表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

5. 夢を叶えるその日まで。

.




「ありがとうございました」

私がご主人にお礼を言うと、

「これからどうするの?」

と、ご主人が真顔で聞いてきた。

私は真摯に答えた。

「生きていたときの夢を叶えます。そうしたらきっと成仏できると思うんです」

「夢って?」

「三島由紀夫、太宰治、川端康成、芥川龍之介全読破です。図書館と本屋に行ったんですが、本棚に入ってると自分じゃ取り出せないので、純文学オタクとかに取り憑いてみようと思います」

「・・、うちに来るかい?喫茶店だけど三島も太宰も川端康成も芥川龍之介も全部あるから。読み終えるまでいるといいよ。うちは満席になること無いしね。テーブルに本を置いとけば読める?」

「・・・は、はい!読めます!理想的です!」

「すぐそこだから・・ああ、雨もあがったね。ついておいで」

「はい!ありがとうございます!」


あんなに激しかった雨はすっかりあがり、灰色の雲の切れ間から青い空がのぞいている。



ふらふらするしかなかった私にも居場所が見つかった。


死んでから、こんなに嬉しいことはない。


人の優しさが身に沁みる。


冷たかった心があたたかになる。





両親でさえ私が死んだらさっさとアメリカに行ってしまったのに。せめて位牌だけでも持って行ってくれてたら━━━━


両親が位牌(わたし)を残して早々に渡米したと知り、私は寂しくて落ち込んでしまった。地中に。





でも、ありがとう、神様。

そんな寂しい今日、優しい人に出会えました。


夢を叶えたらもう一度神様のいる場所に私を導いてください。


今度こそ迷わずに逝きますから!




こうして私は珈琲の美味しい喫茶店のご主人に拾われ、夢を叶える協力をしてもらうことになったのだった。


心の日記には、“今日は寂しい日”と綴ったが、“今日は優しいご主人に出会えて嬉しい日”と、私は綴り直した。


綴った言葉は忘れていくかもしれないけど、今日の日だけは忘れまい。この世にいる間は。


いや、いつか神様のもとに召されても。

そのあとも、ずっと、ずっと━━━━━









GOD BLESS YOU. ~Fin~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ