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第一章・第十五話:ヒロイン登場の予感・・・・


「キンタ・・・・・・・ここはいったいどこなのですか?」

「え~と・・・竹林?」

「ええ、それは分かります。で、ここはどこなのです?」

「・・・・・・・・」


鬼丸たちが今いるのは、竹林。竹がうっそうと茂り、夜空を見れば満月が覗いている。しかしそれ以外見ることは出来ず、とても不気味である。


「ま、迷った・・・」


キンタの嘆きがむなしくも辺りに消えていった。


――――――数時間前―――――――――――――――――――――――――


鬼丸と金太郎は盗賊たちを無事退けた後も、変わらず鬼ヶ島に向かっていた。

その盗賊を討伐したときに、金太郎の過去や、鬼丸の怒りのツボが見え隠れしたが二人は大して気にせず旅を続けているようだった。

おまけに桃太郎の手下、“雉”が金太郎の前に現れた。しかし鬼丸曰く・・・・


「たとえ、桃太郎の手下が出てこようと関係ありません。私の目的は“鬼ヶ島の奪回”ですから結局鬼ヶ島に行かなければならないというわけです。それを邪魔するなら誰であろうと叩き潰すだけです」


らしい・・・・・

だから金太郎と鬼丸は鬼ヶ島に向けて、道を歩く。歩く。歩く・・・・・


「――――って、長すぎだろうが!」

「たしかに・・・・・・ちょっと休憩しましょうか」


金太郎が道に対する不満を爆発させる。鬼丸はその様子を見て休憩を提案する。

鬼丸と金太郎は木陰に腰を下ろし、鞄から水を取り出した。


「いったいいつまで続くんだよ、この道・・・・・・鬼丸、地図貸してくれ。地図!」

「パス」


金太郎が鬼丸から地図を受け取る。しかし地図がよくわからないようで、地図を逆さまにしたり、時には自分の顔を逆さまにしたりしている。


「ん?この地図よく分かんねえぞ!?」

「自分の顔を逆さまにして分かるわけないでしょうが・・・・・・・そうですねえ・・・この地図の縮尺は50000分の1。そして第一目標の港町“長関”にたどりつくこの道の直線距離は目測で・・・・・・40cm。よって実際の距離は20kmということになります」

「20km・・・・・・まあ妥当か?」

「しかし実際はもっと長くなるでしょうね・・・・・」

「何でよ?」

「あれです」


鬼丸が山を指差す。


「あれはこの国でも指折りの高山です。あそこを越えるにはそれなりの準備と時間が必要。だから商人たちはこの山を迂回して長関に行くそうですよ」

「確かに、でかいな・・・」

「おまけにあの山に生えている植物は主に竹。成長の早い竹ばかりあるせいで昼でも日光がほとんど差さない。竹ばかりで方向感覚を失い、時間も次第に分からなくなる。そのせいであの山は“迷いの竹林”と呼ばれているらしいです」

「迷いの竹林・・・・・・」

「というわけで、あの山を行くことは得策とはいえないでしょう。さあ、早く行きましょうか」


鬼丸が立ち上がり、また長い、長い道を歩んでいこうとする。

しかし金太郎はまだ座っており、こう呟いた。


「・・・・・・もしかしたらあの山突破できるんじゃね?」

「はい!?」

「退魔師の俺と鬼の俺が森で迷うことはないってことだよ!もしかしたら一日で長関にたどり着けるかもしれねえぞ!」

「それはそうかも知れませんが、やめたほうがいいと思いますよ。山道より平坦な長い道の方が楽ですし・・・・・ほら、“急がば回れ”っていうでしょ」

「“虎穴入らずんば虎子を得ず”とも言うぜ!ほら、行こうぜ!」

「ええっ!?ちょっと待ってくださいよ!」


そして2人は山の中に消えていった。この後2人の行方を知るものは誰もいなかった・・・


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「で、現在に至ると・・・。キンタ、どうする気ですか?」


見事に迷いの竹林で迷ってしまった鬼丸と金太郎。ここがどこかも分からないし、今が夜、ということぐらいしか分からない。迷いの竹林という名は伊達ではなかった。

金太郎が鬼丸の問いに答えた。


「あ~あ、どうしよっか?まあ、その辺歩いていれば、降りられるだろ。」

「・・・・・・・・」


楽天的なキンタに鬼丸は言葉を失う。突如鬼丸の周りの空気が変わる。しかしそれに金太郎は気づかない。


「・・・・・キンタ、どうする気ですか?」

「えっ?だから適当に・・・・・・」

「そういうことではありません。どうやって責任取るか、ということです。」

「いや、それは・・・・・・」


やっと金太郎がその変化に気づいた。現在の鬼丸の顔は確かに笑っている。笑っているのだが、目は笑ってない。それに加えてやたらと回りの空気が冷たく、痛い・・・・・・・


「キンタ、射殺にする?絞殺にする?それともじ・さ・つ?」

「ひっ・・・・だ、誰か、助けて~!!!」


鬼丸がデザートイーグルを取り出し、金太郎の命がまさに風前の灯になったとき、急に竹林が明るくなる。まるで昼の太陽のような、その光は尋常ではなく鬼丸は不審な表情を浮かべる。


「何ですか?この光は」

「も、もしかしたら人かもしれねえぜ。俺、見に行ってくるわ。」

「・・・・・逃げたな・・・・・」


後ろの方で舌打ちが聞こえたのを、金太郎は聞かないことにした。


「で、何かありましたか?キンタ」


光が強いほうに向かっていったキンタにようやく追いついた。金太郎は何故か固まっている。


「あれ見てみ、鬼丸。」

「ん?」


金太郎が指した方向に目を凝らすとそこには異様な光景が広がっていた・・・・



   ▽   ▽   ▽



(みやつこ)まろ、出てきなさい。」


まず目に付くのは、空飛ぶ牛車であった。黄金で装飾されており目がチカチカする。それの周りには人が立っており、何故か空を飛んでいる。

その先頭に立つ人はおそらくこの中でリーダーなのであろう、服が周りの人と比べてより派手だ。

その人が目の前の屋敷に命令すると一人のおじいさんが出てきた。金の時計、金ぴかのアクセサリー、豪華な服・・・おじいさんもリーダーに負けず劣らず、金ぴかであった。


おじいさんは酒にでも酔っているんだろか?ふらふら出てきて地面にひれ伏してしまった。

リーダーは続ける。


「愚かな者よ。少しばかりの善行をお前がしたのを見て、お前の助け、と思ってかぐや様を預けたのに、最近は金によってお前は変わってしまった・・・かぐや様はただ罪滅ぼしのため、少し地上にいただけだ。お前が嘆こうとも関係ない。早くかぐや様を返したまえ。」


おじいさんは答える。


「かぐやを今まで育てたのは、このオレっすよ。それをいまさら、返せ、なんて話の都合良すぎるんじゃないっすかね、マジで?」


・・・・・・・おじいさんのしゃべり方はどう考えてもその歳に似つかわしくないものだった。

リーダーは汚いものを見るような目でおじいさんを見る。


「黙れ、愚か者。かぐや様はどこにいらっしゃる?答えなければ、この屋敷を吹き飛ばすぞ!」

「かぐやならもうここにはいねえよ。」

「はっ!?」


リーダーが素っ頓狂な声を上げ、驚きの表情を見せる。


「かぐやはもうここにはいねえよ。あの子はもっと外の世界を見るべきだ。今頃、もうこの竹林を抜けたんじゃない?」

「っ!皆の者、かぐや様を探せ!」

「はっはっは!!天人もざまあないな」


空飛ぶ人は八方に飛んでいき、牛車は月に帰っていった。対するおじいさんは満面の笑みを浮かべていた。

あたりはまた真っ暗になった・・・



   ▽   ▽   ▽



「今のは・・・かぐや姫ですか?」

「まあ・・・そうだろなあ・・・あのおじいさんは竹取の翁で、あれが天人だろうな」

「・・・・・見なかった事にしますか・・・・・」

「・・・・・そうだな・・・・早くこの山を降りるか・・・・」


鬼丸たちは山道を歩き出した。



鬼丸達が歩き出して半刻・・・鬼丸のどこからともなく取り出した懐中電灯により今の所は順調に進んでいる。

また脅し取ったものじゃねえだろうな、と金太郎は思ったが、今はこれが頼りなので文句は言えない。



「いや~、にしても歴史的な瞬間に立ち会っちゃったな、俺たち」

「そうですね・・・・・・にしてもかぐや姫はどこに行ってしまったのでしょう?物語通りならあのまま月に帰るはずですが・・・」

「さあな~、おじいさんの言う通り外の世界にいたら、案外ばったり会っちゃったりするかも・・・・っのわ!」


キンタが喋っているところに、誰かがぶつかってきた。全速力でぶつかってきたらしくキンタは吹っ飛ばされてしまった。

ぶつかってきた人は長く黒い髪によって顔が隠れてしまっているために顔も表情も分からない。しかし髪の長さと身長から言って少女であろう。

少女は全速力で、しかも走りづらい着物で走ってきたため息が上がっており、とても辛そうだ。何とかして喋ろうとしている。


「はあ・・・はあ・・・どうか、私を、お助けください。はあ・・・追われているんです。」


少女が走ってきた方向を見ると、3人の男が追いかけてきた。よく見ると先ほどの天人だ。


「おう!よく分からんが任せろ!」

「ええ~・・・・私は面倒くさいからキンタに全部任せて・・・・・」


金太郎は快く受け入れるが、鬼丸は凄く面倒くさそうな顔をしている。少女が隠れていた顔を上げ、鬼丸の顔を見つめる。


「何でもいいから、助けてください!」

「・・・・・はい」


少女はまだ幼さは残っているが、美少女といっても過言ではない。艶のある黒い髪、整った眉に陶磁器を思わせる白い肌・・・・・・しかしその何より印象的であったのは、彼女の強い意思を持った黒い目であった。鬼丸をまっすぐに自分を射抜いた目に鬼丸は逆らえなかった。


「キンタやりますよ」

「分かったぜ!」


キンタは起き上がり紫電を、鬼丸はデザートイーグルを構える。

天人の1人が話しだす。


「さあ、地上の人よ。その方を差し出したまえ。抵抗しなければ何もしない。」

「残念ですが、今この少女と私の間に“助ける”という約束をしてしまいましてねえ・・・・・・・約束を守るのが私のモットーですので、どうぞお引取りください」

「そうなの!?・・・・・まあ、何があったかはしらねえけど、女の子を追いかけるなんて最悪だな。しかもこんな小さい子を・・・あれ、こういうのなんて言うんだっけ?」

「“ロリコン”ですよ、キンタ。」

「き、貴様ら・・・・もう容赦はせん。覚悟しろ!!!」


こめかみに青筋を立てた天人を筆頭に、計3人の天人が襲い掛かってきた。


「行くぜ!鬼丸!」

「そういえば金太郎といっしょに戦うのは初めてですね」

「そう・・・・・だったっけ?」

「ええ。派手に暴れてやりましょう!」

「おう!」


金太郎と鬼丸の初の共闘が幕を開けた。




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