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第一話

 僕はできない人間だ。



 もう何もかも辞めて死んでしまいたい。



 何故、僕だけができない人間になってしまったんだろう。



 兄さんも、姉さんも立派に領主の仕事や代理をこなしているし、弟でさえ父様の手伝いを出来ている。



 それなのに僕は、全くと言っていい程、兄弟達より優れている部分がない。



 それだけじゃない、貴族として一番大事な社交能力がない。



 行間を読め?



 駆け引きをしろ?



 逆になんでそんなことができるのか、もう訳がわからない。



 人と話すのが怖くなった。



「うぅ、、、もう、、嫌だ。」



 貴族として生まれて11年。


 自身の才能の無さを自覚して3年。


 僕は今日も、泣きながら布団を被った。





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「やぁリンネ、おはよう。」


 僕が朝食の席へとついた時、声がかけられた。


 爽やかな微笑で朝の挨拶をしてくる、アイルシュトバーグ家の長男であるシオン・アイルシュトバーグ。

 僕の兄さんだ。


 そして、リンネ・アイルシュトバーグ。

 それが僕の名前だ。


 兄さんは僕より5つ歳が上で、昨年成人を迎えたため今は領主の仕事を一部任されている。

 僕が思うに、貴族としての才能全てを持って生まれたんじゃないかと思うほどの逸材だった。



「ぁ、おはよう兄さん。き、昨日はごめんなさい。兄さんにまで迷惑をかけてしまって。」


「あぁ、気にしなくていいよ、リッケンバーグ殿は当家と付き合いも長いからね。」



 昨日は兄さんと共に、付き合いの長い商人と商談をした。


 だが、結果は僕の失敗を兄さんが助けてくれる形で終わったのだった。



「でも、僕のせいで兄さんの評判まで落ちてしまったら、、、」


「まぁ多少そういうこともあるかも知れないけど、、、そうだ、また一緒に練習しようリンネ。みんなリンネには期待してるんだよ。」



 うそだ。


 僕は自分が影でどんなふうに言われているか知っている。


 それに、練習なら兄さんにすでに何十回も同じことをやってもらっていた。

 どれだけやってもわからない、何がわからないのかもわからない。


 だが、僕はアイルシュトバーグ家に生まれてしまったという理由で、このどうしようもなく才能のない仕事からにげることは叶わない。



「うん。ありがとう、兄さん。」



 僕は引きつった笑顔で、こう言うしかなかった。



「え、リンネ兄、またやらかしたの?シオン兄さん、次は僕を連れて行ってよ。リンネ兄はいつまでも結果を出せてないじゃないか。」



 発言したのは2歳年下の弟、クルト・アイルシュトバーグだ。



「あ、あぁ、だが、リッケンバーグ殿との商談はリンネに任せると父上がおっしゃっていたんだ。」



 兄さんは、言いながら視線を、アイルシュトバーグ家現当主であるハロルド・アイルシュトバーグ、父上へと向ける。


 食事の手を止めた父上は、静かに口を開いた。



「リンネ、あとで私の部屋へ来なさい。」





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





コンコンッ


 僕は父上の部屋の扉をノックする。



「入りなさい。」



 父上の低い声が聞こえ、僕は乾いた口の中で無理矢理唾を飲み込む。


 そして扉をあけた。



「参りました、父上。」


「あぁ、リンネ、お前に問おうと思う。」



 父上は元から厳格な人物だが、今日はいつもよりさらに空気が重い気がする。



「お前も知っての通り、今は亡き私の父である前当主の悪政により、我がアイルシュトバーグ家の財政状況は悪い。それを変えるために私の代から動いている。ならばリンネよ、アイルシュトバーグ家の実子であるお前に求められていることはなんだ。」


「っっ、、利益、またはそれが生じるものです、父上。」



 僕は泣きそうになるのを我慢する。



「、、、お前はそれを一度でも当家に齎らしたことがあるか?」


「ありません、、、」


「そうだな。、、リンネよ、1つお前に任せたい仕事ができた。最近、我が領内で発見されたダンジョンの調査だ。調査隊を率いることを許そう。」



 え。


 ダンジョン?



「ち、父上に同行ということでしょうか?」


「いいや、お前1人だ。調査隊はこちらで用意した。出立は明日だ、準備しておけ。以上だ。」



 は?


 僕は頭が真っ白になる。


 あぁ、そうか。


 父上は僕を殺そうとしているのか。



「父上、、、」



 僕は放心した表情で父上を見た。



「以上だと、言ったのが聞こえなかったか?」



 父上はこちらも見ずに言った。


 僕は父上の声にビクリとし、無言で部屋を出た。




 そこから部屋までどう帰ったのか思い出せない。


 何度泣いたかわからないベッドの上で僕は思った。



 やっと、開放される。


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