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第一章・第十七話:かぐや姫ってもっとお淑やかな人だと思ってたんだ

今日は節分です。

鬼は~外、福は~内・・・・・・


鬼丸君には投げないでくださいね(笑)


「あっ!先ほどの・・・・・・」


二人が向かった先、待っていたのは先ほど助けを求めてきた少女。鬼丸の姿を見つけると声をかけてきた。


「大丈夫でしたか?どこかお怪我は?」

「・・・・・えっ!?お前、誰?」


金太郎はいつもと違う鬼丸の口調に驚き、動揺する。しかし少女と鬼丸は眼中にないように話を続ける。


「ええ、おかげで助かりましたわ。天人を退けてしまうなんて、お二人ともお強いのですね。」

「まあ、鬼と退魔師だからな・・・・・・」

「それは良かった・・・・・もう安心してください。ロリコン変態野郎は私たちが退けましたから」

「それは・・・・・ありがとうございます。・・・・・あっ!名前を申していませんでしたね。私の名前は“四方院しほういんかぐや”です」

「そうか。俺の名前は・・・・・・って“かぐや”?」

「ええ」


・・・・・時間が止まった。主に金太郎の周りの。しばらくしてようやく動き出した金太郎が聞き返す。


「かぐやって・・・・・・あのかぐや姫?」

「はい。気軽に“姫様”と呼んでください」

「全然気軽に呼べませんね・・・・・・・」

「―――――ってかぐや姫がこんなところにいていいのかよ!?さっさと月に帰れよ!」

「なっ!?私に向かってなんて口の聞き方を!無礼者!」

「―――――ひでぶっ!」


かぐやの蹴りが金太郎の腹に入る。少女とは思えない威力、金太郎は何とか踏みとどまったが、変な叫び声を上げてしまった。


「恥を知りなさい、地上の民よ!」

「・・・・・・オメエ、やりやがったな!覚悟しろよ!」

「私を仲間にしてください!」

「テメッ!無視すんじゃねえ!」

「まあまあ、キンタ。事情ぐらい聞きましょうよ。・・・・・何故我々の仲間などに?」


鬼丸が金太郎をなだめると、かぐやは事情を話し始めた。


「・・・・・・私は天人が来るからおじいさんに逃がしてもらいましたが、私も天人。地上にはどこに行くところはありません。どこに行こうか迷っているうちに追っ手の天人に見つかってしまいました。そんな時助けてくれたのはあなた方。まさにあなた方は救世主。今や私が頼れるのはあなた達だけなんです」

「かぐや・・・・・」

「――――っていうより第一、敵に追われた美少女を助けたら、その人はヒロイン的扱いを受けて仲間になるっていう旅の常識に則るべきではないんですか?それを無視しようとするなんて、しかもこんな美少女を、あなたは主人公以前に男としてどうかしていますよ!というわけで私を仲間にしなさい!」

「・・・・・・・・お前な」


・・・・はて、最近の女は自分のことを美少女と形容するのだろか?確かにかぐやは、美少女といっても過言ではない容姿をしている。艶のある長い黒髪、強い意思を持った黒い瞳、etc…

しかしもうちょっと謙虚になれないのだろか、と金太郎は思った。

女というのは恐ろしい。

しかしもっと恐ろしいことが目の前で起こった。


「はい、喜んで!」

「――――――って鬼丸!?オメエは何言ってんだ!?おい、目を覚ませ!!」

「・・・・・・はっ!?」

「はっ!じゃねえよ!何今気が付きました、って言う顔をしてんだよ!・・・・・おい、鬼丸、何かオメエおかしいぞ。何かあったのか?」

「いえ・・・・・特に何もないとは思うんですが・・・・・ただ、あの少女に見つめられるとどうにも断れなくて・・・・・どうしたんでしょうか、私?」

「お前、それって・・・・・・・・」


――――― 一目ぼれじゃ・・・・・・

金太郎にはそう思えた、だが鬼丸は自覚をしてないようだ。鬼丸自身、自分の身に何が起こっているかわかってないらしい。

しかし時期が来ればいずれ気づくだろう、金太郎は敢て口に出さないことにした。


「と、とにかく今回のお前はおかしい。今のお前じゃ、正確な判断は出来ないから俺に任せておけ」

「そう、ですね・・・・・木偶の坊の金太郎でも、今の私よりは役立つでしょう」

「オイ、テメエ!」


金太郎は“正常”であった時の鬼丸が言うであろう、質問をかぐやに問いかけた。


「おい、かぐや姫!お前と一緒に旅をして何かメリットはあるのか?」

「あります!まずこんな美少女と旅を一緒に出来ること!」

「却下!女には興味はねえ!」

「えっ・・・・まさか、ホ・・・・」

「断じて違う。旅の仲間、という意味でだ!」

「う~、じゃあたくさんの金の竹を持っていますよ。」

「却下!金は十分ある」


鬼丸が貰った(奪った?)金を見せる。すると、かぐやは万策尽きたように頭を抱えた。


「う、う~・・・・じゃあ、この竹林の抜け道知っていますよ。」


ぴくっ!

鬼丸の表情がかすかに動いた。


「私は外の世界はあんまり知らないですけど、この林なら私の庭のようなものです。ですから・・・」

「採用!」

『ええええええ~~!!!!』


あまりにもあっさり採用してしまう鬼丸にキンタも、かぐや自身も驚いてしまう。


「オイ、鬼丸、お前は口を出すなって言ってんだろ!」


「キンタ、よく考えてみてください・・・・・」

「ん?」

「この竹林を越えれば、“長関”にたどり着きます。そのためなら何でもいい。利用できるものは利用しましょう」

「だけどな・・・・こんな世間知らずの――――」

「大丈夫です。長関にさえたどり着けばこっちのもん。後はあなたの好きなようにしていいですから」

「でもな~・・・・それはそれで―――――」

「キンタ、私の言っていることは正しいんです。いいから私を信じてください!」

「・・・・・・お前、目が・・・・・」


金太郎の言葉という言葉を遮る鬼丸の目をのぞきこめば、そこには狂喜が渦巻いていた。

その狂喜は、餌を目の前にした狼男よりも、はたまた快楽殺人者でも敵わないような凄まじい狂喜だったので、金太郎は二の句が継げなかった。

そこで鬼丸が金太郎にとどめをさす。


「それに・・・・・・こんなことを招いたあなたにとっても都合がいいでしょう。」

「うっ・・・・・分かったよ。」


責任追及され落ち込んだ表情を見せるキンタに対して、かぐやは心底うれしそうな表情を見せる。


「さあ、かぐや姫鬼が島奪還のために尽力すると誓いなさい。」

「誓いま~す!」

「いいのかな~・・・・?」

「いいんです。さて、改めて自己紹介を。私の名前は鬼丸童子。見たように種族は鬼です。よろしくお願いします。そしてこれが・・・・・」

「坂田金太郎だ。退魔師の卵だ。よろしく」

「よろしくお願いしますね、鬼丸さん。キンタさん」

「・・・・・・・・」


・・・・・・なにはともあれ、かぐや姫が仲間になった。歓喜している二人に対して、金太郎は複雑な表情を浮かべていた。



――――――――――――――――――――



「鬼丸がかぐや姫を仲間にしたそのころ、地上に残った天人たちは一旦集合していた。


「どうだ?姫さまは見つかったか?」

「だめです。見つかりません」

「愚か者!月読つくよみ様にどうお詫び申し上げるのだ!?」

「すみません・・・ですがもうすぐ日が上がります。捜索は困難かと・・・・」

「五月蠅い!いいか、我々は何としても姫様を連れ戻さなければならん!壱班は北、弐班は西、参班は南、他は東を探せ!」

『はっ!』


集まった天人たちが四方に飛んでいく。指示を出した(ロリコンと噂のあの)天人は息を吐いた。


「まったく・・・・役立たずどもめ・・・・」

「おお!そこのあんちゃん、あの中で一番強そうやないかい?」

「っ!誰だ!?」


天人は後ろを振り返る。さっきまでは自分以外いなかったはずの場所に茶髪の男が立っていた。その男の手には真っ赤な棒が握られていた。

天人はすぐに自分の武器を手に取る。


「そんなに焦る必要はないで~」

「黙れ!誰だ、貴様は!?」


天人が青筋を立てながら男に問いかける。男は笑いながらそれに答えた。


「ん~・・・・わいの名前は・・・・・猿、ちゅうんやけど」


鬼丸たちに更なる波乱が訪れようとしていた



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