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第一章・第二十話:月光・七夜!そして長関へ・・・・・・

かぐやが地上に舞い降りたとき一番速く正気に戻ったのは、一番驚いていた猿であった。猿はかぐやに問う。


「あ、あんさん、何やった?」

「ふふふっ、驚きましたか?これは私の宝具の一つ“蓬莱の玉の枝”です。さあ、戻って、月光・帰化」


かぐやがそう言うと、鬼丸たち包んでいた光の壁がなくなり、光が蓬莱の玉に戻っていく。


「おお・・・・・なんだかすげえぞ!」

「流石です、かぐや。美しい・・・・・」

「お前な・・・・・」

「ふふん」


鬼丸が再び惚けると金太郎は冷たい視線で鬼丸を見る。

そんなやり取りを無視して、かぐやがどこか誇らしげに余裕の笑みを浮かべ、蓬莱の玉の枝を猿に向ける。


「私は珍しく怒っているんですよ。自分の部下の天人を殺されて、さらにはそれを雑魚だと・・・・・・・寝言は寝てから言って欲しいものですね。貴方ごときが我ら天人を侮辱することなんてありえない。まして劣っていることなど絶対に・・・・・私がそれを教えてあげます!」

「嬢ちゃん。年上には気使うべきやで・・・・・・」

「私はあなたよりも遥かに年上です。それに・・・・私のことは“姫様”とお呼びなさい!月光・七夜!!」


蓬莱の玉の枝の宝石の部分が光り、かぐやの周りに七つの光の玉が浮かぶ。それぞれが七つの色に光り、猿を囲むと猿に向かって光が放たれる。


「なっ・・・・ちっ!」


猿が驚異的な身体能力で飛び、体を捻ってぎりぎりのところでかわし、とっさに落ちている如意棒をとる。


「なめんなよ、嬢ちゃん!伸びろ、如意棒!!!」


勢い良く放たれる如意棒。かぐやは冷静にそれを見ている。


「おい、かぐや!どうする気だ!このままじゃ当たっちまうぞ。」

「ちょっと黙ってください・・・月光・望月!」


蓬莱の玉が再び光り、光の玉が集まり光の球体がかぐやたちが包む。


「な、何やと?」

「さあ、どうしてくれましょう?あなた程度では変幻自在の月に勝てない・・・・さっさとおとなしく殺されてください、この愚民が!」

「ふん!なめとんやないで!それに・・・・あんさんは良くても鬼っ子は限界らしいしな!」


猿がそう言い放ち、かぐやが後ろを振り向くとそこには今にも倒れそうな鬼丸の姿。鬼丸の足元には血が溜まり、顔色は真っ青になっている。


「おい、鬼丸、大丈夫か?」

「ええ、ちょっと・・・・血が止まってないことをすっかり忘れていました・・・・・・ちょ、ちょっとやばいかも・・・・」

「早く止血しないと!」

「・・・・・」


鬼丸が苦しそうな表情を見せると、かぐやは再び蓬莱の玉の枝を取り出し、それを振るう。


「・・・・・・・お猿さん。勝負はまた今度にしましょうか。月光・新月」


周りの金色の球体が黒く染まっていく。かぐやは薄く笑い、猿がようやく状況を理解すると凄まじい形相で叫びだす。


「おい、待てや!逃げる気か?」

「“逃げるが勝ち”って言葉もあるんですよ、お猿さん」


望月がだんだん黒に染まっていく。猿は追いかけようとするが止めることは出来ず、完全に黒に染まったときには、誰もいなくなった。


「ち、ちくしょうがっ!!」

「あはははは、まんまと逃げられてやんの。ばっかで~!あははは」


いつの間にか猿の後ろには1人の男が立っていた。男は黒い髪と黒い目、そして黒い大きな翼の猿より若い男、いつぞや金太郎を襲った雉であった。


「“雉”・・・・ぶち殺すぞ!」

「おお、こわい、こわい。まったく、八つ当たりはやめてよ、鬱陶しい・・・・」

「あんさんだってあの金ぴか坊主に負けとるやろ!悔しくないんか!?」

「ないね。だって僕専門じゃないし」


雉がきっぱり言うと、猿は鼻を鳴らして、不機嫌さをあらわにした。そんな猿をなだめるかのような口調で雉は言う。


「それよりさ、こんなところで突っ立っていて良いの?早く鬼ヶ島に戻らないと“犬”に手柄取られちゃうよ」

「わかっとるわ!ったく・・・情報屋のくせにうるさいんや、お前は。」

「あはは、僕はお節介なんだよ。さあ早く、戻ろうよ。」


猿はうっとうしそうな顔を向けながら、竹やぶに消えていった。雉もそれに続き、闇に消えていく。辺りには虫にざわめきしか残らなかった・・・・・




―――――ふわふわ、ふわふわ――――――――――――――


夜、街の外の人目のつかないところに突如として黒い球体が現れる。それはふらふらと辺りを飛び回り、何かは検討もつかない。


「ちょっとかぐや、この中狭いんだけど!」

「ちょっと位我慢してくださいよ。これぐらい我慢できないとは、退魔師の名が廃りますね・・・・・」

「んだとゴラア!」

「ちょっと、かぐやもキンタもあんまり動かないで・・・・あんまり動くと・・・・・いたっ、傷が・・・・・」


・・・・・中からは声も聞こえてくる。本当に何がなんだか分からない。もしここに他の誰かがいれば大騒ぎになっていただろう。

正体不明の黒い球体はしばらく辺りを漂った後・・・・・地面に落ちた。


――――――ドスン――――――――――――――――――――――――――

「いたっ、壁に頭ぶつけた!」

「もうちょっと静かに降りられませんか?」

「これでも気をつけたほうなんですけどね。まあいいや、月光・帰化」


帰化、という言霊がかけられると黒い球体はその形を保ちきれず、崩壊を始める。中から現れたのは二人の男と、一人の女・・・・・・坂田金太郎、鬼丸童子、そして四方院かぐやの三人であった。


「ふう~、やっと出れた」


そういって腕で顔を拭ったのは坂田金太郎。急に狭いところに入れられて、ようやく出られた事で開放感にあふれた顔をしている。

かぐやは別段驚くこともないのでいつもどおり、優雅に。そして鬼丸の顔は・・・・・真っ青に染まっていた。


「ああ・・・・・・血が・・・・・」

「ああ、ごめん・・・・ってか早く治療しないと!お前の顔真っ青になってんぞ!」


如意棒で貫かれた鬼丸の左腕は血で赤く染まっていた。染まるどころかもはや血の色しか見えない。人間であればとっくに出血多量で死んでいたところだろう。鬼である鬼丸だから大丈夫なのだ。


しかしそれでも危険なことにはかわりはしない。このまま放っておけば鬼丸は死んでしまうだろう。

だが最近やっと結界の魔術が使えるようになった金太郎が、治療の魔術など知るはずもない。何も出来ないでおろおろしている金太郎にかぐやはあきれたような眼差しを向ける。


「まったく、使えない人ですね~。それでも私のお供の1人なんですか!?この役立たず!」

「ひどい言われよう・・・・ってか、いつからお前のお供になったんだよ!それにそんなに言うなら鬼丸の傷、治してみやがれ!」

「まあ、そんなにあわてずに。月の姫に出来ないことはないんですよ。・・・・・月光・癒華(ゆか)


かぐやがそう言って手をかざすと、かぐやの手が光り、鬼丸の傷がみるみる治っていく。鬼丸よりも驚愕の表情を見せるキンタを見て、かぐやはどこか誇らしげに笑っている。


「ふふん。どうです?鬼丸さん、金太郎」

「・・・・・・・・別に、凄いなんて思ってねえからな!」

「・・・・すごいですね。その武器の名は?」


比較的素直に関心している鬼丸と素直ではない金太郎。そしてかぐやは鬼丸の質問に答える。


「当然です。見るたびに姿かたちが変わる月の様に、あらゆる姿に変わるこの武器、月光(げっこう)は私専用に作らせた、言わば宝具です。月の力の集大成のこの武器をなめてはいけませんよ」

「・・・・・ですって。キンタ」

「な、なめてなんかねえよ・・・・・・」


かぐやは月光の説明に一息つかせると、唐突にこんな事を言い出した。


「ところで、お2人とも、やっとつきましたね。」

「へっ?どこに?」

「何ボケているんですか?ここは“長関”ですよ。」

『はっ?!』


鬼丸と金太郎はあたりを見渡し看板を見つけた。


≪ようこそっ!全ての物がそろう町、長関へ!≫


「・・・・・・・・・・」

「嘘だっ!!!!!」

「嘘じゃないですよ。ほら、早く宿を探しましょうよ。私もう眠いんです。」


確かにあたりはかなり暗い。夜明けの前は最も暗い、というが今はそのくらいであろうか。竹林で迷い、天人と戦い、そして猿との激闘・・・・この時間は妥当であろう。そして一晩中おきていて、もう眠いのも頷けた。

かぐやに言われるがままに鬼丸たちは長関に入っていく。


そこでふと、鬼丸の頭に疑問が浮かんだ。


「おや?キンタ。いつの間にリーダー変わったのでしょうか?」

「・・・・・十中八九、いや、100%お前のせいだと思うがな・・・・・」

「?」

「何話してるんですか?早く行きますよ!」


何がなんだか分からない表情をしている鬼丸を放っておいて、金太郎も門をくぐって長関に入った。

とにかく鬼丸と金太郎は鬼ヶ島にもっとも近い町、長関にたどり着くことが出来たのであった。




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