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第一章・第十四話:鬼丸、激怒!

ちょっと調子に乗って一日二回更新です。

「ななななな何だこりゃあああ!?」

「うわああああああ!助けてくれえええええ!!」

「・・・・・・・」


盗賊共は各々違う反応を取っている。

ある者は、目の前の存在が信じられず目を見開いたり。

ある者は、大声で助けを呼んだり。

またある者は気を失い、失神している。


どれにせよ、目の前の存在に恐怖しているのには違いない。

まあ、どんな人間でも“ドラゴン”という存在が目の前にいたら畏怖するのは間違いないが。


「な、何で・・・・・こんなところにドラゴンが・・・・・」


盗賊団ブラックガードのボス、キエルドォーは目の前の存在を未だに信じられずにいた。彼は今までたくさんの悪行を重ねてきた。強奪、殺し、暴力・・・・・生きるためなら何でもやってきた。彼が今まで盗賊団のボスとしてやってこられたのは、生きるためなら何でもやる実行力と危険を感知する勘が優れていたからだろう。

その勘が自分に訴えかけている。“早く逃げろ”。“あれは抗ってはいけない存在だ”と。

しかし逃げようとしても体が言うことを聞いてくれない。恐怖で体が支配されている。キエルドゥーは目の前の恐怖を作り出したであろう小さな鬼を見やった。


「どうした、人間共・・・・さっきまでの威勢はどうした?それともこのドラゴンが怖いのか?」

「ひっ・・・・・・・」


鬼丸が見下すような目でこちらを見ている。しかし今はそんなことはかまってられない。こっちとしては生きるか死ぬかの瀬戸際だ。


ドラゴンとはこの世界では二面性を持つ神だと考えられている。この国、御伽の国では水を司り人々に恵みと癒しを与える存在だといわれている。

対して西の方にある不思議の国では火を司り、人々に破壊と恐怖を与える神、というよりは悪魔の化身といわれているらしい。

どちらにせよ、決して人間では召喚できるものではなく、それは鬼であっても然りだ。

その不可能をこの鬼は見事にやってのけてしまった。


黒いドラゴンは自らの力を誇示するように咆哮した。


『ガアアアアアアアアア!!』

「ひっ!・・・・・・」

「早く・・・・・逃げなきゃ・・・・・」

「そうだ・・・・逃げろおおおおおお!」


一人が逃げ出す、それは軍の士気に大きくかかわること。恐怖は人々に伝染し、それは敗北を生み出す。特に今回はならず者も集まりの烏合の衆。

何より大切なのは自分の命であった。


「うわああああああ!!」

「にげろおおおおおお!」

「おい、お前ら!逃げるんじゃねえ!金はいらねえのか!?」

「愚かなものだな、人間とは」

「!」


腕を組み、ドラゴンの前に立っていた鬼丸が口を開く。


「貴様ら人間を繋ぐものは結局、金か・・・・・その繋がりも恐怖によって消え失せてしまった・・・・・・その程度の人間共が、鬼を愚弄しようなど片腹痛い!我ら鬼は貴様ら人間とは違う!我々は血と誇りによって結ばれ、その結束は破られることはない!」

「ふ、ふざけるなよ!オメエがどうやってそのドラゴンを召喚したかは知らねえが、数はこっちの方が上だ!夜が明ければ、そのドラゴンを倒せるくらいの人間は集まるんだよ!」

「・・・・・・まったく、無知というのも甚だしいな・・・・・人間がドラゴンを討伐しようとするなら、国を動かしてもまだ分からないというのに・・・・・それに貴様は一つ勘違いしている。このドラゴンは“幻”だぞ」

「・・・・・・・はっ!?」


キエルドゥーは間の抜けた声を上げる。

鬼丸が術式を詠唱すると、目の前にいたドラゴンは霧のように消えてしまった・・・・・

先ほどまであった威圧が嘘のように消えてしまった。


「うそ・・・・だろ?」

「貴様らは現と虚の境界も分からないのか?まったく・・・・・・さて、卑しき盗賊よ、私は今腸が煮えくり返っている・・・・・」


鬼丸がヒザをついて絶望しているキエルドゥーの元に歩き出す。

ゆっくりと、しかし確実に・・・・・まるでその様は死神のようだった。

デザートイーグルの銃口を盗賊の頭に向ける。


「貴様は我が鬼一族を愚弄し、あろうことか私を殺そうとした。その罪は重いぞ、人間・・・・・」

「う・・・・・・たすけ・・・・て・・・」

「助けて?それはおかしい。私を殺そうとした時点で殺される覚悟は出来ていたはすだ。物を殺すということはそういうことだ・・・・・」


鬼丸の瞳は冷え切っている。まるで汚いものを見るように。

金太郎と話しているときの表情とは大違いであった。


「それじゃあ、死ね・・・・・」


鬼丸が引き金を引こうとしたその瞬間・・・・・


「待った!鬼丸!」

「っ!・・・・キンタ?」


鬼丸が何かから目が覚めたように声のした方向を向く。そこには汗をかき、息を乱しながら立っている金太郎の姿があった。


「キンタ!貴方、今までどこに―――――」

「―――――殺しちゃだめだ!」

「・・・・・何故ですか?」


金太郎が必死に鬼丸を止めようとする。

鬼丸は怪訝そうな眼差しを金太郎に向ける。


「何故殺しはいけないのですか?こんな下衆な人間、殺してしまってもかまわな―――――」

「―――――だめだ!」

「・・・・・・まさか貴方は退魔師のくせに殺しは怖いと思ってないでしょうね。この世界、殺さなければ殺されることもある。貴方のその偽善が貴方を殺すこともあるんですよ!」

「そんなことない!殺しなんてなくても―――――」

「ひいいいいいい!!」

「――――っ!逃げるな!貴様!」

「鬼丸!」


キエルドゥーが金太郎と鬼丸の隙を見て逃げ出す。当然鬼丸は撃ち殺そうとするが、それも金太郎の手によって阻まれる。


「キンタ!貴方いい加減に・・・・・・」


鬼丸が文句を言おうと金太郎のほうを振り向く。

しかしその文句は金太郎の表情を見ると宙に消えてしまった。

目に涙をためている人間に追い討ちを喰らわすほど鬼丸も鬼ではなかった。


「キンタ・・・・・・」

「頼む・・・・・殺さないでくれ!どんな人間でも、どんなに汚いものでも殺しちゃいけないんだ!頼む・・・・たのむよ・・・・」

――私を殺すの?金太郎ちゃん?――――――――

「貴方、過去に何か・・・・・・」


鬼丸は金太郎の顔から目線をそらし、手を振り払う。

依然として金太郎の目には涙がたまっている。それでいて懇願するような表情をしているのだから困ったものだ。

鬼丸はついに根負けした。


「・・・・・・いいでしょう。今回は、殺しはしません。それに貴方に何があったかは聞きません」

「鬼丸・・・・・・」

「ただし今回だけです。次会ったら確実に殺します。貴方が何しようと必ず。それでいいですね、キンタ」


その瞬間、金太郎の顔がぱっと明るくなる。その変わりようは何だ?と鬼丸は思ったがグッと堪えた。

金太郎が鬼丸の手を取る。


「ありがとな!鬼丸!」

「・・・・・・・・と、とにかくこれで依頼は終了です。さっさと鬼ヶ島に向かいますよ!」

「えっ!?村に戻らなくていいの?」

「あんな村に報酬なんて最初から期待してません。いるだけ無駄です!」

「ひっでえ言われよう・・・・・・」

「さあ!早く行きますよ!キンタ!」

「って、待ってくれよ!鬼丸、早いよ!」


金太郎はもう先に進んでいる鬼丸を慌てて追いかける。鬼ヶ島への道のりは残り半分。途中、寄り道もするが鬼丸と金太郎の旅は順調に進んでいるのでありました・・・・・・





―――数刻後、ある場所にて――――――――――――――――――――――


「く、くそ・・・あのガキどもめ・・・次あったら、ただじゃあおかねえ!」


ブラックガードのボスの男、いやだった男、キエルドゥーは鬼丸と金太郎が出発した時にはもう山をおりて、もう一つのアジトに向かっていた。

彼は命からがら逃げれてものの、他の盗賊団への報酬、雇った傭兵への報酬、自分の取り分を報酬に頼っていたため、失敗した今、彼の元に残っているのは借金だけである。

これはもはや依頼云々は関係なく奴らを殺さなければ、気が済まなかった。


「貴殿に次はあるのか?」

「何?ひっ!・・・」


キエルドゥーは後ろから声をかけられ振り向く。と、そこには惨状が広がっていた。

彼の目の前に広がっていたのは赤、赤、赤・・・先に逃げたはずの子分たちの血。

その光景の中心に立っていたのは、白い日本刀を両手にもった白髪に黒い目の男であった。黒と赤の世界に白がたたずんでいた。

白色には何故か赤色が混じってない。


「あ、あんたがやったのか?俺たち、仲間じゃねえのかよ?」


この男は自分たちに依頼したはずの男。キエルドゥーは何故この男が自分の子分を殺したのか、意味が分からなかった。


「貴殿等が仲間?・・・笑わせる・・・我が主が利用しただけなのに・・・」

「あ、主?あ、あんたいったい何者だよ!?」


男は白色に問いかける。すると白色は鼻で笑った。なぜかそれは男に対する嘲笑ではなく、自分に対する自嘲的な笑いに見えた。


「私か?私は・・・“犬”だ」

「はっ?」

「私は桃太郎様の犬・・・ただそれだけ・・・さて、喋り過ぎたな。そろそろお別れの時間だ・・・」

「ま、待て!桃太郎って事はまさかあんた・・・やめろ!俺はまだ死にたくな・・・」


その瞬間、白い一閃が放たれ、頭領の体が真っ二つになる。あまりに早すぎて目では捉えきれず、その刀身に返り血がつくこともなかった。

彼の感情の感じられない目が空を見る。


「・・・・・・・役立たず共め」

「ありゃりゃ~!?こらまた酷い有様だね~!」

「・・・・・・・雉か」


犬と言った男が振り返るといつの間にか雉がそこに立っていた。しかしそこまで犬は驚いてないらしく普通に会話を始める。


「そちらはどうだった?」

「うん、まあまあだね。鬼の少年は上々、問題ないよ。ああ、あと一人追加ね。坂田金太郎って言う金髪の少年」

「・・・・・・それは、強いのか?」


犬が問いかける。すると雉は愉快そうに笑って答えた。


「うん、強いよ!」

「そうか・・・・・・ならばいい。私はもう帰るが、貴殿はどうする?」

「う~ん・・・・・・僕も帰りたいけど、“猿”のことが心配だからな~。猿のところに行ってくるよ」

「そうか・・・・・ならば頼むぞ」

「うん!任せてよ!」


犬と雉はそれぞれの向かうべきところに向かった。

そして、黒と赤の世界からは誰もいなくなった・・・



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