3. 冷静な『ご主人』
.
引き続き、私をジッと見るご主人。
「・・・」
「・・・」
まるで毒キノコか食べていいキノコかを、じっくり判定するかのように私を見ている。
「君、死んだ人?」
「・・・そう見えますか?」
「うん。他にどう解釈すればいいかわからない」
「・・・・・」
そうだ。
私は死んだのだ。
なんの因果か17で病死して、未練タラタラ執着心の塊となり彷徨う身となってしまった。
おまけに今、私の体は地中にめり込んでいる。
頭しか地上に出ていないのだ。
つまりさらし首状態。
想像してみてください。
雨の日あなたが歩いていることを。
想像してみてください。
歩いていているあなたが道ばたにボールがひとつ転がっているのをみつけたとき。近づくにつれ、そのボールには目と鼻と口と髪の毛があったとき。
おそらく恐怖に震えるでしょう。
恐怖にうち震えるか、腰を抜かしてアワアワするか、叫んで走りさるかのどれかのはずです(実証済み)
「首から上しかないの?」
しゃがんだご主人は、私にも傘の恩恵を与えてくださり、冷静に問いかけてくれたのだ。
この冷静さ・・、
大学は理系!さては北海道大学獣医学部の出身!
・・待て待て。獣医学部だと獣医になってるか。
あ、わかった!横浜市立大学医学部か防衛大学だ!きっとそう!
ご主人の経歴をいろいろ考え私は答えた。
「いえ、胴体もあります」
私は事情を話した。