第四話
扉は押すと、軋むような音を立てながらゆっくりと開いた。
部屋の奥は明るく、広さもそれなりにあるようだ。
そしてその真ん中に、そいつは浮いていた。
「なんだお前は。煩わしい、消えろ。」
突然、声が響いた。
その生物は、人間と同じように話す。
僕は、悪魔のような羽がはえている以外、そいつがただ人間の男にしか見えず一瞬固まってしまう。
男が手をかざすと、なんと僕の目の前に視界を覆い尽くす程の炎が現れた。
「っ!」
だが、スローになるのは変わらないので、右手に持っていた大剣と、左手に持っていた両刃の剣を同時に振るいながら、全力で後ろに飛ぶ。
僕が振った剣の風圧で、炎は相殺できたようだ。よかった。
というか、、、魔法だ。
初めて見る。
上を見ると、男は無表情でこちらを見ていた。
なるほど、あれぐらいは避けれて当然ってことか。
よし、僕もあいつさえ倒せば自由が手に入るかもしれないんだ。死ぬ気で行くぞ。
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、、、、はっ
な、な、な、なんだ奴は。
私としたことが、放心してしまっていた。
なにやら混合気を纏った奇妙なガキがやってきたから全力の[神滅の黒炎]を放ったのだが、、、弾き返された?
そんな馬鹿な。
もう一度だ。
今度は[神滅の黒雷]を全力で放つ。
、、、どうなっている。
驚いたことに、あの奇妙はガキは[神滅の黒雷]までも避けている。
私の最速の攻撃を、目視してから、避けている。
ただの人間がだ。
その後もその人間は私の魔法を避け続けた。
次も。
その次も。
かすりもしない。
[神滅の黒雷]が当たらないならば、私の攻撃は何も当たらないだろう。
ふむ。
弱い魔族は、本能的に強い者に絶対の忠誠を捧げる。だが私は、そのような有象無象の存在ではない。
なればこそ、私が忠誠を捧げるのは真に認めた畏怖すべき存在のみ。
私は改めて、目の前の存在を見る。
、、
これほどの力、気配、存在値。
これは、いや、このお方は、、。
ーーーーーーーーーーーー
「くっ。」
かなり息切れしてきた。
なんなんだこいつは、魔法を無限に放ってきて近づけない。
また雷を放ってきた。
この雷、早すぎて最大限に集中しないと避けれないし、どこからでも飛んでくるから、気を張り詰めっぱなしだ。
「このままじゃだめだ、、、」
今僕は体力がほとんどない、というかほぼ倒れてしまいそうな一歩手前だ。
これじゃあジリ貧になる。
一気に間を詰めて、攻撃するしかない。
僕は覚悟を決めて武器を握る。
そして、魔法がとぎれたその瞬間、右手の大剣を男に投げつける。
大剣は一直線に男へと飛んでいったが、当たる直前で奇妙な逸れ方をしてしまった。
なんだ今の。
まぁ、いいか。
男は驚いたようで、魔法が一瞬止まる。
よし、隙が出きた。
今だ。
「はぁぁぁぁっ!」
地面を抉るほど踏み込み、男の前にきて剣を振るおうとしたその瞬間。
男は膝をついた。
頭を下げている。
そして口を開いた。
「お待ち下さい。先程までの非礼、命を持って詫びろと仰るのであればお好きに。」
「え?」
僕は驚いて剣を止めてしまった。
「しかし是非、貴方様にお仕えしたく存じます。私を配下の末席に加えてはいただけないでしょうか。」
「えぇぇ、、、」
あ、怪しすぎる。。
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