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第二話

 僕は、ダンジョンとは莫大な富を生み出す反面、未知の魔物の脅威等大きな危険が伴うものと認識していた。


 だからこそダンジョンは、冒険者など専門の人達が依頼受けて攻略していくものなのだ。



「リンネ殿、こちらですよ。これが最近見つかったダンジョンの入り口です。」



 話しかけてきた男は、今朝父上に紹介された調査隊の1人だ。

 調査隊と言っても全部で6人しかいない。


 しかも実際に中に入るのはその内の3人で、半分は外で見張りをしているとのことだった。


 僕が見たことの無い人達だし、もしかしたら雇われた冒険者なのかもしれない。



「はい、じゃあ入りましょうか。」



 ダンジョンは、草原の一部が盛り上がり、崖となった側面に洞窟として入り口ができていた。


 中は暗く、少し湿気は多いが静かでひんやりとしている。


 こんなに心地の良い場所で死ねると思うと心が少し安らいだ。


 こんなやつらがいなければ。



「リンネ殿、実は私達はすでに何度かこのダンジョンへ入っているんですよ。なので、案内は任せてください。」


「えぇ、ありがとうございます。」



(今回の依頼は簡単だったなぁ、あんな貴族の坊ちゃんをダンジョンの中で殺すだけでいいなんてよ。)


(あぁ、だが魔物にやられたことにしないといけねぇからな。まぁアルソードさんにまかしときゃ大丈夫だろ。)



 入り口の、見張りの話し声だ。


 僕は生まれつき耳がよかった。


 普段は普通の人と変わらない聴力だと思うけど、意識を集中させると何キロも先の音を聞くことができる。


 これで僕はずっと自分の陰口を聞いていたので、だれにもこの能力のことを話していない。



「この辺りでいいか、、、おい。」



 前を歩いていたリーダーらしい男が止まる。


 それを見た後ろの2人が、慣れた手つきで剣を抜く。



「リンネ殿、あなたに対しては同情します。どのような理由かは知りませんが、ここで命を頂くことになっておりますので。ご容赦を。」



 リーダーの男がそう言い終わると、右にいた男が剣を振り、僕の首を斬ろうとする。


 僕はそれをぼーっと見ていた。


 昔父さんに引っ叩かれた時もそうだったが、集中すると全ての動きがスローモーションへと変わる。


 集中すればする程スローになるので、今はほとんど止まって見えている。



、、、



僕は今ここで本当に死んでもいいんだろうか。


昨日はやっと開放されることに安心した。


だが、死んでしまったらそれで終わりだ。


実は、いつかやってみたいことはたくさんある。


ここで足掻いても死ぬことは変わらないかもしれない。


入口にも見張りがいるし、もしかすると他にも。


けれど、足掻いてみてから死んでも、いいかもしれない。



、、、



 目の前に迫っている刃を見て、僕は膝を折ることで下へと避けた。


 そしてそのまま、足払いで剣を振った男の両脚を砕く。



「ぐ、ぎゃあああああぁっっあっ、足がぁああぁ」


「え、、、」



 僕は自分でも驚いていた。


 屋敷にあった本は大体読んでいたので、その中にあった護身術代わりの体術は、知識としては持っていた。

 だが、実際に試してみたことはない。


 これほど完璧に自分の身体が動き、あれ程の威力がでるなど想像もしていなかった。



「なっ、、どうなっている!ただの貴族の坊ちゃんじゃなかったのか!」



 男達は混乱しているようだった。


 だが、初めて人を傷つけた僕はそれ以上に混乱している。


 逃げたほうがいいのか、戦ったほうがいいのか。



「こんなのは割にあわんぞ。、、、リンネ殿、提案がある。あなたは、ここで死んだことにしないか?」


「、、え、、どういう、、、」



 僕は戸惑った。



「こちらとしても、あなたと戦うのは避けたい。だから、あなたを逃して、父上にはあなたが死んだと報告をしましょう。そうすれば、あなたは死んだ人間になります。」



 、、、願ってもない条件だ。


 返事をしようとすると更にリーダーの男は話を続ける。



「しかし、実を言うと、このダンジョンの入口には常にアイルシュトバーグ家の騎士団が30名程おり、今回も依頼の達成報告を入口で待っているのです。」


「なっ、、」



 こんなの、、もう無理じゃないか。


 男は更に続ける。



「なので、ダンジョンの奥にある転移魔法陣で、脱出してもらいたい。いかがでしょうか。」


「っ、、わ、わかりました。それで構わないです。」



 僕は、リーダーの男の条件で了承した。


 どうすればいいのかはわからない。


 ただ、時間が欲しかった。



「ありがとうございます。では、そういうことで。」



 そういうと男たちは、入口の方へと去っていった。



(いいんですかアルソードさん、こいつは怪我させられたのに。)


(あぁ、この時期にこれ以上負傷者を出す訳にはいかない。それに魔物に襲われたことにするなら、元々怪我をする必要はあった。考えてみろ、あんなガキが1人でダンジョンボスを倒せると思うか?)



 こんな会話が聞こえていた。


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