるのを良しとしているウラシマ、双方を止める。鬼ヶ島に行く前に仲間同士の流血事件など起こされてはたまらない。


金太郎は何故か当事者の二人よりも息が乱れていた。


「で、君たちは僕に何の用だい?」

「ああ・・・・鬼丸」

「ええ・・・・・実は私達、とある事情で鬼ヶ島に行かねばならないのです。だから――――――」

「何で?」

「・・・・・・実は、私“鬼”なんです」

「知ってるよ」

「へっ!?・・・・・」


予想外の答えが返ってきて、いつもからは想像も出来ない間抜けな声が口から漏れる。

鬼の容姿は人間とは変わりはしない。唯一の特徴である角も帽子で隠してある。なのにどうやってウラシマは鬼ということに気づいたのであろうか?


「もしかしてそれで隠しているつもりなの?」

「・・・・・・・何故、分かったのですか?」

「“何故”?当たり前じゃないか。鬼って言うのはね、人間とは違う魔力を持っているし、それに魔力保有量も格段に大きい。ちょっと力のある魔術師なら気づくと思うけどな~」

「・・・・・・・ということは貴方も魔術師?」

「およ?なかなか鋭いじゃないか。そうだね、僕は魔術師。それも超一流の竜宮城直属のね」

『竜宮城?』


かぐやと金太郎は疑問を口にそろえる。


「竜宮城ってあの豪勢な食事と平目のダンスが見れる竜宮城?」

「うん、そうだよ~」

「竜宮城ってあの乙姫様がいるあそこか?」

「うん、そうだよ~!」


金太郎とかぐやに問われる度にウラシマの顔は得意満面になっていく。そして二人は鬼丸の方に振り返って一言。


『いざ、竜宮城へ!』

「アホですか?ちっとも話が進まないじゃないですか!」


いい加減鬼丸が怒った。金太郎だけでなくかぐやまでもシュンっとなっている。ただ一人それに動じていない者がいた。


ウラシマであった。


「ふ~ん・・・・で、鬼丸君は鬼ヶ島に取り戻すために僕に連れて行って欲しいと、そう言いたいんだね?」

「分かっているのなら早く連れて行ってください!」


ウラシマは鬼丸に怒鳴られても動揺する様子はない。いつもニコニコ、いや、ニヤニヤしている。

長く生きているだけの貫禄か、はたまた人格がそうなのか、どちらにせよ鬼丸にとって扱いづらかった。


「別にいいんだけどね~、それぐらい。でもめんどくさいな~。何かあったら連れて行ってもいいんだけど」

「・・・・・何が欲しいんですか?」


要するにウラシマは見返りを要求している、ということだった。


「ん~・・・・とりあえず金が欲しいな~。1億くらい」

「一億!?」

「・・・・・・軽く私たちの全財産、越えましたね」


ウラシマは依然とニヤニヤしている。しかし・・・・


「ありますよ、一億くらい」

「ひょっ!?」


ウラシマが振り返る。と、その目に映った光景は、一面の金色。太陽によって反射する光がまぶしい。

ウラシマの間抜けな顔が照らし出されていた。


「へっ!?こ、この金どっから?」

「私のポケットマネーです。たぶんこれぐらいで、一億はあるでしょう」

「いや・・・・・・ポケットマネーってレベルじゃねえぞ・・・・・・。というか、オメエの服のどこにポケットがあるんだよ?」

「乙女は秘密を持って美しくなるのですよ・・・・・・」

「流石です、かぐや。というわけで、お金は用意できましたよ。ウラシマ君」

「う・・・・・・」


ウラシマはニコニコしながらも、全体的に苦しそうな顔をしている。

そしてたった今思いついたように、声を張り上げる。


「そうそう!僕の欲しいものは別にあったんだよ!僕の本当に欲しいものは“竜の首の玉”なんだ!」

「“竜の首の玉”?何それ?」

「・・・・・・この町の水の神、竜神様などの首についているといわれる宝玉です。数多の人間が挑みましたが、失敗・・・・・・。まず神という存在が危ういのに、その神を怒らせるような真似をさせるなど、余程私たちを諦めさせたいようですね・・・・・・・」

「んな無茶苦茶な・・・・・・」

「と、とにかく宝玉持ってこない限り、連れて行かないから!」


ウラシマは大げさに手を動かし、その後そっぽを向く。

鬼丸は思わず表情を歪める。一筋縄ではいかないとは思っていたが、ここまでとは・・・・・・。いっそのこと脅してでも鬼ヶ島に行こう、と思っていたそのとき。


「ああ、ありました、竜の首の玉」

「ひょえっ!?」


かぐやが袖から取り出したもの、それは深い青色をした玉であった。その色は中心にいくほど暗くなっていき、見たものは引き込まれるような感覚に襲われる。


ウラシマはそれを見た瞬間、固まった。


「そそそそそそそれを、どこで!?」

「昔、どこかでもらったんですよ。今まですっかり忘れていました。多分本物だと思うんですけど、どうですか?」

「た、確かに本物・・・・・・。本物だけどもらいもんって言うレベルのものじゃ・・・・・・・」

「いりませんよ、そんなガラクタ。それより早く鬼ヶ島に行ってみたいです」

「・・・・・・・・」


ウラシマは開いた口が塞がらない。今度は鬼丸たちがニヤニヤする番だった。


「ウラシマ、これで鬼ヶ島に連れてってもらえますよね」

「うえ・・・・・」

「まさか逃げることなんてないよな」

「ひっ!・・・・・・」


前門の鬼丸、後門の金太郎。普通の子供ならば泣き出してしまいそうな迫力だ。現にウラシマは自称39歳のくせに泣き出してしまいそうだ。


「さあ、私たちを鬼ヶ島連れて行きなさい!」

「ひっ・・・・・・た、助けて、亀吉く~ん!!!!!」

「へっ!?・・・・・・」


金太郎が海の方を振り返ると、そこには先ほどの巨大魚に負けないほどのでかさの亀の姿が。


「ガ○ラアアアアアアア!!!???」

「新手!?」


巨大亀は突然現れ、高速でウラシマをさらうとそのまま町の方へ進んでいく。


「何だ!?あのガメ○!?」

「待ちなさい、ウラシマ!」

「へっへ~ん。僕はね、社長から誰も鬼ヶ島に連れて行くな、って言われているんだよ!悔しかったら僕を捕まえてみ~ろ!」


町に踏みかかる瞬間、亀は大きくジャンプ。すると亀の体が小さくなるとそのまま町に消えていく。

一瞬三人は呆然としていたが、すぐに我に帰る。


「探しますよ!キンタ、かぐや!」

「鬼ごっこの始まりか!?」

「ちょうどいいんじゃないですか?鬼が鬼役をやるのですから」


今、ここ長関を舞台とする鬼ヶ島が始まった。




皆さんはガ○ラって分かりますか?


僕はゴ○ラと共に大好きでした(笑)

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