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第一章・第十八話:赤、それは如意棒の色

やっとテスト終わったああああああ!!

「鬼丸さんはどうしてこんな旅をしているんですか?」

「実はですね、我らが故郷、鬼ヶ島を取り戻すために私は旅をしているんですよ。キンタは自分の修行のため。互いの成長の旅になっているのですよ!」

「へえ~、すごいんですね」

「ていうか、そんなに簡単に、しかも嘘を加えて言っていいのかよ・・・・・」


かぐやが仲間になって半刻。今のところは天人の襲撃もなく、次の目的地“長関”に向かう御一行。すっかりかぐやは溶け込んでしまったようだ。


「ところで、かぐやはなんで地上にいるんだ?月のお姫様だろ?」


金太郎は竹取の翁と天人のやり取りを見て、一番聞きたかったことを問うた。するとかぐやは驚愕の一言を漏らした。


「家出です!」

『はっ?!家出?』

「そうですよ~。月の姫様って言うのも楽じゃないんですよ~。それに、もう飽きちゃったんです。ですからわざと、宝物盗んで地上に来たんです。いや~月に比べて地上はいいですね~、すばらしいところですよ」

「そんなことで貴族や御門様を惑わすなよ・・・・」

「というか、飽きたって・・・なんというおてんば姫様。しかしそこがまた・・・・・・・」

「お前・・・・・・」


キンタと鬼丸のツッコミを華麗にスルーするかぐや。実際この国のトップである“御門”一族まで動かしているのだが、かぐやはそんなことはお構いなしだ。

というより、いったいお前はどうなった!?と金太郎は声高々に叫びたかった。



「だって“永遠”の中では何もかも無意味ですから・・・・」

「えっ・・・・?」

「さあ、もうすぐつきますよ。もうすぐ長関が見えますよ~」


ふと、かぐやが呟きを漏らす。鬼丸が聞き返そうとするが、鬼丸が振り返ったときにはおてんば姫様に戻っていた。


「つきました!ここから長関が見えますよ!」


そこは山の頂上・・・


「うわ~ホントだ、長関ってでけえな~・・・・・って誰が頂上に連れて来いって言った??!!」

「だって、鬼丸さんたちがいたところ、長関の方向の正反対だったんですよ。だから、ここにくるしか仕方ないじゃないですか!」

「はあ~・・・まったくキンタはしょうがないですね~・・・・・」

「俺のせいか!?」

「た、助け・・・て・・・」

『!?』


3人の会話を遮ったのは、竹やぶから出てきた天人であった。しかしかぐやを捕まえようとする気はない。なぜなら彼はもうすでにボロボロで、豪華絢爛な服は見る影もない。

天人には“血”という概念はないが、もしあったのならば出血多量ですでに死んでいただろう。


「ロリコン!?」

「何故このようなことに?・・・・・」

「そんなことより何か声が聞こえませんか?」


―――――うきゃ・・・・うきゃきゃ・・・・―――――

こんな状況までこの天人を追い込んだ犯人の声が竹やぶから聞こえてくる。


「うきゃきゃきゃきゃ!雑魚には興味ないで~!」


突如竹やぶから赤い棒が飛び出し、天人の体を貫いた。ゆっくりと倒れていく天人、その光景を見て3人は驚愕の表情を見せる。


「かぐや!下がってください!」

「わいはそんな姫様には興味ないで。わいが興味あるのは・・・お前や、鬼っ子!」


そういって出てきたのは、茶髪に赤を基調にした服を着ている男、切れ目で鋭い目はどこか野性味を感じさせる。

その目はとにかく絶対的な自信にあふれていた。

そしてその右手には先ほど天人を貫いたと思われる赤い棒が握られていた。

鬼丸とキンタがかぐやの前に立ち、態勢を整える。


「おまえ、誰だ!」

「はあ~、名前聞くときはまず自分から、って言う常識知らんのか、坊主?・・・まあ、ええわ。わいの名前は“猿”や。覚えとき!ゆとり共!」

「“去る”?」

「違います、“猿”です“猿”・・・と言うことは、あなた桃太郎の仲間ですね。」


鬼丸はツッコミと同時にすぐ推測を立てる。その推測を聞いて猿は、にやっと笑う。


「大正解や、鬼っ子!そこの金ぴか坊主よりも頭ええなあ~。でもな頭だけではあの桃太郎には敵わんで!強くないと意味ないしな~」

「――――てか、誰が金ぴか小僧じゃ!?」

「鬼っ子って何ですか?・・・・・まあ、いいでしょう。向かって来た者は叩き潰す!これが私たちの鉄則です。さあ、キンタ、行きますよ!」

「応!」


互いに武器を構えると、突如あたりの空気が変わる。まさに一触即発。双方動かず相手が動くのを待っていた。


「きゃっ!」


かぐやが何かにつまずいたようだ。その声を合図に、鬼丸たちの始めての桃太郎の戦いが始まった。


「行きますよ、キンタ!」

「勝つぞ、オラア!」

「かっかっかっかっかっかっか!勝負やで!」



――――――――――――――――――――――



「私がデザートイーグルで援護しますので、キンタは前衛を頼みます!かぐやはかくれていてください!」

「任せろ!」

「わいは坊主に興味はないで~!」


金太郎の初手は逆袈裟切り。斧を扱う金太郎にとって、それが最も出しやすい手であった。

金太郎と猿が互いに突っ込んでいき、武器がぶつかりあうかと思った瞬間、猿の姿がキンタの目の前から消える。


「な、何!?消えた!?」

「森で猿と戦おうとするのがいけないんや!ほれ!」

「・・・・・・また消えたか」


猿は鬼丸の前に現れる。鬼丸は爪を振るうが、避けられまた見失ってしまった。

森には猿が移動する際に発せられる空気を切る音だけが聞こえる。ということは、それだけ速く猿は動いているということだ。しかも三次元的に。

鬼丸はまったくと言っていいほど、猿の居場所が特定できなかった。


「鬼丸!あぶない!」

「っ!?」

「うきゃきゃきゃきゃ!・・・・・・」


・・・・・いつの間にか後ろを取られていた。金太郎が叫び、かつそれを紫電によって防いでくれていなければ必中、しかも致命傷になっていただろう。

鬼丸が冷や汗を流しているのに、猿は感嘆の声を漏らした。


「坊主、なかなかやるな~・・・・・今の一撃を防がれるとは思っとらへんかったで!」

「そりゃ、どうも・・・・・」

「雉のゆうとったことはほんまやな~。でもな・・・こういうのはどうや!」


猿が紫電を押し返し、金太郎と距離をとる。猿は突きの構えを取り、そして・・・


「伸びろ!如意棒!」

「伸びたああああ!?」


猿の赤い棒、如意棒というらしい武器、がキンタの方へ勢い良く伸び、金太郎に迫る。恐ろしいスピード、それはまるで弾丸のようだった。

紫電では到底間に合わない。そう判断し金太郎は身を翻し、紙一重でそれを避けるが、すぐ如意棒は猿の手に戻っていき、追撃がくる。


「もう一発やで!」

「キンタ!」


鬼丸が3発、デザートイーグルの弾丸を放ち如意棒の軌道をそらす。逆に言えば、如意棒一突きでデザートイーグル三発に相当するのだから、長期戦になればこちらが不利になるのは誰が見ても明らかであった。

鬼丸は普段は絶対見せない苦しい表情を見せる。


「戻りい。如意棒」


猿がそういうと如意棒は猿の手に戻っていく。鬼丸は聞き覚えのある言葉に反応する。


「如意棒?・・・・・確かそれはどこぞの王族の武器だったはずじゃ・・・・・」

「よく知っとんな~、鬼っ子。これがわいの武器、如意棒!伸縮自在のこの武器をあんさんらは見切れるかな!?」

「伸縮自在って・・・・それってかわせない・・・・」


突然だが、戦いにおいて最も重要なことは何であろうか。

――――威力?

――――速さ?


否、戦いにおいて最も重要なことは攻撃が“当たる”ことだ。どんな強い攻撃も、どんな速い攻撃も当たらなければ意味はない。だから確実に当たる攻撃は強いのだ。

そういう意味では伸縮自在の如意棒は強い武器であるし、鬼丸と金太郎もその恐怖は存分に分かっていた。そしてその如意棒を扱う猿も強いということになる。


猿は如意棒が自分の手に戻ったことを確認して、猿は竹の闇に下がる。真っ暗闇の竹やぶ・・・・・そこから猿の声が聞こえる。


「うきゃきゃ、あんさんらはわい相手に良くやるで。流石は鬼って所か?金ぴか坊主も良くやっとるで」

「完全に上から目線だな・・・・」

「確かに・・・・・しかし私たちのほうが負けていることは事実ですか・・・・」

「畜生が!」

「ほな、第二ステージに行こか?ちゅーわけで、頭のいいお前らならこれをどうするかな?」


突如、竹やぶの闇から如意棒の突きが後ろの方から飛び出して来る。

鬼丸はそれを間一髪で避け、反撃を試みるが、今度は左から如意棒が来る。


「今度は左!?どこにいやがんだ、あいつ!?」

「ちっ・・・・・」

「うきゃきゃきゃ、どうするんや、鬼っ子?金ぴか?」


鬼丸は思わず舌打ちをしてしまう。

今度は前から、次は右から、その次はまた前から・・・四方八方竹やぶから飛んでくる如意棒に対して、鬼丸たちは猿を捉えることは出来なかった。


「どうすんだ、鬼丸!?このままじゃ、ハア、圧倒的に不利だぞ!」

「・・・・・・どうすれば・・・・・」


鬼丸の嘆きは、如意棒の音にかき消されるだけであった。





「う、う~・・・・姫様、どうかお逃げに・・・・・」

「・・・・・・・」


鬼丸と金太郎が苦戦を強いられているそのころ、かぐやは猿によって、倒された天人の様子を見ていた。

腹には風穴が開き、如意棒によって叩きつけられた痣は目を思わず背けたくなる程であった。もはやこの天人の運命は・・・・・無であろう。

天人は浄土の人。幽霊とは異なる、生も死もない存在。もしも彼が幽霊なら除霊でもされれば地獄にでもいけるだろう。

対して人の逝く先は無。天人が死んだら何も残りはしない。


そんな状況にも関わらず、この天人は自分のことを心配してくれる。月から逃げ、裏切った自分を。


「貴方はよくやってくれました。どんな時でも私に仕えてくれえて、とても優秀で・・・・・まあ、性癖に関していえばとても褒められるようなことではありませんが、私は感謝しています。有難う・・・・・」

「う、うう・・・・姫、様・・・・・」

「今はゆっくりと眠りなさい。眼を覚ましたときには、貴方は・・・・・新しい世界にいるでしょう・・・・・」

「姫・・・・・様・・・・・」

天人はゆっくりと目を閉じ、白い光に包まれる。すうっと、その光が消えると、そこにはもう何もなかった。かぐやの目には煌くものが見えたが、すぐに拭い去った。


「さて・・・・・・」


かぐやは立ち上がる。月に喧嘩を売ったあの不届き物に天罰を与えるために・・・

かぐやの手には一本の枝が握られている。それは様々な7種の宝石がついていた。


「少しだけ力を借りますよ・・・・“蓬莱の玉の枝”」






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