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第一章・第二十二話:ウラシマを探せ!

「・・・・俺たち、鬼ヶ島に渡れねえんだ・・・・・・」

『・・・・・・なんだって――――――!?』


鬼丸と金太郎の叫び声が辺りに木霊する。うるさそうに耳をふさいでいる健に金太郎は突っかかった。


「おい、何で漁師が鬼ヶ島に行けねえんだよ!?すぐ目の前じゃねえか!」

「んなこと言われてもな~・・・・・」

「何が問題なんですか?」


鬼丸が問いかける。と、健は言いづらそうにしぶしぶ答えた。


「・・・・ここと鬼ヶ島の間には、“竜神様”がいるんだよ」

「“竜神様”?」

「竜神様っていうのは水を司る神様さ。水って言うのは、俺たちに欠かせないものだが、時には災害を引き起こす・・・・・・。それと同じさ。竜神様がいるお陰で、ここらへんには特殊な海流が巻き起こって魚が集まって、俺ら漁師は助かっているんだが、その海流のせいで鬼ヶ島に行こうとすると波に押し流されるんだ。だから俺らは行けねえんだよ」

「なんてはた迷惑な神様だ・・・・・・」

「・・・・・ならどうやって桃太郎や他の人は鬼ヶ島にいったんですか?神様相手じゃ、太刀打ちできないですよね」

「ああ・・・・・。別に行けないわけじゃないんだ。海流を読んで船を操れれば・・・・・・。ただそんなことが出来る奴はほとんどいねえ」

「そんな・・・・・」


健の話を聞き、鬼丸は半分絶望していると健の弟子が口を開いた。


「ウラシマさんなら行けるんじゃないっすか?」

「“ウラシマさん”?誰です?」


健の顔が半分引きつる。


「ウラシマさんはここらへんに住んでる船乗りっすよ。船乗ることだけは凄く上手くて、それこそ親方よりも・・・・・・」

「雲泥の差?」

「そうそう、雲泥の――――いてっ!」

「――――バカか、オメエは!さっさと片付けしろ!」

「は~い・・・・・」


思いっきり殴られ、弟子が頭をさすっていると、対する鬼丸たちは喜びに満ちた表情をしている。それこそ踊りだしそうなくらい。


先ほどまでとのギャップに健はちょっと引いた。いや、だいぶ。


「健さん。それではその人に会えば鬼ヶ島につれてってもらえるんですね!」

「ああ、まあ・・・・・・」

「やったな、鬼丸!」

「はい、キンタ!早速行きましょう!」

「おう!」

「ちょっと待て!お前ら・・・・・・。ああ、行っちまった・・・・・。ウラシマさん、変人だから大丈夫かな?・・・・」


健の呟きが鬼丸たちの耳に届くことはなかった。



   ▽   ▽   ▽



「で、私たち出てきてしまったわけですが・・・・・」

「そうだな、鬼丸」

「重要な情報を聞いて来たわけですが・・・・・」

「聞いたな、鬼丸」


ここは浜辺。鬼丸と金太郎は我を忘れて走り出し、ここまでダッシュで来てしまった。

今では二人とも何故か明後日の方を見ている。


「そもそもウラシマさんがどこにいるのかさえ聞いてませんでしたね・・・・」

「なんてバカなんだ、俺たち・・・・・」


見事なまでのorz。

砂がヒザと手に食い込んで余計痛かった・・・・・


「畜生・・・・・ここまで無駄足かよ。おい、鬼丸、もう一回戻るか?」

「いや、待ってください・・・・・私たちには先にやることがあります」

「? そんなのあったっけ?」


金太郎は首をかしげる。鬼丸は至ってまじめな顔で答えた。


「はい。まずはかぐやを探さないと・・・・・」

「それが最優先かよ!?」


海の方を見やれば、小さいながらも鬼ヶ島が見える。そんな目標を目の前にして何故そんな悠長なことが言えるのか、金太郎にはそれが理解できなかった。


「かぐやは曲がりなりにも私たちの同士であることにはかわりありません。同士は仲間。あなたは仲間を放っておけますか?」

「そりゃ、出来んが・・・・」

「ですからかぐやと合流しないと。今頃一人で寂しくて泣いているかもしれませんよ」

「あの姫様が?ありえんだろ」


金太郎と鬼丸はとりあえずわがまま姫様を探すこととなった。



   ▽   ▽   ▽



思いの外、かぐやはすぐに見つかった。というのも鬼丸たちのすぐ後ろにいたからだ。


「鬼丸さ~ん。そこで何やっているんですか?」

「かぐや!」

「―――って何一人でくつろいどるんじゃ!」


かぐやが今いるところ、それは海のすぐ側に隣接する甘味屋であった。かぐやは外に設置された椅子で海を見ながら、菓子を食べていた。

かぐやの隣には大量の皿が積み重ねられている。


「・・・・・まさかオメエ、これ全部一人で食べたのか?」

「それ以外何か?」


・・・・・・甘いものは別腹、というものなのだろうか?それにしたって食べ過ぎであろう。


「ちなみにキンタ、別腹というのは好物を目にした時、脳が胃に消化を促進させて満腹の胃にスペースを空けることを言うらしいですよ。生物は専門じゃないですから詳しく説明は出来ませんけどね」

「んなウンチクいらんわ!ちょっと勉強になったわ!ありがとう!」

「どういたしまして!」

「・・・・・で、何か分かったんですか?」

「ええ、まあ・・・・・」


鬼丸はこれまで分かったこと、特にウラシマという人物についてしゃべった。


「・・・・・というわけで、私たちはウラシマという人物を探さなくてはいけなくなりました」

「へえ~モグモグ、なるほど」

「で、かぐや、ウラシマという人物を知りませんか?すぐ近くの山に住んでいたならば、噂の一つくらい聞いたことありそうな・・・・・・」

「聞いたこと、モグモグ、ありませんね~」

「そう、ですか・・・・・ならば早く探さないと・・・・・」

「モグモグ、そうですね、モグモグ」

「――――ってドンだけ食うんだよ、オメエは!?」


鬼丸が喋っている間でもかぐやは食べるのをやめない。むしろ食べるペースは速くなっている。皿の山も二つに増えている。


「皿の山、崩れそうじゃねえか・・・・・」

「だってこのお店のケーキ、すっごくおいしいんですよ!あっ!マスター、おかわり!」

「まだ食うのかよ!?」


金太郎は咎める、というよりは呆れた表情になっている。


「はあ~・・・・・どうするんだ?この支払い・・・・」

「大丈夫ですよ~。お金ならたくさんあります」


そういってどこからともなく金の竹を取り出すかぐや。


「・・・・・まあ、いいんじゃないですか、キンタ。金の問題はない、腹ごしらえもすんだ・・・・・・怒ることはありませんよ」

「鬼丸・・・だけどな、お前だって――――――」

「――――ただし!」


金太郎の言葉を鬼丸が遮る。金太郎はこんな真剣な表情を久しぶりに見た。


「時間、という問題があります。私たちがこのように過ごしている間も、我が同胞は危険にさらされています」

「鬼丸・・・・・・」

「私が何故旅をしているか、私が何故桃太郎を倒さねばならぬか、目的を見失ったわけではありません。よもやこの状況で女にうつつを抜かすことなど決して!」


鬼丸が力説している中、退屈そうに頬杖をついていたかぐやが口を開く。


「本当は?」

「結構していました」

「お~に~ま~る!?」

「じょ、冗談ですよ、キンタ。そんな怖い顔をしないでください」


金太郎の形相に鬼丸は顔を引きつらせる。金太郎の表情はそれこそ鬼のよう。

鬼丸は気を取り直して、再びしゃべりだす。


「・・・・・・キンタはこんな私のことを心配してくれていたようですが、大丈夫です。私は目的を見失うほど愚かな男ではありません。かぐや・・・・・関係のないあなたを巻き込んで申し訳ないが、こればかりは譲れません。・・・・協力、してくれますか?」

「・・・・・・まあ、そこまで言われたならケーキを食べている場合じゃないですね」

「本当だよ・・・・・・」

「任せてください、鬼丸さん。人探しならこのマジカル☆姫様、かぐやちゃんの得意技ですよ!」


かぐやは着物の袖から、蓬莱の玉の枝を取り出し、そして・・・・・・


「月光・七夜!」


かぐやの周りに七つの人魂のような光が飛びまわりる。太陽の下に存在するはずなのに、それらは確かに紛れることなく光り、幻想的な雰囲気さえ醸し出している。


そしてかぐやが合図をすると八方に飛び散った。


「こんなところで武器なんか取り出してどうしたんですか?」

「七夜にはですね、“目”があるんですよ」

「“目”?」

「ええ、実際にはありませんけどね・・・・・七夜は現在、長関のあらゆるところを飛び回っています。その七夜から見える風景が私に直接伝わってきます。この町にいる限り、ウラシマという人物はすぐ見つかりますよ」

「何でもありか?月のお姫様は」

「それに頭が痛くなりそうな能力ですね・・・・・。そういえばかぐやはウラシマ、という人物をみたことあるんですか?」

「・・・・・・・まあ、それっぽい人物を探しますよ」

「こりゃ期待できねえな・・・・」


鬼丸と金太郎は腰を椅子に落ち着ける。せっかく甘味屋に来たのだから何か注文しようとしたその時・・・・・


「見つかりました、それっぽい人が!」

「はやっ!」

「元より星の数ほどいる人間の中、それっぽくても重要な手がかりです。かぐや、その人物は今どこに!?」

「それはですね~・・・・・」


かぐやが指で示す。


「あの浜辺に・・・・・」

『って、ちか!!』




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