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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

確率

作者: 桜芽鵺葉


少女リカはパパとママにさよならを告げて車から降ります。

そして右側にある大きなマイルドイエローの建物へと足を進めます。建物はこのあたりでは有名なホテルで、リカは今夜このホテルに部屋を取っていました。華やかで裕福そうな人々が居るエントランスを進み、ホテルの中にある石像をちらりと見ました。


石像の近くにいた女王陛下が「ようこそ我がホテルへ」と愛らしい笑顔でリカに微笑みます。女王陛下は数多のマスコミにカメラとマイクを向けられてにこやかに話しています。リカが先に進むと、女王陛下は不思議そうに「私と記念写真を撮らないの?私、写真写りには自信があるのよ」と首を傾げました。リカは女王陛下に失礼のないように「とても写真を撮りたいですが、受付時間がありますので」とぺこりと頭を下げて受付に向かいます。


受付ではマイルドグリーンの制服を着た綺麗な女性たち5人が座っていました。スーツと同じく帽子も同じマイルドグリーンで統一されており、帽子に飾られた一枚の羽がこのホテルにふさわしい華やかさを演出しています。


「どうぞ、こちらへ」

「いえ、こちらへどうぞ」

「お客様、そのまままっすぐこちらに」

「四番目の受付にお越し下さいませ」

「お客様の受付はこちらで行いますわ」


受付嬢たちは気品ある声でリカを自らの受付コーナーへと呼び寄せます。リカは二番目の受付に近づきました。


「本日、宿泊予定の佐藤リカです」


「はい。承っております。いらっしゃいませリカ様。リカ様のルームキーはこちらになります。素敵な一夜をお過ごし下さいませ」


受付嬢はリカににっこり微笑み、ルームキーを差し出しました。金色のルームキーには「リカの部屋2222」と真っ赤な字が刻印されてます。リカはルーム2222に向かいます。


ホテルの中の真っ赤な絨毯を進むと絨毯は途中で二手に分かれていました。片方の道の先では観覧車のきらめきが、もう片方の道の先ではキノコのおだやかな光りが見えます。リカはキノコの生えているほうの絨毯を進みます。


しばらく歩くと道はキノコでいっぱいです。

絨毯も真っ赤な色が全く見えないほどにキノコで覆われてます。リカはキノコを踏みながら道を進みます。


やがてマンションの模型のようなものが遠目に見えました。


「あれが私の部屋なのかしら」


リカが近づくと、それがマンションの模型ではないことがはっきりわかります。小さな小さな虫籠がたくさんたくさん詰まれています。まるで、ひとつひとつの部屋のように。一つの虫籠にはそれぞれキノコが一本だけ入れられてます。


リカは虫籠の一つをジッと見つめます。

中には小さな人間が一匹居て虫籠の中で死んでいました。


少し進んだ場所に行くとそこの小さな虫籠の中のキノコは枯れていました。中には小さな人間が一匹が居て虫籠の中で死んでいました。


リカは2222と番号札の貼られた虫籠を見つけます。

中には真っ白なキノコが一本あります。


リカは絨毯に生えているキノコを一本口に含み、小さくなって2222の虫籠に入ります。


絨毯に生えていたキノコは人間が小さくなる毒を持ちます。

このおかげで限りある土地を企業は有効活用できています。


虫籠の中にある一本のキノコは、一定の確率で人間が大きくなる毒を持ちます。

もし毒が無かった場合、一生虫籠からは出られません。


99パーセントの確率で効き目のないキノコを眺めながらリカは虫籠の中でつぶやきます。


「私のキノコは当たりなのかしら」


明日が楽しみ、そう笑ってリカは眠りにつきました。



End.



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― 新着の感想 ―
[良い点] 吸い寄せられるように歩いていく感覚。自分がこの物語の中に入ったようでした。この語り口が大好き。 [一言] 受付嬢たちがリカを取り合っている場面が面白おかしくて、でもそこからして既にぞっとす…
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